コウメ太夫の思考回路を学びたい


 小学生の頃、土曜日の夜には「エンタの神様」を見ていた。

20時に習い事を終えて家に帰り、家族で夕食を食べ、お風呂に入ってダラダラしていると22時になる。すると、映画が始まるかのような壮大な音楽とともに番組が始まり、様々なお笑い芸人たちがネタを披露する。

確か、だいたひかるや長井秀和の毒舌ネタで始まり、アンジャッシュやインパルスといった本格的なコント、オリエンタルラジオやアクセルホッパーの軽快なリズムネタを経て、最後に、はなわや犬井ヒロシの歌ネタで番組が終わる、とおぼろげながら記憶している。

当時の私は真面目な小学生だったので、故桜塚やっくんがネタの途中で下ネタを連想させる場面では急に漫画を読んだり、トイレに行ったりして、事なきを得ていたことも、なぜかいまだに覚えている。


 今思うと、当時なぜこんなネタで笑っていたのだろうかと思うような芸人さんも数多くいるが、その中でもとりわけ異色を放っていたのが「コウメ太夫」だ。

着物、白塗りという太夫を模した格好をして自らリズムを刻み、自身の日記を読み上げてチクショーと叫ぶ、、、ネタの勢いと個性的なキャラでいまだに数多くの人の記憶に残っている人物だと思う。

 

 私は彼のtwitterをフォローしているが、彼は #毎日チクショー というハッシュタグで、ネタを毎日披露している。twitterのネタは、常人には思いつかないものばかりで、私はよくクスッとなるのと同時にどんな思考回路でネタを考えているのかふと気になる。

端的な言葉で表すことはできないが、裏切りの裏切りみたいなネタなのだ。笑いは裏切りである、と耳にすることがよくあるが、単純な裏切りを超えてくるのである。

 例えば、以下のツイート

「牛乳」をフリにした裏切りを考えようとすると、「白くて、普通は飲まないような液体」と思考するはずだが、彼は「白い」イメージが全くなく、かつ「固い」脚立を選択し、私の想像をはるかに超えた高みから裏切ってくる。

 2つ目は、さらに高度な裏切り。

私のような素人の場合、「漢方薬」をフリにした裏切りで思いつくのは、「ただの雑草」とか「虫の死骸」といった、笑いを生み出すこともできそうに無いものしかない。

しかしながらコウメ太夫は、「プリンに混ぜたら生き返りました」と裏切ってくる。「漢方薬」から「プリン」「生き返る」が連想できるわけがないし、そもそも、先のネタの構造では「名詞」対「名詞」という基本に沿っていたが、今回は「名詞」対「文章」という、文章構造そのものから裏切ってくるのである。


 ネタそのものは面白くないものかもしれない。しかし、彼がこの裏切りの裏切りとも言えるネタを毎日思いついていると考えると、恐怖を覚える。単なるひらめき・思い付きでツイートしているのか、それともそのひらめきを推敲したものをツイートしているのか、、、

彼をテレビで見る時は、踊っているかチクショーと叫んでいるかの二択が多く、ひな壇でトークしていることはほぼ無いので、彼の考え方を確認する術がないのが非常に残念である。

だが、単なる裏切りではなく、もう一段、あるいは2段以上も裏切る彼の思考回路・考え方を参考にすると、なぜか自分の仕事にプラスになる、という気が湧いてくるが、私が疲れているだけなのかもしれない。




ちなみに、「もう中学生」も同じカテゴリーに分類されると思うが、こちらのほうが狂気的である。

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