映画『トゥルーマン・ショー』あらすじ紹介「頭の中にカメラはない」
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今回ご紹介するのはゴールデングローブ賞受賞、ジム・キャリー主演の映画「トゥルーマン・ショー」です。
一見どこにでもいるような陽気な青年トゥルーマン。
しかし彼は、知らぬうちに自分の人生全てをテレビで生中継されるリアリティ・ショーの主人公だった。
真実を知った彼の決意と行動を描くヒューマン・コメディです。
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「おはよう! そして会えない時のために、こんにちはとこんばんは! おやすみ!」
陽気に挨拶する主人公のトゥルーマンはシーヘブンアイランドで生まれ、今まで一度として島の外に出たことのない青年だった。
しかしそんな彼は密かにある思いを抱えていた。
「俺逃げ出したいよ。仕事や、この島や、全てから逃げ出したい」
いつか島を出てシーへブンの裏側、フィジー島へ行ってみたいと語るが、妻のメリルや親友のマーロンには取り合ってももらえない。
彼が島から出たことのない大きな理由が水恐怖症にあった。
桟橋の上に立つだけで足が震え、目眩を覚えて立っていられなくなるほどだ。
それはまだ子供のころの出来事が原因にある。
嵐の日に海に出たいとせがんだトゥルーマンは、父とともにヨットで海へと出て、そこで嵐にのまれたのだ。
彼は一命を取り留めたが、彼の父親は海へと消え、そのまま見つかることはなかった。
そんな彼の代わり映えのしない平穏な日々に、次第にほころびが見え始める。
ある日、いつものように新聞を買い会社へ向かったトゥルーマンだが、ホームレスとすれ違い足を止める。
信じられない思いで振り返ると、そこにはあの日ボート事故でなくなったはずの父親が立っていたのだ。
父親へと手を伸ばすトゥルーマン。しかしその瞬間付近にいた2人の男女によって父親は連れて行かれてしまう。
追いかけようとしたトゥルーマンだが、道行く人に阻まれ彼らの乗りこんだバスを追いかけることはできなかった。
そのことを母に相談するが、あなたは自分を責めているからありもしないものを見たのだと、取り合ってはもらえない。
地下室で父との写真を眺めるトゥルーマンは、やがて学生時代のある出来事に思いをめぐらせていく。
学生時代、ローレンという女性に惹かれながらもまるで図ったように彼女とは関わりが持てずにいた。
しかし期末試験前日の図書館でついに彼女と言葉を交わすことができた。
「わたし、あなたと話しちゃいけないことになっているの」
そう語った彼女だったが、やがてトゥルーマンの誘いを受け、2人は逃げるように図書館を飛び出していく。
砂浜へと辿り着いた2人は口付けを交わすが、そこへどこからか彼女の父親と名乗る人物が現れる。
強引に車へと乗せられたローレンはこの世界は全て作り物のセットで、これはテレビ番組であるとトゥルーマンに告げる。
「島を出るのよ 私を探して」
言い残したローレンを連れ、フィジーへ行くとの言葉とともに彼女の父親は姿を消した。
彼女を探す、それがトゥルーマンが島を出たいと願う理由であり、フィジー島を夢見る動機だった。
ある日の運転中、カーラジオの不調によりどこからか聞こえてきた無線の声は、まるで自分を追跡するかのような会話をしていた。
学生時代のローレンの言葉、再会したが連れ去られるように消えた父、そしてカーラジオの声。
トゥルーマンは今までの出来事から自分の周囲に不信感を持ち始める。
そして彼は突如として走り出しビルへと飛び込むと、そのままエレベーターのボタンに手を伸ばす。
しかし、奇妙なことに扉の先にエレベーターはなく、人々がたむろする舞台裏のような空間になっていた。
家に戻ったトゥルーマンは、メリルとの結婚式の写真の中で、彼女が神への懺悔のハンドサインをしていることを見つけてしまう。
次第に自らの考えに確信を持つようになっていくトゥルーマンは、ついに島からの脱出のために行動を起こす。
しかしそれを阻止するかのような出来事の連続で出発の足がかりが掴めずにいた。
やがて決意を固めた彼はメリルを乗せ、自らの運転で町から脱出することを試みる。
妨害のような出来事に阻まれながらもなんとか町から出ることには成功するが、大規模な通行止めにより、それ以上先に進むことはできなかった。
