見えないものを、見ようとする努力。

この記事はギルドワークスのアドベントカレンダーの5日目です。

僕は、プロダクトをつくるチームの育成が仕事です。このエントリでは、「見えないものを、見ようとする努力。」と題し、チームが膠着した状況を打開するためのヒントに繋がるお話をしてみます。

あなたのクリスマスがちょっとでも明るくなるようなエントリにしたいという気持ちを込めて書いています。よかったら読んでやってください!

■ チームの思考の癖を見つけよう!

チームやプロダクトをよくしたい。そう思って日々懸命に働いているのだけど一向に光が見えない。周囲を見渡しても、チーム全体が停滞しているようで閉塞感が漂っている。そんな状況に陥ったことはありませんか?

閉塞感があるチームなのに、状況を変えるような手立てに目が向かないのは何故でしょうか?停滞感があるチームは、知らず知らずのうちに思考の癖がついていて、現状を変える方に目が向かないのです。

このような状況下から脱するには、思考の癖に気がつくこと、そして、直面している現実を「今までとは異なる枠組み」で捉え直すことが必要です。

■ 思考の癖はどうやれば見つかるのだろう?

チームでふりかえりをやっていますか?もし、やっているのであれば、ふりかえりの内容を過去から並べてみて、客観的に捉えてみましょう。

膠着しているチームでは、同じような課題や問題が繰り返し取り扱われていたり、似たような施策が実行されていることがとても多いです。並べて眺めるだけでも、その共通点に気がつくことがあります。

この状況に対して、何故だろう!?といった問いから、原因を掘り下げる過程で、チームの思考の癖が見つかるかもしれません。問題分析を手助けするツールを利用するのも一考ですね。

■ チームが捉え直そうという雰囲気にならないのだが…

思考癖は見えたのだが、チームとしてはいまいち状況を捉え直すような雰囲気にならないという場合がよくあります。この場合、感情面もデータとして扱うことで、自分たちが駆動したくなる手がかりを見つけていきましょう。

例えば「今回も場当たり的だなぁとか」「あの人に今回も頼るしかないのかぁ」とか想うような場面が出てくると思います。

感情面もデータとして扱うと、否定したいはずの状況を何度も繰り返しているのに、自分たちは、なぜ、変えようとしないのだろうか?という問いが芽生えてきます。この場面をチームで掘り下げることで「脱したいよね。」と思う気持ちが、状況を捉え直そうという前提になっていきます。

感情面を利用したふりかえりには、「タイムライン」をやってみるとよいかもしれません。(具体的なやり方は、私の過去の記事タイムラインを使ってみよう。を参照してください。)

思ったよりも脱したいという気持ちに対する抵抗が強ければ、「フォースフィールドアナリシス」をやってみるとよいかもしれません。(具体的なやり方は、私の過去の記事フォースフィールドアナリシスを使ってみよう。を参照してください。)

■ 見えてはいないものを、さらに探しに行く

上述した「タイムライン」と「フォースフィールドアナリシス」のエントリーは、それぞれ、2017年、2018年のアドベントカレンダーのエントリーとして書いたものでした。

当時は、今エントリーを書ている時と同じ気持ちでPCに向かっていて、閉塞感のあるチームが「今までとは異なる枠組み」で、状況を認知できるようになって、膠着した状態を抜けることを願ったエントリーでした。

今までとは異なる枠組みで状況を認知するという試みは、見えなかったものを、見えるようにして、取り扱えるようにするという試みです。

「自分たちが嫌な構造をつくっていた。」といったような不都合な事実や「実は変えたい気持ちが奥底にあった。」といった想いを見える化することは、硬直化したチームであるほど、大きな意味を与えます。

その一方で、見えてなかったことを見つけるという行為は難しいです。人間の見たいものしかみないという力は大変強くて見たことがない光景は観測することが難しいので、見逃してしまうことが大抵なのです。

2019年末のこのエントリーでは、「見えないもの」を見ようと共に挑んでくれたチームを前進をさせるのに役立った「その他の見える化」の手段とか道具とかを、かるーく提案して締めたいと思います。

■ アクティングアウトをやってみよう。

↑カタカナで書いてますが、「演じてみる。」ということです。

①アイデアを検証する際にプロトタイプを作成しますが、利用者の気分になって本気で演技する中にプロトタイプを登場させてください。身体的に動くことで見えていなかった事実が見えてきます。

利用者が実際に使う場所に行き、その場で演じると、さらに見えなかったものが見えてきます。この挑戦に挑んだチームは、良かれと思ってつくった設計の不要さ、不便さに気がつき、体験価値の向上に役立てました。

②チームの関係性や業務やサービスのプロセスに問題を発見した場合、メンバーが登場人物となってその問題が起きている過程を演じてください。残りの人は演技をみてください。

演じるということは、ストーリー形式で情報のインプットを与える形になります。ストーリー形式は人が理解がしやすく気づきも得やすい形式です。

観客になったメンバーが三者視点で気づきを投じてくれることで、問題提起した人が気がついていなかった事実に辿り着くことがあります。あるチームでは、チームの行動を妨げる原因だと思っていた人が、実はチームの一番の理解者であり支援者にできるという事実に気がつきました。

問題だと思っていたことを解消しようとすることが、実は面倒を引き起こしていたことに気がつけたのです。

■ モデルにプロットしてみよう

最後にもう一つ、ギルドワークスの仲間たちと一緒につくった見える化の手段を紹介して締めようと思います。(やめるやめる詐欺じゃないよw)

下記は、当時プロジェクトを一緒にやっていた3名が主体となってつくったモデルです。図の詳しい説明は紙面の都合上割愛しますが、KPTなどで出た内容をモデルの上にプロットすることを現場でやっています。

画像1

↑新規事業の「正しいものを、正しく作る」を二人三脚で支援する(正しく作る編)より

図解化されたモデルの上にプロットしてみると、誰がどの視点に注目をして話をしているのかが見えてきます。影響と依存の関係ですので、視座を上げ下げしながら、それぞれがなぜ必要なのか説明ができます。

支援に行くと、チームの中には「膠着した状況を覆すのに必要だと思う観点」をすでにもっている人がいるのに、チームの中で会話が成立していないという状況をよく見かけます。

視座が異なることで同じ目線から話せていないことから起きている問題ですよね。でもこのモデルの上で、最終的な目標は事業観点にあるということであれば、お互いの観点は「対立している」のではなく目的は一緒だと話せますから、合意も形成しやすいです。

■ ああ、そうか。大切なのは、多様性なんだ。

ギルドワークスの仲間と作ったモデル図は、今までの道具や手法では限界を感じたことから、生まれた成果物でした。

2018年は特に活躍してくれた道具の一つなのですが、この道具がつくれたのは僕とは対極にあるような「優秀な二人」によるものです。それぞれは専門性が飛び抜けて高く、かつ、とてもユニークな個性をもっています。

自分とは違う視点を持った人たちだから「自分が気が付かない点。」を持っていて、それを一緒に発見しようというマインドがあったから、道具に出来たんだなとエントリーを書いていて気が付かされました。

見えないものを、見ようとするために大切なことは、他者の観点を自分に取り込みあおうとする努力ができることかもしれません。

■ 今年の僕のエントリーは以上です。

明日に向けてトライするチームと、新たな景色を見ようと日々努力する仲間がよいクリスマスをおくれることを願って、締めたいと思います。

以上、読了するまでおよそ5-10分を要する長いエントリーになりましたが、読んでくださった方、ありがとうございました。


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