ゆるbooklog

傲慢と善良/辻村深月


婚活と恋愛のお話。という名目で人間の「本質」のお話。人間の本質がそのままタイトルになっております

辻村深月の人間の解像度にぶちのめされた
ホラーぽいものから青春からお仕事からラノベまでなんでも描くけど、人間の解像度がずば抜けてるから全部面白いんだと改めて思った。最近の作品は本当に容赦なくてもはや怖い 
ちょい前の子どもが主人公の作品でも、圧倒的な解像度でありつつ子ども目線の優しさがあったけど、最近は容赦なく抉り取ってくる

この作品は1部で死んで2部で生き返ります
最近私は本を読んで己のメンタルがやられることが多かったけど、辻村深月はちゃんと最後はフィクションで救ってくれるのがありがたい、心理的安全性が高い
 1部で死んでも2部で前向きになれた。でも10年後読んだら多分即死するのでいま読んどいた方がいいです

恋愛や結婚を阻む劣等感、過剰な自意識、過保護な親、意地の悪い彼氏の女友達 要素で言ったら山あり谷ありの「普通」の恋愛小説なのに、もう一度見てほしい、タイトルが「傲慢と善良」なんですが、、、
恋愛する自分でもなく、恋愛という行為でもなく、恋愛を阻む人間の思念達にタイトルがついているという事実 

びっくりするほど酷い人は誰もいない。超悪い人も一人もいない。みんなが人間味の範疇を超えない。人間味だねってオブラートに包むこともまた傲慢な善さかもしれない。そう考えずにはいられない頭になりますね

誰にあんなことされた!こんなこと言われた!ではなく、その内容から相手の傲慢さや善良さを見出す生き方、めちゃくちゃめんどくさそうで無理 でも確かにわかる あまりにわかる マジで心とか動かなそう 岩

読んでると自分の傲慢さと善良さを責められてるような気持ちになって最初は死ぬけど、やっぱりこういう考え方ってメタ認知だからそこまで辛くない
物語の登場人物に主観でしんど価値観ぶつけらるほうがよっぽど失血死する 
人間が傲慢で善良な生き物だと繰り返し言ってくれるのはありがたいよ 主観しかない物語の方が自分で普遍的真理に気づいて死んでしまうてわけ

どうやって生きてきたら恋愛小説をこの観点で書けるんだろう しかもちゃんと恋愛小説としてもおもろい

例えばこれが映像になったら、ありがちな恋愛ドラマになってしまうと思う それくらい「会話」でだったら普通にあって違和感がないことだから 
この人間関係のあるあるを、傲慢と善良という言葉で突き刺してくる言葉の強さがすごかった 文字じゃなきゃこの強さは感じられん
確かにあって、知ってるのに、言葉にしようとすら思わなかったことを言葉にされた時の驚きってすごい

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