専門学校大阪デザイナー・アカデミーの学生と実現した、アドラーのブランドショールーム
2024年2月16日〜18日、大阪市にある「専門学校大阪デザイナー・アカデミー(旧大阪デザイナー専門学校)」1Fパワーズギャラリーにて、アドラーのブランドショールームが展示されました。
実はこの展示は、専門学校大阪デザイナー・アカデミーの学生たちが主体となって設営されたものです。
この学校では過去8年にわたり、グラフィックデザイン学科とインテリアデザイン学科のコラボ授業である「NINOワークショップ」が開催されてきました。この授業では、毎年様々な企業とタッグを組み、一年かけて産学連携で実地的なデザインの学びを深めていきます。
メイン講師を務めるのは、クリエイティブディレクターの二宮敏さん。彼もまた、専門学校大阪デザイナー・アカデミーの卒業生です。インテリアなどのプロダクトからグラフィック、音楽、ウェブ、仕掛けづくりまで、あらゆるモノやコトをデザインされている方で、道後温泉のアートプロジェクトでは中心的役割を担ったほか、現在はプロサッカーチーム「FC今治」のコミュニケーションディレクターも務められています。
そして2023年度は、二宮さんとの以前からの親交もあり、「アドラー」が本ワークショップのテーマ対象に選ばれました。
私自身も何度か授業に足を運び、学生たちにアドラーの企業理念や歴史背景、今後の展望について話しました。
5つのグループに分かれた学生たちは、それらを汲み取ったうえで、「アドラーのブランド価値を伝えるためにはどのようなショールームを実施すると良いか」について議論・検討を重ね、コンペでアイデアをプレゼンしてくれました。
各グループのアイデアは以下になります。
Aグループ
コンセプト:日本の伝統を日本人が正しい言葉で実際に見て伝えていく事づくり。
アドラーというブランドの価値をサッカーシューズの枠を超えて日本文化と深く結びついていることに着目。奈良の所縁のある日本を語るうえでも大切なキーワードになる「八角円堂」のオブジェクトを用いてアドラーを表現するという企画を考えてくれました。
Bグループ
コンセプト:ADLER MUSEUM ~日本の誇りを持って長く続くブランド~
「足元から世界を元気に」というアドラーのビジョンを汲み取り、サッカーを通してそのコミュニティの中心的存在となってほしいという願いを込めて、日本を象徴する茜色を用いて伝統と継承を描写させる煌びやかな構想を描いてくれました。
Cグループ
コンセプト:アドラーの工場(こうば)見学
アドラーの商品の特徴の一つである靴の耐久性に着目し、商品の背景にあるクラフトマンシップの価値を最大限に引き出す構想を考えてくれました。
Dグループ
コンセプト:未来を考えた展示会(足育を起原に未来を考える)
タイトルを「About think with ____ 」という足元から未来を一緒に考えるという一方通行ではない展示会をデザインし、「ADLERを通じて足育を知ってもらう」というテーマを実現する構想を考えてくれました。
Eグループ
コンセプト:「Meets ADLER 〜靴と健康の架け橋〜」
アドラーの根幹にある足に対する考えや課題を体験を通して伝えるというテーマで靴の可能性と価値について真剣に表現してくれました。
どのチームのアイデアも本当に素晴らしかったのですが、そんななか、コンペで優勝したのが、Cチームの「アドラーの工場(こうば)見学」でした。
Cチームは授業外のプライベートの時間を使って、実際にアドラーの工場へ見学に来てくれました。そこで、生の職人技術を目の当たりにし、技術の高さが商品の価値につながっていることを実感。そして、「自分たちが工場見学で目にした作業工程を、消費者に五感で感じ取ってほしい。きっとこれを知ることで、商品価値が上がるはずだ」と考え、ショールームを構想してくれました。行動して自らの足で感じることにより、プレゼンテーションの際の言葉選びも素晴らしかったです。また、アドラーをショールームにて表現する実現可能性という観点でも現在地の等身大の最適解でした。
専門学校大阪デザイナー・アカデミーの先生方並びに生徒の皆様を始め、このプロジェクトに賛同頂いた株式会社ミズカミ様のご協力もあり、実際にブランドショールーム「アドラーの工場見学」が3日間にわたり開催されました。直前の発表にも関わらず多くの方に来場いただき、そして嬉しいご評価をいただき、本当に素晴らしい展示会になりました。
今回のプロジェクトで我々アドラーとしても多くのことを学ばせていただきました。一方で引き受けるに当たり生徒の皆様にひとつでも自分事として将来に繋がる学びのキッカケになってもらいたいと思い、その想いをお伝えさせていただきました。
我々は現在サッカーシューズ専門のメーカーなので、「サッカー」「アスリート」「スポーツシューズの機能」という観点の追求は言わずもがなですが、大切な根幹には「日本文化」「健康」「教育」という要素があります。それらの価値は将来きっと生徒の皆様も間接的に経験していくことなので是非ともお伝えしたい部分でした。
総括して、各グループのテーマやコンセプトはスポーツシューズメーカーの枠にとどまらない我々の想いを反映してくれていました。年間を通してグループ間において様々な課題に直面したということを先生方から事後に伺いましたが、改めて、クリエイティブの仕事は本当に大切でブランドの生命線だと感じています。今回の課題を通して、それぞれ個人が持っている感性や得意な表現方法を組織間でコミュニケーションをとりながら他のそれと融合して推敲を重ねていくプロセスはきっと将来に活きると確信しています。
今回は予算やスペースなどの関係で、選ばれたアイデアはひとつだけでしたが、5つのアイデアすべて素晴らしかったです。選ばれなかった理由は少しの差ですが、その差が人生や仕事において追求していくべきポイントのひとつかもしれません。私自身、学生たちから様々な刺激やヒントをいただきました。生徒の皆様に取り組んでいただいた一年間を決して無駄にしないで今後に生かしていきたいと思っています。
我々アドラーは、商品としてはサッカースパイクを作っていますが、その背景にあるのは、「日本の職人の技術を残す」「足の重要性を伝える」などの想いです。
その裏側にある想いを、いかにデザインの力で表現するかが重要で、クリエイティブの役割だと思っています。
一年間を通して、とても勉強になる機会をいただきました。NINO inc.代表取締役 二宮さん、大阪デザイナー専門学校の学校長、長尾先生を始め、三上先生、松本先生、打越先生、そして生徒の皆様、ありがとうございました。
最後になりますが、サッカーシューズ専門家のAndrew Lockhart氏も自身のブログで今回の展示会の様子を紹介してくれています。
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