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37.4°-世界は物語で出来ている

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将来の一流ライターが見られるかもしれないマガジン 毎回用意された"お題”を基に、ライター達が作品をつくっていきます。
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#映画感想

映画『哭悲/The Sadness』感想~ゴア満載だけどコワくはない

1  気が付くと1年が経っていたという事がいい大人になるとままある。ただ日々を消化するだけではいけない。そんなのゾンビと一緒だ。そうならないためにも意識的に季節感を取り入れていくべきなのだ。ということで夏らしくホラー映画を観に行くことにした。  映像の過激さから様々なファンタスティック系映画祭で評価を得た台湾製ゾンビ映画『哭悲/The Sadness』。監督は今作が実写長編映画初挑戦となるカナダ出身で台湾在住のロブ・ジャバス。変異したウィルスに感染した者たちが狂暴になり襲い掛

弱者男性の心をえぐる!映画『バズ・ライトイヤー』感想

1  日本のロボットアニメや特撮ヒーロー番組はときに、おもちゃ会社のCMだと揶揄される。劇中に登場するロボットのプラモデルやヒーローに変身するグッズを如何に買ってもらうか。スポンサーの顔色をうかがうのは大人の嗜みだ。けれども、おもちゃ会社に忖度したような「商売っ気」全開の作品なんて面白いはずがない。揶揄されないようなストーリーとおもちゃについ手が伸びてしまうようなデザインや演出のバランスこそが制作側の腕の見せ所だと思う。それこそが日本のロボットアニメや特撮ヒーロー番組の積み重

『ドライブ・マイ・カー』感想~これはコミュ障の物語だ~

1  一般的に映画や小説などの物語は「因果応報」であることが多い。悪いことをすればその報いを受け、良いことをすれば良いことがある。リアリティラインの高い(現実に即した)物語ほどこの「マナー」が守られていないと気持ち悪く感じる。現実が必ずしもそうではないからなのか。せめて物語だけには真面目に生きていることを肯定してほしいと託してしまう。  本作は真面目に生きる主人公の人生を、感情に正直な者たちがかき乱していく。彼らは「悪いこと」(法を犯したりモラル違反だったり)をした結果、相応

映画『孤狼の血 LEVEL2』感想~今作最強の悪役は童貞

1  魅力あるヴィラン(悪役)が登場する映画はたいてい良い映画である。今回紹介する『孤狼の血 LEVEL2』にも強くて怖い魅力的な悪役が登場する。そこに清々しさすら私は感じてしまうのだ。  広島県の架空の町、呉原市を舞台にヤクザの抗争を止めるべく刑事・日岡は奔走する。前作で非業の死を遂げたベテラン刑事大上の遺志を継いだ日岡は、呉原の治安を(時に非合法なやり方で)維持していく。対立する広島仁正会系五十子(いらこ)会と尾谷組は、日岡の暗躍により手打ちが行われた。そんな時、「悪魔