ダンス公演"GITANES"について

先日、友人が自宅で行うというコンテンポラリーダンスの公演を手伝った。これが、おもしろかった。ちょっと感想を書いてみることにする。
本来受付と案内役だったんだけど、私はコンテンポラリーダンスをあまり見たことがないし、舞台芸術にも詳しくないので、客観的な視点でとアドバイスを求められ、結果的に「アンビデンスアドバイザー」という名前が与えられた。(なんだそれ?)ようは、雰囲気作り担当というか、実直な口出しをするためというか、そういう存在が、この公演には必要らしかった。
少なくとも、私がいると場が和らぐ?らしくそれだけで意味があるらしかった。

内容はというと、企画者自身が普段生活している住居(シェアハウス)で、4人のダンサーが様々に幾つかの空間を使って同時多発的に100分間のパフォーマンスを行うというものだった。それぞれの動きやモチーフはバラバラで、観客は公演中自由に着席・移動でき、飲食も許された。(一部の部屋では喫煙も可能で、そこで私はちょっとした案内人としてスパスしていた。)
ただでさえ、ダンサーとの距離が近い。いつでもどこへでも移動していいという自由もぎこちない。生活感丸出しの会場では、何が、どこまでが作品の一部かももはや不明な状態。

劇場みたいな明らかにパフォーマーと鑑賞者が位置的に分けられて、始まりと終わりがあるそれとは当然大きな差があって、自由度の高さゆえに見る人に不快感や不満が残るのでは、と不安は大きかったけど、終演後の歓談の時間を設けていたことも幸いして、多くの観客は、非常に個人的な感想をたくさんくれたし、私にはよくわからない専門的な議論をしている人もいてた。自由度の高い今回の手法(自宅で公演すること)は、それゆえ観客を困惑もさせたけど、見て受け取ることによって素直さを引き出せたようだった。そもそもちゃんと、というか、観客の方に自由に動いてもらえてよかった。

作品を見る時って振る舞いに緊張してあまり派手に動けなくなるものではないですか?

私は観て、

・楽しかった
・何が起こるのか、ワクワクした
・日常でも非日常でもない不思議さがあった。ちょっと気持ち悪いけど、好き。
・じっとしておくストレスがない(私はじっとしているのが苦手なので)
・映像が同時(LIVE)にあったり、ライティング、可動域を示すテーピングなども含め空間がほんのり異質な雰囲気を醸しいて、演出以上の偶然な部分もあるのだけど、パフォーマンスに入り込めるくらいの空間がちゃんとできていて感動した。
・ダンスに魅了された、単純にダンスのレベルが高いのかも

ダンサー1.もえさん…
一番みてて新鮮だった。2種類のパフォーマンスがあったけど、ひとつは紙袋の中に入っていて、ちょっと想像できない動きを中でしているようで、柔らかい卵の中の幼虫みたいな。そして有機的に袋をやぶり、ガスマスクをつけた彼女が踊り出す。まるで現代美術のパフォーマティブなインスタレーションみたいで、ダンスを見る、という感覚から少し離れた感じがしていて、すごく良かった。こういうのもっとあったらいいのに。

ダンサー2.まりあさん…
家全体を動き回りながら、時に観客と他のダンサーに介入しながらいわゆるコンテンポラリーダンス的な動きをするまりあさんは一番独特で、表現にも惹かれるものがあった。一度見て欲しいダンサーだと思う。セクシー要素はいれたつもりないんだけど、身の振り方からとても色っぽく感じる。

ダンサー3.よっしー…
唯一の男性で、イケメン。汗だくで終始堅めの表情をするよっしーは音と相性が良くて、海外経験を感じさせる自由で即興的な動きと、存在感が、強かった。企画の段階からアカデミックなアイデアを意見してくれていて、ダンスにも意識されていたようにみえるし、終演後の歓談の時間やお客さんが帰るまでを考察してたみたい。ダンサーなのにそこまでみるんだ。

ダンサー4.まいさん…
正確な動きと、ほかの3人の動きに調和をもたらすような感じが印象的。動きから知的な人だった。私と身長が同じで、150未満の身体。とは思えなかった。実は一番激しい動きをする。よっしーと男女2人体制で踊ることが多かったんだけど、ほの謎の絡まり。「コンテンポラリーダンスだー」と思った。何か読み解きたくなる感じ。同時に身体の可動域の広さというか、動きの豊かさに驚かされる感じ。

