【合計11万字超】CFA Level 3合格体験記(2022年9月)|Level 3合格のポイント・勉強法
はじめに
2022年9月に実施されたCFA Level 3の結果が2022年11月に返ってきました。2017年7月から5年間以上、ひと時も忘れることなくCFAに取り組んできた思い入れのあるCFAですが、2021年11月のLevel 3の不合格を経て、ついに合格することが出来ました。
CFA Level 3に対する想いと執着心が強すぎて、Level 3の振り返りだけで11万字を超えるnoteになってしまいました。詳しく検証していませんが、CFA Level 3に関するSNS上での投稿としては、かなり詳しく記載している部類に入ると思います。このnoteをお読み頂くと、Level 1やLevel 2をこれから受験する方々はCBT試験のロジのイメージが湧くと思います。Level 3をこれから受験する方は、ロジもさることながら、CBT受験者からの2022年度版の情報がわかるかと思います。
Level 1やLevel 2の記事についても書くことを検討した時期もありましたが、それらのレベルは比較的多くの方が体験談等を残して下さっているかと思います。そのため、私が敢えてそれらのレベルに関する最大公約数的な体験談や学習のポイントを書いたところで、それ自体にあまり価値はないと判断致しました。一方、途中で脱落することも踏まえると、CFA Level 3については、日本語で解説されたページが特に少ない現状があります。そのため、Level 3の試験会場や試験の感想、学習のポイント等について私が詳述することは、一定の価値を提供できるのではないかと考えた次第です。
なお、このnoteでこだわり抜いたポイントとしては、CFAI公式教材での出題実績を可能な限り加味した、という点です。私は、CFAIの公式教材に取り組んでいた際に公式教材の問題演習(EXAMPLE、章末問題、mock、一部の過去問)で出題されたポイントについては、SchweserNotesや公式テキストの本文に片っ端から特別な印をつけていましたので、私のSchweserNotesや公式テキストの本文を見るとどの論点が公式教材の問題演習で出題済か、一目瞭然な状態になっています。特に、CFAI公式テキストのEXAMPLEや章末問題、mockについてはすべての問題を複数回解いています。こうした「公式教材の出題実績」を盛り込んで、公式教材で問われるポイント等をもとに論点の重要性を解説していますので、ある程度はcandidate目線の有用な情報を提供できるのではないかと考えています。その意味で、このnoteで「重要」と記載している箇所はあくまでも「公式教材で出題されているから重要」ということであり、「なんとなく問われそうだから重要」という恣意性は可能な限り排除しているつもりです。そのため、このnoteで「重要」と記載したところは、何かしらのそうした根拠があってそのように記載しているとご理解いただければと思います。
もちろん、Code&Standardsによって試験内容そのものは明かせませんのでご了承下さい。あくまでも、Level 3受験に向けたこれまでの私自身の学習経験、Level 3の本試験を受験経験を踏まえた上での、あくまでも私の感想になります。つまり、このnoteの内容は、本番の試験の具体的な内容とは無関係です。
科目別のポイントを含め、記載内容に誤りがありましたら、申し訳ありません。ご指摘賜れますと幸いです。
前提情報
2022年9月のLevel 3受験時点での私の取得済資格試験としては、下記のものがありました。
金融関係
証券アナリスト2次英語関係
実用英語技能検定1級
TOEIC L&R 満点
TOEIC S&W 満点(同時満点ではありません。(S,W)=(200,190)または(190,200)です。)
ですので、金融関係の知識については、ごく最低限のものを日本語で学んだことがある、というくらいです。英語関係については、CFA関連の教材を読むことには問題はありませんでした。また、Level 3のConstructed Responseにおいても、ライティングで言いたいことを述べること自体には、抵抗はありませんでした。
ただ、多くの方々がすでに述べられている通り、Level 3のConstructed Responseにおいて、高度な表現技法や語彙力は全く必要がありません。CFA教材の中で得られる必要な表現や語彙と、最低限の文法と英作文能力があれば、全く問題ありません。
私はLevel 2やLevel 3にそれぞれ一度落ちていますし、ある一定レベルを超えると、CFA試験の合格に対する英語力向上の有意な寄与は、逓減していくかと思います。
試験受験のロジスティクス
私が最初に受験した2021年11月は、CFA試験がCBTに変わってから間も無く、ほとんど試験会場のインフラ面における情報が出ておらず不安でした。しかし、2022年9月に再受験した際は、1回目の情報があり安心して会場入りすることができました。これを踏まえると、事前に試験会場ロジの情報があるかないかでは、かなり心構えの部分で安心感が違ってくると考えています。
これから先に変わっていくとは思いますが2022年9月時点での情報は下記の通りです。
※Level 1やLevel 2を受験される方にとっても、共通の内容があるかと思います。
試験会場
東京 御茶ノ水のソラシティにあるプロメトリック(5階)でした。
他の方も仰っていますが、ソラシティのプロメトリック への入り口は、JR御茶ノ水駅から向かって右側です。左側の入り口は、オフィスビルの入り口なので要注意です。
試験の流れ
会場到着
試験室内へ入るチェックインの前に、受付で試験名と名前、パスポートを提示します。
その後、荷物を小さめのロッカーに入れます。大きな荷物は入らないようでしたので、前泊して近くのホテルに荷物を置いておくか、荷物を少なくして来場すべきと思います。
※会場によって、ロッカーの大きさは異なると思います。チェックイン
まず、とても大切なことですが、試験受験には有効期限内のパスポートが必須です。「パスポートを忘れたので受験できなかった」という口コミを聞いたことはないのですが、この後に説明するチェックインの厳重さを踏まえると、有効なパスポートがないとおそらく本当に受験できないと個人的に思料します。有効期限内のパスワードの用意、これだけは気を付けて下さい。
チェックインの際は、ポケットの中、マスクの裏、手首・足首と、かなり厳重にチェックされた上で、金属探知機で全身もチェックされます。その後、受付の台でパスポート・電卓(カバー無し)の提示を求められ、電卓のメモリについては消去したかどうかについても聞かれます。なお、耳栓の持ち込みは可能ですので、私は耳栓を使用しました。
また、ここで計算用具を渡されます。2022年9月に受験した際は、A3の計算用紙2枚と鉛筆2本を渡されました。2021年11月と比べて何よりも大きな変更だったのは、計算用紙がラミネートボードに水性マジックで書く方式から、鉛筆とA3の紙2枚に変わったことです。これは圧倒的改善でありまして、2021年11月のときはラミネートボードの記載がいっぱいになったら交換するという方式だったのですが、これですと前の方にやった問題の計算過程を手放すことになるので、後から見直せない、という致命的な欠点がありました。
ただし2022年Augustの回では、CFAIからプロメトリックに通達があったらしく、紙と鉛筆で統一せよ、とのことだったらしいです。(これはプロメトリックに問い合わせて判明しました。)A3両面の2枚でしたので、わりと贅沢に使ってもA4一枚分くらいは余るため、非常にやりやすくなりました。休憩
休憩は30分のみです。しかも、30分経つと自動再開されるため、早めに戻ることを推奨されます。再入室時に簡易的なチェックインもあるため、実質10分くらいの休憩しかできません。試験終了
試験が終わると、教室の外でチェックアウトをします。電卓に書き込みがないかや、試験終了のサインを求められます。その後、プロメトリック から試験が完了したことを知らせるメールが来ます。
試験教室内の備品
チェックイン時に渡される筆記用具と計算用紙
上記の通り、計算用紙(A3)と鉛筆2本が渡されます。スクリーン
問題自体はSplit Viewになって左に問題文、右に問題となるように調整されており、非常に見やすいです。フラグをつけて後で戻ってくることも容易でした。イヤーマフ
各机に防音のためのイヤーマフがあるため、これを使うとほぼ完全防音で受験できます。私は耳栓を持参していたため、イヤーマフは使用しませんでした。キーボード
USキーボードでした。2021年度、2022年度どちらも、USキーボードが設置されていました。ですので、USキーボードが設置されている可能性も踏まえ、USキーボードに慣れていない人は、ある程度キーの位置等を事前に把握しておくことを推奨致します。試験監督呼び出し
試験監督は、机上の呼び出しボタンで呼び出せます。これにより、メモ用紙の交換も可能です。
記述問題に対する雑感
2023年2月からの試験ではCBT上のMath editorという数式入力ツールは使用できなくなったようなのですが、2022年度版カリキュラムまでは、Math editorというものが利用でき、CFAのウェブサイトでチュートリアルでもその使いづらさを体感できました。Math editorを用いた数式はかなり書きにくく、公式だけ書いてpartial creditを狙う方法もやりにくかったです。試験前にチュートリアル上で公式を書く練習をした方が良いことは言うまでもありませんので、私は全公式をチュートリアル上の数式ツールで記載する練習をしていました。
また、当時は、CFAIのホームページにも「掛け算は*ではなく×を使え。」という指示がありました。そうすると、×の記号を記号ツールの中から×記号を探して選択することになり、非常に面倒です。途中式を書くだけでも一苦労でした。
加えて、βなどの文字を書く際も、数式ツールから選択しないといけないため、非常に手間です。ご承知おきの通り、Level 3のデリバティブの単元で、アセットスワップによってβを調整する問題があるかと思います。もしこうした問題が出題された場合、逐一数式ツールからβを選択するのはとても面倒かと思います。
ただ、繰り返しますが、CFAIのウェブサイトを見ていると、Math editorは2023年2月の試験から使わなくなったようなので注意です。CFAIのホームページには、以下の記載があります:
この記載の通り、「Math editorの利用は混乱を招いた」とあり、たしかに相当使いづらかった印象と符合しています。現状では、keyboardを用いて数式を表現して問題ないようですが、掛け算を表現する際はアスタリスク「*」を用いて表記してよいのでしょうか。また、べき乗は「^」で表現するのでしょうか。謎は残りますので、こうしたテクニカルな問題はCFAIに事前に問い合わせしておくのも有効です。CFAIにメールで問い合わせるか、またはcandidate専用のフォーラムでCFAIの中の人に問い合わせをすると、私の場合は回答してくれました。
6回ルールの罠
CFA受験には、以下のような「6回ルール」というものがあり、CBT試験から追加されています。つまり、「各レベル毎の最大受験回数は6回であり、6回落ちたらその人は一生CFA charterを手に入れられない」というルールです。
世間的にはあまり話題になっていないように思えるのですが、個人的には、これは非常に痛いルールかと思います。冷静に考えて、6回落ちたらその人は一生涯CFA charter holderになれないって、相当やばくないですか。例えば、Level 3まで必死に勉強したとしても、Level 3の受験タイミングで子育てや仕事、そしてCFAプログラム変更がうまく合わさって思うように準備が進まずに6回failした場合、その人は一生涯Level 3を受けられず、Level 1やLevel 2、そしてLevel 3の勉強が全て無駄になります。もちろん、学習した内容は財産として残りますが、やはりCFA charterの獲得を目指すcandidateとしては、勉強した内容が財産として残るだけではなく、CFA designationが欲しい人も多いと予想されます。ですので、一生CFA charterを取れないというのは辛いと思われます。
数年前、このことを同僚のcandidateに話したとき、「いやいや、6回もあれば受かるでしょ。」という感じの反応だったのですが、私は正直なところ、「すごい自信ですね。」と思いました。CFAプログラムは頻繁に更新されますし、6回落ちるって普通にあり得ると思うんですよね。ちなみに、その人は現時点ではまだCFA charterを取っていないようでした(Level 3までpassしているのかもしれませんが)。また、私の知り合いで、本稿執筆時点(2023年8月)において既にCBT試験のLevel 3に3回落ちている人もいます。
なお、以前に聞いた話ですと、試験を申し込んだものの欠席した場合はmaximum attemptsにはカウントされないようです。1回のattemptは、failやpassの結果を受領したもののみが該当するとのことでした。
おそらく、Prep provider対策なのだと思いますが、試験を受けるのならば、絶対にその試験で受かるつもりで受けないと取り返しのつかないことになり得ますので、注意して下さい。「申し込んだからとりあえず受けておこう」という戦略は通用しない(自分を極端に不利にするだけ)ということになります。十分にご留意下さい。その意味で、場合によっては試験を延期することも選択肢です。
試験難易度の感想
午前(Constructed Response)
私個人の感想としては、どの模試とも似ても似つかない、全く異質な試験でした。JustifyやCalculate等というコマンドワードは同じなのですが、問題の問われ方もMockやCFAIの章末問題 (EOC) とは異なるので、面をくらいます。ちゃんと考えさせる問題でした。問題作成者は、明らかに公式教材(公式教材の章末問題やMock)の作成者とは違うと思います。それか、試験問題の作成方針について、CBTとそれらでは大きく異なっているように思えます。
AMはとにかく時間が足りず、フラグは立てたものの見直す時間は一切ありませんでした。また、一問あたり3分で終わらせることを前提として「考えればわかるけど、3分以内には終わらずコスパ悪そう」という問題もあり、そういう問題は見た瞬間に飛ばしましたので3-4問は完全に空欄だったと思います。そして、「AMはとにかく短く書け」とよく言われるものの「Justifyせよ」という問いに対しては「誰々はXと発言しているが、YはXという性質を持つから、Yが妥当。」などと書くと、大体どの問題も3行以上の分量になったと記憶しています。よって、ちょっと長すぎたかもしれないという罪悪感は残りましたが、それらの要素を削って減らしても個別の問に答えてないことになってしまいかねないため、これは難しいところです(問題のケースに沿っていない、ただの一般的な内容の記述のみは得点にならないのて注意)。
また、上のロジで述べた通り、途中数式を書きにくいです。以前のようなPBTで可能だった図を書くことも出来ず、記述面でのハードルも忘れてはなりません。
午後(Multiple Choice)
こちらは、非常に優しいです。AMのConstructed ResponceとPMの Multiple Choileを比べると明らかにPMのMultiple Choiceの問題の方が簡単に思えました。PMの一部、妙な状況設定があり、フラグをつけて後で考え直す問題は数問ありましたが、それ以外はおそらく全問正解できたのではないかと思います。1時間くらい前に終わらせて、ゆっくりと見直しをしても時間は余りました。
しかし、簡単といえど結構細かいところもネチネチ聞いてきている印象です。Schweserには紹介されていないものの、CFAIのEXAMPLEにしか出題されていないような問題もありました。ちゃんとCFAI公式テキストで隅々まで勉強していればそれが如実にスコアに現れやすいような問題だったと感じています。CFAIの公式テキストを隅々まで学習しつくしていたので、私にときはかなり楽勝でした。
まとめ
TwitterのTLでも午後の方が難しいという方や、Redditでも「午前は完璧だったけど午後で死んだ」と仰っている方が多数いらっしゃったので、時差のある世界はもちろん、もしかしたら同じ日本の隣同士でも表示されている問題は違うのか?とも思っています。それくらい、私自身は午後の方が簡単だという印象を受けましたが、他の方々は必ずしもそうではなかったようです。そのため、当時は、Level 3では「午後で満点、午前で可能な限り得点する。」というのが、Level 3をパスされた諸先輩方が仰るような得点配分であったと理解しておりましたが、これも必ずしも正解ではないのだと思います。
とはいえ、私が実際に受けた通り午後の方が簡単であったとすると、Miminum Passing Score (MPS) を60%とすれば、午後で90-100%を取得して、午前で20-30%取得する、というケースがやはりありえたのではないかと思います。日本人は通常ライティングによるアプトプットを必ずしも得意としない状況に鑑みると、「午後で満点、午前で可能な限り得点する。」を目指すのが、一つの戦略としてありえたのではないか、ということです。
ただ、繰り返しになりますが、2023年2月試験から午前・午後でConstructed ResponseとMultiple Choiceの問題が混ざって出題されていますので、そこは注意が必要です。
Level 3本試における心得
ここでは、賛否両論ありそうなことも含め、本試中にも強く意識したことや、本試中にも感じ取った大事な戦略について記載しようと思います。もちろん賛成できるもの・できないものも含むとは思いますが、あくまで一人の意見としてご笑覧頂ければと思います。
トリッキー・マニアックな問題は、「出る」
よく、「CFA本試験にはトリッキー・マニアックな問題やrare exceptionsは出題されず、あくまで本質的な理解のみを問う問題のみが出題されるのである。(キリッ」と言っておられる方がいらっしゃることを観察していますが、個人的には正しくないと思います。もちろん、CFAIもそのように言っていますのでそこが困りものですが、私の感覚ではトリッキー・マニアックな問題も出題されています。
おそらく、「マニアック」はまだしも「トリッキー」の定義が曖昧で、何をもってトリッキーな問題と言えるのかについて見解の相違があるため、こうした乖離が生じるのだと思います。そこで、LONGMAN現代英英辞典での"tricky"の語義を見てみました。
これを踏まえると、トリッキーは「複雑で、たくさんの問題を孕むために扱うことが難しい」という意味になりそうですが、こうした類の問題は、本試で出題されます。問題設定が少々複雑であることはありますし、かつEthicsでは利害関係者がたくさんいたり、複数のポイントを考慮したりする問題もありますよね。Ethicsの問題ですと、とある行動が複数のC&Sに違反していることもありますし、そうした問題設定の状況把握に苦心するケースも散見されます。
また、計算問題にいたっては、正解までに何ステップも要する問題(つまり、たくさんの問題を含んでおり複雑である)も出題される可能性はあります(現にmockにもそのような問題は出題されているという事実があるためです)。この意味において、トリッキーと言える問題は容易に出題されると思われます。
思い返すと、特にEthicsではトリッキーな問題があったように感じています。状況設定が若干複雑で、解答根拠が普通にグレー過ぎて解けない、と思った問題が複数ありました。Level 2の本試験のときからこの感覚を覚えており、Level 3でも共通でした。Level 2、Level 3ともに、「Ethicsは難しかったな」と試験直後に感じたことをよく覚えています。そして、試験後に冷静に振り返っても結局何が正解だったかよくわからないような問題でした。
また、「トリッキー」とは別の論点として、「マニアック」という観点もあります。CFAI的にはmock≒本試験なわけですが、mockにはかなりマニアックな問題が出題されていることは有名です。例えば、Level 2のmockを解いていた際、Ethicsは特に微妙な問題が多く、多くのCandidatesが悶絶していた(Candidate Forumが荒れていた)ことを記憶しています。また、2022年度版カリキュラムのLevel 3においても、CFAI公式テキストにて演習問題にすらなっておらず、本文に1行だけ説明があるような、かなりマニアックな論点がmockには出題されていました。mockがこれだけマニアックであれば、それとニアリーイコールである(、と少なくともCFAIが言っている)本試験についても、マニアックになり得ることは容易に想像できます。
ただ、こうしたトリッキー、もしくはマニアックな問題が解けないと受からないか、というとそれは別問題であり、そうした問題が解けなくても受かると思います。その意味で、トリッキー・マニアックな問題を見た瞬間に「は?何これ?」と違和感を感じた瞬間に損切りできるだけには、大量にCFAI公式テキストで演習を積んでおく必要がある、というだけかと思います。ただし、トリッキー・マニアックな問題は「出る」ので、そこは用心しておくべきであるということです。
「エッセイ」ではない
よく、Level 3の記述部分の試験を指して「エッセイ」と呼ばれるのですが、日本人にとってはこれは語弊があると思います。essayの意味は、Cambridge Dicrionaryでは以下のように定義されています:
この記載の通り、"a short piece of writing"なので、「短文」であることが基本的意味です。したがって、Level 3の記述では基本的に短文で回答することが求められています。
一方、「エッセイ」に関する日本語の意味ですと、以下の通り書かれています:
英語における語義とは若干の乖離のあるこの日本語の定義を見て、特に二つ目の意義の「小論文」「論説」などという意味合いを強く感じ取ってしまうと何か論文を書かないといけないのか、と思い、ついつい解答が長くなりがちです。
しかし、これは大きな誤りで、あくまでも可能な限り短文で記載することを心掛けます。この点についてはMark Meldrum先生も下記の動画の4:13~、以下のような警鐘を鳴らしています:
Mark Meldrum先生はもちろん英語ネイティブですが、ネイティブから見てもエッセイという言い方には違和感を感じていること、どの問題も最大でも20語、採点者に教えるように回答しないこと、最も少ない語数で直接的な回答を書くこと、を力説されていました。
「essay」という試験形式はCFAIの公式ウェブサイトでも使われているため正しい言い方ではあるのですが、呼び方に囚われず、essayという英単語の基本的意味に沿って、あくまでも短文を意識しつつ、書きすぎることは他の問題の回答時間を短くすることであり、それは合格から遠ざかっている、という強い意識をもって試験に臨むことが大切と思われます。
一方、先ほども述べた通り、どう頑張っても正しく答えようとすると3行以上になってしまう、というケースもありました。「正しく答える」とは、CFAIも公式に発表している通り「ただ一般論を述べるのは加点されない」ことを踏まえ、「ただ一般論を述べるにとどまらず、その設問の状況でのその一般論がどう当てはまるのか」を説明することです。ここはバランスをとって記述する必要があるかと思いますが、私は3行くらいになるケースがほとんどでした。
Mark Meldrum先生もCFAにパスされたのはかなり昔だと思いますし、CBTは経験されていないかと思います。そのため、当時とは状況が変わっているかもしれません。しかし、長くなりすぎず要点を絞って回答する必要性は共通ですので、改めて強く意識されると良いと思います。
また、たまに質問を頂戴するのですが、「CFAI公式テキストの問題の回答は長い。あんなに書かないといけないのか?」という疑問をお持ちの方もいらっしゃると思います。まず、あんなに長く書かなくても問題ありません。逆に、あれだけ長く書くと他の問題を解く時間がなくなり、落ちます。あれだけ長く書いてはいけません。CFAIの公式テキストの回答は、candidateに対して教えることを目的として書かれているためあれだけ長くなりますが、candidateは試験場でgraderに対して「教える」ことではなく、「いかに自分が答えを分かっているかを示す」ことが求められます。上の動画でMark Meldrum先生が仰るように、"Your job is not to teach the grader the answer; your job is to tell the grader the answer in the fewest words and the most direct way possible."です。「採点者に答えを教えるのではなく、最小の単語を用いて、最も直接的に答えを伝えることが仕事」ということになります。
計算問題は捨てる?
