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#22 おいしい思い出2022 | とべちゃんの副音声

2022年の年の瀬。1年をどう振り返るか考えた。充実した1年だったので全てを一括りにするのが難しく、思案した。

SNSや写真データを見返しながら考えていると、いつの間にかニヤニヤしながら振り返っているテーマがあることに気がついた。それは、「何が一番美味しかったかな」という振り返りであり、「食」にまつわる思い出である。

外出自粛が緩和され、外食も自由にできるようになってきた2022年は、いろんなものを食べた。美味しかったもの、きれいだったもの、日々のお供になったもの、食にまつわる思い出はとにかくたくさんある。食べ物には、前後のストーリーや、食シーンの思い出が必ずセットになっている。そこで、1年の最後に思い出した食べ物と食シーンをまとめることにした。

【おいしいもの部門】 大賞

浪花寿司の蒸し寿司(松江)

年末の島根〜岡山旅行。島根から岡山への移動日は、クリスマス寒波で大雪。その影響で特急の終日運休が決定。急遽、松江での1泊が決定した。宿を抑えて、昼食を何にするか考えた。島根の郷土料理に「蒸し寿司」というものがあることを知り、松江周辺でお店をリサーチ。選択肢はほぼ一択で「浪花寿司」。

ランチの終了間際だったので、お店に連絡を入れ、タクシーに飛び乗った。運転手さんの話によると、かつては松江駅周辺にたくさんのお寿司屋さんがあり、いろいろなお店で蒸し寿司が提供されていたそう。今は多くのお店が閉店し、駅周辺は活気がなくなってしまったのだとか。

おしゃべりしているうちにお店に到着。お店に入ると、私の他に先客が1名。

「先ほどお電話くださった方ですね。どちらからいらしたんですか?…まぁ、東京から!この寒い中、わざわざ遠くからありがとうございます。」

女将さんらしき女性が席に案内して熱々のお茶を出してくれた。
お目当ての蒸し寿司を注文して、お茶で温まりながらゆったりと待った。

さて、蒸し寿司とはその名の通り、蒸して温かい状態にして食べるお寿司。「ぬくずし」とも呼ばれ、ちらし寿司をせいろに入れて蒸して温かくして食べるお寿司のことを言うそう。穴子やエビなど、熱を加えても大丈夫なネタや、錦糸卵や五目などを散らすのが一般的なのだとか。

数分して蒸し寿司が運ばれてきた。

ほくほくと湯気のたつせいろがお盆に乗ってやってきた。そのビジュアルに高まる期待感。そして、女将さんの粋な計らいで、お寿司の上にカイロのプレゼント。心温まる。

いよいよお楽しみの蒸し寿司の実食。湯気の溢れ出る蓋をゆっくり開ける。あっつあっつに蒸されたお寿司から一気に大量の湯気が上がり、次にきれいなお寿司が見えてくる。卵やかまぼこ、グリーンピースがカラフルで美しい!

初めて食べる熱々の酢飯。通常のお寿司よりお酢の香りがはっきり、でも優しくす〜っと鼻を抜けていくいくのがわかる。そしてほんのりと優しい甘みが広がる。上にのっている具材も、甘みと旨味が凝縮されて、丁寧にひとつひとつ味付けされている感じがした。

寒波の大雪の中、冷えた体でいただく蒸し寿司は最高のごちそう。この瞬間の幸せな気持ちを忘れたくないと思った。

無心でお寿司を頬張っていると、先客のお父さんがお会計を済ませて、私のテーブルに自分がもらったカイロをぽんと置いた。

「私、近所だからいらないんですよ。どうぞ使って。」

これまた温かい。2〜3分ほど周辺の観光情報を教えてくれたのちに、お父さんは帰って行った。食事の後、お父さんに行き方を教えてもらった松江城に向かった。

心身ともに温まる時間だった。

【おいしいもの部門】 ノミネート

コメダ珈琲のナポリタン

週末ルーティーンのひとつは、ホットヨガ→ごはん→銭湯。空腹でヨガを決めて、お腹ぺっこぺこでコメダ珈琲に向かう道のりは、テンションMAX。2022年に初めて食べた麺メニューに感動した。それがナポリタン!もっちもちの中太麺が最高。運動直後、空腹時にがっつくのはよろしくないとわかりながら、夢中で食べきる。完食直後にやってくる血糖値爆上がりによる眠気も食事のうち、などと思いながら、うとうとするのが幸せ。

東京ガーデンのジャージャー麺(三河島)

海外に行きにくくなって恋しいのが、韓国生活で食べていた日常的なご飯。新大久保はキラキラと観光地化されていて、敷居が高い。現地で食べていたような気軽で、安くて、うまいものを欲していた。そんな時に知ったのが、大衆化されていないコリアンタウン三河島。足を伸ばしてみると期待通りの現地感。お店には韓国のニュースが流れ、アジュンマたちが世間話をしている。そして、韓国生活でよく食べていたジャージャー麺が登場!「そうそう、これこれ…!」東京で韓国の思い出と再会。心の中で静かに、でも確かに私の気持ちは躍動していた。

