善と信じて疑わないこと。

「トゲピちゃんに、幸せになってほしいの」

彼女の目には悪意は微塵もなく、異様にキラキラしていた。その彼女の提案の中身は黒寄りのグレーなのに、彼女は真っ白と信じて疑っていないようだった。

今回、久々に140文字では書ききれない、でも発散しないと窒息してしまいそうなことがあったのでnoteに書き殴らせていただく。

暇ならこの先にどうぞ!

さて、私はTwitterでこそリアルなお仕事状況をツイートしているけれどもインスタのストーリーにはたまに「転職したい」「退勤っっ(21時過ぎ)」などと書くに留まっている。なぜインスタにもそんなことをたまにではあっても投稿するのかというと、今回そこはあまり重要ではないので省くがそれには明確な意図がある。

特定の人にそれが伝わることが目的で、多数の人に心配してもらうことが目的なわけでもなんでもない。

しかしその釣り針に、思わぬ相手が引っかかってしまったのが今回の発端と言える。

大学時代の頃から知っていて、月に1回くらい遊ぶ程度には仲がいい。破天荒で少し世間知らずでパリピな彼女だけど、昔から知っていてその根っこの部分の素直さや純粋さ、また目標に向かって努力していく様を知っているし個人的にはとても好きな子だった。

先日も一緒に夜中遊んだ際、帰りにラーメンでも食べて帰ろう!となった時それは起きた。すぐにタクシーで帰っていれば、そんな話をすることもなく終わったかもしれないのに。

唐突に彼女は「そういえば、トゲピちゃんインスタとかでも転職したいって言ってたよね?仕事もしんどそうだし。なんで転職したいと思うの?人間関係?それとも給料?」と話し出した。

厳密にいうとそのどちらでもない。

規模が大きいド日系の会社ゆえの、もっと根本的な部分というかなんというか、そういったところが原因なのだが、バチボコの会社員経験が無い彼女にそれを話しても分からないと思い適当に濁した。

すると、彼女はこう続けた。

「実は私、今年の3月から別の仕事も副業でしててそれが収入源としてはメインなんだよね。」

と。

彼女はずっと美容系の仕事をしていて、私もずっとお世話になっている。それだけでは食っていけないからたまに水商売のバイトをしてることも知っていた。独立して自分の店舗を持つんだと頑張っていたのも知っていた。

そんな彼女が現在している副業は水商売ではないらしい。投資用不動産の営業だという。

この時点で、仕事上ヤバい会社を日々大量に見ている私は「それは全力辞めた方がいいやつぅ!」と思ったがとりあえず引き続き話を聞くことにした。

人は否定されるとその瞬間心を閉ざすので、どんなに否定したくてもとりあえず話を聞くのがベターだと個人的には思っている。

彼女が投資用不動産の営業を始めたきっかけは、合コンでその会社の経営者に出会ったことがきっかけだと言う。美容サロンをやりたいけど、開業資金も貯めないといけないし準備も大変だと漏らしたところ、投資用不動産の営業やってみない?と誘われたのだとか。

まあここまではオッケーだ。きちんとした投資用不動産の会社なんていくらでもある。そうであれば良かった。

ここから内容がより深いグレーに、黒に近づいていく。

箇条書きにしていくと

・正規雇用ではなく、営業は全員がその会社と業務委託契約を結ぶ形で働いている

・営業ごとにそれぞれやり方は違うだろうが、彼女のやり方はマッチングアプリで出会った男にデートで投資用不動産の話を出し成約していくスタイル

・話の中でやたら「仲間」「みんなの幸せ」を連呼

これはもうアウトである。

そもそも彼女の営業方法自体、違法でこそないのだろうけどかなりグレーだ。そして話を聞く限り会社側はそれを黙認している。

また、業務委託契約ということは会社と営業は同等の立場であり、法律の解釈やケースバイケースな部分はあるものの会社は何かあった際雇用主としての責任を問われない可能性が高い。