衝撃的なタイトルですが、もちろん語弊がありまして、正確に言うと「正解までに何ステップも要する計算問題は後回しにする」ということです。
計算問題には二種類あるかと思います。一つは、公式を当てはめるだけで、一度の計算ですぐに計算できるものです。もう一つは、時に公式等を使いながら、何度も計算をしてやっと一つの答えにたどり着くものです。前者のようなタイプの計算問題は、もちろん正解すべきで後回しにする必要はないのですが、後者のような場合は真っ先に後回しにしてもよろしいかと思います。
その理由として、何ステップも計算する中でどこかでミスをするリスクも上昇しますし、partial creditを狙って途中式を書こうにもCBTでは数式や数値の入力がとても面倒で時間がかかるからです。そのため、答えだけ回答する、ということもありえますが、もちろんその数値が間違っていれば一点も貰えません。配点が同じであると仮定すれば、そのような面倒な計算問題に時間をかけて、一瞬で回答できるような問題を解く時間がなかった、というのは絶対に避けるべき、というのが私の考えです。
例えばですが、CIPM等で出題される生命保険の必要保障額の計算などは結構手間だと思います。表から必要な数値を漏れなく読み取って、discount rateをadujsted discout rateすることやannuity dueにすることを忘れずに計算し、total capital availableを正しく表から読み取って計算し、それを差し引いてやっと正解に辿りつきます。こうした問題では、どこか一つでも間違っていれば正答になりません。したがって、よほど時間が余っているわけでければこうした問題は後回しにして、一瞬で回答できる問題を優先するべきと考えています。
タイムマネジメントの重要性
ここは色々な人が指摘していることだと思いますが、CFA試験では試験中のタイムマネジメントがとても重要です。1セットにかけられる時間は12分として、それを超えたら自動的に次の問題に進む固い決意が必要となります。
上記のCFAIのホームページの記載の通り、試験問題は11セットのconstructed responseと11セットのmultiple choiceを、2時間12分の午前・午後で解くことになります。ですので、基本的には午前と午後に其々11セットを解くことになると思われますので、そうなると、1セットにかけられる時間は12分であり、1セットあたり3問含まれているであれば1問4分を充てられることになります。
私の場合、試験中は「スクリーン上に表示される残り時間で、いつまでこの問題を解くのに充てられるか」を書いていました。例えば、午前・午後の試験時間は2時間12分ですので、スクリーン上に最初は02:12:00と表示されているとすれば、最初の一問目を解くときは、計算用紙に「2:00:00」と書き込みます。「2:02:00」くらいに解き終われば、そこからさらに12分進めて、「1:50:00」と計算用紙に記載して、次の問題を解き続けてよい時刻の目安としました。また、「2:00:00」になっても最初の問題が解き終わらなかった場合には、解き続けたい誘惑を振り切って自動的に次の問題に進むようにしました。
一つの問題に沼ってしまうとどんどん時間が足りなくなり、精神衛生上もよくありません。私も経験していますが、一つの問題に時間を使い過ぎてしまい、他の問題に充てられる時間がなくなってくると焦ってしまって、問題に集中できなくなってしまうんですよね。時間が余ったら戻ってくればよいだけなので、【「1セット12分」を超えたら次の問題に移り、時間が余ればまた戻ってくればいい】という方針にすることで、絶対解ける問題を、時間が足りずに見ずに終わってしまった、ということを避けられます。
たくさん勉強を重ねていくと「この問題は解いてはいけない」というのが本能的にわかるようになりますが、私にとってその例の一つが上で紹介した「生命保険の必要補償額の計算」でした。「問題を見た瞬間に後回しにするかどうか判断できる」というスキルもタイムマネジメントの一環であり、Level 3ではとても重要になります。
学習総論
総学習時間
Level 3については学習時間を記録しており、Level 3に費やした総勉強時間は1,961時間でした。(2021年11月の試験に向けた勉強時間も含む、Level 3にかけた総勉強時間。)
Level 3については2021年3月から学習を開始し、リモートワークが進んでいたこともあり、平日は仕事が終わってから軽く仮眠してから3〜5時間くらいは勉強、週末は12〜14時間勉強を続けました。勉強時間も緻密にストップウォッチで計測します。また、Level 3に一度落ちたことが判明した2022年2月からすぐに勉強モードに切り替え、Level 3だけを見据えて、仕事以外の時間すべてをLevel 3に割り当てました。
おそらく、Level 3にこんなに時間をかけている、実にコスパの悪い暇人は私以外なかなかいないと思います。300時間以下の学習で受かられる方がいらっしゃいますが、本当にすごいと思います。私の場合、要領が悪くて効率が悪い代わりに、我慢強く勉強を続けられるGritだけはあるため、勉強時間だけは多いです。
また、ただ試験に受かるだけではなく、内容を真に咀嚼し、自分のものにするためにテキストに記載された内容一字一句に一切の妥協を許さず、日々無心で取り組み続けた、ということも勉強時間が多くなった原因ではあります。そのため、試験合格という目的だけに絞れば、もう少し勉強そのものを効率化出来た余地はあったかと感じております。
普段は、週末はTOEIC SWの勉強などで遊んでいたのですが、そうした遊びを一切封印しました。平日も、仕事が終わったら速やかに食事と風呂を1時間以内で済ませ、もちろんテレビも見ません。(しかし、テレビがあるとやはり見てしまうので、思い切ってテレビも捨てました。そうすると、勉強しかやることがなくなって自然と勉強することとなります。)CFA準備中は本業であったTOEIC SWも受験せず、ずっとLevel 3に専念しました。この結果、かなり量の学習時間を確保できることとなりました。
使用教材の選択
学習に多くの時間を投じることになる教材ですので、その選択は非常に重要かと思います。私の学習経験の範囲ではあるのですが、所感は以下の通りです。また、TACに関しては、利用者にインタビューしましたので、その情報もシェアさせて頂きます。
主な教材(SchweserNotes・CFAI公式テキスト)
インプットはSchweserNotes、アウトプットはCFAI公式テキストの章末問題やEXAMPLEを主軸に対策していました。インプットについても、時間が許す限り、CFAIの教材を貪り読んで行きました。また、CFAI公式テキストの章末問題で出題されているもののSchweserNotesでカバーしていないような論点もありますので、そこはCFAI公式教材を読みます。
私はLevel 2にも1回落ちているのですが、こうした取り組み方はそこでの反省をもとにしています。Level 2を受験した際は、Schweserのみに取り組んでおり、「Schweserにオーバーフィッティングし過ぎた」と感じています。いわば「Schweserの過学習状態」となっていました。Level 2を受けたときに感じたのですが、本試験の問題とSchweser mockの傾向の違いがすごく気になったんですよね。Level 2に落ちてからは、Level 2の問題演習では一切Schweserを使用せず、CFAI公式テキストの章末問題のみをやっていました。思い返すと、Level 1の試験を受けている途中にも、Schweserと試験問題は傾向が全然違う、と感じ、試験後に反省したことを覚えています。
よく考えてみれば、Schweserの問題を作成している方は誰なのでしょうか。おそらく、CFAのcharter holderなのかもしれませんが、その方は最近の受験生とは限らないと思います。そして、エッセイ以外は過去問が出ていない(しかも、2019年からはエッセイの過去問も公表されていない)ような状況も踏まえると、その方々は何を元に問題を作成しているのでしょうか。Schweserの問題が、CFAI公式テキストの章末問題やEXAMPLEを踏まえた類題であるならば取り組む価値はありますが、CFAI公式テキストのEXAMPLEと章末問題を3周以上取り組んだ私から見ても、少なくともSchweser mockの問題はCFAI公式テキストのEXAMPLEや章末問題を参考に作られているものはほとんどないように思えました。(つまり、Schweserのmock examの問題は、CFAの本試験の傾向からかけ離れた、Schwseser社の妄想である可能性も極めて高いです。)
ちなみに、私の勤める会社に新卒で入った人がいるのですが、その方はCFA Level 3にパスした状態で入社しました。(実務経験はないので、CFA charter holderにはなれていない、いわゆるcharter pendingの状態。)その人も、「Schweserはまとめテキストとしては優秀だが、問題演習はゴミ。」と言っていました。そして、この認識を、私も共有しています。
これらを踏まえ、Level 3でも、問題演習についてはCFAI公式テキストを主体的に使用しました。2021年11月の試験を受けた際は、9月くらいまでにCFAI公式テキストの章末問題を2周していたため、Schweser mockに取り組みました。しかし、2022年の9月の試験に向けては、Schweser mockは一切触らず、章末問題のみに取り組みました。
((注))しかし、今では色々と考えを改めています。Scheweserをすごく推されている方も多いと知り、Schweserは結構使える、と仰る方も多いようです。Schweserのみに取り組まれて余裕でLevel 3にパスされた方もいると聞きました。本当に、その回の問題セットの相性にもよるのだと思います。
CFAI mock exam
mock examは、もちろんCFAIが本番に似せて作ったと豪語している以上は取り組んだのですが、誤植が多く、かつ問題の解答根拠がやたらと細かい、変な問題が非常に多い印象です。例えば、これはあくまでも一例に過ぎませんが、オプション戦略でストラドルを作るときは、権利行使価格が同じプットとコールを組み合わせますが、なぜか権利行使価格の異なるオプションを組み合わせているというとんでもない誤植がありました。もちろん、CFAI candidate用の公式フォーラムも大荒れでした。
また、CFAI公式テキストで何も問題になっていない一文が解答根拠になっていたり、やたらと細かい情報もあります。そしておそらく問題毎に解答作成者も異なっており、解説の充実度にも大きく差があります。
加えて、問題によってはフォーマットも変です。通常、外部(candidates)に提供するものであれば、ある程度フォーマット(フォントや体裁等)が統一されていてもおかしくはないと思いますが、問題文の途中で急にフォントが変わったり、表の中に不必要な線があったり、つくりが粗雑である印象を受けました。もちろん、中身がしっかりしていれば全く私は気にしませんが、上述の通り誤植や変な問題も散見されたことにより、mockに対して「これ、大丈夫か?」という不信感が募っていたことは事実です。
mockについては2周取り組みましたが、果たして試験対策として有意な効果があったか、と言えば定かではありません。ただ、問題を解く過程で色々調べたり、思い出すきっかけになったり、全体的な実力を底上げするための勉強にはなりました。Schweserのmockを解くくらいなら、こちらをやった方がいいのでは?とは思います。ですので、mockも複数回取り組むことをお勧め致しますが、上述の通り変な問題も多数含みますので、出来が悪かったからといって一喜一憂する必要は全くありません。
CFAIホームページの問題
CFAIホームページにも大量の問題があるかと思いますが、私はこちらは一切利用しませんでした。個人的には、CFAI公式テキストの章末問題とEXAMPLEをやりこめば、受かると思います。本試験を2回受けた限りでは、そういう印象でした。
CFAIホームページの問題を避けた理由として、そもそもオンラインでないとアクセスできないのが使いづらいと思いました。私は普段iPadを用いて学習していましたが、自宅以外では必ずしもオンラインであるとは限らないので、オンラインを前提とした問題演習は個人的には使い勝手が悪かったです。
また、問題演習をする際は2周目以降や万が一落ちた時にもう一度同じ問題に取り組む場合に備えて、色々と印やメモをつけておきたいのですが、CFAIホームページの問題については、ホームページ上に記載したメモは、試験が終わってホームページへのアクセス権限がなくなると、全てデリートされるようです。これは正直かなり痛すぎるのですが、必ずしも直近のLevel 3で受かるとは限らないとすると、試験に落ちて再度candidateとして登録し、同じ問題を再度解きなおすときにそうしたメモが消えてしまうのは不便だと思います。もちろん、自分のノートに記載すればよいのですが、新たにcandidateとして登録し直した際、ホームページの問題が前と同じ問題であるかどうかは定かではありません。
そもそも疑問なのが、CFAIが出しているerrataの記載はCFAI公式テキストのみに関するものかと思いますので、CFAIホームページの問題に誤植があった場合はそれはどのように公表されるのですかね?(CFAIホームページの問題については、特段誤植があっても放置されていると認識しています。)CFAI公式テキストであれだけ誤植があるのにも関わらず、公式ホームページの問題には誤植が一切ないことは考えられないのですが、どうなのでしょうか。誤植が修正されないのであれば、なおさらそんな雑なものに時間をかけるのは勿体ないと感じていました。
もちろん、これは個人の印象ですので、全然違う印象を持たれた方もいらっしゃいます。ましてや、腐ってもCFAI公式教材なので、解いた方がいいかどうかで言えば、解いた方が良いに決まっています。あくまで、私のようにCFAIのホームページの問題を解かなくても受かった事例がある、という程度に含んでおいて頂ければと思います。
その他教材(IFT)
2021年11月の試験を準備したときは、IFTというPrep providerのmock3回分と、そのmockのエッセイ部分を添削して貰えるGrading Serviceも利用しました。
まず、IFTのmockは非常に良かったです。午前の問題については、過去問やCFAIの例題や章末問題をよく研究しており、その類題を多く含んでいました。Schweserと比べて、CFAIの公式教材に準拠した内容ということで、非常に評価は高いです。購入する価値はあると思います。ただ、mockのうちの一つが、過去問とほぼ同じだったので、そこは手抜きだと思います。
一方、Grading Serviceは最悪です。購入する価値は全くありません。1回の添削に15,000円くらいかかるのですが、添削内容はほとんど模範回答のコピペで、「なぜ、自分の書いたこの解答だといけないのか」ということが全く分からないことがほとんどでした。また、問題を解いた後に解答を見てもよくわからなかったので、それを踏まえて質問っぽいことを書いても、「Reading ●●を参照」などと書いてあるだけで、何も得られません。極めて不誠実な印象です。
添削の冒頭に、最大公約数的なアドバイス(「問に対してダイレクトに答えるようにせよ。」等)はありましたが、正直支払った価格に見合った価値は得られないと思います。
強いていうならば、これだけ高いフィーを払ったため、ちゃんと問題を解いてから提出しようと奮い立ったことで、時間をちゃんと取って記述を練習する良い機会にはなりました。それ以外、特段得られたものはありません。
番外編(TACの評判)
私はTACを利用していなかったのですが、TACを利用して合格された複数名の方からお話を伺いましたので、メリット・デメリットについてシェアさせて頂きます。なお、某日系トップティアのアセマネ会社では、TACの受講費用もすべて会社から補助されるらしいです。メリット
まず、TACはかなり良いようです。一つは、主要トピックを日本語で紹介してくれるため、まず一度日本語で理解してから、SchweserNotesを読んだり、CFAI公式テキストの問題演習を行ったりすると、その後の伸びや記憶の定着が格段に違う、とのことです。私がお話を伺った方は1~2年で合格されていたほぼ最短ルートの方々でしたが、TACのおかげで受かったとさえ仰っていました。
二つ目ですが、講師の方にメールで直接質問をできることもTACの優位性の一つのようです。TAC提供教材(Schweser教材含む)のみについて質問に回答してくれるようですが、わからないことがあればすぐに解決できるとのことでした。なお、当時は回数無制限で質問ができたようです。
三つ目は、TACの日本語テキストです。TACのサブテキストと呼ばれるテキストでは、Schweserの主要論点を要約して紹介しており、かつ日本語でまとまっているため、講義と組み合わせて理解するのにとても有用だったようです。特に、Level 3については、大野先生の著書ような本がなく日本語での解説教材がないこともありますので、こうしたメリットは付加価値が高いかと思います。デメリット
講義を行う講師は4名(おそらく、質問回答を行う講師は別にいる)のようですが、人によって当たり・外れがある、という声が共通して挙がっていました。特に、一人の講師が担当する授業については、TACを利用するメリットの一つである「日本語のサブテキスト」がかなり薄く、ほぼ英語しか書いていなくて極めて不誠実である、という声がありました。私も現物を少し見ましたが、9割ほどが英語でキーワードを書いてあるだけでかなり薄く、「何これ(笑)」と絶句しました。「日本語で主要論点を解説」という宣伝には語弊があると感じた覚えがあります(その講師の授業自体は分かりやすいそうです)。
また、TACへの質問ですが、CFAI公式テキストについては質問を受け付けないようです。たしかに、CFAI公式テキストの質問も受け付けた場合は回答負荷がとても高くなるので気持ちは分かりますが、CFAの学習はCFAI公式テキストでの演習が基本ですので、それについて質問が出来ないのは学習者としては不便だと思います。
そして、当時はTACへの質問は無制限だったようですが、今では100回に制限されているようです。会員数が増えたからなのか、とある生徒が質問しまくったからなのか定かではありませんが、真面目に学習すれば100件以上の質問は出てくると思いますので、これは痛手かと思います。
勉強方法
私の勉強方法は、大きくまとめると下記の三点となりました。
まず、SchweserNotesで軽く内容を把握(もしくは、CFAI公式テキストのEXAMPLEを真っ先に解きながら、該当箇所のみをSchweserNotesやCFAI公式テキストの本文で確認)して、なるべく早くCFAI公式テキストの章末問題を解く。2周目以降に繰り返すことを見据えて、わからなかったところや理解が難しいところ、そして汎用性の高い考え方などはノート等にメモしておく。
CFAI公式テキストのEXAMPLEと章末問題を3周する。
試験直前にCFAI公式テキストのEXAMPLEと章末問題を短期間(2週間程度)で1周する。
ここまでで述べてきた通り、やはり特にCFA Level 3の受験において重要なのは、CFAI公式テキストの章末問題 (EOCと言われることもあります) です。何よりもこれが大切で、必ず章末問題の論点を理解して、かつ自分で説明できるようになる必要があります。
1.に記載の通り、最初にSchweserNotes等を軽く読むのであって、最初から読み込みすぎない、ということは極めて重要かと思います。イメージとしては、最初から問題演習に入ってしまうのもありです。つまり、CFAI公式テキストの章末問題を解いていき、解説を読みながら適宜SchweserNotesやCFAI公式テキスト本文に戻って内容を拡充していく、という方法でも良いくらいです。SchweserNotesを一から丁寧に読んでも内容はすぐに忘れますし、何よりそれがどう試験で問われるのかというポイントを最初からは把握し切れません。CFAI公式教材で演習を重ねていくうちに、どこが試験で問われるポイントであったか、ということが初めて分かるものです。
繰り返しますが、やはり注意したいのが、とにかく早い段階でCFAI公式テキストの演習に入る、ということです。SchseserNotesを先に熟読しても、すぐに忘れるかと思いますので結構時間を無駄にします。試験1か月前から演習を始めるというのは、あまり得策ではないと思います。この意味で、上で書いたようにCFAI公式テキストのEXAMPLEをまず先に解きながら、該当箇所をSchweserNotesやCFAI公式テキストの本文で読んでいく、という形式もおすすめです。とにかくSchweserNotesや本文を初期の段階で読み込みすぎない、これを是非覚えておいて頂きたいと思います。
既に申し上げている通り、Level 3は「どのmockにも似ていない、異質な試験」という感じがします。ただ、対策ができないわけではなく、CFAI公式テキストの章末問題が何よりも大事で、そこで問われている考え方を自分で説明できて使えるようになれば、それを各設問の事例に合わせて適用していくだけかとも思いました。
例えば、Level 3のAsset Allocation (AA) で学ぶMonte Carlo simulation (MCS) ですが、CFAIの章末問題でも「MCSはMVOのSingle-period modelという欠点を補い、multi-periodにおけるリバランスに伴う投資売買によって発生するキャピタルロスやゲインの税金や、キャッシュフローを考慮できる」という論点が問われていました。あくまで本番の試験がどのようなものかをイメージして頂く例ですが、「あるウェルスマネージャーがいる。その顧客の一人はリスク許容度が低くcorridorが狭いため、リバランスが頻繁に起こる。この顧客の場合、どのようなAAアプローチを用いるべきか。」と本番で問われたとして、MCSを選択するべき理由を答えられるようになる、という対策が必要となります。
また、上述の通りSchweserのmock examは2021年11月試験の対策時には利用しておりましたが、後から振り返ると、Schweserのmockも、CFAI公式教材を補完する演習素材としては使えると思います。ですので、CFAI公式教材に取り組んだ後に時間があれば、Schweserのmockに取り掛かるのはアリかと考えています。ただ、やらなくともCFAIの章末問題が完璧にこなせれば問題はないと思います。事実、私は2022年9月の試験対策にはSchweserは利用しませんでした。(ちなみに、2022年9月試験では過去問も利用しませんでした。)
なお、CFAI公式教材の問題を解くときは、簡単に解けるような問題以外、学習効果が高かった問題に含まれる汎用性の高い考え方、難しい問題を解くための思考回路、分からなかった場合は「何が分からないのか」は、必ずメモをルーズリーフに書き留めて記録に残していました。私だけかもしれませんが、2周目に入ったとしても、1周目にやった内容は驚くほど忘れているんですよね。何も記録に残していないと、「何でこの問題はこういう考え方をするんだっけ?」とか、「何でこの問題は1周目で解けた/解けなかったんだっけ?」とか、思い出すのにまたすごい時間がかかるという経験がありました。ですので、2周目以降に演習することを前提として、1周目でどのようなことを考えていたのかについて記録を残すことで、2周目以降にスムーズに効果的に回せるよう1周目でノートにまとめるような学習の経済化を必ず行いました。ちなみに、これはLevel 2でも行っています。
CFAI公式テキストの全てのEXAMPLEについても、2周以上は解きました。しかし、CFAI公式テキストのEXAMPLEについては、試験のスコアアップに対して有意に寄与しそうなEXAMPLEと、ただの教養を深めるだけの作成者の自己満足のようにも見えるEXAMPLEの二種類があったように思えます。特に、やたらと問題文や解答が長いものは、後者の傾向があるように思えます。次の科目別の学習ポイントで、どの単元はEXAMPLEを解いた方が良いか、ということについても触れています。なお、CFAI公式テキストのEXAMLEは、Blue box (BB) と呼ばれていることもあります。
なお、CFAI公式テキストの章末問題は、カリキュラムに変更がなくとも拡充されていることがあります。例えば、2020-2021年度と2022年度でオルタナティブ投資の単元に変更はありませんでしたが、章末問題は大幅に拡充されました。これはかなりありがたいことでもあり、章末問題に取り組んでおけばかなりの論点を公式教材でカバーできることになり、合格に近づくと思います。これまでEXAMPLEでしかカバーされていなかった公式も章末問題でカバーされたケースもあり、より一層、CFAI公式テキストにおける章末問題の学習が大切になります。
学習のコツ・留意点
学習上の注意点 ~誤植の多さ~
私を含む多くの方々がCFAI公式教材を推していますが、一点注意があります。それは、誤植の多さです。
下記のPDFファイルをご覧下さい。上が2020年カリキュラム(2021年カリキュラムと同様)、下が2022年カリキュラムのerrataです。2020年については、errataが15ページの超大作となっております。2022のerrataについても、14頁の大作です。
2020 CFA Program: Level III Errata
2022 CFA Program: Level III Errata
これをご覧になって、如何でしょうか。どう感じられますでしょうか。控えめに言って相当やばいと私は思っています。candidatesの学習時間を侮っているとしか思えません。なぜ、サービスイン前にCFAIで再査をしないのでしょうか。CFAIで再査をするとものすごく人件費がかかるため、とりあえず世に出してしまって受験生に再査させてしまおう、という魂胆なのでしょうか。しかし、errataが発表される前に誤植で沼って、時間を無駄にした受験生には、どのようにしてCFAIは責任を取れるのでしょうか。もちろん、CFAIは知ったこっちゃないです。
また、私は定期的に、誤植と思われる点はCFAIの公式フォームから報告していましたが、数か月経って、試験が終わってから"Sorry"とか言いながら「間違ってました」などとへらへら返答をよこしてくるケースもあり、極めて不誠実です。絶対に許せません。
この誤植の多さは、私にとって最も憎むべきCFAプログラムに対する不満です。未来永劫、絶対に忘れませんし、許すことは一生ありません。
私はCFAIの教育理念に心から賛同して真面目にプログラムに取り組んでいたからこそ、CFAIを信頼して基本的には教科書の内容は正であるとして考えておりました。その中で誤植という見えない敵と戦って膨大な時間を要して調べたこともあり、時間を無駄にしました。また、解答が理解できない問題やその解説があっても「これも誤植なのではないか?」という発想になってしまい、学習の深刻な妨げになりました。そもそも、誤植があることを前提に学習を進めることは、その単元を初めて学ぶような初学者にとっては不可能です。誤植をはなから指摘できるのであれば、その人は既に初学者の域を脱してます。
何度でも繰り返しますが、CFAカリキュラムの誤植の多さは絶対に許せません。今でも当時の経験や苦悩を思い返すだけではらわたが煮えくり返り、悔しさとやるせなさに歯ぎしりしながら怒りで身が震えます。
私も、最初はあまりerrataの存在を意識せずCFAI公式教材に取り組んでしまっていたのですが、解答が合わなかったり、解答に書いてある内容が意味不明だったりすることがありました。そういう場合、だいたいerrataを見れば解決します。これを繰り返すうちに、段々とerrataを必ず座右の書として置きながら、CFAI公式教材を利用するようになりました。
まとめますと、CFAI公式教材を利用するときは必ず最新のerrataを確認しながら取り組んで下さい。私は、毎朝errataが更新されていないか必ずチェックすることが習慣になっていました。
Relevant Listを用いた過去問の活用
最後に、過去問の活用方法です。過去問はエッセイパートのみの本試験問題であり、2019年度以降は公開されなくなりました。ですので、2018年度までの過去問しか存在していません。そして、試験難易度の感想でも申し上げた通り、本試験と過去問は全く別試験のようになってしまったと私は感じました。そのため、私は2022年9月の試験対策には過去問を利用しませんでした。この意味で、過去問による演習がどれくらい有用かは私には分かりませんが、数少ない公式教材を用いた演習素材としては、過去問は受験者に有益な機会を与えてくれる可能性はあります。
さて、過去問の活用方法ですが、過去問を活用していく上でIFTの"Relevance List"は非常に役立ちます。現状のカリキュラムと照らし合わせて、過去問のどの問題が、今のカリキュラムに沿った問題なのかを示しています。下記のリンクから、無料で手に入りますので是非入手されてみて下さい。
Level III Past Essay Exam Relevance Document for 2022 Exam
(注)本原稿を執筆時点では上記リンクは有効ですが、上記のリンクは2022年カリキュラム用のものです。新しいドキュメントがアップロードされる場合、IFTのホームページに行けば最新のカリキュラムに対応したものが公開されているはずです。
ただし、一点注意が必要です。このRelevance List、嘘を付いていることがあります。つまり、RelevantなのにIrrelevantとしていることが多々あります。例えば、2018年の大問2(Economics)ですが、2020年カリキュラム用のRelevance Listでは、Irelevantとなっていました。2018年の大問2は、EconomicsのS-T approachやG-K modelを含んでいましたが、Irelevant (No) となっておりました。上記リンクの2022年カリキュラム版では慌ててそれが修正されており、partially relevantとなっているようですが、2021年にダウンロードした私の手元のPDFでは、たしかにIrelevantとなっています。他にもたくさんありまして、2017年の大問8(Asset Allocation)では、Monte Carlo Simulationのメリットが問われていたにも関わらず、Irelevant (No) となっておりました。こちらも、上記リンクでは慌てて訂正されているようです。
更に言えば、2017年の大問2(Institutional PM)がIrelevantとなっています。問題の中身としては、"high/low ability to take risk"の要素を説明させる問題でした。これは、現状のInstitutonal Investorsのトピックの内容と同じです。これをそのままIrelevantとしてしまうのはミスリーディングだと思います。
したがって、IFTの"Relevant List"は必ずしも正しいとは限らないことを念頭に置きつつ、大いに参考になる資料として有効活用する価値があります。
学習に役立ったマストバイアイテム5選
CFAの学習は5年近くやってきましたが、ここでは、学習経験の中でとても役に立ったと思えるマストバイアイテムを5つに厳選して紹介したいと思います。
Level 1の学習時から使っていたものはほとんどないのですが、学習を進めていく中で自分なりに改良を重ねていき、最終的に行き着いたアイテムです。最初から買っておけばよかったと思えるものばかりで、メリットを是非とも共有したいと思います。
(1)iPad・GoodNotes
まずは、何と言ってもiPadです。個人的には、iPadと関連アプリの活用がCFA合格に最も寄与したと感じています。