ふたば製麺のうどん(川崎)

ふらっと立ち寄れるうどん・蕎麦はソロご飯の定番である。思い立って寄り道できるおいしいうどんを探していた時に見つけた。四角く、プチっと歯切れが良く、そして少量でもしっかりと重量を感じる麺がおいしい。目の前で揚げてくれるサックサクの天ぷらも、いい感じにあま〜く味付けされたおいなりさんもいい。日々の頑張りをねぎらう、私のご褒美ご飯の王道に。

【きれいなもの部門】大賞

フロムトップのプリン(恵比寿)

東京都写真美術館にひっそりと併設されているカフェ「フロムトップ」のプリン。美術館に併設されているからなのか、カフェ自体の雰囲気が落ち着いていて、ゆっくりと過ごせる。そして何よりこのプリン。写真映えするもの、華やかなものはいろいろあるけれど、華やかなのに華美すぎない佇まい、このバランスがとても美しい。優しくミルキーな甘さ。コーヒーでキュッとしまる。ひとことも発することなく、目の前のプリンだけに集中したくなる。空間も、見た目も、味も良い、全てを兼ね備えているフロムトップのプリンが優勝。

【きれいなもの部門】ノミネート

Lonrain TOKYO の青いジャスミン米カオヤム(恵比寿)

SNSで見かけて、そのインパクトから「ぜひ一度食してみたい」と思っていた青いご飯。Longrainはオーストラリア発のモダンタイ料理レストラン。恵比寿ガーデンプレイスタワー最上階にあり、見晴らしのいい店内は特別な気分にしてくれる。お目当ての青いご飯は、バタフライピーで鮮やかなブルー。添えられたライムを絞ると紫に色に変化する。ビビンバみたいに周りの食材と混ぜて食べる。魚の旨味、ナッツの食感や香ばしさ、パクチーの香り、ライムの酸味などいろんな味がくるくるやってくる楽しいご飯。

生鮮館やまひこのスムージー「だって桃が好きだモモ」(尾張旭)

名古屋まで遠征した1品。生鮮食品を扱うスーパーの特徴を活かして、旬のフルーツや野菜を使ったインパクトあるスムージーを販売。他にも思わず買いたくなる、シェアしたくなる、鮮やかで美しいお惣菜やフルーツサンドが有名。遠征の目的は、地場のスーパーが、これまでとは全く異なる客層をターゲットにバズるスポットに変わったことへの驚きと感動が大きかったから。どうしても直接、売り場をみてみたかったから。(元食品メーカーのセールスとしては他人事とは思えないイノベーティブな出来事で、心踊った)思い出すと、当時の興奮が蘇ってくるけれどここではバッサリ割愛する。

【特別賞】

スターバックスラテ

図らずも、2022年は1年で最もスターバックスラテを飲んだ1年だった。日本全国どこにいても、海外にいても、どこでも同じ味に会えるって素晴らしい。安心感のある味。私の中で、ラテは当たり外れがある。難しいことはよくわからないけど、きちんとミルクを入れて作ってくれるラテって意外と貴重な気がしている。

毎朝、あつ〜いラテをすすって、小さな声で「うまぁ」とつぶやくルーティーン。最初の一口を、心を込めて、集中してすすれるか、これで1日が決まるといっても過言ではない。スターバックスラテは単なるラテではなく、私の生活リズムの一部なのである。

ご飯とみそ汁と香の物

温泉宿などに泊まってコース料理をいただく機会が増えてから、ふと思い始め、確信に変わったことがある。肉や魚などのメインディッシュは食事を盛り上げてくれるけど、最後の最後に「おいしかったー」という感想を作るのは、ご飯とお味噌汁と香の物である。

シンプルなご飯を噛み締めるとお米の旨味がわかる。香の物が塩気や甘味でアクセントになる。最後はお味噌汁の旨味がしめてくれる。今まで、あらためて向き合うことがなかったけど、この組み合わせ、ごちそうじゃないか!

味のマップを広げていく

食品メーカーに勤めていた頃に聞いた言葉に「味のマップ」がある。知らない物、新しいものを食べて、自分の中に作り上げていく味のバリエーションや広がりの理解のことを指す。そして、新しい食べ物や味を求める姿勢や行動を、食への興味・好奇心と表現していた。

その言葉、考え方を聞いてとても面白いと思った。そして、私も味のマップを広げたいと思うようになっていた。変わった物でなくていい。でも、まだ知らない食べ物、味に出会いたい。おいしいものをもっと知りたい。

2023年も食への興味・好奇心を持って、味のマップを広げていきたい。

おしまい。