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「映画へと導く映画」開催によせて

2007年頃から5年間、ATTICというフリースペースを運営していて、そこで『追悼のざわめき』『片腕マシンガール』『SR サイタマノラッパー』をはじめ、インディペンデント映画をたくさん自主上映してきました。

そのATTICで、札幌市在住のCMディレクターであり、『壁男』などの映画監督である早川渉さんの特集上映を開催した際、打ち上げの席で早川さんから「君たち、案外映画を見ていないね」と。
早川さんはすごい数の映画を見ていて、背景から教えてくれる作品解説が抜群に面白い。推薦作品をみんなで定期的に見る会をやろうと提案してくれまして、一年近くにわたって月1~2回程度集まっていました。
伊藤高志『SPACY』、川島雄三『しとやかな獣』、ジャック・ベッケル『穴』、大島渚『絞死刑』、ミケランジェロ・アントニオーニ『欲望』…。

見終わった後は椅子を寄せ合って感想を言い合うんですけど、とにかく最初は何も言えないわけです。慣れ親しんだ人たちとは言え、感想って格好つけてしまうし、そもそも何を皮切りに話し出して良いか皆目わからない。
でもそこは早川さんの誘導もうまくて、あの台詞を言う時の顔が良いとか、こんなことされたら惚れちゃうねとか、そういうちょっとした感想に始まり、この場面って一体どういうことだったんだろうね?と疑問を投げかけながら話してくれました。
自分が口にしたはずの感想が、あれ、何か違うぞ?と気持ちがどんどん変化していく。なるほど!という発見に膝を打ちたくなる。より深く理解するために感想を言語化して話し合うことは、なんと楽しいことなんだと思いました。人生の数だけ違う感想があるのだから、何も恥ずかしいことはない。じゃあ次は同じ監督のこれを見てみよう、影響を受けたというこっちも見よう。私が今、映画に関わる仕事をする上で最も重要な一年間でしたし、糧となっています。

レンタル店に行っても、配信を見ても、当然ながらあまりに映画は多すぎる。カップルが手をつないでブラブラと店内を歩きながら、「何見たらいいかわかんないよね~」と話している光景は未だ目にします。これが間違いないよ!と、すかさず話しかけたくなるのですが。

もう一度あの上映会のような機会をもちたいなと思っていた中、「三つ数えろ!映画監督が選ぶ名画3本立てプログラム」という書籍に出会いました。えっ、あの監督がこんな作品好きなんだ!と、理由ごと面白くてしょうがなかった。いつか映画監督を呼んで、ぐっと映画が面白くなる時間を共有したい。その機会が今回ようやく巡ってきた形です。

結局、どういう街に住んでいきたいか?
私はやっぱり「映画がある」ところに住み続けたいので、映画館があって、いろんな上映会があって、月一でオールナイトがあったりしたら、なお良いな。そのためには自分で映画を掘るきっかけに出会って、とにかく誰かと感想を言語化すること。観客の目が肥えてくることは、絶対に映画文化の底上げになります。

もう一度原点に立ち返る気持ちで企画した今回の「映画へと導く映画」、我ながら良いタイトルだと思うのですが、参加したら軽く10作品以上は見たい映画が増えると思うんですよね。実現に向けて多大なご協力をくださった札幌市民交流プラザには、深く感謝を申し上げます。

一人では出会うことができなかった映画への旅へ、この企画をきっかけに、どうぞお出かけください。

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クリエイティブスタジオ シネマシリーズ
「映画へと導く映画」vol.1 ゲスト:映画監督 黒沢清

2020年4月18日(土)
12:40- 上映-1 『バック・トゥ・ザ・フューチャー』|500円
15:20- 上映-2 『パリの灯は遠く』|500円
18:00- 黒沢清監督 特別講演|1,000円・当日1,500円

メンバーズ先行発売 2/22(土)10:00-
一般発売 2/29(土)10:00-

詳細 ☞ https://www.sapporo-community-plaza.jp/event.php?num=1188

主催|札幌文化芸術劇場 hitaru(札幌市芸術文化財団)
企画制作|小野朋子
企画協力|boid

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