メリット① Split Viewによる効率性
CFA合格の学習において鍵を握るのはCFAI公式テキストであると繰り返しお伝えしていますが、紙の本だと問題演習をしているときに問題と解説を往復するのが非常に面倒です。特に難解な内容だと問題を横目に見ながら解説を確認したいケースや、読んでいる解説がどこの問題文を指しているのかを逐一入念に比較したいことが多くあります。そのようなとき、iPadであれば、Split Viewという方法で画面を2分割して2つのアプリを同時表示・操作することができますので、左側に問題、右側に解答・解説と表示させることができます。これがとても便利だと感じており、いちいち問題⇔解説の往復にページを跨ぐ必要がないので学習の効率が大きく上昇しました。
※なお、入手可能な電子ファイル形式ですが、CFAI公式テキストはPDF形式・EPUB形式の両方、CFAI mockはPDF形式のみがあります。
また、GoodNotesというデジタルノートアプリがあるのですが、こちらは読み込んだPDFファイル等にApple Pencilを用いて自由に書き込みが出来たり、CFAI公式テキスト等の該当箇所の図をスクショして貼り付けたりすることが出来たり等、便利に加工できます。私の場合、CFAI mockは解説に書き込みを自由度高く行いたかったので、CFAI mock(PDFファイル)をGoodNotesに読み込んで、それを加工していました。Split Viewの左側に問題、右側に解答・解説とすれば、かなり効率良く学習できます。
なお、Split Viewについてですが、「2つのアプリを左右に表示する」という佇まいになりますので、CFAI公式テキストを解く際は、iPadに最初からインストールされている「ブック」というアプリと、「Bookshelf」というアプリを左右に表示させておりました。それぞれのアプリにEPUB形式のCFAI公式テキストを読み込ませ、左右でそれぞれのアプリをSplit Viewで表示した、ということです。一方、GoodNotesについては、同じアプリでSplit Viewにできます。メリット② 検索機能
CFAI公式テキストの量は膨大ですので、問題演習をしていると「解説はこんなこと言っているが、そんな内容はどこかに説明されていたっけ?」などと疑問に思うことが度々あります。そうした中、紙のテキストの中から該当するワードを探すのは非常に手間がかかります。索引を見ても、欲しいワードが出てこないことも多々あります。これを踏まえると、電子ファイルであれば単語やフレーズの検索ができますので、CFAI公式教材の解説を読んでもしっくりこないような内容について、該当箇所をCFAI公式テキストの中からすぐに見つけ出すことが出来ます。
例えばですが、CFAI mockはかなりマニアックな問題(CFAI公式テキストで問題演習にすらなっておらず、本文中に一行記載があるのみの内容が解答根拠になっている等)が掲載されていることがあるのですが、(こうした問題に真面目に向き合うかどうかは別として)それがCFAI公式テキストのどこの内容を指しているかを即座に発見できることは、とても便利でした。メリット③ 持ち運びのしやすさ
CFAI公式テキストは非常に大きくて分厚く、そして重いです。紙のテキストですと、カフェや電車の移動時間での勉強等、屋外での学習には必ずしも適しているとは言えません。例えば、会社帰りにカフェに寄ることを想像すると、複数科目勉強する場合は複数の本を持ち運ばなければいけませんが、かなり重くなります。また、カフェなどの限られたスペースだとCFAI公式テキストを一冊広げるだけでも自分のスペースがいっぱいになります。
私の場合、iPadを2台持ち運んでいましたが、1台は教科書の表示、もう1台は計算用紙として利用しており、2台だけで何のストレスもなく、カフェなどどのような場所でも、すぐに勉強することが出来ました。
なお、個人的におすすめなのはiPad Pro 12.9インチです。12.9インチないと小さすぎて、Split Viewのメリットが存分に活かせないと感じています。申し上げた通り、私はiPadを2台使っており、片方のiPadはSplit Viewで問題+解説を表示させ、もう1台のiPadはGoodNotesを利用して計算用紙として利用していました。これは非常に便利で、2台さえあればiPadに格納されたCFAI公式テキストでいくらでも勉強できました。
(2)ストップウォッチ
私はストップウォッチで勉強時間を計測しており、毎日それを記録していました。どのようなストップウォッチでもいいのですが、勉強時間を計測するということが私には有効でした。もちろん、休憩するときや少し席を離れるときはこまめにストップウォッチを止め、集中して机に向かっている時間を厳密に計測します。
ただ、これは賛否が分かれるところであり、勉強時間を計測する、ということについては様々な意見があろうかと思います。例えば、「勉強時間を測ると、学習する中身ではなく勉強時間を増やすことに注力してしまいがちになる」、「何時間勉強したかではなく、どれだけ習得したかの方が重要である」、「実質的な進捗に関わらず、勉強時間の名目数値を見て満足してしまう」という考えもあろうかと思います。
仰る通りであり、様々な意見があるためそれらを否定するつもりはないのですが、私なりの考えは以下の通りでして、想いを語ります。
まず、「勉強時間を測ると、学習する中身ではなく勉強時間を増やすことに注力してしまいがちになる」という考えですが、果たしてCFAを自ら進んで受験しようという人に、こういう無意味なことをする人がいるでしょうか。もちろん、机の前で何もせずにストップウォッチだけ起動させていれば表示された時間だけは進みますが、そうした結果を見て「今日はすごく勉強できた!」と悦に浸る人はCFA candidateには少ないと思います。そして、そんなことをやっても合格には一歩も近づいていないことは自分が一番よくわかっています。
また、「何時間勉強したかではなく、どれだけ習得したかの方が重要である」という考えですが、これは仰る通りかと思います。一方で、一定の習得には一定の勉強時間の確保は必要であり、勉強時間を明確に記録しておくことで、参考指標となる一般的な勉強時間とのギャップを測ることが出来ることはメリットです。これにより、必要に応じて勉強方針の軌道修正をすることが出来ます。例えば、Level 3で既に300時間勉強しているのにも関わらずCMEとAAしか終わっていなければ、明らかに「特定の単元に時間をかけすぎている」というパターンであり、早急な軌道修正が必要であることがわかります。加えて、「試験1か月前だがまだ50時間しか勉強できていない」ということであれば、それは一般的な学習時間からは大きく劣後しているかもしれません。相当の前提知識等がないような方以外であれば、合格は難しいかと思います。つまり、勉強時間を記録しておけば、こうした状況に陥る前の軌道修正が可能ですし、「勉強した気になっていた」ということを防ぐことが出来ます。
私の場合、休日に10時間くらい勉強したものの、CMEのEXAMPLE数問しか進んでいなかった、ということがありました。もちろんこれは合格という意味では効率が良いとは言えず、時間の使い方の反省につながりました。
最後に、「実質的な進捗に関わらず、勉強時間の名目数値を見て満足してしまう」という考えですが、勉強時間を厳密に計測すれば、その「実質的な進捗」もコントロールできるかと思います。時間を測れば、上述の例の通り「特定の単元に時間をかけすぎている」ということがあっても、以後それを軽減するように努めることができますので、「これだけ時間をかけて考えてもこの問題はよくわからなかったから、ここはパターンとして割り切って覚えて次に進もう。これが合格には近づくだろう。」と整理するなどして、進捗をコントロールし、時間のかけすぎ問題に対処できます。
こうしたメリットに鑑みて、やはり勉強時間をストップウォッチで計測し、記録することは私にとっては有効でした。ストップウォッチが作動している時間は必ず集中することをルールとして、厳密に集中出来ている時間を計測しました。
なお、「ストップウォッチで計測しても、スマホ等を触ってしまうので集中できてない時間もあるのでは?」という声もあったのですが、これは次で紹介する「タイムロッキングコンテナ」を利用して、これは対処可能です。
(3)タイムロッキングコンテナ
このタイムロッキングコンテナはCFA Level 3の学習時から使い始めたのですが、もっと早くから買っておくべきだったと感じました。これは、指定した時間まではロックがかかって何が何でも開かない、というケースです。つまり、勉強時間中はスマホをここに入れておくことで、勉強時間中にスマホをいじってしまうということはなくなります。
私の場合、家で勉強するときは、スマホを触ってしまう癖がよくありました。ですので、4時間~5時間毎に設定したタイムロッキングコンテナにスマホを入れ、定期的にスマホをチェックするサイクルにしつつ、勉強に集中できる時間を確保するようにしました。なかなか家だと勉強が続かないという方もいらっしゃるかと思いますが、そういう方こそにこのタイムロッキングコンテナをおすすめします。
これはメンタリストDaiGo氏の本『自分を操る超集中力』に書かれていた面白い実験ですので、紹介させて頂きます。ある心理学者が、日給10万円の報酬が与えられる代わりに、何もない部屋で何もしない実験を行ったようです。この実験では、被験者に三食は与えられ、外部から何かを持ち込むことは一切禁止でしたが、それ以外は寝たりボーッとしたり、何をしてもよい、ということでした。最初は、「こんな簡単なことで10万円も貰えるのか?」ということで、たくさんの被験者が集まったようなのですが、1日居続けられた被験者はごく少数で、3日間持った被験者はゼロだったのです。リタイアした被験者は「何もしないということに耐えられない」とのことだったらしいです。
これからわかることは、人間は暇がとても嫌いである、ということです。それを逆手にとれば、集中したい対象(勉強)しかない環境を作れば、それしかやることがないので暇を避けるために自動的にそれに集中することになります。そのため、勉強道具しかない部屋という環境づくりはとても重要で、部屋に勉強道具しかなくて勉強しかすることがなくなれば、人間は暇を嫌うため、自動的にそれ(=勉強)に意識が向かっていくのが人間の性なのです。
冒頭にも申し上げたのですが、私はテレビを捨てました。これは、そうした人間の性を利用した工夫であり、CFA Level 3の勉強に関係ないものは少しでも減らそう、という覚悟でもあります。部屋にCFA Level 3の教材しか存在しなければ、それしかやることがないので、嫌でも勉強するようになるのです。その意味で、スマホなどをこのタイムロッキングコンテナに入れることは、やはり「集中したい対象のみが存在する環境づくり」に大きく資するものと結論しています。
なお、「集中したい対象(勉強)しかない環境」という意味では、カフェや自習室で勉強するのもありかと思います。屋外であれば、自宅のようにPC等もありませんので、本当に勉強するしかやることがなく、自動的に集中できます。まさに暇を恐れるという人間の本質を利用した勉強方法だと思います。私はよくスターバックスで勉強していましたが、個人的には集中できました。また、カフェで勉強するときにスマホを触ってしまうという方は、以下のようにスマホ用のタイムロッキングコンテナもありますので、これであれば持ち運び可能かと思います(私は使ったことはありません)。
(4)ブッククリップ
これは単なるブッククリップなのですが、本を傷つけることがなく、かつ挟み込む力が強いため非常に便利です。
基本的には電子書籍を用いて勉強をするのですが、どうしても紙媒体でしか手に入らない書籍もありますので、そういう場合は紙の本を利用します。紙の本を利用する場合、ある特定のページをずっと開いた状態にしたくても、背表紙の力が強くて閉じてしまうことも多々ありますので、そういうときにこのクリップが便利でした。
ホールドする力は強いですが、挟み込むところがフェルト生地になっており本を傷つけることもありません。とても便利な商品です。
(5)フリクション
最後におすすめしたいのは、フリクションです。紙の本に何かを追記したり、ノートにまとめたりする際はフリクションを用いていました。本に書き込みをしようとした際、ボールペンですと間違えたときに修正できませんので書き込みに躊躇しがちでしたが、フリクションであれば訂正可能ですので、躊躇なく書き込みできます。
また、これはフリクションそのものとは直接的に関係はありませんが、フリクションで何かを記載する際、基本的なベースとなる色は黒色ではなく、青色で統一していました。これもメンタリストDaiGo氏の本『自分を操る超集中力』に書かれていたことですが、「水色は学習に適した色」のようです。色が心に与える影響は、色彩心理学においても実証されており、赤色は闘争心を掻き立て、黄色は注意力を喚起し、緑色にはリラックス効果があります。そして、水色は副交感神経を刺激し、精神を落ち着かせて集中力を高める効果があるようなので、こうした色彩の副作用を利用しない手はありません。実際に、早稲田塾の創設者である相川氏の書籍でも紹介されている「青ペン書きなぐり勉強法」があるように、青色の効果を学習に活かしたような勉強法もあるくらいです。
以上、マストバイアイテムと申し上げましたが、もちろん何がマストかは人によって異なります。全てのcandidateにとってマストかと言えばそうではないかと思いますので、これは使えそう、というアイテムがありましたら、ぜひ参考にしてみて下さい。
学習に役立ったウェブサイト5選
ここでは、学習に役に立ったと思われるウェブサイトを5つ紹介したいと思います。
(1)TAC
CFA®|資格の学校TAC[タック] (tac-school.co.jp)
こちらは、TACのCFA講座のページですが、CFA試験に関する最新の情報が日本語でよくまとまっています。私はTACの講座を受講しておりませんでしたが、講座を受講する・しないに関わらず価値のある情報が結構掲載されています。
例えば、2023年の3月にCFAIがCFA試験制度の大幅な変更をアナウンスしました。その内容についても、こちらで重要なポイントがまとめられており、初期的な理解として役に立ちます。
また、ウェブサイト上のパンフレットを無料でダウンロードすれば、試験の申込に関するロジや、CFA試験に関する全体像について日本語でわかりやく解説されています。さらに、ウェブサイト上には無料のガイダンス講座のようなものもあります。特に初めてそのレベルを学習される方は、導入として有意義な情報が掲載されていることが多く、是非参考にして頂くとよいかと思います。
(2)CFA学習Tips
CFA学習/勉強法 (米国証券アナリスト)|日本語で学べる日本唯一のCFA学習サイト/合格ノウハウ/勉強法が詰まっています! (triumphmind.com)
CFA試験の日本語情報はそもそも少ないのですが、このサイトはCFA試験に関する基本的なマインドセットから試験の基本情報、そして勉強法や体験談にわたるまで価値的な情報が幅広く掲載されています。さらに、CFAに絡むキャリアパスまで紹介されており、日本人向けのこうしたサイトは貴重で、他にないかと思います。私がLevel 2のcandidateになる頃にこのサイトを見つけたような覚えがありますが、日本語でこうした情報を提供してくれるサイトの存在は、大変心強かったと感じています。
特に体験談については私もよく参考にしました。そこでも、やはり「Level 3はCFAI公式テキストの章末問題が重要である」ということをある方が仰っておられました。私もそうした重要な情報に事前にアクセスすることが出来たのは本当に有難かったと感じています。
(3)300Hours
Learn How To Pass CFA Exams Better With Us (300hours.com)
これは海外のウェブサイトで、複数のCFAチャーターホルダーが運営しています。そして、他にはない情報を提供している有意義なサイトでもあります。
例えば、カリキュラムの変更についても表形式でわかりやすく一覧化してくれており、もちろんそうした情報も有益なのですが、なんといってもこのサイトの醍醐味はMPS (Minimum Passing Score) の提供です。MPSは合格するのに最低限必要な得点率のことで、公式には公開されていないものの、公式に公開されている合格率と、failしたcandidateが結果発表のときに受け取るgranular reportから逆算して導き出した数値です。
例えば、直近(2023年6月時点)におけるLevel 3のMPSの変遷は以下の通りであり、「だいたい何割くらい得点すれば合格できるのか」ということが分かります。2012年~2023年では、MPSは55%-62%で推移しており、10年の平均は58.7%のようです。
こうした情報は他では公開されていませんので、300Hoursは非常に価値のある情報を提供しているウェブサイトと言えると思います。今後も要チェックです。
(4)IFT
IFTは上でも紹介したPrep Providerですが、このサイトはそのYouTubeチャンネルです。数か月に一回というペースですが、動画が更新されており、結構ためになるような動画があります。例えば、Level 3のConstructed Responseに関する試験対策の動画は有用で、留意するべきコツ(時間配分、記載分量等)について解説されています。他にも、カリキュラムの変更に関する説明や、「試験X日前にやること」等、candidateであれば確認しておくべき内容が多く含まれています。また、CFAとは関係ないものの、直近のマーケットに関する解説動画もあり、勉強にはなります。
なお、動画の英語は若干訛りが強いのですが、聞き取れないレベルでは全くないので心配ありません。
また、以下はIFTのウェブサイトのブログです。こちらも、1か月に1度ほど更新されていますが、価値のある情報が非常に多いです。
Official Blog of IFT | IFT World
例えば、こちらの記事では、以下のように2023年と2024年のLevel 3のカリキュラム変更についてわかりやすく詳説されています。定期的にチェックして、最新のCFA試験の動向をチェックすると良いでしょう。
(5)Mark Meldrum
こちらも、Mark MeldrumというPrep ProviderのYouTubeチャンネルです。最近はマーケットに関する動画がメインなのですが、昔はもっとCFA関連の動画をアップロードしていました。今では、CFAの結果発表の時期に合わせてCFA関連の動画をアップロードしていることが多く、各レベルに受かった人はその次にどのような勉強をするのか、また落ちた人は何が悪かったのか、といったことを詳しく解説しています。特に、Level 3で落ちる人の共通する特徴(上でも書いたような、Constructed Responseにおける「書きすぎ問題」等)も言及しており、有益な情報が多いです。
学習各論(2022年度版カリキュラムの科目別の感想や学習ポイント等)
2020年カリキュラムと2021年カリキュラムは同一であり、2022年カリキュラムは、2021年から若干のアップデートがありました。私が各リーディングについて詳細に内容を記述することに付加価値はなく、それはPrep ProviderやCFAI公式教材に譲るとして、感想、ポイントとなると個人的に思ったところや、最後まで分からなかった部分について、記念に残しておこうかと思います。
ここでは、CFAI公式テキストの章末問題にに取り組むことは当たり前として、EXAMPLEなどのCFAI公式テキストの本文の中にあるblue boxの問題(EXAMPLEやIN-TEXT QUESTION)に取り組む価値については、★の数で表すことにしました(★が多いほど取り組む価値が高いことを示す)。やはりLevel 3の合格にはCFAI公式テキストでの学習が大切であるとよく言われていましたので、もちろん私もLevel 3は公式テキストを中心に学習しておりました。しかし、公式テキストを用いて学習していた際、「このリーディングのEXAMPLEってなんかやたら長いけど、これって学習効果高いのか?本当にそのままやっていて試験に受かるのか?」と疑心暗鬼になったことも多々あります。こうした苦い経験も踏まえ、実際にLevel 3をCBTで2回受けた経験をもとに公式テキストのEXAMPLEの有用性についてもその印象を語ることにしました。
なお、他の諸先輩方が「Level 3は不完全な試験」と仰っていますが、本当にその通りかと思います。CFAIは"overhaul"と表現していますが、ここ数年でLevel 3は頻繁にカリキュラムがアップデートされてきています。したがって、このnoteに書いたものはあくまで、2022年のCFAカリキュラムの内容に基づく感想ですので、ご注意下さい。
Ethical and Professional Standards (EPS) ☆☆☆
7つのカテゴリーに分類される職業行為基準 (Standards of Professional Conduct) とLevel 3特有のAsset Manager Code of Professional Conduct (AMC)、そしてGIPSを学びます。
まず、「Reading 31: Code of Ethics and Standards of Professionla Conduct」や「Reading 32: Guidance for Standards I-VII」、「Reading 33: Application of the Code and Standards: Level III」です。Code of EthicsとStandars of Professional Conduct(つまり、Code&Standards)はLevel 1から学習してきた部分でもあり、貯金はあると思いますので、新しい学習内容はありません。前もって取り組みすぎると忘れますので、試験1ヶ月前くらいからC&Sは取り組んでも良いと思います(徐々に思い出していく)。また、CFAI公式テキストにおいても、C&Sの一つのリーディングの章末問題は、Level 2のときのものとほぼ一緒でした。(Level 2の章末問題の方が、量が多い。)つまり、Level 2までの貯金がそのまま活きる分野です。三つあるリーディングのうち、最初の二つはこれまで学習してきたStandard I(A)~VII(B)に関する個別の一問一答、三つ目は それらを複合的に組み合わせたケーススタディでした。ちなみに、ケーススタディのリーディングのCFAI章末問題は、非常に難易度が高かったように感じています。
続いて、「Reading 34: Asset Manager Code of Professionla
Conduct」です。"The Asset Manager Code (AMC) is global, voluntary, and applies to investment management firms."という定義の通り、"drafted specifically for firms"です。基本的にはC&Sと似ている内容なのですが、C&Sにはない項目もあります。例えば、C&S構成項目の一つである"Risk Management, Compliance, and Support"における「BCPを整備せよ」という項目は、C&Sにはありません。こうしたC&Sとは異なる部分に注意を払いながら学習をしていきます。なお、AMCは、かなり細かいところまで覚えておいた方がいいです。CFAI公式テキストは問題数が少ないので、場合によってはSchweserNotesの問題も活用するなどして、演習量を確保することをお勧めいたします。
次のリーディングは、「Reading 35: Overview of the Global Investment Performance Standards」ということで、GIPSです。GIPSについては、2022年度版のカリキュラムで大幅に改定された単元の一つです。改定されたというよりは、2020-2021年度のCFAカリキュラムは2010版のGIPSに準拠していましたが、2022年度のCFAカリキュラムは2020年度版のGIPSに準拠しました。2021年度のカリキュラム(つまり2010年度GIPS準拠)ではかなり細かいところまで覚える必要があり(試験に出題されるかは別)、かなり面倒でした。しかし、2020年度版のGIPSに準拠した2022年度のCFAカリキュラムでは、より範囲が狭くなって取り組みやすかったように思えます。例えば、2021年度のカリキュラムにはあった不動産やPE、カーブアウト、ラップフィーの論点は出題されなくなりました。
GIPSで特に重要なのは、細かい定性的な暗記事項に加えて、計算問題です。ポートフォリオのリターンの計算方法としてTWRR(時間加重収益率)がまずあり、しかしこれはCFを考慮していないため、より正確なModified Dietz method(修正ディーツ法)によるリターン計算を学びます。リターン計算を学んだら、各ポートフォリオの集合であるコンポジットのリターンを計算することになりますが、これには3種類の方法があります。ですので、最低5種類のリターンやコンポジットリターンの計算方法があるため、これらは必ず解けるようになる必要があります。なお、CFAI公式テキストの章末問題には全手法が網羅されているので、学習効果が高いです。
なお、AMCやGIPSについては、そもそもEXAMPLEのような問題は本文中にありません。C&S関連についてですが、CFAI公式テキストのEXAMPLEはとにかく量が多く、時間だけがかかるため取り組む価値はあまりないと思います。量が多すぎであり辞書的に使うものであり、すべてに取り組むのは逆に非効率です。特に理解が追い付いていないC&Sがあれば、それに関するEXAMPLEの問題を辞書的に参照することは有効です。原則的には、章末問題を用いて学習をすることで十分です。
ちなみに、EthicsやGIPSについては、2012年〜2018年の過去問では、Constructed Responseの問題はなかったと認識しております。Schweserのmock examには、万が一に備えてEthicsのCR問題がありましたが、基本的にはMultiple Choice形式の問題で出題されるのだろうと予想しています。
Behavioral Finance (BF) ★★★
行動ファイナンスですが、2012年以降はreadingに主な変更はないと思います。ですので、2012年くらいからの過去問にあたっておき、出題されたバイアスについて過去問演習・解説熟読を通じて詳細に学習しておくことは有意義です。今では行動ファイナンスはLevel 1のPortfolio Managementの単元においても出題されているようで、CFAIは行動ファイナンスを重要視しているように思えます。
そして、Level 3ではEXAMPLEは数が少ないのですが、中には良問があり、バイアスについて中身をちゃんと理解させてくれる問題もありました。例えば、私はrepresentative biasは何を言いたいのかよくわからなかったのですが、EXAMPLEでは、base-rateとsample-sizeのneglectに分けてrepresentative biasについて考える機会を与えてくれました。理解を深めるきっかけになったと思います。
なお、行動ファイナンスの単元については、2022年度では最初のoverviewの単元が削除され、prospect theoryや価値関数や確率加重関数のコンセプトの紹介もなくなり、より個々人のバイアスやそれの投資行動に与える影響に絞られた形となっています。リーディングは「Reading 1: The Behavioral Biases of Individuals」と「Reading 2: Behavioral Finance and Investment Processes」の二つです。具体的には、一つ目のリーディングで、合計15つのバイアスを9つのcognitive errorと6つのemotional biasに分けて学んでいきます。そして、二つ目のリーディングで、Pompian Modelによって、投資家のタイプを四分類で分析します。この四分類において15個のバイアスのうちどれが当てはまるのか、という観点での検討になりますので、やはり最初の15個のバイアスについては熟知しておく必要があります。
そして、CBTでは問われ方が独特に感じました。お伝えできないことが心苦しいのですが、私が言えることは15個のバイアスについて①意味②影響③軽減策の三点セットをしっかりと抑え、理解した上で丸暗記していくことの重要性です。これができればどのような問題の問われ方をしても対応できるかとは思います。
ちなみに、Schweserを使われている方向けにお伝えすると、SchweserのQuickSheetにはBFの内容がすごく簡潔によくまとまってはいます。上記の三点セットでいうと、①は簡単にまとまっていてアウトプットしやすいです。しかし、このQuickSheetの内容だけ何となく俯瞰した気になっても、②影響③軽減策はカバーされておらず問題は全く解けるようにはなっていないため、ご注意下さい。
BFについては、CFAI公式テキストのEXAMPLEの数が少なく、網羅性もなかったため、EXAMPLE全体としての有用性は正直なところ判定不能でした。ただ、網羅性はないものの、Representative biasを理解させるEXAMPLEは良問であり、やって損は全くなく、ただ長いだけの自己満足的な問題ではありませんでしたので、★★★と致しました。
なお、ここまで言ってあれなのですが、2024年版のLevel 3カリキュラムからは、BFは完全になくなるようです。以下のIFTのブログの内容によると、BFの単元は丸ごと"Dropped"となっています。個人的にはBFは非常に面白い単元ではありましたが、BF自体はLevel 1でも出題される範囲ですし、今後はそちらに譲るということなのでしょう。
2024 Level III CFA Program Changes | IFT World
Capital Market Expectation (CME) ★☆☆
この単元では、経済ファンダメンタルズの性質やその変化が、投資判断にどのような影響を与えるのかを学ぶトピックです。定性的なトピックを多く含み、非常に難しいと感じたセッションです。PWMと並び、一番難しいトピックではないかと思います。一方、出題ウェイトはそこまで高くないため、学習量と本番での得点がリンクしづらく、学習中に沼ったときに「このまま深追いして時間をかけていいのか。もっと他の単元を勉強すべきではないか。」、と焦る単元でもあります。
特に、CFAI公式テキストのEXAMPLEの内容は非常に冗長で難解なものが多く、まじめにすべて理解しようとすると膨大な時間がかかります。おそらく、学者のような方が書いているという印象を受けました。一方、章末問題についてはポイントが絞られていたため、試験の点数アップには有効に寄与します。そのため、CMEについては、CFAI公式テキストのEXAMPLEをあまり深追いしない方がむしろ試験合格に近づくと思います。(当たり前ですが、EXAMPLEは深追いしなくとも、CFAI公式教材の章末問題は必須であることには変わりありません。)