そんな感想を抱いた。

ちょっとまとめてみると、
この企画には、もちろん沢山の(非一般的な)「TRY」があったものの、「実験的」という言葉を使うにはアート人から誤解を受けそう。
ダンスは、ストリートや森やらあらゆる場所ですでにされているように、劇場以外でも可能です。
小劇場の減少、「パフォーマンスは舞台で」という固定観念の払拭は企画者の頭にあったものの、むしろ重要だったことは、「どんなパフォーマンスが可能で、どんな鑑賞体験が可能か」ということにあったようです。
つまり「様々なプランを重ねていき、楽しめるものを作る。」ということが、企画者の主たるおもわくだったと思う。
ある種「遊び」のようなもの。こうしよう、ああしようというプランをどんどん重ねて、大人なので検討もし、ある100分の公演をつくったのでありました。

私は大学で「現代美術」を専攻して、いろんな展示を見たり作ったりしてきました。
今回の企画は、ダンスパフォーマンスが軸になっているものの映像の実験的な部分もあるし、なんともいえなく、表現として、ジャンルを無視して、いろんなことが可能なんだな、と思い知らされた。
今回は自宅ということもあってかなりカジュアルな雰囲気が人と人の間にはあったと思う。
これがもっと大きな公共の場、施設、だったらどうなるんだろう。総合アートカンパニーみたいなのができちゃうんだろうか。

体験しないとなんとも感想が持てないけど、ビデオ(アーカイブとも言えないんですけど)が残されているので、様子くらいはわかるので是非観てほしい。
もし気になれば、実は急遽決まった次回公演があります。8月にレベルアップしてやる「次回」について是非とも期待していただきたい。
(気になる方は私まで。)

videoはこちら

公演情報
『GITANES(ジタン)』
2019.6.26,27
100分公演

〈企画・振付 〉
西純之介
〈演出〉
西純之介
〈出演〉
好光義也,久保田舞,阿部真理亜,小林萌
〈アンビテンスアドバイザー〉
留岡愛子

【 好光義也(よっしー) : ダンサー】
1994年生まれ。京都を拠点としたアート・コレクティブである劇団速度に所属。21歳からダンスを始める。ダンスをヤザキタケシ氏、ハイディ・ダーニング氏に師事。日常の周辺にある問題をダンスを中心とした芸術ジャンルで取り扱っている。
最近の作品だと、「Athiletic Buildbio solo dance version」SAI Dance Festival2019審査員賞受賞。

【 小林萌(もえさん) : ダンサー 】
1996年生まれ。今年の3月に大東文化大学を卒業。5歳から始めた空手で初段をもつ(黒帯)。13歳からダンスを始め、身体表現の世界に魅かれていく。在学中にodd fish として作品を出しコンペティションにて受賞。昨年韓国にてSIDCで「IN-tation」を発表。自身のドキュメントをモチーフに作品を創作し発表している。
2020年はイスラエルを拠点に活動する予定。

【 久保田舞(まいさん) : ダンサー 】
1995年生まれ。4歳よりバレエを始める。埼玉県立芸術総合高校にて舞台芸術を学んだのち大東文化大学スポーツ科学科入学しモダンダンス部に所属。卒業後は海外の振付家/ダンサーとレジデンスを通じてコラボレーションやWS講師をつとめたり、国内外*のダンスフェスティバルに招聘され作品を発表する等、作品や自身の身体ツールによって海外アーティストとの繋がりや身体的デザインの共有・発展を目指している。
*M1contact comtemporaly dance festival(シンガポール) / NDA International Festival (韓国) / 福岡ダンスフリンジフェスティバル

【 阿部真理亜 (まりあさん): ダンサー 】

1994 年生まれ。射手座。日本女子体育大学舞踊学専攻卒業。2019 年東京藝術大学大学院メディア映像専攻を修了。「うつる身体」について思考す る。映像・パフォーマンス・空間演出・振付等、また他のアーティストとコラボ レーションするなど多方面での表現活動中。これまでに tantan、川村美紀子、井 手茂太、振付作品に出演。MV では Nakamura Emi、9mm parabellum ballet 等 にも出演。中之条ビエンナーレ 2019 出展作家。

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