見出し画像

誰かの代わりにされて辛い思いをしているあなたへ

個性を売り物にしているイラストレーターさんにとって「誰かの代わり」を求められることはお辛いことかと思います。
今日はとあるフォロワーさんのお辛い心の内を拝見して、わたくしなりに思うことを書き綴ってみます。

絵を描ける人はこの世に万といます。
その中から、わざわざ自分に依頼してもらう為には
自分をブランディングしなければなりません。
それがオリジナリティです。
そのオリジナリティを売り物にしているのに
「誰かの変わりにされる」という事は自分を否定されているように感じるかもしれません。


・誰かの代わりにされる事について

先日とあるイラストレーターさんの「誰かに寄せようしている意図を感じてモヤモヤする」という様な呟きを拝見しました。
わたくしにもとてもよくあることです。
気づけば四半世紀、わたくしも歴だけはすっかり中堅と言えるでしょう。
それでもご依頼を頂くと今でも天に昇るように舞い上がって嬉しくなります。
でもその舞い上がる自分の頬をペチンッと叩かれるような思いになる瞬間が

「あこれ誰かのお鉢回ってきたな」

と確信する時です。
納期だとか指示なんかでなんとなくわかるものです。
クライアントさんの方もかなりお気を使って「是非トウドさんに!」といった感じで仰って下さるので、もちろん気付いちゃってもわたくしは何も申しません。ただ

最後に「(あの人じゃなく)あなたにお願いして良かった」と言わせてやりたい

という思いで臨みます(笑)
正直なんなら“ 貸しを作ってやる”位の心持ちでいたりします(性悪っ笑)

わたくしはね、植物画ですから、オリジナリティを売り物にしている訳ではないので、わたくしにしか描けないイラストではないと思っているし、代わりはいくらでもいると思っています。
端からわたくしにしかできないお仕事が来るわけではないと思っています。
逆に言えばそのオリジナリティを頑張らなくとも良い植物画に甘んじて来たわけですが、それでも「あぁ誰かのお鉢か…」と気付く時にはやはり
膨らみかけた心がショボ〜ンとなるものです。

でも、そもそもお仕事というものはわたくしの為にあるなではなく
その仕事にわたくしが抜擢されただけなのです。(何番目なのかわからんけど)


とはいえ、個性を売り物にしているイラストレーターさんにとって著しく自分の絵柄とは違うテイストを求められたら
「わたしである必要はあるのか?」と悩んでしまいますよね。
始めにわかっていてらお断りできるもの、もちろん先方は「○○さんの代わりに…」なんて仰いませんからね。
承けてしまったら遂行しなければ契約不履行になってしまいます。
もちろん理由を述べて辞退する事もできますが
そこはもう、最後に「あなたにお願いして良かった」と、言わせてやりましょう。

イラストレーターの為に仕事があるのではなく
描いて欲しいイラスト(仕事)があるから誰かを探すんです。
例えば「○○さんののような…」といったイメージがあるでしょう。
でも○○さんにお断りされたらの為に何人も候補者を考えておくのです。
第1候補、第2候補、第3候補…
でももし、その人のイラストが魅力的でなかったら
その候補にすら上がらないのですから
候補に上がっただけでもすごいことだと思って欲しい。
「(あの人じゃなくて)あなたにお願いしてよかった!」を繰り返す内、きっと第3候補から第2候補、第2候補から第1候補へと変わっていくはず。

・イラストレーターに大事なのはイラストの魅力だけじゃない

クライアントさんにとっても、
「むちゃ振りだったのに柔軟に対応してくれた」というのはやはり
「あの人とは仕事がしやすかった」
「相談しやすかった。」という安心感に繋がります。
そういう思いが次からは『最初にご相談』に繋がるかもしれません。
もちろん何でもかんでも引き受けてしまっては何でも屋になってしまって後々ご自分が苦しくなってしまうかもしれませんから、初めから何かしら違和感を感じるようならお断りする勇気を持つことも大事だとは思います。

でもイラスト業も所詮『人と人』
「この人とまたご一緒したいな」と思わせることにはメリットしかないと思います。

・イラストレーターの社会的地位

時々、大御所と思えるイラストレーターさんでさえ
「舐めた態度で接された」というようなお話を耳にします。
そもそも日本のイラストレーターの社会的地位自体が低いのではと感じざるえないと思うことがあります。

わたくしもこの道に入る時には先生に
「変人だと思われる覚悟をしろ」と言われました。
その昔は「絵かきは普通のお勤めさえできない人」というような偏見が一般の方々の中でもあったのでしょう。

その時代にはイラストは買い取りが当たり前、原稿は返ってこないのが当たり前だったと聞いて育ちました。

諸先輩方が苦心してイラストレーターの権利を勝ち取って下さり、その道の上に今我々が立っているのでしょう。
それでもこの数十年はその歩みが停滞しているようにも感じます。
書籍や雑誌などではイラストは最終段階で依頼され納期のしわ寄せが来ることも多くあるようにも感じます。

だからきっとこの先、歴を重ねようとも理不尽な対応を求められることはあるかもしれません。

・あなたの魅力で虜にしてしてしまえ!

誰かが仰っていました。
「イラスト業界はレッドオーシャンや…」
社会的地位の低さだけではなく、この飽和状態。
それでもやはり、そんな中でもご依頼下さった。候補に上がった。という事は奇跡のようなことなのでは…と、思うのです。
だったならもう、柔軟に対応して差し上げてあなたの虜にしてしまえばよいのです。
イラスト業に限らず、どこの世界でも自分が好意的に受け入れられるとは限りません。
わたくしはそんな時いつも最後には「行かないでぇ〜」とすがられるくらいに良くして差し上げようと思います。
嫌なやつですね。わたくし(笑)でもホントにそうやって乗り切ってきたように思う。それがわたくしの処世術なのだと思うのです。

・華々しいご活躍の影には沢山の影

今ご活躍のイラストレーターさんを拝見していて
「いいなぁ沢山お仕事あって。羨ましいなぁ」と思うこともあると思うんです。
でもその方の数々の華やかなお仕事の影には沢山の
流れたお仕事や、コンペで負けたお仕事があるんです。
あるいは不本意ながら引き受けたお仕事は公表していない場合もあると思います。
つまり見えている実績が全てではないということです。
皆、辛酸を嘗めているということです。

今回つぶやきを拝見したイラストレーターさんはとても繊細な方だと思っています。
でも、そんな繊細さんだからこそ人の気持ちに寄り添った温かいイラストが描ける人なんです。
わたし、彼女に頑張ってほしいと思っています。
わたくしが応援する必要もないほどにすでに人気の方だとは思うのですが、こんなことで折れてほしくない。
どんなに誰かに寄せようとも彼女の魅力は消え入ることはないと、わたくし思うのです。
だから「はい!かっしこまりました!」っつって、柔軟に対応しているように見せて、いつにまにか彼女の魅力で虜にしてしてまえばいい。
と思っている。
それだけの魅力のあるイラストを提供できる人だと思ってる。
わたしは彼女のイラストをずっと見ていたいの。
だから頑張ってほしいの。
勝手なお願いかも知んないけど。


今回は主観の強い記事ですね。迸っちゃった。
細々とながらに四半世紀このお仕事を続けてきたゴキさん並みにしぶとい生命力を持つ中堅イラストレーターの独り言でございました。

それでは秋の夜長、皆様よしなに。

TOUDO YAYOI Illustration (^_^)ノ☆







この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?