リーディングは二つあり、「Reading 3: Capital Market Expectations, Part I: Framework and Macro Consideartions」と「Reading 4: Capital Market Expectations, Part II: Forecasting Asset Class Returns」です。一般的なマクロ経済の教科書でも財市場→資産市場→労働市場と続き、最後の方で海外(輸出入や国際資本移動)を分析対象にしますが、Level 3のCMEでもマクロ経済の海外部分も含めたの内容の理解が求められます。そのため、Level 2でも出題されていたような国際資本移動(財市場・資産市場・国際収支の同時分析であるマンデル=フレミングモデル)もまた登場します。つまり、出題比率が低い割には各々理解すべき内容はかなり重く、コスパが悪い単元とも言えます。
最初のリーディングでは、資本市場・経済を予測するにあたってのアプローチ、留意点、そしてその限界について学びます(「留意点」の中には、BFで学んだような心理的なバイアスも含まれています)。また、各景気サイクルにおける特徴、金融・財政政策、そしてそれぞれがイールドカーブに及ぼす影響についてより詳細に学びます。その他、国際収支の恒等式(マクロバランスの式) EX - IM = (S - I) + (T - G)(S=民間貯蓄;T-G=政府貯蓄;投資=I;輸出=EX;輸入=IM)の理解を問う問題もあり、この理解を踏まえた定性的な問題も頻出ですので、重要です。
例えば、「経常収支が赤字の場合、要求収益率はどうなるか。」という問題があれば、「経常収支が赤字ということは、マクロバランスの式における国内純貯蓄(国内貯蓄-国内投資=(S + T - G) - I)がマイナスであるということを意味する。これは国内の資金市場が資金不足であることを意味するため、国内金利が上昇する。そのため、要求収益率も上昇する。」といった類です。細かくISバランス式を使いこなすような問題が散見されます。
経済予測アプローチのメリット・デメリットなどについては、各々に一定の納得感がありましたのでただ覚えればよいだけでした。しかし、景気循環について、CFAIはこれを5つのフェーズに分類していますが、現実問題では各フェーズで必ずしも教科書に書いてあるような状況にはならないのでは?と思える部分などもあり、CFAIが提示する通りに覚えること自体が非常に困難な部分もあった印象です。
ちなみに、こうした景気循環について、金利との兼ね合いで非常にわかりやすく説明しているのが以下の本です。第3章の「景気サイクルと金利の関係」が主に関係するところですが、これを読んだ上でCFAIのこのトピックに向き合うと理解が進むと思います。
なお、計算問題もあります。金融政策ではテイラールールの計算式も紹介されており、過去問でも出題実績があります。CFAI公式テキストの章末問題やmockでも問われていたので、重要な論点となります。
二つ目のリーディングでは、各アセット(債券、株、不動産)のリターン計測の手法や、為替レートに影響する要因、不胎化介入、そして景気循環におけるフェーズにおける最適なポートフォリオマネジメントが細かく問われています。また、こちらのリーディングでもCFAI公式テキストのEXAMPLEは無駄に長いです。こちらも同様に、学者のような人が実に学術的な内容を書いていると思います。まともに付き合うと時間が大幅に削られます。
特に株のリターン計測については、頻出のモデルが紹介されており、Grinold-Kroner Moder (G-K model) とSinger-Terhaar approach (S-K approach) です。また、不動産のリターン計測でも、cap rateを計算させる問題があり、無限期間・有限期間のそれぞれを想定した計算問題は頻出です。CFAI公式テキストの章末問題にも出題されています。
計算問題は、上記で言及したような論点がよく問われていましたが、特にTaylor rule、G-K model、S-T approachに関する問題は、何ステップも挟まなければ正解に辿りつかないような煩雑な作業はなく、基本的には公式を覚えてさえいれば「よくわかっていなくても得点できてしまう」のであり、こんなにおいしい問題はありません。また、Taylor ruleは2015年、G-K modelは2015年と2018年、S-T approachは2014年と2018年に過去問で出題されていますので、必ずおさえておくべき論点かと思います。
ただ、公式を丸暗記する際にも、可能な限り意味を考えるということはあります。例えば、Taylor ruleの公式は以下の通りです:
$${n_{target}=r_{neutral}+i_{expected}+0.5(GDP_{expected}-GDP_{trend})+0.5(i_{expected}-i_{trend})}$$
この中に$${GDP_{expected}-GDP_{trend}}$$や$${i_{expected}-i_{trend}}$$という項を含んでいますが、「期待GDPがトレンドよりも高い場合、それは経済が過熱し過ぎであるということであり、それを抑えるためにターゲットレートを増やす方向へ作用させるべきである。だから、この順番の引き算になるはずである。」という納得感と共に整理しておくと忘れにくくなりました。
また、G-K modelにおいては、公式は
$${E(R)=\frac{D}{P}+(\%\Delta E-\%\Delta S)+\%\Delta\frac{P}{E}}$$
であり、この中に$${\%\Delta E-\%\Delta S}$$という項を含んでいますが、「New issue$${\%\Delta S}$$があれば、発行済株式数が増えてdilusionが起こるため、1株あたりの期待リターンは少なくする方向に向かう。だから、この引き算の順番で正しい。」など、意味を考えて覚えるようにすると良いと思います。
繰り返しですが、CMEについては内容に深入りしすぎると沼ります。Redditでも、本試験のCMEが難しかった、と仰っている方が多かった印象です。そもそも内容が難しいので、Level 3で一から学ぶというよりかは、ある程度これまでマクロ経済を学習したストックがないと厳しい単元でもあります。
ではどうするかですが、ある程度前々から準備をして、時間を確保して勉強するしかないかと思います。もちろん深追いをする必要はないのですが、CMEについては、一夜漬けでのその場しのぎの学習は通用せず、しっかりと問題演習をしながら、場合によっては公式テキストの該当箇所を読んだりネットで分からない箇所は自分で調べたりしつつ、問われる論点をしらみつぶしに会得する他ないです。ありきたりですが、これらには一定の時間を要するため、時間をちゃんと確保して勉強する必要があります。
Asset Allocation (AA) ★★☆
こちらについては、定性的な理解がメインの単元です。リーディングは3つあり、「Reading 5: Overview of Asset Allocation」、「Reading 6: Principles of Asset Allocation」、「Reading 7: Asset Allocation with Real-World Constraints」です。丸暗記というよりかは、一つ一つの内容について丁寧に理解することができるため、負担は少ない分野かと思います。
一つ目は、「Reading 5: Overview of Asset Allocation」です。overviewということで、まずはアセットアロケーションの基本的な内容について学びます。投資ガバナンスから始まり、PWMでも問われるようなeconomic balance sheet、各種アセットアロケーションのアプローチ(資産特化型、債務対比型、ゴールベースアプローチ)、資産クラスの概念とリスクの相関、SAA (Strategic Asset Allocation)、リバランスです。
特に、economic balance sheetについてはよく問われていますので、重要です。また、リバランスの論点についても至るところで問われています。アセットアロケーションの目的の一つは、システマティックリスクへのエクスポージャーを適切に取ることですので、もし一つのアセットクラスだけが増えてしまうと、そこだけシステマティックリスクが増加してしまいます。そのため、時々リバランスしないと高リスク資産の比率が高まってしまうことにもなります。こうした背景もあってか、リバランスの論点はかなり細かく問われている印象でした。CFAI公式テキストの章末問題やEXAMPLEもさることながら、mockでも出題実績があります。
続いては、「Reading 6: Principles of Asset Allocation」です。「では、具体的にどのようにアセットアロケーションをするのか?また、課題は何か・どう解決できるのか?」という主たる観点で、アセットアロケーションの手法について学んでいくリーディングになります。
リーディングは、Mean-Variance Optimization (MVO) による分散ポートフォリオの構築から始まります。日本の証券アナリスト試験においてもおなじみですが、MVOは投資可能資産の期待リターン・分散・相関をインプットとして、同じリスクで最もリターンの大きいようなアセットアロケーションを、アプトプットとして特定するモデルです。このMVOが何よりも出発点となり、基本となります。そして、このMVOには様々な避難があるため、それを補うためにその他のアプローチが導入される、というLevel 3おなじみの流れとなります。
そのMVOの批判としては、次の6つの欠点が紹介されています。
①GIGO (Garbage In , Garbage Out)
②特定の資産クラスへ偏ったアロケーション
③歪度と尖度の無視
④リスク分散
⑤債務の無視
⑥単一期間のみの考慮
これらの欠点を補足するような対処法が答えられるようになる必要がありますが、実に記述問題とも相性がいいと思います。もちろん、CFAI公式テキストの章末問題において、これらの論点はがっつり出題されています。
①「GIGO (Garbage In , Garbage Out)」についてですが、MVOでのアウトプットの質は、インプットの質に大きく依存しているため、インプットの質がいまいちだとアウトプットもいまいちだということになります。これをどのように改善させるか、という点が課題の一つです。
②「特定の資産クラスへ偏ったアロケーション」については、MVOのアプトプットは、特定の資産クラスにアロケーションが集中してしまうこともあり得ますので、どのようにして極端な偏りをなくせるか、という論点になります。
③「歪度と尖度の無視」について、MVOは期待リターンや分散等しか考慮せず、歪度・尖度は考慮していません。実際のリターンは必ずしも正規分布に従うわけではないので、MVOでは単純化しすぎているということです。
④「リスク分散」ですが、MVOのアウトプットで提示されるアセットアロケーションは、資産クラスは分かれているものの、リスクの源泉に基づいてリスク分散はされていない、ということです。例えば、円債・円株であれば資産クラスは分かれますが、円安になればがどちらも影響を受けます。
⑤「債務の無視」ですが、Reading 5でも紹介された「資産特化型アプローチ」の典型例がMVOです。MVOは負債を考慮していませんので、「将来キャッシュアウトフロー(=負債)に備えるためにポートフォリオを構築する」という点をMVOは考慮できていないことになります。
最後の⑥「単一期間のみの考慮」ですが、MVOはsingle-period modelであり、その期間に発生するキャッシュフローや、期間と期間の間のリターンに関する系列相関を考慮していません。そのため、マーケットが変わりゆく場合は当然のことながらリバランスされるわけですが、複数期間に跨るそうしたマーケットの変化がMVOでは加味されませんので、リバランスのコストやリターンも捨象されています。
こうしたMVOに対する批判を踏まえた上で、解決策を提示します。具体的には、Reverse optimizationやその拡張版であるBlack-Litterman modelという手法が紹介されています。Reverse optimizationは、MVOのように期待リターン等ありきでMVOを開始するのではなく、global market portfolioをスターティングポイントにしてアロケーションします。global market portfolioは世界中のマーケットで投資可能なすべてのリスク資産を時価総額比率で保有するポートフォリオのことです。もちろん、アセットクラスの中には投資困難な資産も含みますので、そのようなポートフォリオは現実的ではないのですが、理論上は最も分散されたポートフォリオです。Reverse optimizationでは、まず、分散・共分散の他、こうした理想的なポートフォリオのアロケーションをインプットとしてReverse MVOを走らます。次に、そのReverse MVOのアウトプットとして出力されるインプライド・リターンをインプットとして通常のMVOを走らせることで、通常のMVOとは異なる調整済のアロケーションが出力される、というフローになります。また、Reverse optimizationをさらに拡張したものがBlack-Litterman modelになります。Reverse MVOのアウトプットとして出力されるリターンに対して、投資家独自の調整(エマージングは少し減らず等)を反映させます。このように、Reverse optimizationやBlack-Litterman modelにおいては、global market portlioで与えられる十分に分散されたウェイトを出発点にすることにより、②「特定の資産クラスへ偏ったアロケーション」を避けることが出来る、という道理です。
他にも、①に対しては制約条件の追加やResampled MVO、③に対してはCVaRを用いる、④に対してはfactor-based portfolioによって資産クラスではなくてリスク要因(リスクの源泉)にフォーカスをあてるアプローチを用いる、⑤に対しては負債対比型アプローチ(Liability-relative approach)を用いる、⑥対してはMonte Carlo simulation (MCS) を用いる、という対処法が紹介されていました。特に①についてですが、制約条件の追加やResampled MVOは重要です。制約条件の追加ですが、MVOのはじめのインプットに、アセットアロケーションのレンジを設定や上限を設定することです。この論点は、CFAIの公式テキストEXAMPLEでも出題実績があります。また、Resampled MVOですが、MVOにMCSを組み合わせて、何万もの効率的フロンティアを作ってその平均をとるもので、①GIGOや②偏ったアロケーションといった課題への対処法として紹介されています。
次に、注意を要する計算問題としては、Risk budgetingです。MCTRやACTRといった、CFAI公式テキストの章末問題には公式が出題されていないものの、公式テキストのEXAMPLEには公式を背景とした問が出題されています。EXAMPLEにおいても、直接的にMCTRやACTRを計算させる問題が出題されているわけではありませんが、少なくともACTRの公式の意味合いが分かっておかないと正答できない問題でした。こうした問題は、急に本番で公式を使う問題が出ても詰むので、要注意です。SchweserNotesにおいてもBlue Boxにはなっていませんので、油断すれば見落としがちなトピックかもしれません。
MCTRは"Marginal contribution to portfolio risk"ですので、「特定の資産クラスiのウェイトの微小変化に対する、ポートフォリオ全体のリスクの変化」です。
$${MCTR_{i}=\beta_{i} \sigma _{p}}$$
として表現されます。これがなぜこうなるかがCFAI公式テキストにも明かされていないのですが、以下の通りポートフォリオリスク$${{\sigma_{p}}}$$を資産クラスiのウェイト$${{w_{i}}}$$で偏微分することで求められます。
$${{MCTR_{i}=\frac{ \partial \sigma {p}}{ \partial w{i}} }}$$
MCTRについては、試験対策としては、まさに「丸暗記」をするしかないと思います。ですので、繰り返しになりますが、こうした公式を本番中に導き出すのは困難ですので、事前にEXAMPLE等で経験しておくことが試験対策上は重要となります。
ACTRは"Absolute contribution to portfolio risk"であり、公式は以下の通りです。
$${ACTR_{i}=w_{i}MCTR_{i}}$$
MCTRの定義を受け入れたとすると、「$${{MCTR_{i}}}$$はとある資産クラスiの保有割合微小変化に対する、ポートフォリオ全体のリスクの変化。その$${{MCTR_{i}}}$$にその資産クラスのウェイト$${{w_{i}}}$$をかけ合わせれば、ACTRは「資産クラスiが、どれほとポートフォリオのリスクに対して影響するのか」」という定義であることがわかります。
その他、MVOに対する批判⑤の解決策でもある、ALM approachについて学びます。負債を考慮したアセットアロケーションとして、Surplus optimization、Two-portfolio appraoch (Hedging/Return-seeking approach)、Integrated asset-liability approachが紹介されるのですが、特に、Two-portfolio appraochについては重要で、CFAI公式テキストの章末問題、EXAMPLEの両方で問われていることもあり、必ず理解する必要があります。債務をヘッジするポートフォリオを作ってそれ以外はMVOで運用し、債務をヘッジしながらもよりreturn-seekingなportfolioを目指す手法です。
最後に、理論的なバックグラウンドに基づかないような、いわゆる"heuristic"なアセットアロケーションのアプローチが紹介されています。"120 Minus Your Age"、"60/40 Split"、"Endowment Model/Yale Model"、"Risk Parity"、"1/N Rule"ですが、これらは全てCFAI公式テキストの章末問題でも出題されており、重要です。特に"Risk Parity"についてはその計算問題も章末問題において出題されています。
最後は、「Reading 7: Asset Allocation with Real-World Constraints」です。アセットアロケーションに関する現実的な諸課題や制限を学びます。アセットのサイズ(規模)、流動性ニーズ、投資期間等ですが、それに加えて、各金融機関(保険会社、年金、基金、財団、SWF)毎の特色が紹介されています。このあたりは、CFAI公式テキストの章末問題での出題はなく、主にEXAMPLEでの問題演習にとどまりますので、なかなかポイントを抑えて理解していくことが難しいという印象でした。
次に、アセットアロケーションに関する税金の問題ですが、これについてはCFAI公式テキストの公式テキストのEXAMPLEや章末問題の両方で問われているため、重要です。「株式等の税金の低い資産は課税アカウントにアロケーションする」、「トレーディングの頻度が高く、税金が高い資産は税務面で有利なアカウントにアロケーションする」ということが基本となります。また、税引き後のリターンについては、キャピタルゲイン税が価格上昇によるリターンを減少させる方向に作用し、またキャピタルロスはキャピタルゲインを税務的に相殺する報告に作用しますので、税引き後リターンの標準偏差は、$${{\sigma_{AT}=\sigma_{PT}(1-t)}}$$となります。また、ボラティリティが減少することによってリバランスの頻度も低下しますので、税引き後のリバランスレンジ$${{R_{AT}}}$$は、$${{R_{AT}= \frac{R_{PT}}{1-t}}}$$となります。このあたりの計算については、CFAI公式テキストの章末問題には出題されていますので抑えておくべきかと思います。
その他、アセットアロケーションの調整に関する論点が紹介されております。アセットアロケーションの改定に紐づく動機として"Change in goals"、"Change in constraints"、"Change in belief"といった要因があり、「~はどれに該当するか」といった問が考えられます。ここは公式テキストEXAMPLE、章末問題に出題実績があります。例えば、とある個人投資家のrisk appetiteやrisk capacityに変化が見られる場合、それはChange in goalsに該当します。time horizon, liquidity needs, asset size, regulatory and external constraintsの変化であればChange in constraitnsであり、investment beliefsやguiding principlesの変化であれば、Change in beliefです。CFAI公式テキストの章末問題においても、記述形式で出題であり「どれに該当するのか」、という問い方をしていますので、記述での出題があってもおかしくはないと思います。
また、戦略的アセットアロケーション(SAA)からの短期的な乖離として、戦術的アセットアロケーション(TAA)も紹介されています。このTAAに関するアプローチについても、いくつかの特徴がCFAI公式テキストのEXAMPLEや章末問題で出題されていました。
最後は、アセットアロケーションにおける行動バイアスです。CFAIは、Level 1のカリキュラムにもBehavioral Biasesを組み込んでおり、行動ファイナンスを学ばせるのがかなり好きですね。基本的には、Behavioral Financeの単元で学んだことによって対応することができますが、アセットアロケーションの実務に即した内容になっていますので、改めて読んでおいた方がよいと思われます。
例えば、illusion of controlといったバイアスにおいては、BFの単元では、「②影響」としてよく挙げられる事例は「頻繁な取引を行う;それによる取引コスト上昇が起こる;分散されていないポートフォリオになる」ということですが、AAの文脈においては、illusion of controlによって「より自分の洞察が優れていると思い込んでしまい、より極端なTAAを行ってしまう;コンセンサスが得られていないにも関わらず、自身の見通しのみでグローバルマーケットポートフォリオで大きな割合を占めている資産を大幅に減らす、もしくはショートしてしまう」等が紹介されています。また、「③軽減策」については、BFの単元では「他人の意見を訊く;長期志向を意識して多くの要因はコントロールできないことを自覚する;取引の記録を取る」が紹介されていましたが、一方、AAの単元では、「CAPMやマーコウィッツの平均分散理論等を用いることで、グローバルマーケットポートフォリオがポートフォリオ構築のスターティングポイントとして機能する」と紹介されており、色合いが異なっています。
BFののところで「バイアスについて①意味②影響③軽減策の三点セットをしっかりと抑え、理解した上で丸暗記していくことの重要性」とお伝え致しました。これを踏まえると、①についてはBFでもAAでも共通なのですが、②と③についてはAAの文脈で紹介される内容が異なっていることもありますので、AAの単元用に再度整理しておく必要はあろう、ということです。
なお、一点気になったこととして、Representativeness bias(代表性バイアス)をRecency bias(近時性バイアス)と言い換えている記述が見られました。これは明らかに誤りではないかと考えており、通常行動ファイナンスの教科書ではRecency biasはAvailability biasと同等であるとされているかと思います。例えば、Investopediaにおいても、Recency bias = Availability biasとしています。
ちなみに、この点はcandidate専用のフォーラムでも指摘されていました。
繰り返しになりますが、この単元では特に、メリット・デメリットを述べさせることが多いので、記述対策としてもちゃんと整理しておくべきです。例えば、「各リバランスアプローチのメリット・デメリットは何か。」「MVOの欠点はどのようなものがあって、どのような代替策があるのか」「TAAとSAAを比較したとき、欠点は何か。」などです。Level 3では、Level 1やLevel 2で見てきた世界を俯瞰して、より現実的な立ち位置から再検討していくという側面が往々にしてあると考えていますが、それが如実に表れている単元と言えます。特に、MVOを出発点としてその欠点を学び、それを補完する、もしくはその代替策としてのReverse optimization、Black-Litterman model、Resampled MVO、MCSの登場という流れは定番であり、Level 3の典型でもありますので抑えておきましょう。
CFAI公式テキストのEXAMPLEについては、ややredundantな問題も混在していた、という印象です。例えば、Reverse optimizationの計算問題をネチネチ解かせたりなど、計算負荷に鑑みて「こんな問題試験に出るのか?」という問題がEXAMPLEにはありました。ただ、すべての問題が冗長で学習効果が低いかと言えば、そうではありません。既にお伝えした通り、Marginal Contribution to Portofolio Risk (MCTR) や、Absolute Contribution to Portfolio Risk (ACTR) においては、章末問題にはないもののEXAMPLEにはある論点もありました。本番ではやや細かいことを聞かれる可能性もありますので、時間があれば、AAのEXAMPLEも解いておいても良いかもしれません。ご自身の時間的リソースと相談して、取捨選択しながら向き合っていくべきだと思います。
Derivatives and Currency Management (DCM) ★★☆
この単元は、非常に負荷の高い内容を含みます。定性・定量面のいずれにおいても難易度が高いと思います。
まず、「Reading 8: Option Strategies」についてです。もともとはLevel 2にあった単元なのですが、かなりパワーアップしてLevel 3に送り込まれました。とにかく知っておくべきオプション戦略が多いです。
ちなみに、オプション戦略については、私個人のお勧めとしては、損益図を描いて幾何学的に解いていくことです。covered callから始まり、色々な戦略がありますがすべて幾何的な性質を利用して図を書けば簡単に解けます。例えばBull Put Spreadの場合、Bull = "Buy low"や"long low"などとこじつけで覚え、プットなので「権利行使価格の低いプットをロング(逆を考えて、自動的に高いプットをショート)」と関連づけて、すぐに下図のような損益図を描いていました。そうすると、幾何的にこの戦略のキャップ・フロア・損益分岐点が計算できますので、いわば思考停止の状態でも正しく問題が解けるので楽です。CFAIの解答は損益図を描くことなく定性的な意味合いを議論することで解いていましたが、試験中にそのプロセスで思考することの負荷と、その思考プロセスでミスしてしまって全て誤るリスクに鑑みると、損益図を描いた方がラクで正確に思えます。慣れてくれば、30秒くらいで描いて計算できますので、この方法が私にとっての最適解でした。
その他、細かい戦略に関する問もあります。「期近は動かないが、期先は上がると思っている」ならばLong calendar spread戦略、「プットのIVがコールのIVと比較して高いと思っている」ならば、Long risk reversal(OTMプットをショート、OTMコールをロング)戦略をとる、などです。(後者の戦略では原資産価格のボラティリティにベットしないため、デルタヘッジのための原資産ショートは組み込む。)ただ、こうしたIV skewを利用した戦略は非常に煩雑で、オプショントレードの実務経験のない私にとっては理解が難しく、CFAI公式テキストを隅から隅まで熟読しました。また、Volatility smileやVolatility skewについては、CFAIのmockでも理解が問われる問題がありましたので、ちゃんと抑えておくべきと思います。要は、「市場の下落リスクを懸念してプットをロングしている投資家が多く(流動性の高いOTMプットが対象)、プットについてはその保険としての機能に着目して需要が高いため、OTMプットのIVが高くなる。一方でコールはそのような需要がないため、IVは低くなる。よって、Volatility skewが観察され、現実ではsmileよりもskewがよく観察される。」という考え方です。
いずれにせよ、あまり深入りせず、CFAI公式テキストの章末問題やEXAMPLE、mockで出題された論点を中心に、「どのようなときに、どのような戦略をとるのか」ということを簡単に述べられれば良いのだと思います。なお、Schweserには、表形式でマーケットのビューを横軸、ボラティリティの変化を縦軸にして、どのような状況でどのようなオプションを選択すべきか、ということが紹介されていました。これは分かりやすかったと思います。例えば、原資産にかかるマーケットビューがBearishであり、かつボラテリティが下がると予想している場合、まずは原資産価格の低下を予想しているためデルタを負にする必要があり、Callの売りかPutの買いを選択する可能性が生じますが、同時にボラティリティの低下を予想しているためオプションは売る必要があり、こうした状況下ではWrite callsを選択する、などというロジックです。
次のリーティングは「Reading 9: Swaps, Forwards, and Futures Strategies」です。デリバティブを用いたデュレーションやβの調整がメインです。公式がたくさんあり、最初に見ると難しそうなのですが、公式自体はどれも似たような形をしており、根底にある考え方はどれも同じです。つまり、「現ポートフォリオにおいて、デュレーションやβを100増やしたい/減らしたいのならば、デュレーションやβが10のデリバティブを何単位ロング/ショートすべきか。」というだけです。もちろん、100/10=10で10単位のロング/ショートです。これを、エクイティスワップ、Cash Equitaization、債券先物、株式先物で計算するだけです。あまり難しいわけではないのですが、上記考え方に当てはめていくにあたって多少細々とした計算があるため、頭で理解するだけではなく、実際に自分で手を動かして解かないと点数にはなりません。
また、このリーディングは計算問題に目が行きがちですが、定性的な論点も忘れてはなりません。例えば、債券ポートフォリオのロングポジションの金利リスクをヘッジするために債券先物を売り建てる場合、BPVHRを計算するわけですが、デメリットが三点紹介されています(CTDは金利環境によって変化する・デュレーションはコンベクシティを考慮していない・修正デュレーションはイールドカーブの平行移動しか考慮していない)。こうしたデメリットもLevel 3では問われる可能性はあるかと思います。
なお、このリーティングについては、SchweserNotesの例題がかなり使えます。考えられるそれぞれのパターンでのデリバティブの使い方を学習できて網羅性があり、非常に便利です。このリーディングについては、SchweserNotesの例題を繰り返し解きました。
