1.デキないオンナ~エリーの章
ピンクの作業着をかわいく着こなす女子がいた。
茶髪で、長い髪はクルクルに巻いて、
ダマになるほどに大量マスカラのまつ毛。
襟を立てていた。
オシャレにこのダサい作業着を着こなすんだな、このあほっぽい子は。
そんな風に私は冷めた座った目で彼女を見ていたのだろう。
当然そんな風に見られていい気がするわけはない。
しゃべったこともないのに、エリ―(襟を立てていたから)は私に対し
拒絶した態度をとるのには時間はかからなかった。
拒絶上等と、私もエリ―と一切口を聞かなかった。
本社に戻り、普通の事務服になった後も
ピンヒールで足を引きずりながら歩く彼女の後ろ姿に呆れていた。
就職氷河期に新入社員だった私は、同じ部署に長く後輩社員がいなかった。
いつまでも末っ子として先輩や上司に甘く見てもらっていたが
ここではベテラン勢に入る年齢となっていたことに男性社員の反応をみて気づく。
エリ―はドジをしても許される。
しかも「●●ちゃん」と馬鹿にしてんじゃないのか?と思う呼び方をする。
顔のスペックがどうこうではない、雰囲気や仕事できない感が可愛いのだ。
それにしても、だらしがない。
スカートのファスナーが下がっていたり、
口紅を塗りながら歩いたり、破れた紙袋に大量の雑誌を持ち歩き、
始業のチャイムと同時に居室に走って入ってくる。
ダマになったまつ毛の下から流し目でこちらを見るエリー。
目線がばちっと合う度、男ってなんでバカな女が好きなんだろうね?と
何度となく思ったのは他に燃やす情熱をなくしてしまったからだった。
制服のスカートもひざ下のまま、
ダッサイ丈のまま、
久しぶりに帰ってきた京都での美容室探しも失敗し、
金太郎かというようなガタガタのおかっぱになってしまった自分に
なんの魅力もないような気がして、
「もう、なんでもいいんだ」と京都にいる息苦しさを押し殺した。
エリ―は3年後、社内の男性と結婚し、寿退職をした。
足つぼマニアの研究室の室長。 足指のトラブルに悩むお客様を7,000名以上見てくる中で、 心理的なものが足指にリンクするのではないか?と 新たな学びをはじめる。