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37.4°-世界は物語で出来ている

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将来の一流ライターが見られるかもしれないマガジン 毎回用意された"お題”を基に、ライター達が作品をつくっていきます。
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#映画レビュー

弱者男性の心をえぐる!映画『バズ・ライトイヤー』感想

1  日本のロボットアニメや特撮ヒーロー番組はときに、おもちゃ会社のCMだと揶揄される。劇中に登場するロボットのプラモデルやヒーローに変身するグッズを如何に買ってもらうか。スポンサーの顔色をうかがうのは大人の嗜みだ。けれども、おもちゃ会社に忖度したような「商売っ気」全開の作品なんて面白いはずがない。揶揄されないようなストーリーとおもちゃについ手が伸びてしまうようなデザインや演出のバランスこそが制作側の腕の見せ所だと思う。それこそが日本のロボットアニメや特撮ヒーロー番組の積み重

『ドライブ・マイ・カー』感想~これはコミュ障の物語だ~

1  一般的に映画や小説などの物語は「因果応報」であることが多い。悪いことをすればその報いを受け、良いことをすれば良いことがある。リアリティラインの高い(現実に即した)物語ほどこの「マナー」が守られていないと気持ち悪く感じる。現実が必ずしもそうではないからなのか。せめて物語だけには真面目に生きていることを肯定してほしいと託してしまう。  本作は真面目に生きる主人公の人生を、感情に正直な者たちがかき乱していく。彼らは「悪いこと」(法を犯したりモラル違反だったり)をした結果、相応

映画『孤狼の血 LEVEL2』感想~今作最強の悪役は童貞

1  魅力あるヴィラン(悪役)が登場する映画はたいてい良い映画である。今回紹介する『孤狼の血 LEVEL2』にも強くて怖い魅力的な悪役が登場する。そこに清々しさすら私は感じてしまうのだ。  広島県の架空の町、呉原市を舞台にヤクザの抗争を止めるべく刑事・日岡は奔走する。前作で非業の死を遂げたベテラン刑事大上の遺志を継いだ日岡は、呉原の治安を(時に非合法なやり方で)維持していく。対立する広島仁正会系五十子(いらこ)会と尾谷組は、日岡の暗躍により手打ちが行われた。そんな時、「悪魔

『パワー・オブ・ザ・ドッグ』感想※ネタバレあり

 本年度アカデミー賞・監督賞を受賞した本作は、ニュージーランド出身の女性監督ジェーン・カンピオンによる20世紀初頭のアメリカを舞台にした映画である。映画全体に妬み、嫉み、嫉妬、孤独感をまぶしたような作品で、作り手の性格の悪さがにじみ出ていて好感が持てる。(褒めてます。)  カウボーイが登場する西部劇ではあるのだが、馬を使ったアクションシーンはないし、銃も出てこない。手垢のついた西部劇という設定なのに見たことがない仕上がりになっている。別に斬新すぎたり突飛なことをしているわけで