最後のリーディングは、「Reading 10: Currency Management: An Introduction」です。ここが一番難しいです。Return Analysisで$${R_{DC}=(1+R_{FX})(1+R_{FC}) - 1}$$を用いる計算問題、外国通貨価値の変動と外貨建資産の外国通貨換算ベースでの価値の変動から求めるRiskの計算は特に頻出・重要です。CFAI公式テキストの章末問題でも問われています。また、Menimum-Variance Hedge ratio (MVHR: 最小分散ヘッジ比率) の論点では計算問題も出題されます。ただ、MVHRについては、最後までよくわかりませんでした。CFAIのリーディングでは、「$${R_{FX}}$$と$${R_{FC}}$$の相関が正であれば、MVHRを大きくする。」…(◉)と説明されているにも関わらず、
$${R_{DC}=\alpha+\beta R_{FX}+\varepsilon}$$
$${\beta=\rho(R_{DC};R_{FX})\frac{\sigma _{(R_{DC})}}{\sigma _{(R_{FX})}}}$$
として$${R_{FX}}$$と$${R_{DC}}$$の関係を見ており、「投資額のβ倍分、外為をショートする」としていることは、は最後まで意味不明でした。(◉)によると、$${R_{FX}}$$と$${R_{FC}}$$の相関を見ているのではなかったのでしょうか。なぜ、$${R_{FX}}$$と$${R_{DC}}$$の関係について議論しているのでしょうか。改めて、謎でした。
こうした点を除けば、計算問題自体は難しくはないと思いますが、より定性的な論点がこのリーディングでは難しいです。例えば、「どのようにすればリスクを調整してヘッジコストを削減するような戦略を取れるか」というトピックで、Risk reversal、Put spread、Seagull spreadなどの戦略をどのようにして使い分けるか、という論点は、特に、Seagull spreadなど聞いたこともありませんでしたが、CFAI公式テキストやCFAIのmockにも出題されていましたので、瑣末な論点ではなく、ちゃんと理解すべき論点であるようでした。(私はオプショントレードに関する実務経験がありませんので、プロの方からすれば知っていて当然なのかもしれません。)また、為替ヘッジに関するメリデメ、為替管理の戦略、IPS、諸問題、為替のアクティブマネジメントに関するアプローチ等、かなり広範なトピックを含みます。特に、アクティブマネジメントの文脈でCFAIが大好きなキャリートレードの計算問題も出題されており、CFAIのmockでも計算問題が出題されていました。なお、キャリートレードの計算問題は2021年度のCFAI mockでも出題されており、CFAIは相当キャリートレードに思い入れがあることがわかります。ただ、2022年度のmockで出題されいるキャリートレードは、通常の「低金利で借りて、高金利で貸す」というキャリートレード(カバー無し金利平価が成立しない場合に利益をもたらす)のではなく、「高金利で借りて、低金利で貸す」というnegative carry trade「ネガティブキャリートレード」というものです。借入コスト以上に貸していた通貨が増価することで益が出ることなのですが、まさにカバー無し金利平価が成立する場合に益をもたらすのであり、「果たしてこれはキャリートレードと言えるのか?」という点は疑問です。ただ為替予想にベットしているだけでは?ということで、このような「ネガティブキャリートレード」なんて本当にあるのかは最後まで謎でした。このように、CFAIのmockは変な問題が多い印象です。なお、negative carry tradeという言葉はCFAI公式テキストに一度だけ出現していますので、CFAIカリキュラムとしてはちゃんと存在はしています。
なお、CFAI公式テキストの章末問題は、2022年度になって大幅に拡充されました。問題数が増えており、理解を深めるのに非常に役立ちます。一方、問題数が増えたことで、EXAMPLEと被っている問題も多い印象です。しかし、特に最後のリーディングについて、考え方を深める題材としてEXAMPLEが非常に有意義です。したがって、EXAMPLEについもやっておいて損はないかと思います。最初の二つのリーディングと比べて、最後のリーディングのEXAMPLEは少し長いですが、無駄に長いような、教養問題はありません。また、最後のリーディングで出題されているMVHRの計算問題については、CFAI mockでも出題されており、重要です。2021年度までは、このMVHRの計算はEXAMPLEにしか紹介されていなかったのですが、2022年度になってCFAI公式テキストの章末問題でもカバーされるようになりました。MVHRの計算は、CFAI公式テキストの章末問題、EXAMPLE、mockの全てで出題されておりますが、これだけ重要であるにも関わらずMVHRの計算問題自体はSchweserでなぜか紹介されていません。なぜなのでしょうか。必ず公式教材に取り組みましょう。
Fixed Income Portfolio Management (FIPM) ★★☆
2018年にFIPMはoverhaulされ、2019年にも少し改訂がありました。そして、2022年においても、4つのリーディングのうち、後ろ2つについては大幅に内容が刷新されたという、進化し続ける単元です。そして、後ろ2つのリーディングは誤植の多さが半端なかったです。未だに思い出すだけでも、怒りで身が震えてきます。
最初のリーディングは「Reading 11: Overview of Fixed-Income Portfolio Management」です。比較的優しい単元かと思います。債券のポートフォリオにおける役割から始まり、イミュナイゼーションの方法など、基本的な部分を最初のリーディングで学びます。イミュナイゼーションの方法については、結構細かいところまで、全部覚えておいた方がよいです。また、リターンのモデリング(債券の期待リターンを、Income Yield, Rolldown Return, Expected Price Chage, ▲Credit Losses, Expected Gains or Losses versus Investor's Currencyの5つに分解する)計算問題は、CFAI公式テキストの章末問題やEXAMPLEにも出題されているため頻出です。また、Leveraged Portfolio's Returnの公式も重要ですので、覚えておきましょう。
次のリーディングは、「Reading 12: Liability-Driven and Index-Based Strategies」です。単一債務と複数債務をイミュナイズするための条件について覚えます。単一債務のイミュナイゼーションでは、主に下記がルールとなります:
①資産の現在価値が負債の現在価値以上となる($${PV_{A}\geq PV_{B}}$$)
②資産と負債のMacaulay durationを一致させる($${D_{A}=D_{L}}$$)
③ポートフォリオのコンベクシティを最小化させる
①について、最初から$${PV_{A}<PV_{B}}$$だとイミュナイズはうまくいかない、ということです。
②について、これによりprice riskとreinvestment riskをバランスさせられます。(Maculay durationは、価格リスクと再投資リスクがオフセットする均衡点。)
③について、これはコンベクシティを最小化することでそれは資産のキャッシュフローの散らばり(ディスパージョン)を最小化することになり、負債のキャッシュアウトフローが起こる日の近くに資産のキャッシュインフローを集中させる、ということになります。(ゼロクーポン債と単一債務でマッチさせることを考えれば、散らばりの最小化によって単一債務のイミュナイゼーションが実現できることは用意にイメージ出来ます。)
そして、これを理解するための、このリーディングで重要と考える公式がこちらです。
$${convexity = \frac{Macaulay\,duration^{2}+Macaulay duration+dispersion}{(1+periodic IRR)^{2}}}$$
私は最初この公式を見た時、「コンベクシティにこんな綺麗な関係性があるんだ」と思わず感心しました。
これによると、ディスパージョンを小さくするほどコンベクシティも小さくなるため、イミュナイゼーションのためにはコンベクシティを最小化すべき、という理解が得られます。
複数債務のイミュナイゼーションでは、下記が主なルールとなります:
①資産の現在価値が負債の現在価値以上となる($${PV_{A}\geq PV_{B}}$$)
②資産と負債のBPV (Basis Point Value) を一致させる($${BPV_{A}=BPV_{L}}$$)
③資産のコンベクシティが債務のコンベクシティを上回る。ただし、構
造的リスクを小さくするため、上回り過ぎてはならない。
①について、こちらは単一債務のケースと同様です。
②について、こちらは単一債務のようになぜMacaulay durationを用いないのかはよくわかりませんでした。BPVを用いる方がなぜか一般的なようです。
③について、コンベクシティが高すぎると、散らばりディスパージョンも大きくなりすぎることになります。その結果、ノンパラレルシフトやツイストが起こったとき、債券価格は負債と比べて予期しない動きとなる(構造的リスク)ため、コンベクシティを高くし過ぎないということだと理解しています。
こうしたイミュナイゼーションの理解の他、デリバティブでも論点のあった債券先物や金利スワップを用いたポートフォリオのデュレーション調整の問題もあります。つまり、「$${BPV_{A}\leq BPV_{L}}$$のため、金利低下で負債価値の上昇効果の方が大きく、資産が足りない。その場合、債券先物を買うことによって金利リスクにベットし、$${BPV_{A}}$$を上昇させる。」というようなものです。コンセプト自体は、そこまで難しくないと思います。
米国国債先物については、大前提としてクーポンが6%、満期30年といった債券を仮定して、それをもとに計算しています。しかし、実際にその架空の債券をデリバリーできないため、別の債券を用意する必要があり、その架空の債券と実際にデリバリーする債券の比率がConversion Factorであるということです。この理解のもと$${BPV_{futures}\times{CF_{CTD}}=BPV_{CTD}}$$といった式の意味合いも納得することが出来るとと思います。
他にも、スワップションを使ったヘッジ戦略や債券インデックス、パッシブな債券エクスポージャーの取り方、債券ベンチマークの選択等に関する定性的な理解を勉強するトピックが続いています。そこまでスワップションのヘッジ戦略以外はそこまで難しいとは感じませんでした。基本的に、知らないところは可能な限り理解した上で、一つ一つ新しい考え方を受け入れていくだけで、覚えることが中心となります。
続いては、「Reading 13: Yiled Curve Strategies」です。先にお伝えしておくと、Reading 13とReading 14については、SchweserNotesは優秀です。ちゃんとEXAMPLEが容易されており、かつCFAI公式テキストのよい縮図として機能しており、過不足なく学べます。Reading 13は2022年度カリキュラムでも変更が加えられた単元でして、「イールドカーブの変化を予測し、アクティブマネージャーがどのようにアルファを獲得できるか」という論点に主眼を置いています。
例えば、「Static Yield Curve(右上がりのイールドカーブが変わらない)場合は、高金利を享受するため金利リスクを取る(デュレーションを大きくする)か、レバレッジを効かせる」ことでポートフォリオに超過収益をもたらすことが出来る、という論点があります。そのため、Buy and holdによって、「イールドの高い長期債をロングしておいておいてデュレーションを増加、また、Buy and holdによって流動性リスクを取ることで高いイールドを獲得」します。または、Repo carry tradeによって、「安定的な右上がりのイールドカーブにおいて、短期で借りて長期で貸す(より低い短期金利で借り入れて、より高い長期金利に投資する)」ことがありますが、「短期で借りる」ことは通常レポの形で行われますので、こうしたキャリートレードはまさにレバレッジ手法として整理されます。このレバレッジ手法については、公式問題でも問われている論点でありますので、答えられるようにしておくといいと思います。また、「デュレーションの増加」の手法のひとつとして、Receive-fixed swapをロングという手法もあります。固定金利を受け取って変動金利を支払うため、fixed legを見れば固定債ロングと経済的効果は同じですので、デュレーション増加に寄与します。
逆に、イールドカーブが変化する場合には、例えば、「債券価格が上昇する(金利は低下する)bullish viewの場合には、デュレーションを増加させることでアルファを狙う」ため、Receive fixedのスワップを用いることが公式問題では出題されます。
このように、イールドカーブの変化を考えた結果、デュレーションをどのように管理するかという論点が頻出となりますが、コールオプション・プットオプションを用いたデュレーション調整の理解を問う問題もCFAI公式テキストの問題では頻出でした。現物債券や債券先物に金利低下時において価値が上昇するコールオプションを加えると、金利低下⇒債券ポートフォリオの価値上昇ということですので、これはデュレーション増加に寄与していることとなります(プットオプションの場合はその逆)。また、スワップションを用いる場合も紹介されています。Payer swaptionであれば、そのholderは固定金利の支払い権利を持ちますので、金利上昇時に益となり、これはつまりデュレーションを減少させていることになります。つまり、プットのロングと同じ経済的効果となります(Receiver swaptionの場合はその逆)。Level 3においては、こうしたデリバティブを用いたデュレーションの調整が至る所で出題されています。
最後に、Reading11でも重要論点であったリターンのモデリング(債券の期待リターンを、①Income Yield, ②Rolldown Return, ③Expected Price Chage, ④▲Credit Losses, ⑤Expected Gains or Losses versus Investor's Currencyの5つに分解する)についても、再度問われます。①~④で得られた外貨ベースのリターンに加えて、⑤で外貨の変動額を調整するというものです。この計算問題は、CFAI公式教材(CFAI mock含む)においても問われまくっています。
この次は、FIPMの最後である「Reading 14: Fixed-Income Active Management: Credit Strategies」です。Level 2まででもやったような、各種クレジットスプレッド(Yield sprad, G-spread, I-spread, OAS等)の基本的な理解や、各経済サイクルにおけるIGやHYのスプレッドカーブの形状から始まります。特に、Contraction~Early ExpansionにおいてはHYがInvertedすることは頻出であり、「景気が悪いときに短期のスプレッドが上がりやすいが、特にHYの方がIGと比較して不安が拡大しやすいため、急激に変化しやすい」という背景に基づきます。ここはCFAI公式テキストの問題でもよく問われている論点です。
続いて、ボトムアップクレジット戦略の紹介に入りますが、ここではLevel 2までに出題されたようなクレジットリスクモデル(Stractual modelsやReduced Form models(Altmanのz-score等))が紹介されるのですが、なんといっても頻出なのはexpected excess spread ($${spread - (EffSpreadDur \times \Delta spread) - (POD\times LGD)}$$)です。これによって、割安か割高かを判断するため材料が与えられるわけですが、例えばexpected excess spreadがマイナスになる場合、見通し通りに経済情勢が変化したらspreadが残らないということなので、その債券はnegative returnもたらします。複数ある債券に対してexpected excess spreadを計算することで相対的な魅力を比較する問題は頻出でした。もちろん、マクロ要因にフォーカスするトップダウン戦略も紹介されていますが、圧倒的にボトムアップ戦略の方がよく問われておりました。
その他、テイルリスクの管理ということで、VaRが出てきます。VaRのリターン分布を導くための①Parametci method、②Historical simulation、③Monte Carlo analysisに加え、VaRの欠点とその対処法を学びます。対処法については、CVaRやIVaR、Relative VaRでして、公式テキストのEXAMPLEではすべて網羅されていました。なお、債券VaRの計算については、公式テキストのEXAMPLEが二度も誤植があったことは辛い思い出です。どうしても計算が合わず時間を無駄にしたのですが、誤植であったことが後でわかりました。ただ、一度その誤植は訂正されたものの、その訂正もさらに誤植であったという、candidateを侮辱したとんでもない事件があったと記憶しています。何度でも声を大にして言うのですが、公式教材の誤植の多さは本当に許せません。
話が逸れましたが、このReading 14の最後の難関であったのが、CDS戦略です。スプレッドカーブの見通しに沿って、CDSにおけるProtectionを買うのか・売るのかを結論するものです。大原則といいますか、これさえわかっていれば問題が解ける、という基本的な考え方としては、以下の通りです。
というものです(Protectionを買う場合はこれの逆)。この単元では、スプレッドカーブの様々な見通しによってどのようなCDS戦略をとるのかが問われ続けるのですが、上記の基本的な考え方がわかっていれば、すべて問題は解けると感じています。例えば、スプレッドカーブが変化しないと考えるのであれば、債券をロングしておけばキャリーを稼げるため、債券ロングに対応するように、CDSにおいてprotectionを売ります。
また、HYのクレジットカーブがスティープ化すると考えるのであれば、例えば一例として、短期のクレジットが良くなり、長期のクレジットが悪くなることが考えられるため、そうした見通しにベットするようにHY indexのCDSにおいて短期のHY protectionを売り、長期のHY protectionを買う、という戦略になります。
他にも、HYスプレッドがIGスプレッドよりもワイドニングすると考えるのであれば、クレジットが相対的に良くなるものについてはProtectionを売り、相対的に悪くなるものについてはProtectionを買う、ということになりますので、HY indexのCDSにおいてProtectionを買い、IG indexのCDSにおいて、Protectionを売る、ということになります
このように、数々の見通しに基づくCDS戦略を問われる続けるのですが、根本的には「Protectionの売りはクレジットリスクをロングするということ。つまり、債券をロングしているのと経済的効果は同じ。」という考えを根底においておけば、少なくとも練習問題等においては解けない問題はありませんでした。
最後に、CFAI公式テキストのEXAMPLEについてです。繰り返しお伝えしている通り、FIPMについては少なくとも2022年度版カリキュラムではとにかく公式教材の誤植が多く、多大な時間を無駄にしました。公式教材のEXAMPLEの問題数は多く網羅性は高かったのですが、誤植がなくならない限りは、あまりお勧めはしません。むしろ、FIPMについてはSchweserのEXAMPLEが優秀で、非常に網羅性が高かったことを記憶しています。
以上、FIPMのリーディングでした。特に後半二つは新しいリーディングであり、かつ誤植が邪魔して理解するのにとにかく時間を費やした悪い印象しかない、史上最悪のゴ○リーディングです。
Equity Portfolio Management (EPM) ★★★
この単元は、定性的な論点がほとんどかと思います。計算問題といっても、HHI(とその逆数であるeffective number of stocks)、Active share、資産iのポートフォリオ分散への寄与度、AUMにおけるissue of scale等、しかありません。Level 2においてはEquityといえばバリュエーションであり、計算問題がメインでしたが、Level 3では状況は異なります。そして、Level 3のEPMでは結構細かいところまで覚えておく必要があります。なんとなく概念を俯瞰して大まかな流れを掴んでも、それだけでは点数になりません。4つのリーディングのうち、前半2つが株式運用の基本的な理解とパッシブ運用、後半2つがアクティブ運用に関するものです。
最初のリーディングは比較的簡単で、「Readign 15: Overview of Equity Portfolio Management」です。株式投資の役割やセグメンテーション、エンゲージメント、株式ポートフォリオのインカムとコスト等を一つ一つ丁寧に理解していくだけです。
次のリーディングは、「Readign 16: Passive Equity Investing」です。株式のパッシブ運用について学びます。パッシブですので、ベンチマーク解説から始まります。インデックスのウェイト付けの方法や適切なインデックスを選ぶための方法などです。特に後者は、Stock concentration (株式集中度) を考えるわけですが、これがeffective number of stocsです。Herfindalh-Hirschman index (HHI) の逆数で求められます。加えて、パッシブ運用のポートフォリオ作成のための手法(完全複製と層下サンプル法)といった、証券アナリスト2次で出題されていたようなトピックや、トラッキングエラー原因やそのコントロール方法についても学びます。このリーディングについては、特段際立って難しいと思われる内容はありませんでした。トラッキングエラーに関するところは、細かく理解し覚えておいた方が良いです。
次のリーディングは「Reading 17: Active Equity Investing: Strategies」です。ここからは、アクティブ運用に関するものです。引き続き、内容は定性的なものが続きます。ファンダメンタルアプローチ vs 定量的アプローチという比較です。各々の違いについてはかなり細かく問われる印象があり、CFAI公式テキストのEXAMPLE、章末問題で頻出です。続いて、ボトムアップアプローチ vs トップダウンアプローチ。特にボトムアップアプローチについては、頻出です。CFAI公式テキストのEXAMPLE、章末問題の両方で出題されています。具体的には、value-based approach (バリューベースアプローチ) やgrowth-based approach (グロースベースアプローチ) にどのようなものがあるのか、ということを理解します。前者は、例えばRelative value(競合他社のPE倍率やPB倍率といったマルチプルを比較して、低水準なマルチプルな割安株に着目)やDeep-value investing(経営破産により保有資産と比して低いバリュエーションになっている企業に着目)などです。これらはCFAI公式テキストのEXAMPLE、章末問題の両方で出題されています。後者は、特にGARP (Gwoth At a Reasonable Price) が重要です。PEGレシオが小さいほどGARPです(Pが小さい=reasonable price; Gが大きい=growth)。これは必ず覚えた方が良いです。
残りは、ファンダメンタルアプローチと定量的アプローチにおける投資戦略の策定であり、各々のプロセスやpitfalls (落とし穴) について学びます。特にここのpitfallsについては頻出ですので、必ず抑えておいた方が良いです。既に述べましたが、Level 3ではより現実的な立ち位置からコンセプトを再検討していくという側面がありますので、こうしたpitfallやデメリット系は頻出になります。
最後のリーディングは「Reading 18: Active Equity Investing: Portfolio Construction」です。アクティブ運用におけるポートフォリオ策定です。Level 2のPortfolio Managementでも学んだような、アクティブリターンの源泉やfundamental law of active managementが再び紹介されます。次に、アクティブリスクやアクティブシェアです。これらの関係性についてはCFAI公式テキストの章末問題で出題されていますが、アクティブシェアの計算問題自体は、公式は紹介されているものの、演習題はCFAI公式教材の中では見たことがありませんでした。より定性的な内容にフォーカスされている印象です。
このリーディングにおける他の重要論点としては、ポートフォリオ構築における市場影響コストについてです。「AUMが小さいと運用額の小さい。そのため、そもそも投資先が見つからず特定投資先に多額の資金を投入して、マーケットインパクトを与えてしまいがちである。つまり、AUMが小さいと市場影響コストは低い。」など、ポートフォリオの構成と市場影響コストがどのような関係にあるのか、という論点です。この論点は、CFAI公式テキストのEXAMPLEや章末問題でも問われていることもあり、重要な論点かと思います。
以上、定性的な論点が多いEPMですが、CFAI公式テキストのEXAMPLEは無駄に長いだけの問題はなく、理解を深めてくれるような良問が多かったように思えました。積極的にEXAMPLEに取り組むべきリーディングだと考えています。
Alternative Investments (AI) ★★★
この単元はほとんどが定性問題です。計算問題があるとしても、CFAI公式テキストのEXAMPLEで紹介されていたファンドからの分配の計算に関するものやFoFのフィー計算に関するもの、あとはMerger arbitrageにおける、MergerのSuccess・Fail時の損益計算くらいかと思います。基本的には定性的な問題の出題であり、計算問題が多くを占めていたLevel 2のAIとは状況が全く異なります。
なお、申し訳ないのですが、私個人の感想としてはAIについてはSchweserNotesはゴ〇です。かなり省かれています。全く別試験のようです。SchweserNotesには例題が一問もなく、主要な論点はかなり省かれています。AIについてSchweserNotesで分かった気になっていても、試験では驚くほど点数が取れないと思いますので注意して下さい。
その代わり、2022年度のカリキュラムでは、CFAI公式テキストの章末問題がかなり拡充されました。したがって、CFAI公式テキストの章末問題に取り組むことで、必要なポイントがちゃんと理解できるようになっています。SchweserNotesを利用するならば、ぜひ、CFAI公式テキストのEXAMPLEをやりつつ、適宜SchweserNotesを参照するようにして下さい。
最初のリーディングは「Reading 19: Hedge Fund Strategies」であり、ひたすらヘッジファンドの戦略を学びます。Equity-related、Event driven、Relative value、Opportunistic、Specialist、Multi-managerといった戦略分類に沿って、一つ一つ学んでいきます。演習という観点では、CFAI公式テキストの章末問題とEXAMPLEを両方やると、幅広く各戦略についてカバー出来るため、EXAMPLEもやっておくと良いかと思います。章末問題とEXAMPLEの両方でカバーされているような戦略は、例えば、Equity-relatedのDedicated Short Selling、Equity Market Neutral (EMN)、Event-Driven StrategiesのMerger arbitrage、、、等です。しかし、Relative ValueのFixed-income arbitrageは、EXAMPLEでしか出題されておらず章末問題では出題されておりませんでした。したがいまして、CFAI公式テキストの章末問題とEXAMPLEの両方に取り組むことをお勧め致します。
特にこのリーディングにおいてCFAI公式テキストの章末問題とEXAMPLEの両方で問われまくっていることとしては、Multi-strategy fundsとFoFのメリット・デメリットがあります。例題・章末問題においても記述問題として問われていますし、繰り返し申し上げているLevel 3の特徴(より現実的な立ち位置から再検討していく)からも、メリデメについて本試験で出題されても全くおかしくはありません。また、FoFについては、Net-of-Fee Returnsに関する計算問題がCFAI公式テキストのEXAMPLEで出題されています。全くの所見で取り組むと時間がかかるので、経験しておいた方が良いです。この意味でも、この単元はEXAMPLEに取り組む価値は高いと言えます。ちなみに、IFTのmockでも、このFoFに関するNet returnの類題が出題されていました。IFTがどのような理由でこの問題を自社のmockに組み込んだのか分かりませんが、もしかしてどこかの本試験で出題されており、重要性が高いと判断して取り入れたのかもしれません。IFTはSchweserとは違ってCFAI公式教材や過去問をよく分析していますので、IFT mockに類題が掲載されていることの意味合いは大きいと思います。いずれにせよ、AIについてもEXAMPLEには取り組んだ方が良いです。
ちなみに、公式教材においても各ヘッジファンドにおけるレバレッジの活用度はよく問われていました。私の場合、SchweserNotesのQzuickSheetに「レバ高;レバ低;場合による」等とどれかを記載することで覚えていました。また、Opportunistic Hedge Fund Strategy においては、①高レバレッジ②高流動性③right-tail skewnessといった性質がCFAI公式教材で出題されており、特に③によってleft-tail eventのヘッジとして使えるなどという特徴もあります。各ヘッジファンドのこうした細かい特徴については、SchweserNotesに掲載されていないこともありますので、公式教材で出題された各ヘッジファンドの特徴は逐一記録していくことをお勧めします。
もう一つのリーディングは「Reading 20: Asset Allocation to Alternative Investments」です。オルタナティブ投資へのアロケに対する留意事項を学ぶものです。かなり実務よりと言いますか、実務においても知っておくべきようなコンセプトを多く含んでいます。オルタナティブ投資のポートフォリオにおける役割から始まり、オルタナティブ投資への投資機会を見つけるためのアプローチがあります。このアプローチについては頻出であり、CFAI公式テキストの章末問題とEXAMPLEの両方で問われていますので、「伝統的アプローチ」と「Risk factor based approach」の違いをしっかりと抑え、記述できるようにすることが肝要です。
