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【戦後最大】安愚楽牧場事件・ゆっくり解説【和牛商法】

れ : 我々が歴史から学ぶべきなのは、人々が歴史から学ばないという事実だ
ま : 絶対的な安全など存在しない
れ : だから今日も、人は騙される

れ : ゆっくり霊夢です。
ま : ゆっくり魔理沙だぜ。
ま : なあ霊夢、金融商品といったら何を思い浮かべる。
れ : 金融商品っていったら株とか国債とか、あと金もそうよね。
ま : その通りだ。まあ、専門用語としての金融商品とした場合には色々と定義があるんだが、一般的にはそれであってるぜ。
ま : ちなみに中には珍しいものなんかもあって、調べてみると結構面白かったりするんだぜ。
れ : へえ、例えばどんなものがあるの?
ま : 牛だ。
れ : 牛って、動物の牛のことよね? そんなものが株とか金と同じなの?
ま : ああ、霊夢が想像しているその牛で間違いないぜ。実際に日本では牛が金融商品として一大ブームを巻き起こしたことがあるんだ。
れ : ちょっと想像できないわね。
ま : 確かにすぐにはイメージしにくいかもな。だったら今日はそのあたりの話をしていくか。
ま : ということで今回は戦後最大の消費者被害額を記録した安愚楽牧場事件について解説していくぜ。
れ : ゆっくりしていってね。

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ま : 2011年8月9日、ある会社が東京地裁に民事再生法の適用を申請し、事実上経営破綻した。
ま : 株式会社安愚楽牧場。和牛商法の元祖にして最後の砦の終焉だった。
ま : 被害総額4200億円。
ま : 被害者数7万3000人。
ま : 戦後最悪の消費者被害事件はどのようにして起こったのか。

ま : 株式会社安愚楽牧場は栃木県那須塩原市に本社をおき、38ヶ所の直営牧場を運営していた畜産会社だ。
ま : 1981年の会社設立から30年間年々規模を拡大し、当時国内でも並ぶもののいないほどの和牛牧場となっていた。
ま : その数最大約14万頭。
ま : これは当時の日本全国の黒毛和牛の20%を占めるほど大規模なものだった
れ : そんな会社がどうして潰れちゃったわけ?
ま : それを説明するには和牛商法について説明していく必要があるな。
れ : 和牛商法って? それがさっき言ってた牛が金融商品になるってこと?
ま : 和牛商法ってのは和牛預託商法とも呼ばれていて、その名の通り和牛を預託することで利益を生み出す仕組みのことだ。
ま : まず畜産農家が育てている牛をオーナーに買ってもらうんだ。
ま : オーナーは買った和牛をそのまま農家に預託料を払って預託する。
ま : そうすれば牛の世話などの実務は元の農家に全て任せたまま所有者はオーナーと言う関係ができあがるんだ。
ま : 後は成長した牛が市場で売却されたら、売却で得た利益を農家から受け取ればオーナーは何もしなくても利益だけ受け取れるってわけだな。
れ : つまり小牛のうちに安く買い、大きくなったら高く売ってその差額が利益になるってことね。
れ : それだけ聞くと確かに株と同じような気がしてくるわ。
ま : ああ、仕組みはシンプルだろ
ま : この和牛商法の始まりになったのが安愚楽牧場の「黒毛和種牛オーナー制度」だったんだ。
ま : そして安愚楽牧場が規模を拡大し注目を浴びる中で類似の会社が次々と設立されるんだ。
ま : 時代はバブル崩壊後の1990年代。
ま : 不景気による低金利が長く続く中で銀行預金や株式投資よりも有利で安全性もある資産運用として人気を集めた。
ま : その数は最盛期の90年代半ばには20社近くになったぜ。
れ : ある種のブームみたいなものだったのね。
ま : ところが中には……というかその大半は詐欺企業だったことが明らかになっていくんだ。
れ : どういうこと?
ま : 出資対象となる牛が実際には存在しなくて、集めた出資金をそのまま配当に当てたり、別の投資へ回したり、そのまま騙し取ったり、だな。
ま : こうして問題になる会社が多発した結果、ほとんどが消滅し、21世紀まで残ったのは安愚楽牧場を含めて2社のみだった
れ : うーん、はじけるのがずいぶんと早かったわね
ま : なにせ実物は生き物なわけだし、簡単にはいかなかったってことだな。
ま : まあ、残った2つについてもこの時点で何かおかしいんじゃないかと気付くべきだったのかもしれないが……。
れ : なんだか不穏なこと言うわね。
ま : ああ。ここからどのようにして安愚楽牧場が破綻への道筋をたどっていったのか。
ま : それでは続けていくぜ


