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幌が生まれた時のこと

人生の転機は幾度となく訪れるものだけど、その中でも特に僕にとって大きな転機となったのは長男の幌(ほろ)が生まれた時だった。僕は出産に立ち会って分娩室に入っていた。
当然の事ながら先生も助産師さんもあさこちゃんもあさこちゃんのお母さんも、みんなが一丸となって幌の出産に集中していた。 もちろん僕も言われるがままにできるだけのサポートはしていた。

そして生まれた瞬間、「俺は主役じゃなかったんだ。」と思った。

地球上のどの生き物だって、自分個人の利益なんて考えずに、この地球の生態系の中の一部として生きてる。理由は分からないけど、全ての生き物がそれを維持する為だけに生きてる。自分もちゃんとその中にいたいと思った。
そう思うと、これまで人生で自分が何を成し遂げるかとか、そういう事で思い悩んだりしていたのが、まったく見当外れで滑稽な事に思えて来た。そんな事はこの命の循環の中では本当にどうでもいい事だ。「とにかく俺はタフに生きて守らないといけないものがある。」と思い、そこから身体というのを強く意識するようになった。古武術に関する本を読んだり、イチローのインタビューを見て影響を受けたり、身体の使い方について勉強し始めたら、どうしても格闘技がやりたくなり、高山のキックボクシングジム、ハイマントに入会した。
そこからはもう夢中になって、すっかり格闘技好きになり、いつもキックボクシングの事ばかり考えていた。
それまでの人生からしたら考えられない事だった。中学校は吹奏楽部、高校は軽音部、爽やかなサッカー部や、先生に好かれる野球部がどうにも気に入らないひねくれた若者だった。
その後も音楽ばっかりやり続け、ビートに憧れて詩を書いて、フィデル・カストロの思想に傾倒して行くと言う、頭でっかちになるばかりの生き方をして来た。
なので、ようやくバランスが取れた。


頭に寄って論理的に生きるか、身体に寄って本能的に生きるのかという所で、左翼がインテリ、右翼がマッチョとか、ヤンキーは右翼で家族思いというのも納得が出来た。


今では、人生に思い悩んで小難しい事ばかり言ってる人と話したりすると「運動不足かもねー。」とシンプルに片付けたくなったりする。

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