2019ベルリン観劇記録(13)『Anna Karenina oder Arme Leute』
10月17日
Anna Karenina oder Arme Leute アンナ・カレーニナ、あるいは貧しき人びと
劇場 Maxim Gorki Theater マキシム・ゴーリキー劇場
原作 レフ・トルストイ, フョードル・ドストエフスキー
演出/上演台本 Oliver Frljić
台本協力 Ludwig Haugk
舞台美術 Igor Pauška
ドラマトゥルギー Johannes Kirsten
トルストイの『アンナ・カレーニナ』とドストエフスキーの『貧しき人々』をマッシュアップした作品。演出は先日観たEin Bericht füt eine Akademie あるアカデミーへの報告 の Oliver Frljić。
舞台奥から手前に延びるトロッコの線路が二つの物語の交錯を視覚的に表現する。ツラよりも少々突き出しているため、客席の一列目は潰されている。正面奥には時の権力者の巨大な肖像画が置かれ、アレクサンドル3世→ニコライ2世→レーニン→プーチンと交換される。舞台中央上方にはピアノが吊られ、演奏者は上演中飼い殺しである。大きな円形のパンが、貧しさ、あるいは富の象徴として様々な使い方をされる。
一幕では、二つの物語が順に、あるいは混じり合いながら演じられ、上流階級の欺瞞と下層階級の搾取が描かれる。休憩を挟んで二幕になると、貧しき人々の主人公ワルワーラが『アンナ・カレーニナ』に登場する女性3名を脅し、女4名で上流階級の男たちを銃で殺す。その後、ワルワーラは上流階級であるその3名を撃ち殺す。『貧しき人々』でワルワーラの文通相手であったマカールは、アンナの夫の遺骸から毛皮を取り、羽織る。そして自分はリッチになったと話す。残った二人はプーチンの肖像の前へ向かい、手を取りあってキスし、肖像画の後ろへ去る。銃声。プーチンの肖像画を破って現れるワルワーラ。永遠に終わることのない階級闘争への覚悟を、劇的に提示して終わる。
ヨナス・ダスラーが出演しているというだけの理由で観に行ったのだが、的確な演出に感心し、最後まで小さな驚きと意外性を楽しめた。面白さ優先で採用したように思える細かなアイデアも、人間臭さを加えるスパイスとなっていた。
ヨナス・ダスラーはリョーヴィンを演じ、氷をくっつけたシューズで現れ、滑って転ぶなどの少々危ない演出も身体能力でカバーし、全体的にコミカルで活き活きとしていた。舞台に映画に次々と大役をこなす彼の、今後の出演作が非常に楽しみだ。来年も劇場で観られますように!
ドイツで観られるお芝居の本数が増えたり、資料を購入し易くなったり、作業をしに行くカフェでコーヒーをお代わりできたりします!