ま : 和牛商法業者が消えていく中で残った安愚楽牧場に対しての信頼感は揺らぐことはなかった。
ま : いや、むしろその評価を高めていたんだ
ま : その理由の1つが安愚楽牧場の和牛商法には他と決定的に違う部分があったことだ
ま : 和牛農家には2つの種類がある
ま : それが「繁殖農家」と「肥育農家」だ
ま : 「肥育農家」は市場(セリ)で小牛を仕入れ、その小牛を大きく育てて出荷し、食肉として処理されて売却される。
ま : 最終的な売却価格から、購入価格と育成のためにかかった費用を差し引いたものが利益だ。
ま : 対して「繁殖農家」が扱うのは子供を生むことのできる母牛だ。
ま : 母牛を育てて生まれてくる小牛を売却することで利益を得るんだ。
ま : 安愚楽牧場以外の業者は、オーナーが出資した牛を育て大きくし売却する、シンプルな肥育農家的仕組みだった。
ま : 一方の安愚楽牧場は繁殖農家の仕組みを採用していたんだ。

ま : オーナーの出資は必ず母牛に対して行われた。
ま : その母牛から生まれてくる小牛を売却することで毎年の配当とし、最後に年を重ねた母牛をオーナーから同額で買い戻す。
ま : こちらのほうが少々複雑で、出産なども関わってくるために牧場の規模も必要とされる。
ま : だが安愚楽牧場は実際に各地に広大な牧場を持ち、膨大な数の牛を管理していた。
れ : それを行えるだけの実態があったってことね
ま : ほかの和牛商法業者が問題になる中でも、安定的な基盤を持つ安愚楽牧場は安全だと考えられたんだ。
ま : さらには元祖としての歴史もあった。
ま : 「過去30年間支払いが減ったり、滞ったことはない」との言葉も信頼を集めるのに効果的だったようだ。
れ : 確かに30年間ずっと安定しているって聞くと安心に聞こえちゃうわね


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画像引用:みきまるの優待バリュー株日誌
Aug 1, 2011 安愚楽牧場破綻!のニュースに思う。
https://plaza.rakuten.co.jp/mikimaru71/diary/201107310000/


ま : さて、安愚楽牧場の「黒毛和種牛オーナー制度」だが、出資金額や期間の長さによってさまざまなコースが存在した。
ま : 詳細な説明は省くが、これらの実際の金利は3~5%程度だった。
れ : それって多いのかしら
ま : うーん、一言で答えるのは難しいな。
ま : 90年代半ばまではそれほど魅力的とは思われていなかった。
ま : それ以前から出資していたオーナーは金利よりも牧場の理念に共感したって人が多かったみたいだ。
ま : 安愚楽牧場は広告などで「都会と農村を結ぶ」ことを理念として掲げていた。
ま : パンフレットでも食の安全や、消費者と生産者のつながりをイメージさせるものになっていた。
れ : 資産運用に関しては他にも選択肢が多かったけど、他の部分で出資者にアピールしていたのね。
ま : ああ。その頃は定期預金にも同等かそれ以上の利率のものもあったしな。
ま : しかし2000年台に入って長引く景気低迷などで他の金融商品の魅力が下がったことで、
ま : 年利3%以上で安定して実現していたオーナー制度の評価は相対的に高まった。

ま : それから、とある著名人の存在も安愚楽牧場の信頼感の構築に一役買っていた。
れ : とある著名人って?
ま : 旧民主党の代表も勤めた海江田万里氏だ。
れ : ええ、随分と大物が出てきたわね。
ま : 海江田氏は経済評論家時代の1986~92年ごろに雑誌や書籍で紹介し、投資を推奨していたんだ。
ま : その中でも「元本割れリスクはない」などと紹介していたこともあって問題となった。
ま : 安愚楽牧場破綻後には海江田氏が同社の広告塔の役割を務めていた、などとして損害賠償を求めての訴訟にもなっている。
ま : 最終的には原告側の請求は棄却され、その後の上告も棄却されているためにすでに終わったことではあるんだが、
ま : 経済の専門家として影響力もあった人物としては少々うかつだったんじゃないかとは思うな。

