ある女子高生の話

「あっ、皐」
電車を降りてすぐ、声をかけられた。声の主はたいそう眠そうにしておられる。
「あれー電車間に合ったんだおめでとう。私が家出るときはまだ寝てたのに」
「俺の脚力なめんな」
「あんたの場合あり過ぎね」
「うるせー」
「言い返せないときはいつもうるせーって言うよね」
双子の兄は一瞬口を開いたが、すぐに閉じてしまった。
「今うるせーって言おうとしたでしょ」
今度は睨んで舌打ちしてきた。また『うるせー』と言おうとしたらしい。こちらも負けじと蔑むような笑みを浮かべる。
「ほんと侑ちゃんさーデカいわ。超目立つ」
妹に負けるなんて可哀相だから話題を変えてあげることにしよう。
「お前だってデケーよ超目立ってる」
…墓穴掘った。
「朝から人が気にしてること言ってくるとかサイテー」
「はぁ?お前が先に言ってきたんだろ?なんだよ胸がデカいとか言って欲し__いって!!」
思いっきり侑人の足を踏んだ。もちろんわざとです。
「セクハラまでするとか超サイテー!どうせ私はまな板ですよ!!」
「セクハラってなんだよ触ってねーだろ!」
「された本人が嫌だと思ったらセクハラなんですー!」
もう一回足踏んで爪割ってやろうか!!
「はぁ?ふざけんな!いってーマジ痛てえよこれ絶対爪割れたわ」
「大丈夫、人間って意外とタフだから。特にあんた」
「知ってるか人間って意外とナイーブだ。特に俺」
ノってきた。これはおかしい合図。
「今すっごい眠いでしょ」
「おうすっげー眠い」
私より先にベッドに入ってたのに眠いっておかしいよ。歩きながら寝るとかはやめてほしい。身内として。
「もう一回足踏んであげよっか?目覚めるかも」
「やめろマジ次は骨折れるって。お前体重何キロ__」
容赦なく踏んだ。
「骨折れたかな?おめでとう!」
声も出さずに悶絶していた。必要なのは言葉による教育ではなく痛みによる教訓だって偉い人が言ってた。
「ほらー気をつけてないと足元踏まれるよ」
「足元はすくわれるんだろうが…!」
彼は涙目である。余は満足じゃ。

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