意識障害とは、

ここでは、意識障害について、特に概要と理学療法評価についてお話ししたいと思います。

まず、「意識」とは、何でしょうか。意識がある状態は、起きている状態。意識がない状態は、呼びかけても反応がない状態。のようなイメージを持っている方がほとんどではないでしょうか。

ですが、調べてみると、以下のような意味合いがあります。
1.覚醒(起きている)状態
2.自己の状態や周囲の状態を認識している状態

2.の意味合いもあるんですね。意識が正常というのは、ただ起きているだけではなく、注意や理解、見当識、思考などの精神活動が保たれていることなんですね。

つまり、意識について考えるときは、2つの側面(覚醒状態と意識内容)について考えなければいけません。
そして、意識障害について考えるときは、2つの側面がどのような状態にあるのかを考えなければいけません。


では、意識はどのように保たれているのでしょうか、ここでも、2つの側面について考えていきたいと思います。

覚醒した状態は、脳幹網様体賦活系によって維持されます。脊髄視床路など、身体の各部位からの感覚神経の入力が脳幹を上行するときに、一部は、脳幹網様体に伝えられます。網様体は、線維を視床・視床下部から大脳皮質に興奮性のインパルスを送り、神経細胞の活動性を高め、大脳皮質に活力を与えます。加えて、大脳皮質の活動が、覚醒状態を維持させます。

覚醒状態には、感覚入力が大事で、それが消失または減弱してしまうと覚醒度が減少してしまいます。

これらの意識を維持する系、脳幹網様体や視床、視床下部、広範な大脳皮質の損傷により意識障害を呈します。
原因は、脳血管疾患や頭部外傷、脳腫瘍、脳炎などの他に、循環器・呼吸器疾患による脳の低酸素、電解質・浸透圧以上、糖代謝異常、内分泌異常、薬物などです。


次に、意識障害の内容について、掘り下げていきたいと思います。
意識障害には、覚醒度と意識の内容の障害があるとお話ししました。覚醒度の低下とは、意識の清明さ、意識混濁のことです。意識の内容の変化は、意識変容と意識狭窄があり、意識変容は意識の方向性変化をいい、意識狭窄は、意識野の狭まった状態をいいます。

意識混濁は、重い順に、昏睡、半昏睡、昏迷、傾眠、意識不鮮明と分類できます。昏睡は、外界からの強い刺激によっても、運動反応がない状態。半昏睡は、外界からの強い刺激に対する運動反応が残っている状態。昏迷は、強い刺激では短時間は覚醒し、運動反応がある状態。傾眠は、放置すれば意識が低下し、眠ったようになるが、刺激で覚醒する状態。意識不鮮明は、最も軽い意識混濁で、簡単な命令や質問への応答は可能であるが、周囲に対する認識力や理学力が低下し、思考の清明さや記憶の正確さも失われている状態をいいます。加えて、昏蒙は、軽い意識混濁で、注意力低下、無関心、自発性低下のある状態をいいます。

意識狭窄は、催眠が代表的であり、ヒステリーやてんかん、もうろう状態の場合にみられます。

意識変容は、せん妄、もうろう状態、アメンチア、夢幻状態、酩酊が代表的です。それぞれ、認知機能(注意、記憶、見当識、思考、理解、知覚)、行動(言動、精神運動行動、会話、睡眠、幻覚、妄想、感情)に異常がみられます。


次に、意識障害についての評価について、お話しします。
まずは、情報収集が大事です。カルテから意識障害の原因となりうる既往歴や合併症、服薬状況や血液データなどの情報収集が必要です。

そして、実際に患者さんに会って、挨拶した際の反応を観察します。このときに正確に返答できれば、意識レベルに問題がない、もしくは軽微であることが、考えられますが、返答できない場合は、意識障害が考えられますが、鎮静や難聴も考慮しないといけません。

検査・測定では、バイタルサインと意識レベルの評価をします。評価ツールとしては、JCSやGCSが一般的ですが、ECS(Emergency Coma Scale)という評価ツールもあります。

その他、せん妄の評価には、CAM-ICU(Confusion Assessment Method for the Intensive Care Unit)、RASS(Richmond Agitation-Sedation Scale)、ICDSC(Intensive Care Delirium Screening Checklist)などがあります。

特殊な意識障害として、失外套症候群、無動性無言症、閉じこめ症候群、通過症候群があります。



引用・参考文献
・標準理学療法学 神経理学療法学第2版 医学書院
・ベッドサイド理学療法の基本技術・技能 文光堂

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