ま : さて、出資者を集め規模を拡大していった安愚楽牧場だったが
ま : その実態に疑問を感じている人もいた
ま : しかし、安愚楽牧場にとってマイナスとなる報道はほとんど見当たらず、
ま : さらには同社に対する取材は非常に難しいことが知られていた。
ま : どうやら預託牧場や取引業者などは取材を受けたことがわかるとペナルティーがあったらしいんだ
れ : なんだかきな臭くなってきたわね
れ : そうまでして隠したいことがあったってことかしら
ま : そこで直接取引のないような同業者に話を聞くと、業界内での評判は決して良いものとはいえないことがわかってきた。

ま : 安愚楽牧場のオーナー制度では出資は母牛に対して行われたことは話したよな
れ : ええ。その母牛から生まれた小牛を売却することで毎年の配当にしていたのよね
ま : そう、そのためには毎年安定して小牛が生まれてくる必要がある
ま : これが安愚楽牧場がパンフレットなどでも宣伝していた「1年1産」体制なんだが、これは簡単なことでないんだ
ま : 受胎率の問題や分娩間隔の問題があって1年周期で安定的に小牛を生ませるには大変高度な技術や優れた設備が必要となる。
ま : さらには生まれてきた小牛だってそのまま無事に育つとは限らない。小牛の死亡率を下げる努力も必要だ。
れ : うーん、確かに競走馬の世界でも毎年安定して子馬を送り出せてるわけではないものね。
れ : でも、それだけ安愚楽牧場が優秀だったってことじゃないの?
ま : ところが、みんな口を揃えてそれほど優秀なようには思えないと答えたんだ。
ま : 市場ではできるだけ良い牛を買おうとと、みんな必死になっている。
ま : 彼らの鍛えられた目からすれば、セリに出された牛から、牧場がどれだけ優秀かは判断できるわけだな。

ま : そのセリに関しても、疑問の目を向ける関係者は少なくなかった
ま : 安愚楽牧場の担当者が明らかに相場より高い額で購入するのが何度も目撃されていたからだ。
ま : 仕入れ値が上がれば当然利益は減る。
ま : えさ代などの必要経費を考えればよっぽどうまく育てないと赤字だというんだ。
ま : そして繰り返すようだが、安愚楽牧場の施設や技術はそれほど優秀だとは思われていなかった。
ま : だから市場関係者もどうやって利益を出しているのか疑問視されていた。
ま : そしてそれは「買い」だけじゃなく「売り」にも言えることだった
ま : 牛は最終的には枝肉として食肉市場に出されるわけだが、その枝肉の質が良くない。
ま : 当然、質が悪ければそれだけ売却価格は低くなる。
ま : 実際に安愚楽牧場の牛は他の農家から出された牛よりも低い値がつくことが多かった
れ : ちょっと待って。今の話をあわせると安愚楽牧場は牛を高く買って、安く売ってたってことよね
れ : そんなんで儲けが出るわけないんじゃないの?
ま : それだけじゃないぜ。安愚楽牧場には他の農家よりも不利な点がもう一つあった。
ま : オーナーから出資という形で資金を集めている以上、配当を支払わなければならないんだ。
ま : 当然この分も、利益から差し引かれることになる。
れ : うん。聞けば聞くほどどうしてやっていけてるのか疑問としか思えないわね。
ま : ああ。それがどのようなカラクリだったのかは、この先明らかになるぜ。

ま : 2000年代に入ってからは安愚楽牧場……というか牛肉に対して非常に厳しい風が吹き荒れていた。
ま : 2001年のBSE問題とそれに伴う偽装事件。
ま : 2010年の口蹄疫。
ま : そして翌年2011年に東日本大震災が起き、これが最終的な引き金になった。