極端な話、お客様(鴨)から営業が訴えられても会社としては知らぬ存ぜぬを通せるわけだ。なんなら、そんな売り方をしてるなんて知らなかった、こっちだって被害者だと言われてしまう可能性すら多いにある。

そして、彼女がこれを「悪とまでは言わずとも、恋愛弱者・情報弱者から搾取してやっている」という認識があるのならまだ良かった。

いや、全然良くはないんだけど、でもまだ良かった。これはあくまで私の気持ちの問題で、社会的に見て良いとか悪いとかそういう話ではない。

一番の衝撃は、彼女は、それを善行だと信じて疑っていなかったのである。

「もし自分から不動産を買ってくれなくても、自分がきっかけで投資用不動産の存在を知って他社から買われても嬉しいと心から思える。なぜならそのきっかけになったのは自分だから、そういうきっかけを提供できて良かったと思う」

「代表やメンバーは、みんな自分の幸せじゃなくて周りの人たちの幸せを考えている。お金がただあっても幸せじゃない、周りの人みんなが幸せじゃないと自分も幸せじゃない」

「家族以外でここまで信頼できる仲間に出会ったのはこれが初めだし、考え方が色々変わった自分が好きだと思える」

など、まあ一部共感できるところも無くはないが完全に洗脳されきってしまっている。もう完全に典型的なやつになってしまっている。

そして、彼女はこう続ける。

「トゲピちゃんも一緒にやらない?昔不動産やってたからその知識もあるし、水商売やってたからコミュニケーション能力も高いし素質あるとおもう!現状に不満があって、なおかつできそうな子がいたら声かけてるんだけど」

と。

「自分だけが幸せでも全然意味ないって思ったの。トゲピちゃんに、幸せになってほしい。」

と。

もちろん断った。現段階ではふんわりと断った。心酔してる代表やチームリーダーに会わせようとしてきたけど、それも断った。

水商売をやっていた経験が、要素の一部として昼の仕事で活きることはあっても、それを全力で出して仕事をするのは私の中では全然「善」じゃない。

そもそもマッチングアプリでお客様を拾ってる時点で、出口がどうであれ入り口の時点では騙していることになる。それは私の中では「善」じゃない。

そしてそれを黙認してる会社だって、私の中では「善」ではない。

でも彼女は心からそれを善行だと思ってしまっている。私を搾取しようとするのであればとっくにやっていただろうし、たぶん本心で心配してくれている。

よく某喫茶店で情報商材詐欺やビットコイン詐欺を見ているからわかるけど、搾取しようという人間独特の話し方や仕草や目の動きや、そういったものが彼女からは読み取れなかったから。

まあ、あくまで私がそう信じたいというバイアスがかかってるのは勿論あると思うけれど。

ちなみに、ふんわり断わったというのは今後やるつもりだからとかでは全くなく、単に人は自分が信じてるものや好きなものを真っ向から否定されると心を閉ざしてしまうので目がさめるまではとりあえず静観するために言ったこと。

2人で遊ぶ予定が急きょその会社の人を同席させてきたりしたら縁の切り時だなと思うけど、曲がりなりにも長年の友人なので折を見て洗脳を解く方法を考えたいと思う。

かのBLEACH様もこう仰っております。

"人は皆すべからく悪であり
自らを正義であると錯覚する為には
己以外の何者かを 己以上の悪であると
錯覚するより 他にないのだ

確信した正義とは、悪である
正義が正義たり得る為には
常に自らの正義を疑い続けなければならない"

どんなに社会的に見て悪に近いことであっても、本人の捉え方次第でそれは本人やその限られた周りの中では善行となってしまうことがある。

それはめちゃくちゃ恐ろしいことだし、逆にどんなに社会的に見て正義に近いことであっても盲信するのは恐ろしいこと。

常に、自分の正義は果たして正義なのか、きちんと疑い続けないとこういう歪んだ善行が蔓延していくんだなと思った。

以上、自分の行動を常に正当化して善行と疑わないことほど恐ろしいものはないなと思った話でした。

もしここまで私のエモーショナルオナニーに付き合ってくださった方いらっしゃいましたら、ありがとうございました。

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