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三宅一徳:マリンバ協奏曲《エルピス》(日本初演)

【20241002加筆修正】
昨日は洗足学園音楽大学の前田ホールへ。
大学院コンチェルトの夕べ」と題した学内コンサート。

お目当ては三宅一徳さんマリンバ協奏曲《エルピス》

『仮面ライダーアギト』主題歌や、『仮面ライダー剣』、『忍風戦隊ハリケンジャー』などのスーパー戦隊シリーズ、近年は『刀剣乱舞』のコンサートの音楽監督としても活躍するなど、主に商業音楽の分野で活躍している作曲家です。

邦楽ユニット「箏座」のメンバーとして活動していた時期もあり、藝大卒でオーケストラも書け、邦楽にも造詣が深く、多彩な才能を持ち、今もたまにネットで話題になる『題名のない音楽会』で披露されたこちらの編曲者でもあります。

個人的には吉松隆のタルカスより数百倍面白いです。

マリンバ界隈では「chain」の作曲家として認識している人もいるかも。
米国のコンクールで課題曲になるなど、演奏動画が多数あり、マリンバソロのレパートリーとしては広く演奏されています(楽譜も出版されてますね)。

個人的には非常にポテンシャルの高い作曲家だと思っていて、そんな三宅さんにタイのオケで初演されたマリンバ協奏曲があるのは知っていたのですが、器楽と違ってオーケストラ作品は演奏のハードルも高く、なかなか生で聴く機会がありませんでした。それがなんと、洗足学園音楽大学のコンサートで演奏されると! これは聴きに行かないわけにはいきません。

作品は急緩急の三楽章形式。
それぞれ以下のような副題を持ちます。

第一楽章「パンドラの匣」運命に翻弄される者たちへの贈り物
第二楽章「藍色の海の憂鬱」海に流された魂への子守
第三楽章「明日へ」今は遮二無二前へ進むこと。その先にきっと希望の女神

「chain」の初演者でもある神谷百子とタイのオケの共同委嘱で2011年に作曲&及び現地で初演されました。

両端楽章は徒にマリンバのみを引き立たせることなくオケと調和させ、二楽章をマリンバが主の聴かせどころに。弦楽と木管による厳かな序奏を経て、突如始まるジャズロック的な第一楽章が際立って印象的。

日頃、劇伴で耳にしていてる作家さんも現代の作曲家ということで、コンサートミュージックになると、果たして調性か無調のどちらで来るか?というのも興味のあるところでした。

『赤毛のアン』の主題歌を聴いた人が、三善晃の純音楽を聴いて、そのギャップに驚いたなんて有名な話がありますね。

結果は調性で、とはいえ、よくある聴衆に阿ったセミクラシック的な作品とは一線を画し、確たる楽想と洗練されたオーケストレーション、モダニズムを兼ね備えた紛れもなく現代の作品。個人的にはとにかくオケを存分に鳴らしてくれるのが嬉しい。

指揮は上野正博さん、演奏は洗足学園音楽大学 大学院室内管弦楽団、独奏は大学院2年の櫻井秀悠さん。皆さん熱演!

当日の動画はこちらで聴くことができます。
ご興味のある方は是非。
※48分くらいから~。


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