田嶋陽子さんの「ヒロインは、なせ殺されるのか?」を読んでみた件

 某テレビ番組で紹介されていたので、読んでみた。彼女の著書としては、古い作品のようですが、最近再版して売れているそうです。フェミニズムの本。
 彼女の訴える女性の解放問題は、社会全体で取り組んでいかないといけない内容ではあるけど、男社会を批判するあまりに男性から協力が得られにくいという構図、男社会で勝ち抜くために彼女が批判する男性みたいに振る舞う女性たちが少なからずいるという構図、男社会が正しいんだと主張する女性たちも多いという構図、なかなか複雑な問題です。男社会の洗脳が女性の解放を妨げているということ。洗脳を解くのは難しいと聞く。そもそも、いつの時代も国家は国民を洗脳しているようにも思う。カテゴリーで括るということは、洗脳とセットなのではないだろうか。
 この本も、古い映画を題材にヒロインたちとその周りの人を、彼女の視線で分析して、男社会に蔓延る”勝手な女性観”に当てはめ、彼女なりに分析(批判?)しているという本です。男性である私が読むのはかなりしんどかったが、色々と勉強にはなりました。読み終わって、ふと疑問。この本の研究的価値はどのくらいあるんだろう…ということ。もちろん、査読もされていないので、著者が好き勝手に解釈したことを書き綴っている。その内容については、消費者が評価するということなのだろうけど、消費者に評価されることと研究的価値は別次元にあるものだろうから、ちゃんとした社会学者がこの本をどう評するかを訊いてみたい。売れるということは、社会が欲しているものであることは間違いないけど、正しいものとは限らない。一方で、この本を読んで救われる人が一人でもいるとしたら、この本の社会的価値はあるということにもなる。
 個人的には、(テレビで拝見する彼女そのままに)少し思い込みが激しくないかい?とは思うけど、それもまた大切な視点ではあるはず。思い込みが激しくないと論じることができない領域もある。ただ、思い込みが激しいと有識者からは相手にされないという難点もある。一方で、彼女の意見がマジョリティか、マイノリティかはわからないけど、そう捉える人もいるんだという事実は大切であり、「私、この社会で生きていくのが辛いんです」と訴える人がいたら、それを解決する方向で考えないといけない。訴える人の性別によらず。やっぱり、男女というキーワードで物事を論じることは、こういう問題の解決を遅らせるだけだろう。分けちゃだめなんだ。
 ちなみに研究論文はどのくらいお書きなのだろうか…。そこ大切。

https://www.amazon.co.jp/新版-ヒロインは、なぜ殺されるのか-田嶋-陽子/dp/4046060948/ref=sr_1_1?__mk_ja_JP=カタカナ&crid=1ROQOU2X7FCFO&keywords=ヒロインはなぜ殺されるのか&qid=1682637754&sprefix=ヒロインはなぜ殺されるのか%2Caps%2C596&sr=8-1

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?