大手予備校英語科講師にして数学や物理,世界史や現代社会,倫理などの指導歴を持つ私だからこそできる教養講座です。
岩波ジュニア新書『世界が広がる英文読解』で紹介している,視野を広げ教養を深める勉強法 を応用して高校レベルの英語と倫理の基礎知識を習得します。
今回はソクラテスについて学びます。まずはセンター試験の過去問から厳選した次の各文章を読んでください。
古代ギリシアのソフィストの一人で人間こそが真理の基準であると主張したプロタゴラスは,人間にかかわる広い範囲の知恵をもっていると自認して,徳の教師と称した。知者による徳の教育という彼の考えに対して,ソクラテスは批判の目を向ける。ソクラテスによれば徳は知であるが,その知はだれか才能に恵まれた人が特権的に到達できるようなものではなく,だれもがその知に与る可能性をもっている。その知に至る方法として,彼は一方的な教授を排し,問答による協同的探究を実践した。
1993年度・追試験 初期ギリシアの自然哲学者たちは自然を探究対象とし,万物の始源の究明に専心したとされるが,そこには自然の一部をなす人間の根源的な在り方を探るという意図が含まれていた。ヘラクレイトスは万物流転説を提唱しつつ,「私は自己自身を探究した」という言葉を残している。このような自己探究の精神は,ソクラテスヘと受け継がれていく。ソクラテスは,対話問答による吟味を通して人々を自分自身についての思い込みから解放し,無知の自覚に根ざした真実の自己と向き合わせることに尽力した。
2003年度・追試験 古代ギリシアのソクラテスは,善や美など,人生において重要な事柄に関して,真なる知を求めるために,対話を通して相手の考えを問いただし,無批判に正しいと思われている見解の矛盾を明らかにしていった。
2020年度・追試験 古代ギリシアには,世の中で生きていくうえですぐに役立つ知を求めて,ソフィストに学ぶ人々がいた。しかし,ソクラテスは,「本当に善く生きるとはどういうことか」という,より根本的な問いをソフィストに対して投げかけた。そうした対話は,人々に無知の自覚と,自分のあり方の問い直しを促すものであった。
2014年度・追試験 ソクラテスは,当時名高い政治家や詩人たちが,人間は神とは異なり根本的に無知であるにもかかわらず,傲慢にも善や美などを知っていると思い込んでいることを明らかにした。そして彼は,デルフォイの神殿の「汝自身を知れ」という警句を無知の自覚を促す言葉と解して,問答により真理を探究した。
2005年度・追試験 上で読んだ内容を踏まえて次の英文を日本語に訳してください。
Socrates asked a lot of questions to make people realize that in fact they knew nothing.
【解説】Socrates asked a lot of questions… 「ソクラテスは多くの質問をした」 Socratesが主語でaskedが述語動詞,a lot of questionsはその目的語です。
to make people realize… 「人々に…を気付かせるために」 to make以下は不定詞の副詞的用法です。また,《make O+原形不定詞(動詞の原形)》は「Oに…させる」の意味です。 (例)That teacher made us buy his books.「その先生は私たちに彼の本を買わせた」
that in fact they knew nothing 「実際は何も知らない(という)こと」 接続詞thatは「…(という)こと」を意味する名詞節を作ります。in factは《前置詞+名詞》で,《前置詞+名詞》は形容詞または副詞のはたらきをします。ここでは副詞のはたらきをしています。
【訳例】 ソクラテスは人々に実は自分は何も知らないということに気付かせるため,多くの質問をした。
※復習として,上の訳例を見て元の英文を復元できるようにしましょう。この勉強法を「復文」と呼びます。