コーヒー会で見ていること

町田でひさしぶりに、ゆるコーヒー会を実施した。
ゆるコーヒー会とは、僕が2011年から実施しているコーヒーの抽出イベント。それぞれが持っているコーヒー抽出道具が違うことから、「豆と水を同じものにして、それぞれの道具で淹れて飲み比べをしたら、どういう結果になるのか?という疑問から始まった、コーヒーを淹れあって飲み合う会。実施回数はすでに100回を軽く超えて、毎回、プロではなくお客の側に立つ人たちが、自分の家で使っている抽出器具を持ち寄って、それこそ多彩なドリップを披露してくれている。同じ豆と水を使っているのに、その場で飲むコーヒーは、ひとつとして同じ味にならない。それぞれに良さがあり、課題があり、おもしろい。

昔は人寄せパンダ的に、プロのロースターやバリスタを呼んで、流派を超えたコラボドリップ、などを実現していたが、彼らの淹れるコーヒーが、その日もっともおいしいコーヒーになることはほぼなく、それでプライドを傷つけられて次から参加しなくなってしまうことが多数発生したので、あまり今の商売に影響させるのもな、と、今は「コーヒーってなんだろう?」みたいな好奇心旺盛で自由なマインドを持つ素人さんを集めて細々と開催をしている。プロの厳しい視線もないし、どや顔して根拠不明の知見をおしつけるへんなのもいない、ゆるく自由な会になっている(とはいっても開催ルールはあるので、それを基本的に守れる人だけに限定してるんだけどね)。

テキトーすぎず、凝りすぎず


ゆるコーヒー会に集まってくる道具はどんなものなのか。かんたんにまとめれば、「テキトーすぎず、凝りすぎず」が圧倒的多数だ。コーヒー抽出の原点である、マキネッタ式や煮出し式はほぼ皆無。フレンチプレス、金属メッシュも最近は見なくなった。スペシャルティコーヒー界隈でどや顔で普及しているドリッパー類、たとえばフラワーやスイッチ、origami、Deepもなかなか見ない。円錐ドリッパーとガラスサーバー、ポットは安すぎず、かといって1万円もしない「ちょっと手を出すレベル」が多い。一般大衆はコーヒーの抽出に対し、正直な答えを出してくれている。

道具は変遷していく

ゆるコーヒー会を10年以上やっていると、それについてきてくれるお客さんがけっこういる。その人の初回参加時の道具と、今使っている道具は、ほぼ全員変化している。
昔から使っていたコーヒーポットを、新しい参加者に譲ってあげた事例なんかもある。それをもらった人はよろこんでコーヒーを淹れるようになったりと、参加者同士の交流からコーヒー好き度合が深まるシーンも目撃した。
話を戻して。
道具はどんなのを選ぶべきか、という議論が起こりがちだが、その人のコーヒーに対する習熟度によって、使う道具が変化してきているのが、現場にいる者の感覚で、その時それが最もいい、と思っても、熟練度が増したら違う道具になっている、ということばかり。なので、直感でいいので使ってみて、気に入ったなら使い続ければいいのでは、と思う。

参加すればするほど、コーヒーが楽しくなる、はず

ゆるコーヒー会は、自分の道具と、それを使った淹れ方がどんなものなのかを知るにはうってつけのイベントだ。自分の淹れ方に自信がない人たちが、自分の習熟度をひそかに知ることができる。なによりもコーヒーをこういう淹れ方をすればこういう味になるんだ、というのをなんとなく知ることができる。自分の知らない世界を見せてくれる仲間が、意外なところに、目の前にいることに気付ければ、コーヒーをきっかけにいろいろな日常が楽しくなるのかな、と、毎回見てて感じる。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?