ま : 2011年8月9日、安愚楽牧場は東京地裁に民事再生法適用を申請事実上の経営破綻だ。
ま : 負債総額は4330億8300万円。
ま : 被害者数は7万3356人。
ま : 戦後最大の消費者被害事件となった。
れ : うーん、ついにって感じかしら。さっきまでの話を聞くと、当然って感じね。
ま : むしろここまで続いたことが不思議なぐらいだからな。
ま : その後、同年9月6日民事再生手続開始決定となるも、11月8日民事再生手続の廃止を決定。破産手続きへと移行することとなった。
ま : 震災による原発事故などで解約者が急増したことを理由としてあげているが、実際にはそれ以前から自転車操業状態が続いていた。
れ : つまり、どういうこと?
ま : 新規オーナーの出資金を配当に回したりしてなんとか見かけ上だけ生き永らえていたわけだ。
れ : それって他の和牛商法業者と同じだったってことよね。
ま : まあそうなるな。
ま : オーナー向けの資料では常に黒字を維持しているとして勧誘を続けながら、実際には赤字を積み重ねていたわけだ。
れ : それでも配当は続けてたんでしょ?
れ : 株だって景気が極端に悪くなれば無配にだってなるんだし、配当を止めることは考えなかったのかしら。
ま : 無理だろうな。
ま : 安愚楽牧場では過去支払いが減ったり、滞ったことはないとの説明で出資者から信頼を得ていた。
ま : それが少しでも配当をやめますってことになれば、消えていった他の和牛商法業者と同じように見られるだろう。
ま : そうなれば解約者は一気に膨れ上がり、それこそ破綻までの時間が短くなるだけだ。
れ : 止まったら倒れる、ホント典型的な自転車操業だったのね。
ま : ああ。なんとかして資金を集めようとしていたんだろう。
ま : 安愚楽牧場は破綻直前の11年7月に肥育牛のオーナー募集までしていたんだ。
れ : え、でも出資するのは母牛だけなのが特徴だったんじゃないの?
ま : それだけなりふり構っていられなかったってことだろう。
ま : さらにこのコースでは牛の予定売却金を下回った代金相当額の飼養委託費をあぐらが負担するとの内容まで書かれていた。
ま : 実質的な元本保証だ。
れ : でもそれでお金を集めたところでもう先は見えてたのよね?
ま : その通りだ。実際に1ヶ月後に民事再生法を申請していることを考えても、これはかなり悪質だといえるな。

ま : そんな自転車操業状態の安愚楽牧場内部。
ま : 当然まともに運営されていたはずなんてなく、ここから色々と問題が浮き彫りになってくる。
ま : まず経営面についてだが、家族経営的な体制でかなり閉鎖的な環境だったらしい。
ま : 社長と畜産部門のトップだったその弟ら経営幹部2,3人が会社の全てを取りまとめていた。
ま : さらには自分に逆らった社員に対しては不利な人事をするなどが行われていたって話だ。
ま : たとえば遠くの牧場へ異動させたり、突然降格させられたりだな。
れ : そんな状態で会社を良くしていこうなんて無理な話よね。
ま : そして2011年11月30日消費者庁が発表した調査結果である事実が明るみに出る。
ま : 遅くとも2007年3月から安愚楽牧場にはオーナーとの契約どおりの頭数の繁殖牛が存在しなかったんだ。
ま : 2007年時点でのオーナー牛は9万2023頭。
ま : 対して実際の繁殖牛の総数は5万1428頭。
れ : ええ、ほぼ半分じゃない。
ま : その通り。オーナーとは牛の売買契約をしておきながら、半数近くは契約どおりに購入していなかった。
ま : これだけの開きがあれば、手違いだなんていい逃れはできない数だ。
ま : さらに悪質なことに、安愚楽牧場は明らかに牛の数を誤魔化そうとしていた形跡が見受けられた。
れ : どういうこと?
ま : 実は2009年に安愚楽牧場は預託法に基づき、農林水産省の立ち入り調査を受けている。
ま : その時期に合わせてメスの牛の割合を増やしているんだ。
れ : でもそれなら、契約どおりに近づけようとしたんじゃないの?
ま : それが違うんだ。
ま : オーナーとの契約対象となるのは繁殖牛、つまりメスの牛の中でも母牛だけだ。
ま : だけどこの時期にはメスの肥育牛が明らかに増加している。
ま : さらにメスの小牛と肥育牛の数と、実際にいる繁殖牛の数をあわせるとオーナーとの契約数と奇妙な一致をみせる。
れ : これもう真っ黒じゃない。
ま : 全国に散らばる9万頭もの牛を性格に全部調べるには相当な時間と手間がかかる。
ま : そこで安愚楽牧場ではとりあえずメスの牛の数を揃えることで調査の目を誤魔化そうとしたってわけだ。


