2021東大入試問題分析 数学(理科)

こんにちは。2年の yotsu です。理系・物理化学選択です。

今回は,2021年度東大入試の数学(理科)の問題を分析します。
問題については,各自でご用意してください。全問題のきちんとした解答例を発表することは致しません。また,試験場での緊張感などは考慮しきれてはいないものと思われます。ご了承ください。


全体概観

150分で大問6つという形式は変わっていません。全ての大問に小問がついており,ある程度の誘導がなされていました。
出題内容としては,2017年度入試を最後に出題されていない確率が復活することはなく,さらには立体図形・求積といった頻出分野が登場しませんでした。総じて数学Ⅲの内容が例年と比べると軽かったですが,これはコロナ禍で苦労した受験生への配慮だと考えられます。一方で,数学ⅠAⅡB範囲の問題については,材料はそれほど複雑ではないものの,数学を理論立てて学ぶことができたかどうかを問うものが多かったといえるでしょう。
個人的には,2020年度入試よりは易化であり,奇抜な発想を要することはなく手をつけやすいセットだったと思います。また,全体的に正確かつ手際よく計算を行えるかどうかを問う部分が多くあると感じました。後述しますが,計算が得意な人と苦手な人とでは,手応えも変わってきたでしょう。


第1問 放物線の通過領域(2パラメーター)

(1) 易   (2) 標準~やや難

(1)は必ずとるべき問題です。
(2)は東大数学で頻出の軌跡・通過領域についての問題ですが,今回は2パラメーターの1次式ということで戸惑った受験生もいたでしょう。どういう問題であってもまずは”存在条件を考える”という根本を理解し,設問に合わせてどういった手法をとるかを整理しておくべきです。また,y軸に関する対称性にも気づけるようにしておきましょう。

第2問 複素数平面とベクトル

(1) 易   (2) やや易~標準

複素数の問題に見えますが,複素数の性質はほぼ関係ありません。
(1)は,計算がやや煩雑で,答えをどう整理すればいいかで悩むところですが,いずれにせよ必ず得点すべき問題です。
(2)は,α, β, γ が実数ですから,結局は実平面での存在領域を考えれば十分な問題です。というより,複素数のままで処理できる問題は数少ない(1次分数変換など)ので,困ったら実数の問題に帰着させることを心がけましょう。本問では,複素数平面上での複素数の加法・減法は,ベクトルの加法・減法と完全に対応していることが分かっていれば,それほど苦労せずに済むでしょう。

下に,私なりの解答例を示しておきます。ちょっとした工夫をしているだけなのですが,類似解答は今のところ見かけていません。(と言いつつ,代ゼミの解答速報が同じ工夫をしていたことに気づきました・・・)

第3問 定積分

(1) 易   (2) 標準

2019年度以来2年ぶりの定積分がメインの問題です。
(1)は必ず得点すべき問題です。
(2)はただの定積分の計算ですが,どういうルートをとっても計算の手間がかかり,最終結果を合わせるのは難しいでしょう。ただ,2019年度入試第1問でも同じような定積分計算が課されたのは記憶に新しく,これくらいの計算なら正しくこなせる力をつけておくべきでしょう。

下に,私なりの解答例を示しておきます。超真面目に展開して変形して積分可能な形に持ち込むという方法をとっています。推奨はしませんが,分数関数の積分の手法は理解しておいてください。分子の次数を下げるということがかなり重要です。

第4問 二項係数と余り

(1) 易   (2),(3) やや難~難   (4) 易

整数問題です。2019年度以来2年ぶりの出題です。
(1)は合同式を用いるなどしてきちんと点を取っておきましょう。
(2)はコンビネーションの計算式を愚直に書き下すところからスタートです。シグマの式もわかりにくければ書き下すという工夫がありますよね。そこからは観察が必要で難しいですが,奇数が存在することを示したいのですから,偶数の部分がうまく処理できるはずだと考えるという道筋は分かっておきたいところです。
(3)では,示すべきことが「K≡L(mod4)」であることは明白です。あとは「4で割った余りが等しい⇔差が4の倍数」ということを使うのですが,経験がないと難しいでしょう。
(4)はただの計算問題ですから,上の問題ができていなくてもとりあえず答えておくべきです。

第5問 微分

(1) やや易~標準   (2) 易

全体を通して,数学Ⅲの微分法の内容の基本的内容を問うているだけです。
(1)は少し工夫して定数分離してもいいですが,3階導関数まで計算してしまえば機械的に解けてしまいます。
(2)は(1)が解けていればすぐ解決できます。完答を狙うべき問題です。

第6問 恒等式

(1) 易   (2) 標準   (3) 標準~やや難

第6問も,(1)は必ず得点すべき問題です。
(2)はまれに見る悪問といっていいかもしれません。(1)で使わなかった式を使えばいいだけなのですが,問題文の意味が非常に読み取りにくいです。ただ,とりあえずは”使っていない式はどこかで使わなければおかしい”と考えて,手を動かすべきです。手を動かせば p の6次式を因数分解すればよいのだと自然に気づくはずです。そういう意味では良問ともいえると思います。
(2)さえできれば,(3)も最終結果だけなら正しく求められるのではないでしょうか。ただ,論証の部分でどこまで記述すべきかということを考えると,完璧に得点することは難しいでしょう。


おわりに

1(1),2(1),3(1),4(1)(4),5(1)(2),6(1) で少なくとも40点は確保したいところです。次に,時間をかけて3(2)を完答して50点確保。あとは個々の得意不得意に合わせて選択して解答していけば,半分の60点は確保できるのではないでしょうか。4(2)(3) あたりは後回しということになるでしょう。

2021年度入試問題から最も強く感じられたメッセージは,全体概観でも述べましたが,正しく計算する力を軽視するなということです。理科で筆算が必要なレベルの計算が課されていることからも,計算を侮ってくれるなという東京大学の強い憤りを感じます。特に流行りの定積分計算をはじめ,ちょっと複雑な計算の工夫の仕方なども含め,あらゆる計算問題について日頃から練習する習慣をつけるなどするべきでしょう。計算が得意になれば問題の解きやすさは断然違ってくると個人的には思っています。


不合格者への得点開示の様子を見ていると,「1問20点の均等配点だ!」とか「傾斜配点じゃないとおかしい!」とか様々な意見がみられました。一方で,合格者への得点開示の様子を見ると,「採点がゆるい」という意見が多いように感じました。真相はよく分からないですが,そういったことにとらわれない確かな実力を身につけられるよう頑張りましょう。

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