人工膝関節全置換術後の動作障害に対するアプローチ②

②遊脚期に膝関節屈曲が不十分なケース


ここでは、人工膝関節全置換術後で、膝関節屈曲の可動性は歩行に十分であるにも、遊脚期に屈曲が不十分なケースについてお話しします。

キーワードは、ダブルニーアクション、荷重と抜重、立脚後期の活動として進めたいと思います。



(用語の確認)

・double knee action(二重膝作用):歩行動作における、膝関節の伸展ー屈曲ー伸展ー屈曲の運動をいいます。これは、踵接地時の衝撃の軽減および重心の上下移動の振幅の減少に役立っています。

(追加の知識)

・足関節と膝関節の動きには、密接な関係があります。踵接地のときには、膝関節は完全伸展し、足関節は背屈します。前遊脚期の時は膝関節は屈曲し、足関節は底屈しています。この両者の関係は重心の上下方向への移動を少なくしている。



ダブルニーアクションという言葉があるように、歩行では、膝関節は屈曲伸展が繰り返されます。つまり、屈筋と伸筋が入れ代わり活動しているということです。さらに、足関節とも協調的に働き、歩行における衝撃吸収や、重心の上下動を少なくしています。

人工膝関節全置換術後の患者さんは、膝の痛みの経験や恐怖心、荷重での過緊張から、膝関節の屈筋と伸筋が同時収縮し、膝の滑らかな動きが阻害されている場合があります。

また、術前に変形性膝関節症の特徴的姿勢である、膝屈曲・内反姿勢により、下腿が前傾、外側傾斜するため、前脛骨筋・下腿三頭筋も過緊張になっている場合があります。これにより、足関節の滑らかな動きが阻害されます。加えて、このような姿勢のため、膝関節のみならず、足関節底屈の可動性が低下していることも、よく観察されます。


本来、歩行動作は、努力的でなく、自動化された動作であり、遊脚期の膝屈曲も、自動的に起こるはずです。なぜ、関節運動が自動的に成されるかというのは、正常動作の知識が必要です。細かい内容は、ここでは割愛させていただきますが、遊脚相の動きは、立脚相の影響を受けるということは頭に置いておいてください。

特に、立脚後期のアライメント・筋活動が大事となります。

立脚後期に、股関節の伸展と下腿三頭筋の活動による足関節底屈がつくられることで、遊脚期の膝関節屈曲が促されます。股関節伸展は、腸腰筋が伸張され、前遊脚期で荷重が抜けていくときに大腿骨が前方に引かれるという作用をつくるのに大事となります。

よって、立脚後期がその後に続き遊脚期に影響するわけです。

しかし、ただ、この姿勢をつくれば、良いというわけではなく、しっかり荷重できていることが大事です。筋活動を強める状態から緩めるということが必要ということです。


理学療法評価では、動作観察と術側膝の状態を理解した上で、立脚後期をつるくための要素を評価していきます。体幹、股関節、足関節、足趾の可動性、荷重時の筋活動などです。そして、もちろん、精神面への配慮も忘れてはいけないと思います。


理学療法では、以下のアプローチが考えられます。

・大腿四頭筋・ハムストリングス、前脛骨筋・下腿三頭筋のリラクゼーション

・体幹・股関節・膝関節・足関節・足部の可動性向上

・術側への荷重練習

・荷重時の筋活動の向上

・術測バランス能力の向上

・立脚期から遊脚期の動作練習




(参考文献)

・基礎運動学 第6版.医歯薬出版株式会社.

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