ま : 頭数問題は当然、その後の会社整理にも大きな影響を与える。
ま : 安愚楽牧場は最終的に民事再生手続から破産手続に移行したことで、あとは債権者にどれだけの配当を戻せるかが問題になる。
ま : 2011年8月17日の会見で、安愚楽牧場はオーナーの契約番号に対して牛は必ず存在すると説明して、
ま : オーナーに対して牛の売却額から費用を差し引いた額を戻せるのではないかと発言していた。
れ : でも、実際には契約どおりの頭数は存在しなかったわけよね。
ま : ああ。さらに残された14万頭の牛もすぐに処分できるはずはなく、処分するまでの間世話をする必要があった。
ま : このえさ代などがかなりの負担になり、本来債権者への弁済に費やされる資産を文字通り食いつぶしている形だった。
ま : そうして最終的に残ったのは23億円にしかならなかった。
ま : 対して負債は4200億円。
ま : つまりたったの0.5%程度だ。
れ : 0.5%ってことは、100万円を出資していたら帰ってくるのは5千円ってことよね。ひえぇ……
ま : これについては最初から民事再生手続ではなく破産手続を選択していれば被害はもっと抑えられたのではないかとの声もあって、
ま : 経営陣や弁護士の責任を問う声も少なくなかったぜ。

ま : その後も安愚楽牧場事件の余波は広がっていく。
ま : 2012年2月には当時の松原消費者行政担当相が安愚楽牧場問題に対する消費者庁の対応の不備について謝罪。
ま : 国に対しても責任を求めて国家賠償請求訴訟が行われている。
ま : 2013年、旧経営幹部ら3人が特定商品預託法違反の容疑で逮捕。
ま : 元幹部1人は不起訴になったものの、あとの2人は特定商品預託法違反で起訴された。
ま : 被害者や捜査当局はより重い詐欺罪の適用を求めていたようだが、実現することはなかった。
れ : え? やってることは明らかに詐欺じゃないの。
ま : まあな。その通りだなんだが、詐欺罪の立件は非常に難しいことで知られていて、今回もその例にもれなかったってわけだな。
れ : うーんなんだか納得いかない気がするけど。
ま : そうだな。特に本事件は被害者数も被害額も非常に大きく、社会的な影響は小さくなかった。
ま : それぞれの責任に対して、もう少し踏み込んだ対応が求められていたような気がするな。


ま : さて、以上が戦後最大の消費者被害事件「安愚楽牧場事件」だ。
ま : 食の問題への関心が広がる中で、
ま : 「都会と農村を結ぶ」って理念そのものは決して悪いものではなかったと思うぜ。
ま : 畜産農家への応援や黒毛和牛の普及のために個人個人が出資する。
ま : 牧場はそれを元に育った牛を消費者へ安定的に供給する。
ま : 出資者が受け取る利益は僅かでも、黒毛和牛の供給によって金銭面以外でのメリットを受け取る。
れ : そのサイクルを無理なく回せればよかったんだけどね。
ま : ただ、いかんせんビジネスモデルとして成立していなかったってことだな。
ま : 他の自己資本でやってる農家と比べても、配当金の支払いの分だけ余分に稼がなくちゃならないわけだ。
ま : そのギャップを埋めるのは簡単なことじゃないぜ。
ま : 安愚楽牧場のように、スケールメリットを生かせずコストダウンや効率化のための努力も行われていないような環境ではうまくいかないのは必然だった。
ま : もしかしたら今後、そこに挑戦しようって企業が出てくるかもしれない。
れ : そのときは応援しつつも、安全かどうかはしっかり見極めるようにしたいわね。
ま : そうだな。絶対の安全なんてないってことは意識して、自分でしっかりと確かめないといけないと思うんだぜ。

ま : というわけで今回はここまでだ。
れ : 長時間のご視聴ありがとうございました。
ま : ありがとうだぜ。

2021/06/27 TKU

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