脳卒中の運動麻痺について

ここでは、脳卒中患者の主要な問題の一つである、運動麻痺について話していきます。

運動麻痺(motor paralysis)とは、「上位・下位運動ニューロンの異常による随意運動の障害の総称(筋自体および神経筋接合部の異常、また心因性の運動障害を除く)。大脳皮質運動野から末梢神経線維に至る経路のいかなる部分が侵されても生ずる」と解説されています。そして、脳卒中においては、上位運動ニューロン障害によります。

上位運動ニューロン障害は、一次運動野→放線冠→内包後脚→中脳大脳脚→橋の橋底部→延髄錐体→脊髄前角細胞に至る手前までの経路と一次運動野から脳幹の神経核までの経路のどこかの部位の障害です。前者を皮質脊髄路といいます。

脳卒中患者は皮質脊髄路の損傷により、随意運動が困難になり、ADLに支障をきたします。随意運動が困難になる背景には、筋緊張異常や筋力低下、病的共同運動、連合反応があります。

言葉の確認ですが、病的共同運動とは、不適切に組み合わされた関節運動です。選択的な独立した関節運動が困難になるために起こります。
連合反応は、一側の筋収縮によって、反対側もしくは全身性に筋緊張の高まりを引き起こす現象のことです。非麻痺側股関節の内転により麻痺側の股関節が内転する現象をレイミステ反応といいます。

ところで、随意運動とは、何でしょうか。               随意運動とは、自己の意思により行う運動のことです。

随意運動を、直列的な経路で考えると、刺激→知覚→認知→行動→反応という経路になります。まず、はじめに、感覚入力によって、外界のイメージ、外界と自己の関係が知覚されます。そして、内的な動機に応じて、どのような順序で行動をするか分析し決定します。例えば、テーブルの上の水を飲むときは、テーブルやコップと自分の位置関係を知覚していることが必要です。そして、水が飲みたいとなったら、どのように運動して口元にコップを持ってくるかを順序立てて分析します。そして、水が飲めるわけです。

ただ、本来は、このような単純な直列的経路のみでなく、脳の様々な領域が働いてネットワークを形成することで、随意運動が制御されています。

そして、運動皮質には、反対側の身体部位に規則性のある運動地図が存在することも知っておかなければなりません。ペンフィールドのホムンクルスがそれです。一次運動野の神経細胞は、体部位局在に従い、皮質脊髄路を介して直接的に脊髄に到達します。

ですので、皮質脊髄路の下肢の神経線維が損傷すれば下肢麻痺が出現するし、上肢の神経線維が損傷すれば上肢麻痺が出現するということになります。

損傷されれば、麻痺するわけですが、運動麻痺の経過としては、多くは、初期は弛緩性麻痺を呈し、回復が始まると、腱反射の亢進や病的反射が出現し、それに続いて、対側性連合反応、筋緊張の亢進がみられます。これらの現象にやや遅れて、わずかながら、漸進的あるいは部分的に随意運動が可能となりますが、その際にみられるのは、共同運動で、定型的な運動パターンとなります。機能回復に伴い軽減・消失していきます。


病態は主に、出血性脳血管障害と虚血性脳血管障害に分類され、出血性の脳血管障害は、脳出血、くも膜下出血など、虚血性の脳血管障害は脳梗塞です。

脳出血は、被殻出血、視床出血、皮質下出血、小脳出血、橋出血などに分類されます。主に高血圧性が多く、細い血管に発症しやすいため、被殻や視床といった深部の血管に起こることが多いです。
出血部位の損傷と血腫による周囲の圧迫により症状が出現します。

脳梗塞であれば、一過性脳虚血発作、アテローム血栓性脳梗塞、心原生脳塞栓症、ラクナ梗塞などに分類できます。なんらかの原因により脳への血流が途絶えることで、脳細胞が壊死し、脳梗塞に至ります。その周囲には血流の低下によって神経活動は低下しているものの、梗塞には至っていない、ペナンブラという領域があります。

以上のような病態により、皮質脊髄路が障害されると運動麻痺を呈することになります。


では、運動麻痺の評価方法には、どのようなものがあるでしょうか。以下に列挙したいと思います。           

・Brunnstrom recovery stage  ・上田式12段階片麻痺テスト   ・Fugl-Meyer-assessment(総合評価として)  ・stroke impairment assessment(総合評価として)  ・筋力評価  ・バレー徴候  ・連合反応 など

各評価の説明は、別のところで行いたいとおもいます。


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