パチンコ文化人類学【Kくん編】

母は、福祉事業所に勤めている。
といっても少し変わった福祉事業所のようで、いわゆる「問題児中の問題児」ばかりが集まっており、そこでアート活動を行っている。

彼女の日常を聞くと、爆笑不可避なほどカオスな事件ばかりの面白い日々なのだが、冷静に考えれば全然笑えないこともたくさんある

今回はKくんの話をしようと思う
Kくんは、おそらく30代くらいで、体重は100kgを超える巨漢なのだが、生活能力は無に等しく、働く意思も能力もない。しかも、キレると手のつけようがなく、少しでも気に障るようなことがあれば、人権を踏み躙るような暴言を吐きながら、事業所の前の植木鉢を全部割っていくらしい。
もうヤバい。そんな人絶対関わりたくない。

しかし、母は、彼のような人間にブチギレながらも、日々連絡を取り合い世話を焼くというのだからすごいことだ。なんで母の月給が100万円じゃないのかわからん。

Kくんは、もちろん生活保護を受けている。
そして、そのお金を家賃や光熱費などにおいておくわけもなく、ゲーセンやパチンコで数日で使い果たしてしまう。流石に途中から社会福祉協議会が介入し、ある程度のお金の管理は社協がしているそうなのだが、それでも自由に使えるお金はぜーんぶタバコやパチンコに消えてしまう。

いやはや、すごい。

この間、「物価上昇におけるなんとか給付金」というのがあったらしく、なんと貧困世帯には7万円が給付されたらしい。ちなみに生活保護は15万円前後なので、普通に私より裕福なのはいうまでもない。

そして、なんとKくん、その7万円をパチンコで溶かしてしまったらしい。
もはや尊敬。

ここで私は頭がこんがらがってくる。
私がパチンコで働いて、受け取るお金は一体なんなんだろうか。間接的に生活保護を受給してる?

パチンコなんて、言ってしまえば、良心をもっていれば、できるわけがない仕事なのだ。そういう居場所のない社会的・構造的弱者をターゲットにえげつない金額のお金をふんだくるような構造のサービスなのだ。(ん、言い過ぎ?)

納税者の税金がKくんの生活保護に、Kくんの生活保護がパチンコに、パチンコが私に、私が古本に...

そうして、お金の捉えられないカオスの渦に巻き込まれて、私は今日もパチンコ台を掃除する。

そして大切なのは、私はKくんを責めるつもりは全くない。Kくんの生い立ちや、現在の社会からのはみ出し方を見れば、おそらく想像を絶するような経験をたくさんしてきたことだろう。もちろん母に「ババア」などと暴言を吐くのはやめてほしいが、彼をもっと苦しめることで解決することなど何もないということは明らかだ。

どうすればいいんだろう。まぁそんなことを考えても、私は結局パチンコ台の掃除をして、詰まった玉を治すくらいしか、できることはないのかもしれない。

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