漢詩の始め方 おぼえがき
中の人は、しばしラテン語の勉強をしていますが、どうもやりにくいと思ったことがあります。格変化は置いといて、やっている人口が少ないからというのがあります。漢詩(中国古典詩)も同じです。やりたいという人は結構見かけるのですが、始めようにも習う場所やテキストが多くありません。これは何度も言うように、やる人口がすくないからという理由につながります。一応、ラテン語も漢詩もやっているところはきちんとやっているのですが、情報発信がいかんせん少ないわけです。また英語の勉強法はたくさんあるのに、漢詩の勉強法は非常に少ない。
中の人もこれは憂うところでして、漢詩研を始めたのはそのためでもあります。関東付近の学生を糾合して活動しようではないか、またその過程で、情報を発信・宣伝をして、やりたい人をみつけて楽しくやろうではないかと思い立ったのがきっかけです。もし博士課程までの学生で興味のある方はお問い合わせください。高校生や留学生も構いません。
詳細はTwitterのプロフにあるリンクをご覧ください。
また情報発信の一環として、昔下のような漢詩文の勉強法についてのツイートをしました。非常に反応が多く、需要はあるのだなと感じましたし、今まとめてみようとふと思いました。是非ご覧ください。
漢詩研の紹介はここまでとして本題に行きましょう。ただし今回は文を除いて、所謂、漢詩の読むべき本や勉強法のみを紹介したいと思います。さらに言えば、創作するにもまえに読まないとどうしようもないので、今回は読む方に重点を当てて紹介していきます。
1-1、まずは用意!
まず用意すべきは、熱意です。いきなり精神論で申し訳ありませんが、言うまでもなく、熱意が必要です。高度な技能が必要な分野であり、なおかつ人口が少ない分野ですから、本気でやるにはモチベーションを保つ必要があります。ここは個人によるところが大きいです。
となるとどうモチベーションを保てばよいのか?それは同志を見つけることではないでしょうか。Twitterには愛好者が数十人います。関東の学生は漢詩研もお勧めです。また全国規模で言えば、全日本漢詩連盟やほかの諸団体にも愛好者はいます。合うところを見つけて、ぜひ仲間を探しましょう。
また用意すべき知識としては、本の買い方です。
みなさんAmazonや本屋で買われていますが、ヤフーオークションや「日本の古本屋」でも買えます。とくに日本の古本屋は質、量ともによく、私もヘビーユーザーです。
日本の古本屋のサイトは↓↓
東京に行ける方は神保町もよいと思います。詳細はまた今度記事にします。
1-2、読むべき本
次に本の紹介に入りましょう。
最初に読むべきは、岩波文庫の『中国名詩選』上中下でしょうか。
最初の詩経から清までの詩を幅広く厳選した良い詩集です。とくに詩が栄えた唐宋の分野が強いです。さらに、著者の川合康三先生の訳注とコラムは今後読んでいくにあたって、とても刺激になります。
江戸時代によく読まれた『唐詩選』というのもあります。
これも岩波文庫から出ています。難点は名前の割にはかなりかたよりがあり、白居易がまったくのっていないことでしょうか。杜甫、李白、王維、岑参がやたら載っています。読まれる際は上記のことを踏まえながらお読みください。
宋代の詩で言えば、銭鍾書という人の『宋詩選注』がおすすめです。
平凡社の東洋文庫からでています。4冊で結構お値段はりますが、特に注が博覧強記そのもので面白いですよ。やや難しいです。
1-3、詩人個人の選集を読もう
ここまでいくつか本を読まれたら、次は好みの詩人が出てくると思います。杜甫、白居易、李白等々。やはりここも岩波書店の本が結構ありましていくつか紹介いたします。