もう少し敷衍すると、オルタナ資産の投資機会を探る伝統的なアプローチでは、アセットグループを流動性や経済サイクルにおけるパフォーマンスで分類することがあります。しかし、それだけですと、オルタナ資産と伝統資産で同一のリスクファクターから影響を受けるにも関わらず異なるアセットクラスとして分類されてしまい、ポートフォリオ内の分散効果が過大評価されてしまう場合があります。これは、オルタナ投資については、一部のアセットクラスにおいてfactor sensitivitiyが伝統的な資産クラスのそれと同様であることがあるためです(例:プライベートエクイティ vs 上場株、プライベートクレジット vs HY債)。そのため、アセットクラスに共通するリスクの源泉を特定することのできるrisk factor based approachを用いることで、ポートフォリオリスクの源泉を可視化できますので、オルタナ資産のどのリスクに対してどれくらいのエクスポージャーがあるのかが分かります(例:「この資産iはあの資産jと共通のリスクファクターエクスポージャーがあるため、資産kを用いた方がより高い分散効果が得られる」等)。一方、こうしたrisk factor based approachは「分析にコストがかかる;分析結果の説明が難しい」等というデメリットも併せて紹介されています。
このように、「伝統的アプローチの限界やその対案としてのrisk factor based approachのメリット」は、CFAI公式テキストの章末問題にも出ていますので、おさえておくべきです。とても大切な論点です。
繰り返しですが、「〜には欠点や限界がある。その対案として〜を用いる。」という流れは、実にLevel 3的ですね。AAにおける「MVOへの批判や限界を踏まえ、インプットの質を改善するためにRevese optimizationやBlack-Litterman modelを用いる。」という議論のアナロジーです。
続いて、オルタナティブ資産へのアロケにかかる検討事項として、投資手段・流動性・フィー・FoF or インハウスか・モニタリング方法を学びます。細かい論点を含みますが、時間をかけて理解し、覚えておくべきと思います。特に投資手法については、Limited Partnership, FoF, SMA, UCITSのメリット・デメリットについてとても細かく問うてくるCFAI公式テキストの章末問題が2022年度版カリキュラムから追加されていますので、必ず理解して整理しておくべきと思います。
ちなみに、計算問題としては、とある期間における分配の計算問題がCFAI公式テキストのEXAMPLEに出題されていました。本試験に出題されるのか否かは、定かではありません。
以上、AIでした。2022年度でカリキュラム自体は前年から変更はないものの、CFAI公式テキストの章末問題の量が質・量ともにかなり増加しました。出題割合5-10%とそこまでウェイトが大きいわけでもないのに時間を要する分野でしたので、このまま時間をかけていいものすごく苦労した覚えがあります。ただ、だからといって何か良い解決方法があったわけではなく、ちゃんと時間を捻出して真正面から向き合う、ということしかできませんでした。変に端折ってもそれは山を張っているのと同じであり、その端折った部分が本試で出題されれば不利になります。そのため、前々から十分に時間を確保し、試験で出題されうる箇所(すなわち、CFAI公式テキストの章末問題やEXAMPLEでカバーされている所)を徹底的にやり込めるだけの時間を確保することこそが肝要である、という結論に至りました。しかし、この態度が総学習時間約1,961時間につながったので、再現性があるかどうかは微妙です。
Private Wealth Management (PWM) ★★★
2020-2021年のカリキュラムでは、合計5つのリーディングがありましたが、2022年では3つのリーディングが削除され、新しいリーディング"Topics in Private Wealth Management"が新設されています。2021年度版カリキュラムから削除された3つのリーディングは、"Taxed and Private Wealth Management in a Global Context"、"Estate Planning in a Global Context"、"Concentrated Single Asset Positions"でしたが、これらのエッセンスが統合されて一つのリーディングとして2022年度版カリキュラムにおいて再編されています。2022年度版カリキュラムでは2021年度版カリキュラムにあったような一部の面倒な計算問題は削除されています。例えば、2017年の大問4にあるようなcapital gain taxesに関する、煩雑な計算問題は削除されました。
まず、大前提として、このPWMという単元は、"Private"とありますので、もちろん個人顧客に対するポートフォリオマネジメントが題材となります。IFTのRelevant Listにおいても、"Individual PM"と表現されていると思います。対して、機関投資家や年金顧客等に対するポートフォリオマネジメントについては、後のInstitutional Investorsで取り扱われています。IFTのRelevant Listにおいては、"Institutional PM"と表現されています。
なお、PWMについては、SchweserNotesは優秀です。SchweserNotesのEXAMPLEについては公式教材のEXAMPLEの縮図のようになっておりかなり網羅性があります。そして、PWMのCFAI公式テキストのEXAMPLEについてですが、単元によってその有用性が異なると思います。全体的には、非常に問題数が多く、かつ一部のCFAI公式テキストのEXAMPLEはとにかく冗長で、解き終わるのに時間がかかるがあまり試験で点数が上がるかどうかは微妙、という感じのものも複数あります。例えば、「Reading 22: Topics in Private Wealth Management」においては、Taxに関する分野のCFAI公式テキストのEXAMPLEについて、複数の問題が非常に冗長です。やる価値はあまりないと感じました。そのような冗長な部分はSchweserNotesで代用して、学習の効率化を図りましょう。一方、その他のCFAI公式テキストのEXAMPLEは長すぎることもなく、重要ですので、取り組んだ方が良いと思われます。
最初のリーディングは「Reading 21: Overview of Private Wealth Management」です。2022年度版カリキュラムは、前年度から変更がありませんでした。ファイナンシャルプランナーとして個人顧客にアドバイスを行うにあたって必要な知識・考え方に関する全般的な内容です。具体的には、顧客から受領すべき情報から始まり、顧客のセグメンテーション、Private Wealth Managerの役割、個人顧客のリスク許容度、顧客の目標達成に向けた分析手法、IPSに含まれるべき内容、ポートフォリオの運用成果のレポーティングやレビューに関するものです。特に難しい論点とは感じませんでしたが、覚えることが多いです。CFAI公式テキストでも細かく問われており、かつCFAI公式テキストの章末問題だけでは幅広い論点をカバーしきれていません。CFAI公式テキストのEXAMPLEとあわせて、広範な論点を演習を通じて学習することができるように思えます。したがって、このリーディングについては、CFAI公式テキストの章末問題とEXAMPLEの両方に取り組むべきと考えます。(CFAI公式テキストのEXAMPLEについても、冗長すぎる問題は掲載されていません。)
続いて、「Reading 22: Topics in Private Wealth Management」です。こちらは、資産運用におけるさまざまな検討材料を、広く・浅く学んでいくものです。2021年度と比べて内容の煩雑さはなくなりましたが、2021年度版カリキュラムで削除された3つのリーディングが、一気にこのリーディング一つに詰め込まれた印象です。なお、ここのリーディングについては、CFAI公式テキストのEXAMPLEはかなり冗長なものも含まれますので、注意です。学習効果が高いものもありますが、特にtaxに関する論点でひたすら長い(ただし、学習効果は微妙な)EXAMPLEが複数ありますので、それは注意を要します。既に述べた通り、SchweserNotesのEXAMPLEでも代替可能な気がしています。(taxに関する全てのCFAI公式テキストのEXAMPLEが冗長なわけでは決してありません。)
まずは、Private Wealth Managementにおける税金の影響を学びます。Taxable account, Tax-exempt account (TEA), Tax-deferred account (TDA) において、どのような将来価値になるのかを数式上で理解した上で、「どのようにtax-advantaged accountsに資産を配分していくのか」というAsset locationを学びます。全くtax-efficientな口座を用いない"Tax-indifferent allocation"、tax-efficientな口座を最大限活用する"Tax-aware allocation"、そして、taxが最も安いものをtaxable accountに入れてtaxが最も高いものをtax-exemptに入れる"Asset location-sensitive allocation"があります。
SchweserNotesのEXAMPLE「Tax location」がわかりやすかったです。それについて図解すると以下のようになろうかと思います。①~④のアセットがあった場合に、どのように課税口座や非課税口座に配分していくのか、その考え方が問われる単元となります。なお、「税金の高さ」については、数字が1に近いほど税金が高いことを表しており、また、Fixed incomeの税率はEquityの税率よりも高いという前提としています。
CFAI公式テキストのEXAMPLEでは、このSchweserNotesのAsset location、Tax locationに関する例題をさらに煩雑にしたような問題が掲載されております。ただ、SchweserNotesの例題がちゃんと理解できていればその考え方の組み合わせで対応できるため、あまり問題ないと感じました。また、このCFAI公式テキストのEXAMPLEレベルの問題が本試験に出てもおそらく誰も試験時間内に解けないと思いましたので、深追いは逆に合格から遠ざかります。
他にも税金という観点では、After-tax holding period return「税引き後の保有リターン」や、After-tax post-liquidation return「利配への課税に加えて、最終年度の含み益が実現されたと仮定した場合のキャピタル・ゲイン税も加味したリターン」等、after-taxのリターンについて学びます。2022年度版カリキュラムで新たに追加された項目です。また、PCGE (Potential Capital Gain Exposure) という、Net gains (losses)/Total net assetsという指標も紹介されており、これも2022年度版カリキュラムで追加されました。オープンエンドのmutual fundですと、誰かが解約したときにその解約資金はそのmutual fundの証券を売却することで調達されるため、その売却にキャピタル・ゲイン税がかかる場合、全投資家がその税金分を負担することになりますが、このPCGEの分子は「どれだけ含み益があるか」を示し、含み益が大きいほど、将来分配する金額は大きくなるものの税金も多くなる、ということです。
税金関連は、これらの他にも各国の課税システム(その地域で発生した所得に注目して課税されるのか(territorial tax system)、その地域に住んでいる人が課税されるのか(worldwide tax system)、それとも市民であれば課税されるのか)に関する論点もあり、ここは煩雑です。CFAI公式テキストのEXAMPLEでは非常に詳細に解説されているのですが、そもそも各国の税制や租税条約による優遇措置を考えるとそんなに単純化して考えていいのか、と疑問を持つような内容もあり、あまりしっくりきませんでした。個人的にはですが、この各国の課税システムに関するトピックについては、SchweserNotesの内容くらいを理解しておき、本番では即答できる定性問題が問われたら着実に回答しつつ、複雑な計算問題が出題されたら捨てる、という態度でいいのではないかと思います。CFAI公式テキストのEXAMPLEはかなり冗長なものを含む印象です。
[余談ここから]
なお、これは完全に余談ですが、2021年度版のカリキュラムでは、下記のような煩雑な公式を用いて、計算させるような問題がメイントピックでした。2022年度版ではこうした煩雑なトピックは丸ごとカットされているので気にする必要はありません。ただ、将来的に似たような論点が復活する可能性も考えて、備忘のために記載します。
$${FVIF_{AT}=(1+r)^{n}(1-t_{CG})+t_{CG}B}$$…(■)
※r: 税引前リターン、B: cost basis / asset value、$${t_{CG}}$$: キャピタルゲイン税率
2020年~2021年に勉強していた際、最初この式を見たとき、理解するのに苦労しました。FVIFは"Future Value of Interest Factor"のことですが、要は税引前リターンrで運用していった場合、将来価値はどのようになるのか、を求めるトピックになります。そして、この式ではBuy-and-Hold型の運用を想定しており、かつ配当収益などによるaccrual taxが発生せず、売却時に発生するtaxのみを想定している単純化されたケースです。この場合、本質的には下記のような式になるのであり、これを整理した結果として上記の式になるのだと理解すると考えやすく、応用が効きました。
$${FVIF_{AT}=(1+r)^{n}(1-t_{CG})+t_{CG}-(1-B)t_{CG}}$$…(■■)
$${FV=FVIF_{AT}}$$
FVIFはあくまで"factor"「係数」ですので、金額1あたりの割合を示します。そのため、投資開始時のポートフォリオ時価が1,000であれば、FV (Future value) を求める場合にFVIFを1,000倍します。そして、この式については、下記のように2ステップで理解します:
$${(1+r)^{n}(1-t_{CG})}$$について、n年後のポートフォリオの金額全てに対してキャピタルゲイン税が課税されるとして一旦計算する。
$${+t_{CG}}$$について、投資開始時のポートフォリオ全体には$${t_{cg}}$$で課税されないため、1.で引きすぎた分として、$${t_{CG}}$$をFVIFに足し戻す。
$${-(1-B)t_{CG}}$$について、2.で足し戻したものの投資開始時のポートフォリオ時価のうち、既に含み益になっている分にはtaxがかかるため、その分はFVIFから引く。
※Bは簿価/時価であり、投資開始時のポートフォリオ時価に対する簿価の割合を示す。よって、B<1の場合、簿価<時価ということであり含み益あることになる。
例えばですが、CFAI公式テキストのEXAMPLEの事例に沿って説明すると、配当収益等によるaccrual taxが発生しないポートフォリオ(リターン7%)を20年間運用することを考える場合、現時点での金額が1,000であったとします。ただし、金額のcost basisが800であったとし、既に200の含み益があるとします。この場合、B = 800/1000 =0.8となります。20年後に売却する(税率20%)ことを考えると、
$${FVIF=(1+r)^{n}(1-t_{CG})=(1+0.07)^{20}(1-0.2)}$$を計算して、20年後のポートフォリオの金額全てに対してキャピタルゲイン税が課税されるとして一旦計算する。
次に、投資開始時のポートフォリオ全体は$${t_{cg}}$$で課税されないため、1.で引きすぎた分として、$${t_{CG}=0.2}$$をFVIFに足し戻す。
2.で足し戻したものの、投資開始時のポートフォリオ時価のうち、既に含み益になっている分($${(1-B)t_{CG}=-(1-0.8)0.2}$$)にはtaxがかかるため、その分はFVIFから引く。
という流れになります。もし、投資開始時のポートフォリオ時価=簿価であれば、B=1ですので、上記の3.は考慮不要となります。
SchweserNotesでは(■)の整理された式が紹介されていたのですが、CFAI公式テキストでは(■■)の式が紹介されておりました。このように理解することで、そもそものコンセプトに対する理解が深まり、問題が解きやすくなりました。
さらに言えば、(■■)の式で考えることで、Accrual taxesとDeferred capital gain taxesが両方かかる、次のBlended taxationに考えるときにも応用が効きました:
$${FVIF_{AT}=(1+r^{*})^{n}(1-T^{*})+T^{*}-(1-B)t_{CG}}$$…(■■■)
※r*: Return after realized taxes、T*: Effective capital gains tax rate
r*は各期で発生するaccrualベースのtax(利子・配当・期中キャピタルゲインにかかる税金)を引いた後のリターンです。それぞれの税率を$${t_{i}}$$、$${t_{d}}$$、$${t_{cg}}$$とし、リターンにおけるそれぞれの割合を$${p_{i}}$$、$${p_{d}}$$、$${p_{cg}}$$とすると、$${r^{*}=r(1-p_{i}t_{i}-p_{d}t_{d}-p_{cg}t_{cg})}$$となります。r*は各期で発生するaccrualベースのtaxを引いた後のリターンであることが分かります。
また、T*は投資期間中に発生した未実現利益の税率です。CFAI公式テキストでは、"tax obligations from gains not yet realized"と表現されていますが、こうした運用期間中に発生する「未実現益にかかる納税義務」をT* (Effective capital gains tax rate) で計算することが出来ます 。若干わかりづらいですが、CFAIのこの単元では、未実現利益については、将来のどこかで売却によって損益が実現するまで課税タイミングが繰り延べられるような税制度を想定しています。そして、最終年度で課税される際には損益はキャピタルゲイン・ロスとして実現することになりますので、その際はcapital gainの税率$${t_{cg}}$$が適用されます。つまり、投資期間中に発生したunrealized gainsは$${T^{*}=p_{ucg}t_{cg}/(1-(p_{i}t_{i}-p_{d}t_{d}-p_{cg}t_{cg}))}$$として表されます($${p_{ucg}}$$はリターンにおける未実現利益の割合)。
これは、T*が「トータルリターンから利子・配当・期中キャピタルゲインにかかるtaxを差し引いた後の税引き後リターン」に対する「未実現利益にかかるtax」の割合であることを意味していますが、T*は「未実現利益にかかるtax」/「利子・配当・キャピタルゲインにかかる税の税引き後リターン」ですので、まさに投資期間中に発生して最終年度まで繰り延べられていく未実現利益の税率がT*です。
これにより、$${r^{*}}$$では利子・配当・キャピタルゲインにかかる税金のみを調整した後のリターンを示しますが、$${1+r^{*}}$$に$${1-T^{*}}$$を掛け合わせることで、unrealized gainsに対する税金も考慮した最終年度における残高を求めることが出来る、ということになります。
こちらについても、
$${(1+r^{*})^{n}(1-T^{*})}$$について、n年間のポートフォリオ運用において利子・配当・期中キャピタルゲイン税がかかった状態で運用されていき(Accrual tax)、最終年度末にunrealized capital gainが実現する(繰り延べられていき最終年度にcapital gain taxがかかる)。最終年度に出来上がった利子・配当・期中キャピタルゲインにかかる税の税引き後リターン全てに対して、T*で未実現益が課税されるとして一旦計算する。
$${+T^{*}}$$について、投資開始時のポートフォリオ全体の金額分に対しては「未実現益」はそもそも発生せず、T*で課税されないため、1.で引きすぎた分として$${T^{*}}$$をFVIFに足し戻す。
投資開始時のポートフォリオ時価のうち、既に含み益になっている分にはキャピタルゲイン税がかかるため、$${(1-B)t_{CG}}$$をFVIFから引く。
と理解することで、最初は「なぜ(■)の式のように綺麗にまとまらないのか?」などと思ってしまっており(■■■)を丸暗記をしていたのですが、このBlended taxationの公式についても理解を深め、ただの丸暗記を防ぐことが出来ました。もちろん試験対策的には最終的には覚えるのですが、当たり前だなと思いながら公式を用いることができ、最悪もし忘れても、一から導き出すことができるようになりました。
ただし、既に申し上げた通り、こうしたDeferred capital gain taxesやBlended taxationを論点とした問題は、2022年度版のカリキュラムでは削除されています。この類題が、2017年の過去問の大問4のPart Aで出題されていましたが、IFTのRelevant Listにおいて、2020-2021年カリキュラムではRelevantとなっておりましたが、2022年カリキュラムではIrrelevantとなっていました。
他にも、tax関連では「tax savingsを再投資しなければtax liabilityの総額は変わらない」という、2017年の過去問の大問4のPart BやCFAI公式テキストの章末問題でも紹介されている超重要論点もあったのですが、こちらも2022年カリキュラムではIrrelevantとなっておりました。taxについては、こうした細々とした論点がメインだったので、2022年のカリキュラムは2020-2021年カリキュラムから比較してかなり簡略化された部分もあります。
ここまでが、2022年度カリキュラムで削除された部分でした。
[余談ここまで]
続いて、concentrated posisionに関する論点です。ここは、2021年度までは単独のリーディングでしたが、2022年度では一つのリーディングに統一されています。ポジションの多くを占める資産(concentrated position)をどのような目的・理由で、どのようにして解消するのか、を学ぶものです。正直、ここのリーディングが、Level 3のリーディングの中でもかなり難しい部類であったように感じています。教科書を読んでいても、分かったのか・分かっていないのかが判断しづらい単元でした。もちろんCFAI公式テキストの章末問題を解くわけですが、それだけでは本文の内容を網羅できているわけではないため、そこで、CFAI公式テキストのEXAMPLEの演習が非常に有用です。EXAMPLEまで演習すると、網羅できるのではないかと思います。ただ、EXAMPLEについては学習効果が高くて理解が深まるものの、文章が長く、かつ複雑であったため、理解するのに苦労した部分もありましたので、必ずアウトプットすることを心がけておりました。つまり、「ここのEXAMPLEで言いたいことは要はこういうことである。」という様ににしてまとめておくと、2周目以降にもう一回理解するために苦労しなくて済みます。特に、2016年過去問の大問7において、morgage financingとsale and leasebackの計算問題が出題されていました。この計算問題は、CFAI公式テキストの章末問題には紹介されておらず、EXAMPLEにおいてのみ出題されていました。EXAMPLEに取り組んでいなかった当時の受験生は、面をくらったことでしょう。やはり、PWMはCFAI公式テキストのEXAMPLEも取り組むべきだと思います。ちなみに、IFTのmockでは、過去問で出題経験があるからかこの計算問題も紹介されていました。
傾向として、よくある問題の事例として、ポートフォリオアドバイザーがいて、その顧客がconcentrated positionを抱えており、その顧客のニーズ(税金を発生させたくなく、持分も変えたくない等)に沿ってどのような対象法を提案するか、という問題です。concentrated positionですと複数懸念点があるため解消すべき、という論点ですが、具体的な懸念としては、public・privateにかかわりなく、ポートフォリオがconcentratedだとinefficientである(分散されていないため)ということが挙げられます。また、private companyの株に関してconcentrated positionである場合は、private companyは①歴史が浅く事業も多角化していないためcompany specific riskが高いこと、②liquidity riskがあること、③private companyの株を設立当初から持っている場合は莫大なキャピタル・ゲイン税がかかること、等が公式テキストでは紹介されています。
さて、こうしたconcentrated positionの対処法ですが、concentratedされている対象が上場株か、未上場株か、不動産かによって、手法が異なります。以下のように、対処法(手法)毎に「持分はどうなるのか」「税金はかかるのか」という観点で問われることが多いため、その観点で整理しておくと良いと思います。特に、記述問題とは非常に相性がいい単元かと思いますので、其々の特徴も含め、しっかりと整理して書き出せるようにしておきたいところです。なお、下図の(*)の通り、Covered call writingを用いるケースでは、税金はかからない手法として公式教材(たしかmockだったと思います)では整理されていたかと思うのですが、一般的にはコールのプレミアム収入分に対して課税されることはあるため、その公式教材における妥当性は定かではありません。
最後に、Estate Planningです。こちらについては、比較的2020-2021年度カリキュラムと2022年度カリキュラムがある程度は共通しているように思えます。IFTのRelevant Listにおいて、2013年過去問の大問2がまだrelevantとなっています。
最初のトピックはEstate planningです。「財産をどのようにして生きている間に贈与するか、または死んだときに相続するか。」ということで、probate (遺言の検認) を避けて資産を譲り渡す方法や、富を移転する際の税金、そして財産に対する法的権利 (2022年度版カリキュラムではforced heirshipのみ。2021年度版では、community property rightsの論点も含まれていた) について学びます。特に、最後のforced heirship rule等に関する論点 (total estateを分けるのか・marital propertyを分けるのかを区別して計算できるようになること) は頻出で、CFAI教材の章末問題やEXAMPLEもさることながら、2018年の過去問の大問5でも出題されています。これは計算問題ですが、CFAI公式テキストの章末問題ではforced heirshipの計算問題については類題がありませんでした。EXAMPLEのみにおいて、計算問題が掲載されています。ですので、2018年に受験された方は章末問題だけを解いていた場合面をくらっていたことになります。この意味で、PWMにおいてCFAI公式テキストのEXAMPLEの演習は極めて重要かと思います。ちなみに、SchweserNotesでは類題が紹介されていました。PWMについては、Schweserはよくまとまっており結構使えると思います。
次は、Relative valueを計算する問題です。このリーディングには、一見すると煩雑な計算問題を含みます。それは、Gift now vs Bequest at deathということで、「今贈与するのと、死んだときに相続するのはどちらが得か?」について考えるための指標であるRelative valueを計算させる問題です。2021年までは色々なパターンがあり、贈与税が0になる場合、受取側が贈与税を払う場合、支払側が贈与税を払う場合、Charitable giftの場合が紹介されていました。しかし、2022年度版カリキュラムではそれがかなり簡略化され、贈与税が0になる場合、受取側が贈与税を払う場合のみしか出題されていません。これらはCFAI公式テキストの章末問題とEXAMPLEの両方で出題されています。受取側が贈与税を払う場合ですが、以下の通りとなります。(贈与税が0になる場合は、分子の$${(1-T_{g})}$$をなくすだけ。)
$${RV_{taxable\, gift}=\frac{(1-T_{g})[1+r_{g}(1-t_{ig})]^{n}}{[1+r_{e}(1-t_{ie})]^{n}(1-T_{e})}}$$
まず、贈与された金額に$${T_{g}}$$の贈与税がかかり、その後、受取側のポートフォリオでn年間運用する。運用中は、$${t_{ig}}$$の税金がかかる。($${t_{ig}}$$は、受取側のポートフォリオにおけるリターンに対する税率。)Relative valueの計算においては、全て分母がBequestであり、これは一定で$${[1+r_{e}(1-t_{ie})]^{n}(1-T_{e})}$$となります。
2022年度版のカリキュラムではこの二種類のパターンのみがRelative valueの計算問題ですので、非常に楽になりました。この計算問題は超頻出論点ですので、必ずできるようになる必要があります。CFAI公式テキストの章末問題にも重厚な問題が掲載されています。
[余談ここから]
2021年度のカリキュラムでは、最後のCharitable giftの場合が個人的には公式の意味が一番理解しづらかったです。ご参考までに、下記のような公式になります:
$${RV_{charitable\, donation}=\frac{(1+r_{g})^{n}+T_{oi}[1+r_{e}(1-t_{ie})]^{n}(1-T_{e})}{[1+r_{e}(1-t_{ie})]^{n}(1-T_{e})}}$$
Relative valueの計算においては、全て分母がBequestであり、これは一定で$${[1+r_{e}(1-t_{ie})]^{n}(1-T_{e})}$$です。この$${RV_{charitable\, donation}}$$の分子ですが、金額1がCharitable giftされたとすると、
金額1は税金無しでn年間運用できるため、$${(1+r_{g})^{n}}$$を得る
金額1×$${T_{oi}}$$の金額は、所得税額控除となる。そのため、$${T_{oi}}$$の分だけ、資金が残ると考えることが出来る
この残った資金$${T_{oi}}$$は、n年間運用された後に相続される。$${T_{oi}}$$をn年間運用すると、運用中に発生する税金を考慮すると$${T_{oi}[1+r_{e}(1-t_{ie})]^{n}}$$となる。($${t_{ie}}$$は、贈与する者のポートフォリオにおけるリターンに対する税率。)
$${T_{oi}[1+r_{e}(1-t_{ie})]^{n}}$$を相続すると、相続税率$${T_{e}}$$がかかるため、$${T_{oi}[1+r_{e}(1-t_{ie})]^{n}(1-T_{e})}$$を得る
このように理解すること、個人的には分かりやすかったです。ちなみに、Charitable giftについてはCFAI公式テキストのEXAMPLEで出題実績がありました。(当時の章末問題では出題実績なし。)
