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小説の感想・レビュー

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読了した小説の感想・レビューなどです。
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2022年1月の記事一覧

盤上の夜|感想・レビュー ★4.0

宮内悠介氏の『盤上の夜』を読了したので感想です。 短くまとめると囲碁・チェッカー・麻雀・将棋などのボードゲームの知識が無いと、十分に楽しめない側面もあるが、それでも読む価値がある短編集。 著者の圧倒的な筆力による文章は、純文学的な美しさも内包しており、読書好きには特におすすめしたい一冊。 まえがき著者の作品を読むのは『超動く家にて』、『偶然の聖地』に続いて3冊目です。 感想本作はボードゲームを題材とした6つの短編集からなる作品です。 盤上の夜(囲碁) 人間の王(チ

逡巡の二十秒と悔恨の二十年|感想・レビュー ★3.5

読了したのは少し前なのですが感想です。 なお、以前の感想・レビューでも書いたように、私は小林泰三氏のファンです。 短くまとめると氏の持ち味がしっかり出ている、非常にバラエティに富んだホラー短編集。 過去作へのオマージュも含まれるので、そういった点もファンにとっては嬉しい収録。 氏の作品が好きなら買って損は無いと思うが、わりと刺激が強めな作品が多い(と思う)ので、氏の作品に読み慣れていない方は他の作品から入ったほうが無難。 概要本書は、小林泰三氏の作品のうち雑誌などに

麻倉玲一は信頼できない語り手|感想・レビュー ★4.5|変化球だがエンタメ性が高いミステリ

読了したので感想です。 * 短くまとめるとエンタメ性がとても高いミステリ。 人によっては続きがどんどん気になって一気読みしてしまうはず。『硝子の塔の殺人』や『悪の教典』などが気にいる人は合うと思う。 帯に書かれた紀伊国屋書店員さんの一言が良い。 * ”信頼できない語り手”私は太田忠司氏の作品を読むのは初めてでした。 Web上のミステリまとめ記事か何かで本作を知り、タイトルに含まれる”信頼できない語り手”という文言に非常に惹かれて気になっていました。 ミステリが

天体の回転について|感想・レビュー ★4.0|小林泰三氏らしい短編ハードSF

小林泰三氏のSF短編小説『天体の回転について』を読了したので、かんたんに感想・レビューです。 * 短くまとめると表紙で躊躇してしまう(人も多いと思う)が、氏の持ち味がしっかり出たハードSF短編小説。小林泰三氏の作品が好きなら買って損はないはず(エロ・グロ要素も少なめ)。 同じく氏のSF短編小説である『海を見る人』よりも”ライト”な仕上がりなので、SFに慣れていない人はこちらのほうが読みやすいかも? * 私の小説に最も影響を与えている作家最初に断っておきますと、私は小

ヨルガオ殺人事件|感想・レビュー(★3.5)|前作が気に入ったならオススメ

今、一番話題になっているであろう海外ミステリ作家、アンソニー・フォロヴィッツ氏の『ヨルガオ殺人事件』を読了したので感想です。 短くまとめると面白くないことはないけれど、傑作にはほど遠い。 作中作は相変わらずおもしろいが。 『カササギ殺人事件』などの著者の作品が気に入った人は合うだろうけれど、そうでない人はやっぱり合わないのではないか。 * カササギ殺人事件私は『カササギ殺人事件』から同氏の作品に入りました。海外ミステリとしては珍しく話題になっているようだったので、試

マトリックス レザレクションズ|感想・レビュー ★2.5|映画

2021年の最終日に『マトリックス レザレクションズ』を観たので、感想・レビューです。 ★の数から分かるとおり辛口です。 ネタバレしないように書いていますが、ヒントに繋がる可能性は0ではないので読まれる方はご留意を。 * 一言で駄作。悪くはないが。 マトリックス三部作を愛している人は観ないほうがいい、かも。 * 私と『マトリックス』の出会い私が『マトリックス』を最初に観たのは中学の頃であった。学期末に特別授業的な感じでビデオが流されたのだ。 まぁ、とにかく面白