まずは古本での購入となりますが、岩波書店の中国詩人選集1、2がおすすめです。昭和30年代後半に出たシリーズで、当時京大を中心に出た新進気鋭の学者が書いたものです。また大家が書いたものもあり、今でも非常に有用です。古書価格は2000から5000円ほど、バラでも手に入れやすいので、おすすめです。運が良ければ3000円ほどで1,2のセットが丸々買えることもあります。
ちなみに内容は、1は唐代まで。2は宋代から清代までの詩人のシリーズがあります。唐代の詩の方が皆様親しみがあると思いますので、まずは1を買いましょう。1にある『唐詩概説』と2の『宋詩概説』は名著ですから詩の変遷を知りたいときに読むとよいでしょう。漢詩のルール(平仄など)は『唐詩概説』に載っております。
新品だと岩波文庫からいくつか詩人選集の改訂があります。またそうでないのもありますが、ひとまずいくつかご紹介します。
『杜甫詩選』
『白楽天詩選』
『李白詩選』
『王維詩選』
『李賀詩選』
『陶淵明全集』
『蘇東坡詩選』
他にも岩波文庫からは品切れのも含めたくさん出ています。ちなみに先ほどのべた『唐詩概説』、『宋詩概説』も文庫で出ています。いつも品切れですがたまに復刊されるので、ぜひお買い求めください。
『唐詩概説』
『宋詩概説』
また絶版ではありますが、集英社の漢詩大系シリーズもよいです。比較的多くの作品が収録されています。
2-1、読み方
ようやくここまで来ました。本を買われても結構苦戦するのが読み方ですね。訓読が難しい・・・とか高校以来読んでいない!なんていう人も多いと思います。
もし本当に訓読が分からないという人は以下の本をお勧めします。
『基礎から解釈へ 漢文必携 四訂版』
助字といわれる特殊な字や訓読の文法が分かります。これは文の方でしょ?と思われるかもしれませんが、詩のほうでも実は重要です(大きな声でいえませんが私もたまに訓読の文法をまちがえることがあります)
漢和辞典は『全訳漢辞海 第四版』がおすすめです。おっと言い忘れました。漢和辞典は漢字を引くときに使うものと思われがちですが、熟語をしりたいときも引きます。
では読んでいきましょう。
詩の読み方の基本として、五言絶句(5文字×4句)、五言律詩(5文字×8句)といったいわゆる五言の詩では、2+3文字で読みます。
絕句二首 其二 唐·杜甫
江碧 鳥逾白, 江碧(みどり)にして 鳥は逾(いよいよ)白く
2 3 2 3
山青 花欲燃。 山青くして 花燃えんと欲す
今春 看又過, 今春 看(みすみす)又過ぎ
何日 是歸年。 何れに日にか 是歸年ならん
七言では2+2+3文字で読みます。(2+2=4文字で読んでもかまいません)
楓橋夜泊 唐·張継
月落 烏啼 霜滿天, 月落ち 烏啼いて 霜天に滿ち
2 2 3 2 2 3
江楓 漁父 對愁眠。 江楓 漁父 愁眠に對す
姑蘇 城外 寒山寺, 姑蘇の城外 寒山寺
夜半 鐘聲 到客船。 夜半の鐘聲 客船に至る
まずはこれが基本です。また字が返っているところがありますね。ちょっとここまで書くと大変なので、訓読法の記事や本で読んでみてください。。。
2-2、注釈や訳、原文はどうすればいいのか
大体の本に原文、注釈、訳というものが載っていますが、どうやって読めばいいのかと質問を受けます。まずは訳を読みましょう。その次に原文、注釈と読んでいくのがよいと思います。すなわち対訳形式なわけです。
とすると漢字や語彙から意味を見い出せないと思う時があります。ここが難関です。理由を言うと一字一字の他の意味を知らないと躓いてしまっています。ここは漢和辞典を引きながら語感を鋭くしていきましょう。
注釈に関しても、漢和辞典を引きながら、こういう意味なのだと理解しながら読むといいでしょう。漢和辞典なしだと最初はとてもきついです。人名や典故も頭の隅に置いておくといいでしょう。
ひとまずここで筆を擱きます。ちょっと粗略なところがあるので、また増補改訂します。お楽しみに。
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