ある女子高生とある男子高校生の話

マフラーをギリギリ目が見えるくらいまで引っ張りあげたまま駅まで歩いてきた。今日はいつもより寒いから、この格好でも目立つことはない。兄ちゃんズもさすがに帰っただろう、と安心して電車を待つ。ホームは学生と仕事帰りの大人で溢れかえっていた。
「皐」
聞き覚えのあり過ぎる声。ポン、と肩に手を置かれる。嘘でしょ今日に限って帰り遅かったの…!?
「___」
兄が名前を呼ばれて振り返る気配がした。つられるように私もそっちを振り返った。視界に兄の背中をとらえるのと、“乾いた音”を聞くのとどちらが早かったのか、わからなかった。

気が付くと目の前にシャツが血で染まった兄が横たわっていた。救急車の中だった。

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