なお、このRelative Valueの計算問題ですが、全部の公式を書き出すと、
贈与税が0になる場合
$${RV_{taxable\, gift}=\frac{[1+r_{g}(1-t_{ig})]^{n}}{[1+r_{e}(1-t_{ie})]^{n}(1-T_{e})}}$$受取側が贈与税を払う場合
$${RV_{taxable\, gift}=\frac{(1-T_{g})[1+r_{g}(1-t_{ig})]^{n}}{[1+r_{e}(1-t_{ie})]^{n}(1-T_{e})}}$$支払側が贈与税を払う場合
$${RV_{taxable\, gift}=\frac{(1-T_{g}+T_{g}T_{e})[1+r_{g}(1-t_{ig})]^{n}}{[1+r_{e}(1-t_{ie})]^{n}(1-T_{e})}}$$Charitable giftの場合
$${RV_{charitable\, donation}=\frac{(1+r_{g})^{n}+T_{oi}[1+r_{e}(1-t_{ie})]^{n}(1-T_{e})}{[1+r_{e}(1-t_{ie})]^{n}(1-T_{e})}}$$
となっています。非常に覚えにくそうに見えるのですが、分母はBequestであり、全て共通です。そして分子も、$${[1+r_{g}(1-t_{ig})]^{n}}$$のパーツについては共通なんですよね。これを踏まえ、其々●と▲とおくとスッキリします:
贈与税が0になる場合
$${RV_{taxable\, gift}=\frac{▲}{●}}$$受取側が贈与税を払う場合
$${RV_{taxable\, gift}=\frac{(1-T_{g})▲}{●}}$$支払側が贈与税を払う場合
$${RV_{taxable\, gift}=\frac{(1-T_{g}+T_{g}T_{e})▲}{●}}$$Charitable giftの場合
$${RV_{charitable\, donation}=\frac{(1+r_{g})^{n}+T_{oi}▲(1-T_{e})}{●}}$$
[余談ここまで]
このリーディングでは、他にGeneration Skippingの論点、Trustの種類、ファミリーオフィスのガバナンスに関する論点があります。ファミリーオフィスのガバナンスに関する論点については、CFAI公式テキストのEXAMPLEでしか触れられていないような定性的な論点です。Generation SkippingについてはCFAI公式テキストの章末問題、EXAMPLE、過去問と出題実績がありますので、超重要かと思います。資産を孫に直接譲渡することによって、親から子への譲渡税を回避することができる、というものです。ただ、generation-skipping transfer taxes (GSTT) という税金が課せられる国もあり、こうした国では孫に直接譲渡した場合、一定の控除額を超える分については課税されます。GSTTがない場合は、孫に直接譲渡することで二重課税が避けられる、ということになります。
Trustについても、CFAI公式テキストのEXAMPLEと過去問で出題実績があります。色々なTrustが紹介されるのですが、settlor (trustに資産を譲渡する人)、trustee (譲渡される側)、beneficiary (受益者) のニーズによって、どのtrustを用いるかが変わります。例えば、beneficiaryが浪費癖のあるような人であれば、discretionary trust (settlorの要望を踏まえ、trusteeがbeneficiaryへの資金配分金額やそのタイミングを決める) を用いて、必要なタイミングでbeneficiaryに資金を渡すようにする、などという論点があります。
なお、ここも2022年度のカリキュラムでは無関係であるため蛇足ですが、大事なマインドセットであるためあえて記載します。2021年度版カリキュラムではDouble Taxationの論点があり、これについてはCFAI公式テキストの章末問題、EXAMPLEで出題実績があり、重要論点でした。かつ、Schweserで説明される計算方法とCFAI公式テキストで紹介されているそれは異なります。最終的にはもちろん同じ答えになるのですが、CFAI公式テキストで紹介される解き方の方がスムーズです。具体的には、各二重課税控除を求める税率は以下のようになります(Source jurisdictionの税率が$${T_{S}}$$、Residence jurisdictionの税率が$${T_{R}}$$とする):
Exemption method:$${T_{S}}$$
Credit method:$${Max[T_{S},T_{R}]}$$
Deduction method:$${T_{R}+T_{S}-T_{R}T_{S}}$$
こうしたものが、2021年度には公式としてSchweserには紹介されていなかったのですが、CFAI公式テキストにはありました。このように、ここで伝えたいこととしては、「EXAMPLEにしか出題されていないような公式」というものはよく言われますが、実際に過去にもありましたので、マインドセットして今後もCFAI公式テキストのEXAMPLEは要チェックであるということです。
以上が、Reading 22でした。2021年度カリキュラムの3つのリーディングを1つのリーディングに凝縮したような内容であり、内容は薄まったもののかなり負荷は高いと思います。総じて、CFAI公式テキストのEXAMPLEや章末問題は学習効果は高く、誤植もかなり少ないため非常に有用です。ただし、EXAMPLEについては、taxの論点でかなり冗長な問題が含まれていますので、それは注意です。いずれにせよ、ぜひとも、公式テキストのEXAMPLEにも焦点を当てた学習をすると、網羅性が相当に高まるかと思います。
最後のリーディングは、「Reading 23: Risk Management for Individuals」ということで、個人のリスクマネジメントです。human capitalとfinancial capitalの理解、AAでも紹介されたeconomic balance sheet、個人のあらゆるリスクのヘッジのための保険商品、年金商品などについて学びます。
記述問題でも出題されやすいと思われるのが、"Typical risks for individuals"です。企業とは異なり、個人には「死ぬ」というイベントがあるため、早死リスク・長生きリスクとうい考え方は当然生まれます。また、ケガによって収入が減るリスクや、物損によって賠償責任を負って支出費用が増えるリスクもあります。こうした個人に伴う種々のリスク(Earnings risk, Premature death risk, Longevity risk, Property risk, Liability risk, Health risk)を、生命保険、損害保険、年金といったツールのどれを用いてヘッジすることができるか、という論点は記述問題とも相性が良いため、準備しおくと良いと思います。
このリーディングの計算問題の頻出は、"Net payment cost index"や"Net surrender cost index"と呼ばれる、単位当たりの保険コストの将来価値を計算する問題です(後者では、保険解約時の解約返戻金も加味。)この計算では、CFAI指定の計算機のBGNモードとENDモードを切り替えて計算する必要があるため、要注意です。Level 3でBGNモードを使用するのはこの論点のみであるため、切り替え方を忘れると死にます。保険コストはpremiumの支払いから配当の受け取りを差し引く形で計算されるわけですが(Net surrender cost indexの場合、さらに解約返戻金も差し引く)、premiumの支払いは各期初に支払われるとして、BGNモード (annuity due) で計算します。配当については、各期末に発生するとしてENDモード (ordinary annuity) で計算します。CFAカリキュラムではほとんどがENDモードでの計算となりますので、通常はENDモードに設定しておいて、必要な時だけBGNモードにするようにすると良いと思います。ちなみに、BA II Plusでは、2ND → PMT → 2ND → ENTER でBGNとENDを切り替えることが出来ます。何回も切り替える練習をして、体に染み込ませると良いです。
もう一つ、このリーディングでの計算問題の頻出は、「どれくらいの保険が必要になるのか。」という論点の計算問題です。これは重要です。この計算問題は、CFAI公式テキストの章末問題で紹介されていますし、テキスト本文のEXAMPLEではないBlue Boxでも紹介されています。ちなみに、この「どれくらいの保険が必要か」という論点は、「Reading 29: Case Study in Risk Management: Private Wealth」でも紹介されております。ただ、他のパートで述べたのですが、この計算問題はかなり手間です。表から必要な数値を漏れなく読み取って、discount rateをadujsted discout rateすることやannuity dueにすることを忘れずに計算し、total capital availableを正しく表から読み取って計算し、それを差し引いてやっと正解に辿りつきます。試験本番で出題された場合、いったん飛ばすのもありかと思います。
このリーディングにおけるCFAI公式テキストのEXAMPLEについてですが、合計17問ありますが、どれも問いたいポイントを絞った問題であり、無駄に長いものはありません。また、全部解くとリーディングの内容を幅広くカバーできるような構成になっているかと思いますので学習効果はとても高いと感じました。
長くなりましたが、PWMについては以上となります。定性的・定量的論点を数多く含み、負荷の高いセッションです。CFAI公式テキストの章末問題はもちろんのこと、かなり冗長な問題は除きEXAMPLEの有用性も高いです。
Trading, Performance Evaluation (TPE) ★★★
こちらの単元は3つのリーディングがあります。"Trade Strategy and Execution"、"Portfolio Performance Evaluation"、"Investment Manager Selection"です。どの単元も実務寄りな内容であり、個人的には非常に面白かったですし、また勉強になりました。また、2022年度は前年度とカリキュラムの変更がなかったものの、TPEのCFAI公式テキストの章末問題は大幅に拡充されました。そのため、CFAI公式テキストの章末問題をちゃんとやりこめば、必要な論点を幅広くカバーできるようになっていると思います。
最初のリーディングは「Reading 25: Trade Strategy and Execution」です。こちらは、暗記も計算問題も両方ともバランスよく含まれています。トレーディングの動機に始まり、其々においてどのようなトレーディング手法が最も適しているのか、について学びます。続いて、トレーディング戦略を実行する際に考慮すべき事項について学習します。例えば、Absolute size(取引の絶対額)が大きいほどmarket impactがあることや、market impactとexecution riskのトレードオフ(Trader's dilemma)などです。加えて、トレーディングのベンチマーク(VWAPやTWAPなどのIntraday benchmarks)の学習、最適なトレーディングのアルゴリズムの選択と続きます。
特に、アルゴリズムの選択については、指定された状況をUrgency・Size・Liquidityで分類して、それぞれの高低・大小に合わせたアルゴリズムアプローチはどれかを即座に選択出来るようになることが求められます。例えば、Urgency: High, Size: Small, Liquidity: Highの場合は、Arrival price algorithmを用います。目的はexecution risk(ゆっくり取引をし過ぎることによるリスク)を減らすことです。オーダーが取引所に到着したときの価格(Arrival price)での取引を目指すような状況なので、こうした状況下では素早く取引を行うことが求められるため、Higher urgencyとなります。また、orderがsmallでないと取引しづらく、かつ流動性がないと素早く取引することが出来ないため、higher liquidityとなります。また、Urgency: Low, Size: Small, Liquidity: Highの場合は、Scheduled algorithmsが用いられます。こちらは、market impact (取引を急ぎ過ぎることによるコスト)を減らすことが目的です。Less urgencyによって、これが実現されます。
このように、状況ごとの特性を細かく理解した上で適切なアルゴリズムを選択できることが求められます。この論点については、CFAI公式テキストの章末問題には必ずしも全ては網羅されておらず、本文中の問題("Trade Strategy and Execution"のリーディングにおいては、CFAI公式テキスト本文中の問題は"EXAMPLE"ではなく"IN-TEXT QUESTION"という表記になっていました)で詳しく紹介されていました。IN-TEXT QUESTIONについては、Liquidity seeking algorithms、Scheduled algorithms、Profit-seeking algorithms以外は全て紹介されていたと思います。内容を理解するにはうってつけでしたので、IN-TEXT QUESTIONにも取り組んでおくと良いです。
最後は、Implementation shortfall (IS) です。CFAI公式テキストに、"The implementation shortfall (IS) metric is the most important ex post trade cost measurement used in finace."と書かれていますが、IS法とは、株式売買の事後コストを測定する方法です。IS = Paper Return - Actual Returnとして定義されています。このIS法では色々なコストを求めるための式が紹介されるのですが、覚えるのが面倒でした。そこで、個人的には下記のような図を書いて解くと、視覚的な助けを得られて非常に分かりやすかったです。もちろん私が考案したわけではなく、社内の他の受験生に教えてもらいました。
この例では、30K株買おうと決めたものの、実際には20K株しか買えなかった、という例です。図1からもわかる通り、ISはPaper Return - Actual Returnというようにトップダウンで求めてもよいですし、図2のようにOpportunity cost + Delay cost + Trading cost + Fixed feesというように積み上げ方式でボトムアップ的に求めても良いわけです。どちらで求めても、逆L字型の同じ図形が指し示す結果となり、同じ答えになります。図を書くことで、非常にすっきりとこのあたりの関係性がわかるため、重宝していました。
また、IS法学習の流れで、Delay costやOpportunity costの軽減方法はCFAI公式テキストの章末問題、IN-TEXT QUESTIONの両方で記述で出題されておりました。Level 3的な視点でも記述で出しやすいかと思いますので、要チェックです。
他の計算問題の論点として、"Market Adjusted Trade Cost"というものがあります。要は、Decision priceからArrival priceにかけて大きく価格が上がってしまったとしても、一概にそれをトレーダーの能力の欠如に帰結させることは出来ず、市場の影響も加味する必要がある、ということです。もしマーケットが大きく動いていたのであればすべてトレーダーのせいとも限らない、ということにもなります。indexのArrival priceと比較したindexのVWAPの上昇率をindex costとして、「index cost×βは、仮にトレードをしていなかったとしても生じていた」として、市場の影響を取り除こうとするものです。この論点については、CFAI公式テキストの章末問題と本文中のIN-TEXT QUESTIONでの出題されています(2021年度までは章末問題では、Market Adjusted Trade Costの計算問題は出題されていませんでしたが、2022年度カリキュラムの章末問題拡充の中で追加されました)。
最後は、Trade governanceについて学びます。"best execution"というのが、単に「最安値で取引執行すること」ということではなく、総合的にみて顧客本位の取引となっているのかを考えよ、という内容を含みます。要は、commissionが低くてもDelay costやTrading costが上がったら意味ない、ということです。CFAI公式テキストの章末問題・本文中のIN-TEXT QUESTIONともに出題されており、重要な論点です。
次のリーディングは、「Reading 26: Portfolio Performance Evaluation」です。ここでの主なトピックは、Brinson-Hood-Beebower (BHB) methodとBrinson-Fachler (BF) methodによる、return attributionの計算です。BHB methodについては証アナの2次やLevel 2でも紹介されていたかと思いますが、total active returnをallocation effect、selection effect、interaction effectの3つに分類したものです。しかし、BHB methodだと特定のセグメントをオーバーウェイトまたはアンダーウェイトした判断の評価が含まれていない、という欠点があります。例えば、Growthにベットしたスタイルだった場合、「そもそもこのマーケット局面でグローススタイルへのベットが正しかったのか」ということがBHB methodではわからない、ということです。そこで、BF methodでは、スタイルベンチマーク$${B_{i}}$$ と全体ベンチマーク$${B}$$の差額に対して、スタイルのアクティブウェイト$${w_{i}-W_{i}}$$に乗じることによって、その欠点を補完します。具体的には、以下のような式になります:
BHB method:$${Alocation\, effect_{i}=(w_{i}-W_{i})B_{i}}$$
BF method:$${Alocation\, effect_{i}=(w_{i}-W_{i})(B_{i}-B)}$$
グローススタイルのベンチマークリターンが5%だったとして、グロースのアクティブウェイトが10%ならば、BHB methodではAllocation effectは$${0.1\times 5\%=0.5\%}$$となります。しかし、そもそもベンチマークのトータルリターンが20%だったとすると、「なぜグロースなんかにベットしていたのか。」となりますよね。この評価を勘案するのがBF methodであり、Allocation effectは$${0.1\times (5\%-20\%)=-1.5\%}$$となります。つまり、他のスタイル(バリュー等)にベットしておくべきだった、ということです。
なお、BF methodでもselection effectやinteraction effectについては、BHB methodと違いはありません。また、BHB methodやBF methodの問題を解くときは、図を書いて問題を解いていくことになろうかと思います。証アナを勉強されていた方はボックス図を使われていたかと思いますが、ここでもこれがそのまま使えます。各種effectについては式で覚えるのではなく、必ず図を書いて解くようにすると負荷もミスも減ります。
その他には、risk attribution approachということで、ボトムアップ・トップダウン・ファクターベースといった投資プロセス毎のリスク分析手法について学ぶ論点がありますが、ここは重要論点です。CFAI公式テキストの章末問題とEXAMPLEでも繰り返し出題されています。続いて、負債ベースのベンチマークや資産ベースのベンチマークについて学習します。特に、valid benchmarkの条件は、全て記憶しておいた方が良いです。(例:Measurable: Daily reported perforamcne is available.)CFAI公式テキストの章末問題でも、問われている内容です。
最後に、Performance appraisalを行う上での各種指標について学びます。Sharpe ratioやTreynor ratio、Information ratioについては馴染みのある指標かと思いますし、証アナでもよく学習したことかと思います。一方、Appraisaal ratioやSortino ratio、Capture ratioについては、初めて学習しました。各種指標の計算については、CFAI公式テキストの章末問題かEXAMPLEの少なくともいずれか一方には出題されており、必ず全て理解して計算できる必要があると思います。特に、Capture ratioについては、重要です。Caputure ratioがどのような場合にpositively asymmetrical (convex) になるのか、といったことは、必ず理解しておいて下さい。他にも、Appraisal ratioについては、CFAI公式テキストの章末問題では出題されておらずEXAMPLEのみでの出題でしたが、経験しないと絶対に解けないので、CFAI公式テキストのEXAMPLEも解いておくと良いと思います。(SchweserのEXAMPLEには掲載されていました。)
ちなみにAppraisal ratioは$${\frac{\alpha }{\sigma_{\varepsilon}}}$$として計算するわけですが、分母の$${\sigma_{\varepsilon}}$$の求め方については、下記のようにして求める方法がCFAI公式テキストでは紹介されています。
$${\sigma_{\varepsilon}^{2}=\sigma_{i}^{2}-\beta^{2}\sigma_{m}^{2} }$$
一方、2021年の試験用のSchweser mockでは、決定係数$${R^{2}}$$と全変動の全平方和 (the total sum of squares; SST)を用いて、$${\sigma_{\varepsilon}^{2}}$$を計算している問題が掲載されていました。具体的には、$${R^{2}=1-\frac{SSE}{SST}}$$より、$${SSE=\sigma_{\varepsilon}^{2}=(1-R^{2})SST=(1-R^{2})\sigma_{i}^{2}}$$と計算して、SSE (the sum of the squares of the errors; $${\sigma_{\varepsilon}^{2}}$$) を算出する方法です。
しかし、この手法って、やっていることは完璧に正しいのですが、どう見てもLevel 2のQuantitative Methodsの論点なんですよね。これをLevel 3で使わせるって、Schweserは頭おかしいと心底思っていました。
さらに面白いのが、この決定係数からSSEを算出するような問題がCFAI公式テキストのEXAMPLEにも掲載されていたのですが、2021年カリキュラム用のerrataで削除されていたことです。EXAMPLE 11の#5での問題だったのですが、errataでは、"In Example 11 (page 221 of print), question 5 should be deleted."となっております。2022年度版のカリキュラムの該当箇所においても、決定係数を用いてSSEを計算させる問題は掲載されなくなっていました。Schweserが、この2021年試験用のCFAI公式テキストのEXAMPLEを参考にしてSchweser mockで類題を掲載したとしたら、公式教材を研究していたことは良いことだと思います。しかし、errataの更新を反映出来ていないのは、Schweserも詰めが甘かったのではないか、と思います。(出版してからでも、誤植として公式HPに公表するなどの対応は出来たはずです。)
最後のリーディングは、「Reading 27: Investment Manager Selection」です。マネージャーのDD (Due Diligence) に始まり、マネージャーを選ぶ際の様々な分析手法や分析観点について学びます。マネージャーセレクションの実務をやられている方にとっては、常識的な内容かもしれません。個人的には、覚えることが結構多く、細かいです。そしてCFAI公式テキストの章末問題だけではカバーしきれておらず、EXAMPLEも合わせて学習することでカバレッジが広がり、より効果的な学習が可能となりました。また、このリーディングでは、複数の成功報酬タイプをもとにした計算問題も出題されています。初見では対応するのが難しいと思いますので、必ず事前に経験しておくべきだと思います。
ここまで述べて来ました通り、TPE全体に言えることですが、CFAI公式テキストの本文中の問題演習は非常に有用かと思います。無駄に長いだけの問題ではなく、幅広い暗記事項をカバーするのに資するような問題でした。CFAI公式テキストの章末問題だけでは、暗記事項を網羅するのには足りないんですよね。もちろん、テキスト本文中の問題を全てやったとしても網羅できるかと言えばそういうわけではないのですが、スコアアップには大いに資すると思います。
Institutional Investors (II)★☆☆
こちらは、「Reading 24: Portfolio Management for Institutional Investors」という一つのリーディングのみを含むStudy Sessionになります。PWMは個人に関するポートフォリオマネジメントでしたが、IIでは機関投資家や年金基金等を相手にします。具体的には、年金基金、ソブリンウェルスファンド、大学基金、私立財団、銀行、保険会社です。これらファンドの投資目的、負債特性、投資期間、流動性ニーズ、リスク許容度、投資リスクを左右する要因が、主な内容です。これらはCFAI公式テキストの章末問題おいても繰り返し問われていますので、CFAI公式テキストで出題されている箇所は必ず整理して覚え、書けるようになる必要があります。かなり細かい内容を含みますが、各々で共通している内容もあるため、個人的にはPWMよりは取り組みやすかった印象でした。
最初に、機関投資家等のアセットアロケーションのアプローチが紹介されています。"Norway's sovereign welath fund"、"Yale University endownment"、"Canada Pension Plan"、"Liability driven"の4種類のモデルが紹介されているのですが、特に"Norway's sovereign welath fund"と"Yale University endownment"の違いは重要です。CFAI公式テキストの章末問題においても、かなり繰り返し問われている論点で、章末問題においてはConstructed Reponse形式でも出題されています。"Liability driven"についてはCFAI公式テキストでの出題実績はないと認識しておりますが、基本的なコンセプトはAAでも紹介されていた通りです。
CFAI公式テキストの章末問題で問われているポイントを抜粋して紹介しようかと思います。"Norway's sovereign welath fund"について、これは株:債が60%:40%などのアロケーションのパッシブ運用で、オルタナ資産へのエクスポージャーはありません。そのため、トラッキングエラーが少ないです。コストやフィーが小さいことや経営幹部への説明が容易であることがメリットである一方、リターンが小さいことは当然デメリットとなります。一方、"Yale University endownment"について、これはオルタナティブ投資へのエクスポージャーが大きく、アクティブ運用であることが特徴です。かつ、運用が外部委託される(Externally managed assets)ことももう一つの大きな特徴であり、高いリターンを見込めることがメリットの一つです。デメリットとしては、先ほど運用が外部委託されると言いましたが、小さな機関投資家の場合はhigh-qualityの運用マネージャーにアクセスすることが難しいことが挙げられています。また、外部運用やオルタナティブ運用を活用するため、フィーが高くなりがちです。
これら"Norway's sovereign welath fund"、"Yale University endownment"の二つが最も出題されているのですが、"Canada Pension Plan"についても、CFAI公式教材では少し出題されていました。このモデルではオルタナ資産へのアロケーションが大きいことは"Yale University endownment"と共通なのですが、インハウス運用(Internally managed assets)という点が"Yale University endownment"との違いです。この「インハウス運用」という特徴は、CFAI公式教材でも出題実績はありました。
このあたりは分かりやすく、万が一本試験で問われたら誰でも正解しやすい論点と思いますので、こうした部分を忘れてしまうのはとてもきついと思います。必ず抑えておきましょう。
続いて、年金基金に関する話題です。年金基金、ソブリンウェルスファンド、大学基金、私立財団、銀行、保険会社の中では、年金基金が一番重点的に論点となっていると思います。
年金基金は、DC(Defined Contribution: 確定拠出型年金)とDB(Defined Benefits: 確定給付型年金)の二種類がありますが、まずはこれらの違いについて理解する必要があります。「Benefit payments: 給付金」、「Contributions: 資金の拠出」、「Investment risk: 運用リスク」、「Mortality/longevity risk: 死亡/長生きリスク」の特徴について、DBとDCの違いがCFAI公式テキストのEXAMPLEでは重点的に出題されていました。DBでは給付額は契約で決まっており、shortfall riskは雇用主が負いますが、DCではパフォーマンスによって給付金は異なり、かつshortfall riskは従業員が負う、という点はLevel 2でも学習済の論点かとは思います。また、「Mortality/longevity risk: 死亡/長生きリスク」についてですが、DBの場合は長生きリスクは雇用主が負い、DCの場合は各個人(従業員)が負うことは意識しておくべきポイントです。CFAIのこの単元では、DBの受給期間は終身であることを前提としているようです(日本では、終身とするもの、期限を定めるもの、それぞれあるかと思います)。DBの場合、各個人毎の口座ではなく年金全体として運用が行われるため、想定より長生きした人の年金給付分は、想定より早く死亡した人へ支払われるはずであった年金給付分によって賄われることになります。一方、DCの場合、各個人がそれぞれの口座で資産運用しますので、資産の取り崩し方も自由です。そのため、とある個人が90歳まで生きることを前提にして資産運用・取り崩しを行っていき、実際には91歳より先もさらに長生きした場合には、その長生きリスク(91歳以降は資金が不足するリスク)はその人が負うことになります。
