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映画『ゴールデンカムィ』

原作と映像化について色々取り沙汰されている中ではありますが、原作ファンとしても非常に面白く観ました。

原作の1~3巻の途中(第20話)までの映像化で、原作では別々に登場していた笠原勘次郎(射殺される)と白石由竹をペアにして杉元とアシリパに捕らえさせるとか、料理の場面をいくつかオミットするとか、尺に収まるよう巧く改変していたかと思います。他に少し飛ばして4巻(34話・35話)で白石が牛山に追われる下りと土方歳三が銀行から愛刀を奪取す下りも原作の流れを変えて盛り込まれていて、後半重要度を増す土方を上手く前フリしています。

冒頭で描かれる日露戦争の二百三高地の攻略戦もなかなかの迫力で、二十八サンチ榴弾砲も出てきます(原作には出てこないけど、二百三高地戦といえばコレは出すべきでしょ)。ヒグマやエゾオオカミのレタラなど動物のCGも実物と併用しているんだろうけど、難しい毛並の表現や動きなどもかなり頑張ってたかな(いくつ重力を感じさせない怪しいカットもあったけどw)。

クライマックスは、原作では割とあっさりしていた馬ぞり戦を大きく膨らませていて、かなりの見応え。ロケは北海道開拓の村で行っていて、ストロークがそれほど長くないので、よく見ると同じ建物(旧小樽新聞社)が何度も映ってるw。

また、原作の1巻(第6話)、2巻(第15話)、4巻(35話)で描かれていた杉本の過去をラストでアシリバに向けて語る形に集約し、二人の関係性がグッと縮まる描き方も実に良い。それから脚本なのか演出か分からないけど、原作にはない二人が手を繋ぐ場面をいくつか挿入していて、これがなかなか観ていて効いてくる。たとえば、ヒグマに襲われた杉本をアシリパが助ける場面は、二人の出会いを描いた原作での名場面で、映画ではヒグマが毒矢を射られて死んだ後、杉本が立ち上がる際にアシリパが手を差し伸べるてその手を握り返して立ち上がるなんていう原作にはない描写があります。

キャスティングも良かったし、ビジュアルの再現も原作から飛び出してきたかのようで皆さん素晴らしい。映画化される前からコスプレ人気でクオリティの高いコスプレイヤーがたくさんいたので、映像の登場人物としてガワも含めて成立させるのは、キャストや衣装さんもさぞ大変だったかと。下馬評では橋本環奈だったアシリパ役の山田杏奈も映画の中では少女に見えます。それから、アイヌ描写はあくまでフィクションなので、そこそこに観ておくのが吉。映画の美術担当も明治時代には原作に出てくるようなアイヌコタンはもう存在しないと言ってるくらいだし、死んだはずの土方歳三が生きている、あくまで並行世界の物話です。

総じて満足だけど、あまり原作のニュアンスを掬えてなかったのがギャグ描写。杉本持参の味噌が、味噌を食べる習慣のないアイヌのアシリパにはオソマ(ウンコ)に見えるくだりや、アシリパの変顔とか(これはわざわざやる意味なかったな)。それから極寒の中、河川に落下した杉本と白石の二人が苦労して暖を取る描写は原作通りに描いてはいるけど、そこは描いているだけで原作が伝えんとする笑える描写になってるのか?と。逆にエゾオオカミのレタラに杉本の靴下の匂いを嗅がせて行方を追う場面では、レタラが顔をしかめる描写(これは原作にはない)に劇場では笑いが起きてました(自分も笑っちゃいました)。マンガのギャグの映像化は難しいねぇ……。

また、原作の持ち味であるヘンタイ&グロ描写は、鶴見中尉が噛みついた相手の指を引きちぎるとか再現していたけど、全体的に抑えめ。今後、獣姦好きの学者とかヘンタイキャラが続々出てくるわけだけど、果たしてどうなるのか。後、原作が完璧というわけではなく、中だるみする樺太編(好きな人がいたらスミマセン)辺りも改変して道内の物語に収めたほうが良い気がするなぁ……。

インカㇻマッをはじめ、次回以降、活躍するキャラのチラ見せもあったし、ともあれ続編が楽しみです。

その他。
音楽は曲も使い方はあまり好みではないかな……。
そもそも最近のハリウッド調の曲調は画に合ってないし、アイヌコタンでムックリを奏でてるところで関係なく音楽入れるとかセンス悪すぎでしょう。


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