呼び止められた警官と言葉を交わし、一度は諦め戻ろうとしたトゥルーマン。
しかし、遠く離れた地で自分と関わりのない赤の他人であるはずの警官が何気なく呼びかけた「トゥルーマン」の言葉に、彼は車から飛び出し森へと走っていく。
結果、すぐに拘束され、家に連れ戻されたトゥルーマンだったが、周囲への違和感は確信へと変わりつつあった。
メリルへと詰め寄るトゥルーマンだったが、そこにタイミングよくあらわれたマーロウによって外へと連れ出される。
周囲への違和感に確信に近いものを感じながらも、自分は正気ではないのだろうかと思い悩むトゥルーマンにマーロウは2人の思い出を語っていく。
トゥルーマンに慰めの言葉をかけたマーロウはトゥルーマンの父親が実は生きていて、今日はそれを伝えにきたのだと告げる。
そしてトゥルーマンは、橋の上、霧の中から現れた父と感動の再会を果たす。
涙を流し抱き合う2人の姿に、世界中の『視聴者』も感動の涙を流すのだった。
『視聴者』の見つめるテレビ画面にトゥルーマンの姿が映し出される。
実は、彼の住むシーヘブンアイランドはドーム上の巨大スタジオに覆われた大規模なセットであり
トゥルーマンは生誕の瞬間から人生の全てを24時間ライブ配信されるリアリティショー『トゥルーマン・ショー』の主演だったのだ。
父との再会によって、今までの日常通りの陽気な彼へと戻ったトゥルーマン。
しかし唯一の変化として彼は地下室で睡眠をとるようになっていた。
番組監督であり、トゥルーマンの様子をモニターしていたクリストフはそこに違和感を覚えた。
クリストフはトゥルーマンの『親友役』であるマーロウを地下室へと向かわせるが、そこにはすでに彼の姿はなく、クローゼットの中に作られた抜け道が見つかっただけだった。
番組開始以来の非常事態に番組映像は中断されスタッフは騒然とする。
島内では住民総出で町ぐるみの大掛かりな捜索が行われるが、彼の姿は見つけられない。
やがてクリストフの決断により、夜の街に捜索のための太陽が灯る。
だが、町のどこにも彼の姿はなく、ついに見つかったのは予想外の場所だった。
そこは、水恐怖症のトゥルーマンにはありえないと思われた海の上だった。
彼は夜のうちにヨットに乗り込み島を脱出していたのだ。
海を進むトゥルーマンだったが、それを阻止しようとしたクリストフは海に嵐を発生させることを指示する。
天候は急激な変化をみせ、海には嵐が吹き荒れる。翻弄され海へと放り出された
嵐に翻弄され、トゥルーマンは海へと放り出されてしまう。
しかし彼はくじけることなくヨットへと戻り自分の身体をロープで縛りつけ抵抗する。
死ぬ覚悟で抵抗を続けたトゥルーマンに、クリストフはついに嵐を止めることを命じた。
雲が割れ、空高く昇った太陽の下、トゥルーマンはヨットの帆を揚げる。
やがてヨットの船体が島を覆う青空……ドームの書割へと突き刺さった。
世界の出口へと辿り着いたトゥルーマンにクリストフが語りかける。
「私は君より君をよく知っている」
生まれたときから、トゥルーマンの全てを見守ってきたと語るクリストフ。
「頭の中にカメラはない」
反論しようとするトゥルーマンにクリストフはなお優しく語りかけ、外へ出ることに対する恐れを指摘する。
答えられないトゥルーマンにクリストフは続ける。
「何か言ってくれ 世界中の人が君を見てるんだ!」
「会えない時のために、こんにちは、こんばんは、おやすみ」
彼は楽しそうに笑い、『視聴者』へ向かって大きく頭を下げ、足を踏み出した。
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いかがでしょう。作品の魅力を少しはお伝えできたでしょうか?
自分の人生が作り物だったら……そんな光景を、あなたは想像できますか?
家族・友人・妻・恋人。自分を形作ってきた全てを置いて、彼のように『外』へと足を踏み出すことができるでしょうか?
ましてやそれが全て放送されていたとしたら……そんなこと想像もできそうにはありません。
そんな状況の中、悩みながらも最後まで明るさを失わずに立ち向かったトゥルーマンの姿に勇気と元気をもらえるような作品だったと思います。
作中での『視聴者』の視点を意識した独特のカメラワークや、コミカルなキャラクターたちにも注目していただけると、より一層楽しめるのではないでしょうか。
2021/06/16 TKU
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