王道の皮を被った異色作~ビーファイターカブト第24話までを視聴して~

はじめに

 東映特撮Youtube Officialにて配信されているビーファイターカブトを第24話まで視聴してきた。本放送当時、同期入社の人と一緒に見ててネガキャンがあまりにもひどかったので、本作に対してネガティブなイメージを持ってしまった。そのため今回の配信でもあまり見る気はしなかったが、たまたまホネ元気の回のコメントを見る目的でページを開いてそのまま視聴してものの見事にハマったので、感想を書くこととする。

第24話までを見た感想

 でもってホネ元気回こと「大逆転去りゆく君へ」。主人公・甲平の幼馴染で、勝気な性格で甲平に素直になれないアツコが引っ越すことになり、甲平をデートへ誘おうとするが…といった話である。ここで真意を知らない甲平はアツコを邪険に扱ってしまい、アツコがピンチに陥る。アツコの真意を知った甲平は、アツコを救うためにメルザード怪人と戦い勝利、アツコに励ましの言葉を贈り離れていく…という具合である。昔は一昔前の作品風な演出があまり受け付けなかったが、今見ると古さよりも作品根底に流れるハートウォーミングなドラマが秀逸であり、鉱脈を掘り当てた感じである。
 その鉱脈からはザクザクと宝の山が発掘された感があった。作戦遂行のため、なし崩しにミオーラ様が大食い大会に出る「桜祭りで大乱戦!!」、健吾の空手を見て私が再び空手を始めるきっかけとなった「友に捧ぐ怒りの鉄拳」、本放送当時から好評だった「罠の街消された悲鳴」、甲平の妹ゆいが常識人と見せかけて結構好き放題やってることがわかる「戦う恋占い日記!!」、いやビット君を除いてみんな好き放題やってることがわかる「夏の彼女は人魚姫?!」、種の絶滅とは何ぞやということを語った「絶滅花2億年の復讐」、長年いじめ問題を描き続けてきた扇澤先生の集大成的な作品である「誇りの荒野を走れ!!」などなど…
 こうした財宝が発掘され続けていくうちに、食わず嫌いは良くないということをオタクとして痛感する次第だった。

1996年作品最大の異色作

 さて、先述のホネ元気の話こそビーファイターカブトの基本フォーマット的な話のように思える。もちろん例外はあるものの、ゲストが出てきて甲平たちがゲストを邪険に扱い、問題がこじれるも甲平たちがゲストを救うべく懸命に立ち向かい問題が解決する、という具合である。第20話から第22話なんかは、堅物の健吾、塩対応の甲平、無神経の蘭という感じでネオビーファイターの闇の側面を描いた三部作だと思っている。
 一方、「カーレンジャーとシャンゼリオンが変化球なので、ビーファイターカブトは王道路線をめざします」とうたわれていた。でもって甲平たちの塩対応とかがあまり受け入れられなかったためか、当時のパソコン通信での評判は否多めな賛否両論であり、一緒に見ていた同期も毛嫌いしていた。(普通なら嫌だったら見ないとか拒絶するはずなのに…)
 でもって、そこまで毛嫌いする理由を考えてみた結果、どうも
 王道路線→ヒーローは多少ポンコツであっても聖人君子
 という図式が固定概念として視聴者の脳裏に焼き付いていたからだったんじゃないかと思っている。
 ところがどっこい、ビーファイターカブトは今思えばカーレンジャーやシャンゼリオンと同じ、いやそれ以上に異色作なんじゃないかと思っている。同期の桜で他者作品である七星闘神ガイファードやウルトラマンティガと比べても一目瞭然である。気のいいお兄ちゃんが主人公だったガイファード、優等生が主人公だったウルトラマンティガと比べても、カーレンやシャンゼやBFカブトの主人公群は異色である。
 何でも願いが叶う妖精にカツ丼をお願いする陣内恭介(って書くだけでも笑いが出てくる)、ふんわかいこうぜふんわかがモットーで楽観主義者の涼村暁もたいがい異色だと思う。とはいえ彼らはお笑いというオブラートに包まれており、陣内恭介たちは子どもたちと普通に接していたし、涼村暁に至ってはマイペースだからか意図的に子どもと接する回があまりなかったように思う。
 一方のビーファイターカブト。前作の重甲ビーファイターでは子どもと普通に接する話が多かった一方、ビーファイターに首を突っ込もうとするレッドル襲名前の舞や、子どもになった拓也とその仲間に対してビーファイターたちは手厳しかった。その手厳しい一面を堅物・塩対応・無神経というリアルとして前面に押し出したのがビーファイターカブトだと思っている。しかもリアルさを笑いなどのオブラートで一切隠さず、生で出しているものだからどぎつく思い、拒絶反応を示した人もいるのではないかと思っている。
 しかしリアルを踏まえた異色作として見ると、かなり印象が変わってくると思う。年長者としての重責により堅物になってしまった健吾、塩対応で不器用だが優しさは持ち合わせている甲平、強すぎる母親に適応するため物事をはっきり言うようになり、無神経になってしまった蘭…本編の話からそう読み取ると、かなり深い話に変質してくる。
 ここまで闇の描写のリアルさが生々しい作品はそうそう見かけない(異色作の極北であるライオン丸Gぐらい?)ため、おそらくここまでリアルにする必要ないんじゃないかという教訓が生まれたのかもしれない。しかし、このような教訓が生まれた以上、ヒーローのリアルを描く手法として生々しい闇を描く試みは有効だったように思える。

終わりに

 そんなわけで王道作と見せかけて実は異色作だった感のあるビーファイターカブト、普通の特撮ヒーローを見慣れて飽きてきた方にオススメの一作である。

…え?ファイブマンの企画まだって?もうしばらくお待ちください。すみません。


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