DB・DCの基本的な区分については以上の通りですが、年金基金については、CFAI公式テキストのEXAMPLEや章末問題では、その後はDBに関する論点がメインになっています。Level 2でもそうでしたが、CFA試験の対象になるのは大半がDBでした。DBの論点としては、DBにおけるステークホルダーに加え、「とあるファクターがDB年金基金の負債に対してどのように影響するか」という点が問われています。例えば、給料が上昇した場合、負債はどうなるのか、ということです。通常、最終の給料と給付額はリンクしていますので、給料が上がれば給付額を支払いも上昇し、それに見合う負債も上昇します。こうした「とあるファクターと負債の関係」という点については、全てのファクターについてではありませんが、CFAI公式テキストの章末問題やEXAMPLEにおいて問われています。
もう一つ、DBに関するリスク許容度の大小が紹介されています。これはCFAI公式テキストの章末問題で重点的に問われており、かつEXAMPLEでも重ねて出題されていますので重要かと思います。例えば、sponsor企業と年金基金が共通のリスクファクターをもっていなければ、基金としてのリスク許容度は上昇します。業績やリターンに相関が小さく、片方の業績が悪くとも業績の悪化をカバーし合えるからです。また、早期退職に対して一時金を払うタイプの年金である場合、基金としてのリスク許容度は低下します。これは、早期退職の一時金支払いに対する支払いのため投資期間が短くなり、短期的な損失があった場合にそれを取り戻すための時間が短いため、あまりリスクが取れないからです。こうした、「この年金基金のリスク許容度はどれくらいか」という設問はCFAI公式教材では頻繁に問われている印象ですので、必ず記述形式でも回答できるように準備しておく必要があります。
続いて、ソブリンウェルスファンド(SWF)です。SWFは政府がオーナーとなる政府系のファンドのことですが、IMFの分類によると5種類あるのですが、CFAI公式テキストの章末問題とEXAMPLEで取り上げられているのは"Pension reserve funds"のみでした。これはその国の将来の年金負債の支払いのために運営されるファンドのことで、投資期間が長期であるものの、資金の拠出が行われる"accumulation stage"と、実際に給付が行われる"decumulation phase"では投資期間は異なることは、CFAI公式テキストの演習問題において出題されていました。また、Pension reserve fundsのLiquidity NeedsについてもCFAI公式教材では出題実績があり、"accumulation stage"と"decumulation phase"では流動性ニーズが異なる、という論点が問われています。
続いて、大学基金です。大学基金については、CFAI公式テキストのEXAMPLEにおいて計算問題も出題されています。冒頭で、各機関投資家について、投資目的、負債特性、投資期間、流動性ニーズ、リスク許容度、投資リスクについて、CFAI公式テキストで重点的に問われている論点は抑えておくことが重要であるとお伝えしましたが、特に大学基金では、投資目的(Investment Objectives)についてCFAI公式テキストの章末問題やEXAMPLEで直接問われています。Investment ObjectivesについてCFAI公式テキストの章末問題やEXAMPLEで直接問われるのは、大学基金のみです。ですので、以下のような文言はそのまま丸暗記しておいてもよいと思います:
"maintain purchasing power"「購買力を維持する」という点ですが、これは運用資産規模を維持するということです。大学基金は大学の運営予算をサポートすることを目的としますが、運用資産規模を小さくしていってしまうということは資産の切り崩しを意味しますので、運用資産規模を維持しないと継続的なサポートが出来なくなってしまいます。そのため、"maintain purchasing power"は必須の条件となってきます。
これを踏まえ、計算問題では「ある大学基金は名目ベースでX%稼ぐ必要があるが、現状ではY%しか稼げていないので、新たなアセットアロケーション(資産クラスの追加)を検討する。」という趣旨の流れの計算問題が、CFAI公式テキストのEXAMPLEにおいて出題されています。
なお、CFAI公式教材においては、上記のようにMissionとInvestment Objectivesは区別して用いていますのでご注意下さい。どちらも趣旨の方向性は似ていますが、Missionは経営理念的なものであり、それを達成するための具体的な指針がInvestment Objectivesです。CFAI公式教材でも区別されています。
また、銀行や保険会社のバランスシートの分析についても紹介されています。以下の公式を用いた計算問題は重要ですので、必ず抑えた方が良いです。CFAI公式テキストの章末問題、EXAMPLEでも出題されています。
$${D_{E}=D_{A}\times \frac{A}{E}-D_{L}\times \frac{\Delta _{i}}{\Delta _{y}}\times(\frac{A}{E}-1)}$$
また、この式の導出としては、以下の様に考えていました。
まず、$${A=L+E}$$という式がある。ここから、$${\Delta A=\Delta L+\Delta E}$$を得る。$${\Delta A}$$、$${\Delta L}$$、$${\Delta E}$$其々の項に、$${\times \frac{A}{A}}$$、$${\times \frac{L}{L}}$$、$${\times \frac{1}{E}}$$を行い、$${L=A-E}$$であることに注意して整理すると、以下の式を得る:
$${\frac{\Delta E}{E}=\frac{\Delta A}{A}\times \frac{A}{E}-\frac{\Delta L}{L}\times(\frac{A}{E}-1)}$$
この両辺に$${\times \frac{1}{\Delta y}}$$、右辺の第二項に$${\times \frac{\Delta i}{\Delta i}}$$を行うと、以下の式を得る:
$${\frac{\Delta E}{E\Delta y}=\frac{\Delta A}{A\Delta y}\times \frac{A}{E}-\frac{\Delta L}{L\Delta i}\times\frac{\Delta i}{\Delta y}\times(\frac{A}{E}-1)}$$
$${\frac{\Delta E}{E\Delta y}=-D_{E}}$$、$${\frac{\Delta A}{A\Delta y}=-D_{A}}$$、$${\frac{\Delta L}{L\Delta i}=-D_{L}}$$であることに注意して整理すると、上で紹介した式になる。
繰り返しますが、この式を用いた計算問題については必ず抑えた方が良いと思います。
他にも、下記の公式があります。
$${\sigma^{2}_{E}=(\frac{A}{E})^{2}\sigma^{2}_{A}+(\frac{A}{E}-1)^{2}\sigma^{2}_{L}-2(\frac{A}{E})(\frac{A}{E}-1)\sigma_{A}\sigma_{L}\rho_{AL}}$$
この式の導出としては、とあるポートフォリオPが株式Aと株式Bで構成されている場合、分散$${\sigma^{2}_{P}}$$が$${\sigma^{2}_{P}=w_{A}^{2}\sigma^{2}_{A}+w_{B}^{2}\sigma^{2}_{B}+2w_{A}w_{B}\rho_{AB}\sigma_{A}\sigma_{B}}$$
と表されることを使います。
ここで、上で出現した式を再掲します。
$${\frac{\Delta E}{E}=\frac{\Delta A}{A}\times \frac{A}{E}-\frac{\Delta L}{L}\times(\frac{A}{E}-1)}$$
この式を以下のように変形します。
$${\frac{\Delta E}{E}=\frac{\Delta A}{A}\times \frac{A}{E}+\frac{\Delta L}{L}\times(1-\frac{A}{E})}$$
$${\frac{\Delta E}{E}}$$というのは、要は$${r_{E}}$$ということです。Eというポートフォリオが、AとLから構成され、かつ各々の比率が$${\frac{A}{E}=w_{A}}$$、$${1-\frac{A}{E}=w_{L}}$$であると考えて、上の式は$${r_{E}=w_{A}r_{A}+w_{L}r_{L}}$$と表現出来ます。
これらを踏まえると、以下のようになります:
$${\sigma^{2}_{E}=w_{A}^{2}\sigma^{2}_{A}+w_{L}^{2}\sigma^{2}_{L}+2w_{A}w_{L}\sigma_{A}\sigma_{L}\rho_{AL}}$$
$${\sigma^{2}_{E}=(\frac{A}{E})^{2}\sigma^{2}_{A}+(1-\frac{A}{E})^{2}\sigma^{2}_{L}+2(\frac{A}{E})(1-\frac{A}{E})\sigma_{A}\sigma_{L}\rho_{AL}}$$
この符号を調整すると、上で示した式になります。
$${\sigma^{2}_{E}=(\frac{A}{E})^{2}\sigma^{2}_{A}+(\frac{A}{E}-1)^{2}\sigma^{2}_{L}-2(\frac{A}{E})(\frac{A}{E}-1)\sigma_{A}\sigma_{L}\rho_{AL}}$$
この式の意味は、AssetとLiabilityの変動の相関を示す$${\rho_{AL}}$$が高いと、$${\sigma_{E}}$$も小さくなるということで、ALMではAとLの相関を高めるべきである、ということを示唆しています。また、財務レバレッジを引き下げることによって$${\sigma_{E}}$$、つまりEquity部分の分散も減少する、ということがこの式から分かります。
なお、この公式については、問題演習としてはCFAI公式テキストの章末問題には1問しか出題されていません。EXAMPLEにおいて複数の問題がありましたので、この公式の練習に関しては、EXAMPLEの演習も併せて行うのもありかとは思います。
総じて、このリーディングの記述問題については、過去問でも頻出であることからわかる通り、記述問題として非常に出題しやすい内容です。記述でアウトプットできるようになることが必須となります。CFAI公式テキストの章末問題には、たくさんの記述問題が出題されていますので、とても参考になります。また、計算問題については、練習をしておかないと速やかに解けないですし、公式をうろ覚えの状態で一から導出するとなると時間がかかりますので、必ず覚えておきましょう。「忘れても試験会場で導けばいい」というのは、やっていることは正しいですが、時間制限有りの試験に対する対策としてはNGだと思います。
最後に、ここのリーディングにおけるCFAI公式テキストのEXAMPLEの有用性についてです。すべてのEXAMPLEが必ずしも有用かというと、そうでもないように思えます。もちろん、CFAI公式テキストの章末問題には出題されていない公式があると上に書きましたが、SchweserNotesに紹介されていないわけでもないので、SchweserNotesを使用している人であればそこでカバーすることが出来ます。それ以外については、EXAMPLEならではの論点があったわけではないようにも思えますので、際立ってCFAI公式テキストのEXAMPLEの重要性があるかと言えば、そうでもないように思えます。
Case Study in Portfolio Management (CIPM):★★☆
このケーススタディのセッションは、公式テキストの解説がとにかく長いです。2022年度はリーディングが一つ追加され、3つのリーディングから構成されており、新しいリーディングは機関投資家のファイナンシャルリスク、ERM、ESG(特にEとS)に関するリスクといった論点であり、昨今の実情に沿った話題が紹介されています。
2021年度カリキュラムでは章末問題もなかったため、どこを中心に学習すればよいのかも見当がつきづらく、ただの読み物的なセッションでした。2021年度は、章末問題がこのStudy Sessionには掲載されていなかったため、「章末問題がない=本番では出題されない」と希望的に捉えていたのですが、2022年度のカリキュラムでは、新リーディング以外には章末問題も追加され、かつmock examでも出題されていましたので、ヤマを張らない限りはやらざるを得ないというリーディングです。
ただ、このスタディセッションはかけた時間の割にには点数に結びつかない可能性が高いと思いますので、深追いは禁物です。mockでもほとんど出題されていませんし、Reading 30については章末問題も整備されておらず、こうしたリーディングが試験で中心的な出題範囲になるとはあまり思えません。仮にたくさん出題されたとしても、他の受験生も演習量の不足によって点数を稼ぎにくいと思いますので、差がつきにくいかと思います。
この意味では、このStudy Sessionについては、SchweserNotesがとても使えます。EXAMPLEはないのですが、MODULE QUIZがCFAI公式テキストのIN-TEXT QUESTIONで問われているような話題をカバーしていました。また、本文についても過不足なくカバーしており、公式テキストの本文を読み込むよりもSchweserNotesを信用して、Notesで学習する方がはるかに効率が良いと感じます。ですので、SchweserNotesを中心に学習し、学習の経済化を図った方が賢明だと思います。
まず、「Reading 28: Case Study in Portfolio Management: Institutional」です。このリーディングでは、機関投資家のポートフォリオマネジメントについて、とある大学基金のケーススタディをもとに、その機関投資家の流動性リスク、それに基づくアセットアロケーションや資産クラス調整のためのデリバティブや現物の活用(Cash Market(ここではデリバティブに対して現物株という意味合い)とDerivateves Marketの対比)、その機関投資家の流動性のマネジメント等を学びます。また、マネージャーセレクションにおけるCode and Standardsの違反について指摘する論点もありますので、ある種これまでの総合的な理解が問われる部分でもあります。
計算問題としては、illiquidity premiumをモデリングする方法が二種類あります。ただ、これについては公式テキストでの問題としての出題実績はなかったと理解していますので、必修かどうかというと定かではありません。一方、デリバティブや現物を活用した資産クラスのエクスポージャー調整については、公式テキストの章末問題やEXAMPLEでも問われているため、学習しておくべきかと思います。要は、マーケット変動に応じてアロケーションに変化が生じるためポートフォリオのリバランスが必要となるが、Cash MarketとDerivateves Marketのどちらを使うのか、という論点です。本文ではETF、Futures、Total Return Swap (TRS) のコストを計算させて各々を比較させて、どれにcost advantageがあるか、を考えさせる問題がありました。また、定性的な論点としては、短期のリバランスの場合はDerivative Marketを用いて、リバランスが大規模であり長期のリバランスとなる場合には、現物株の購入等でCash Marketでのリバランスを選択する、という論点も公式テキストでは出題されています。例えば、公式テキストの章末問題では、「直近四半期でとある資産クラスに大規模なsell-offがあり、ポートフォリオもその資産クラスでアンダーウェイトになった。そのsell-offは一時的なものだが、リバランスしたい。Cash MarketとDerivatives Marketのどちらを利用すべきか。」という趣旨の問題があり、「derivativesだとトラッキングエラーやオペレーショナルリスクが高まるものの、短期的なリバランスであればデリバティブを選ぶ」といった感じで紹介されていました。
総じて、このリーディングではEXAMPLE (このリーディングではIN-TEXT QUESTIONSと呼ばれている) については、無駄に長いものが多く、やってもいいですが優先事項ではないかと感じました。SchweserNotesでカバーできます。
続いて、「Reading 29: Case Study in Risk Mnagement: Private Wealth」です。こちらは、個人(家計)の各々のライフステージにおけるリスクやその対策を検討するものです。個人のライフステージは、Early career stage⇒Career development stage⇒Peak accumulation stage⇒Early retirement stageと変化しますが、その中で種々のリスクがあります。これを踏まえ、CFAI公式テキストその中で主に問われている論点としては、とある人物がどのライフステージにいて、どのようなリスクに直面しているのかを答える問題が挙げられます。この問題はmockでも出題実績があります。また、Earnings riskやPremature death riskに対して、保険の必要額について計算する問題も紹介されています。特にCFAI公式テキストのEXAMPLEや章末問題では、後者の生命保険の必要保障額について計算させる問題が頻出であり、このリーディングの計算問題としては最重要論点となります。なお、PWMのところでもお伝えしました通り、PWMにも同じような計算問題は出題されています。
この生命保険の必要補償額の計算問題については、二つのmethodがあります。一つは"Human life value method"「死んだ人の価値がどれくらいか、をもとに必要補償額を計算する方法」であり、もう一つは"Needs analysis method"「残された人がどれくらいの保障額が必要か計算する方法」の二つです。どちらを使うかは、"〇〇 suggests using the needs analysis method to determine the required insurance amoaunt."などのように、本文の中で指定されています。
ただし、個人的にですが、何度も述べている通り、この「生命保険の必要保障額計算」という問題はかなり面倒だと思いました。CFAI公式テキストの章末問題やEXAMPLEでも出題されている超重要論点であることは間違いないのですが、私は試験当日の最後の最後まで慣れませんでした。そもそも、正答にたどり着くまでのハードルが高すぎます。表から必要な数値を漏れなく読み取って、discount rateをadujsted discout rateすることやannuity dueにすることを忘れずに計算し、total capital availableを正しく表から読み取って計算し、それを差し引いてやっと正解に辿りつきます。かつ、そのプロセスの中でも、incomeはAfter-taxにして計算して、保険でカバーされるべき金額を算出する際にはtaxをグロスアップしてpre-taxにして計算し、annuity計算の<PMT>に入力する点も忘れてはなりません。もちろんよく考えればその通りなのですが、本番試験という極限の状況の中で気にするべきポイントがあまりにも多すぎますし、かつ一つでも漏らすともちろん正答にはなりません。CBTですと途中式も書きづらくpartial creditも期待しにくいですし、ましてや数値だけの問題ならば途中点なしですので、非常に効率が悪いです。ですので、「生命保険の必要保障額計算」が本番で出題されたら、後回しにするというもの試験に受かるためには重要な戦略だと思います。
このリーディングについては、かなり難しいと思います。個人のケーススタディですので、問題の出題はいかようにも変えられますし、それぞれに応じて個人がどのようなリスクに直面しているかを読み取らないといけないので、本番で出題されたとしてもかなり時間を要してしまうと思います。
最後に、「Readign 30: Integrated Cases in Risk Management: Institutional」です。2022年度からの新しいリーディングであり、2022年度版の教科書では、CFAI公式テキストにも章末問題がありません。2022年度カリキュラムにおいて提供されたmockでもこのリーディングについては出題実績がなかったと認識していますので、「どこが重要か」と判断は現時点ではできません。
内容としては、計算問題はなく、ひたすら定性的なトピックを学んでいくことになります。Market riskやLiquidity riskといったこれまで取り扱ったFinancial riskの他、ESGに関するreputational risk (headline risk)、そしてERMフレームワークの適用等が議論されています。特に、ESGについてはEとSにフォーカスがあり、PRI、Universal ownership、Climate risk、Transition finance等のトピックが説明されており、より昨今の話題により沿ったカリキュラムになっています。リーディング後半のケーススタディでは、こうしたESGトピックも加味しながら、投資開始時の投資政策委員会において軽視していた問題が数年後に顕在化して大打撃を喰らう、という様子が描かれています。良し悪しは別として、CFAIはESGが大好きだと思います。こことぞばかりにここもとのESGビジネスの潮流に乗っている印象ですので、ESGトピックがカリキュラムに組み込まれていく傾向は今後とも続くでしょう。
なお、流動性リスクに関する論点では、長期志向の機関投資家(大学基金等)がイールドを高めるために非流動性資産に投資するケースを想定してそのその流動性マネジメントについて説明されています。また、非流動性資産のDirectとIndirectの投資のAdvantage・DisadvantageはDirect investmentとIndirect investmentのスキームでの非流動性資産への投資について、メリットとデメリットも整理されています。とある投資家がいたとして、非流動性資産に投資する場合には、最初はノウハウがないためにPE Fundを通じてLPとしてIndirect investmentをします。ただし、徐々にLPが大きくなってノウハウを得るにつれて、Co-investment⇒Direct investmentとシフトしていきます。また、そのPE Fundからとある投資先へのエクスポージャーが大きくなってくると、そのPE Fundとしても単独でその投資先への投資を続けることが分散投資の観点からも難しいため、co-investmentという形でGPとLPで一緒に投資するケースはあります。こうしたDirect investmentとIndirect investmentの論点はLevel 1でも取り上げられているようですので、CFAIが重要視しているトピックかと思います。2022年度のカリキュラムでは、ケーススタディに関連するCFAI公式テキストのIN-TEXT QUESTIONにおいてこのDirect investmentに関する優位性に言及している問がありました。そのため、メリット・デメリットについては、本試験でも問われる可能性はあろうかと思います。
最後に、このリーディングのケーススタディですが、少し面白かったので紹介したいと思います。このケーススタディでは、ある国のSWFが投資政策委員会でまともに議論・検討をせずに、①とある小さな島国の飛行場や、②とある小国の飲料メーカーにdirect investmentを行った、という設定がなされています。
最初の投資政策委員会では、①については、その飛行場が海の近くにあるため海面上昇リスクがあることを指摘されていたにも関わらず、それを無視します。②については、その飲料事業が国内で関税によって守られているものの、次の選挙で政権が変わると関税が撤廃され、海外事業との競争が促進されてしまう、という指摘があったものの、それを無視します。
数年後、軽視していたリスクシナリオが顕在化することになります。①については、気候変動リスクが発現して、海面上昇、気温上昇、天候災害の頻発によって観光客が減少しました。②については、関税の引き下げによって、飲料メーカーが経営難に陥った様子が描かれています。そのため、コストカットと称してこの飲料メーカーは「50%の社員解雇」、「正規プロセスを経ずに河川への産業廃棄物垂れ流し」、「社員の休憩時間を1時間から30分に減らす」、「トイレから石鹸を没収する」など様々なことを会社は行うわけですが、もちろんこんなやばい企業に投資し続けることはreputational riskを生むという議論になります。
さらに数年後、投資政策委員会が開かれ、①の投資については、環境問題の悪化によって観光客は減少し、飛行場の収益は当初想定よりも50%下回りました。②の投資については、reputational riskを避けるために全部売却した、という結論になります。
こうしたケーススタディを踏まえ、各フェーズにおいて「投資前に本当はどのような分析をしておくべきであったか?どの分析が足りなかったのか?」、「どのようなsocial riskがあり、どのようにそれをマネージできるか?」が問われ、EとSのトピックに関するシナリオ分析やjust transition等の必要性について説明する、という問題を解くことになります。
このリーディングもですが、やはりSchweserNotesはとてもよくまとまっていると感じました。NotesにはEXAMPLEがないのですが、代わりにMODULE QUIZが充実しており、これがCFAI公式テキストの長ったらしいIN-TEXT QUESTIONSもカバーしているため、Notesに取り組むのが効率が良いです。ただ、Notesもそれなりに長いので、注意が必要です。
まとめると、このCIPMというスタディセッションは、「まともにやるととにかく読むのに時間はかかるが、あまり本番では出なさそうなので点数には結びつかず、試験合格から遠ざかってそう」という実感しかしないセッションであり、モチベーションが非常に下がりました。CFAI公式テキストのEXAMPLEやIN-TEXT QUESTIONSについても長いため、必ずしもやるべきかと言えば、優先度は下がるかと思います。
最後に
最後に、CFA試験の合格を通じて強く感じたことを三つ書かせて頂きます。
一つは、試験に対する不安を拭う唯一の方法は、もっと勉強するということです。私も試験日に近づくにつれて不安がどんどんと募っていき、そしてCFA試験は基本的に孤独な取り組みであるため、途中で「本当にこのままやって受かるのか」という想いが強くなりました。そうした中、色々と自分に言い聞かせて現実逃避したくなることもあるのですが、受かる確率を上げるにはやはりひたすら勉強するしかなく、また、それが不安を軽減させる唯一な方法であったと痛感しています。
また、受かってたから言いますと(落ちていたら何を言っても言い訳にしかならずダサすぎるので)、Level 3を受けた前日~当日の夜は文字通り一睡も出来ませんでした。布団を被っても突っ伏しても、緊張していたので、高まる心臓の鼓動が寝具に反響してそれが気になって全く寝れないんですよね。当日の朝は眠眠打破を呑んでしのぎました。
今思い返すと、この事象はやってきた勉強量の裏返しだったと思います。これだけ勉強してきたからこそ、慣れないCBT環境に順応出来なかったり、苦手な箇所ばかり出題されたりして思うように本領を発揮できないことがとても不安だったのです。
しかし、たとえ一睡もしない状態でも、「あれだけ勉強したから大丈夫」という、これまでに実際に行ってきた己の行動経験のみが心の支えであり、不安を克服して自信をもって御茶ノ水ソラシティに向かうことが出来ました。そして、試験直前の最後の最後は、これまでの圧倒的な勉強量に裏打ちされた、「何が何でも絶対に勝つ。」「相手がネイティブだろうが、どこのエリートだろうが、関係ない。悪いけど、CFA Level 3については僕が一番勉強している。」という確固たる覚悟と強い信念こそが不安を克服するのに役立ち、それが合格に大きく寄与したかと感じています。
やはり、試験に対する不安を解消するための(少なくとも私にとって)唯一の方法は、気晴らしに遊んだり、寝たりすることではなく、より勉強することに他ならないのだと、改めて痛感したのでした。
二つ目は、日本人のCFA candidateへの尊敬です。CFA試験に取り組む中、私はあまりに多くの人が途中で挫折している事実を目の当たりにしました。各々で子育てやご自身のキャリア等、様々な理由で、どこかのレベルでドロップアウトされている方もいらっしゃいました。中には、かなり昔にLevel 3まで進めたものの、Level 3を学習しているときに転勤となり、仕事の都合でLevel 3を受けられず、今に至っている方もいらっしゃいました。
こうした現状を踏まえ、これから受験される方は、本当に頑張って欲しいと思います。英語が母国語でないという中での受験自体、その苦心が賞賛ものです。そして、周りにあまり受験生がいないという環境の中、得体の知れない全世界の受験生とのバトルは、本当に孤独との闘いでもあります。試験一週間前や前泊したときなど、緊張と不安で胸が張り裂けそうになりました。そのような中、孤独や仕事でのプレッシャーに耐え抜き、場合によっては家庭の問題も解決しつつCFAに取り組む方々には心から尊敬します。
そして今度は、こうした苦悩を私自身が第一線で経験したからこそ、同じように孤独の中で戦う日本のcandidateにこういう情報があったら助かるはず、という想いを具体化したのがこのnoteだったのです。
最後に、CFAプログラムへの個人的な思い入れです。大学生の時に英語学習に燃え、新卒で入った会社でCFAの存在を知ってその難易度に圧倒され、その後証アナを取ってからやっとここに辿り着きました。いわば、事前の情報収集も含め、私自身がこれまで獲得してきた人生における知恵の総決算としてのLevel 3受験であったと思います。それだけに、命を削って受験したLevel 3でした。
CFAプログラムは立派です(ただ、誤植は許せません。これだけは言い続けます)。どこかの国の意思決定も遅そうでプログラムの改変もめったにないような某証券アナリスト協会とは違い、CFAIの変革への対応は非常に早いです。プログラムは最新にトピックを反映させるべく頻繁に更新され、さらにコロナ禍におけるCBT対応もスムーズでした。誤植を除けば、CFAプログラムは実に取り組むべき価値のあるものであり、取り組んでいて大変勉強になるプログラムであったと、改めてそう思います。
CBTのサービスイン、そして2025年試験からのLevel 3における一部の試験問題の選択式化等、CFAの試験はまさに歴史的な過渡期の中にあると思います。こうした中、孤独に耐えながら、プライベートの時間を削ってCFAに打ち込む方々には心から敬服致します。是非とも頑張って下さい。
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