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でえだらぼっち

雲が邪魔なのでふうっと吹き飛ばしたら、いつもより着飾った月が鏡にみとれている。
おでかけですか。
あんたにはかんけいない。
すげない返事。だけれどうきうきを隠しきれていない。
そうですね。すいませんね。
軽く頭をさげて、あげるともう月は姿を消している。
近ごろの下界は夜が明るくなったから、前ほど照らす役目がいらなくなった。暇になった月はちょくちょく夜遊びに出かける。息抜きさせないと拗ねてしまうからしょうがない。
月が残していったカンテラを持ち上げると、下界へ急ぐ月の後ろ姿が見える。あんなに弾んでいては月だと知れてしまうだろうと、私はカンテラの灯を落としてやった。月の背中は影にまぎれて下界のきらきらに混じっていった。

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