30~40代の大学・大学院卒業者率(区市町村別)

 海外では,住民の階層的「棲み分け」が明瞭であるといいます。ここは豪邸がひしめくブルジョワ地区であっても,道を一本隔てればスラムが広がる…。中学校の地理の資料集に,南アフリカの例が出ていたような気がします。

 日本でも,住民の階層構成の地域分化(segregation)はみられます。階層の指標としては収入がよく使われますが,住民の学歴で可視化してみましょうか。基幹統計の『国勢調査』は5年間隔で実施されますが,10年に1回の大調査(西暦の末尾が0の年)では学歴も調査されます。現時点の最新データは,2010年調査のものです。

 私は全国の区市町村別に,30~40代の大学・大学院卒業者比率を計算してみました。当該年齢の住民(学生を除く学校卒業者)のうち,最終学歴が大学・大学院卒の人は何%か。デリケートな項目ゆえか,学歴は不詳者(≒回答拒否)が多いので,この部分は分母から除きます。

 以下の図は,東京都内23区の数値を地図に落としたものです。10%刻みの4階級で塗り分けています。

エリア

 同じ大都市ですが,高学歴住民の率は区によってかなり違います。最高は文京区の62.5%で,最低は足立区の26.6%です。この両端では40ポイント近くもの差があります。

 色が濃い区は固まっており,高学歴住民率には地域性もあることがうかがわれます。都心から西部ですね。対して城東エリアは色が白くなっています。よくいわれる「山の手 VS 下町」の構図も出ているように思えます。

 こういう現実は,教育関係者にも知っていただきたいと思います。30~40代といえば小・中学生の親年代ですが,親世代の学歴構成が子どもの教育達成に影響することは十分考えられます。高学歴の親は勉強嗜好が強く,子どもの勉強も熱心にみるし,自宅に本も多いでしょう。ブルデューを引くまでもなく,家庭の経済資本よりも文化資本のほうが子どもの学力に強く影響します。

 こういうことに思いを巡らすと,学力調査の地域別の結果を単純に比べるのはナンセンスで,結果が悪い地域の教員の給料を減らすなど言語道断であることがお分かりかと思います。そもそも地域的な条件が違うのです。

 そんなの当たり前じゃんと言われるかもしれませんが,案外知られていないみたいで,大阪市の市長が「学力テストの結果を教員給与に反映させる」と言い出したのは記憶に新しい。上記は都内23区の結果ですが,大阪市内の24区でみても地域分化がはっきりみられます。

 全国の区市町村別の数値を収めたエクセルファイルをアップいたします。週刊誌的な興味でみるのもまあよし。ダウンロードしてご覧ください。


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