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カメラはスマホに淘汰されるのだろうか

カメラメーカーはスマホのようなデジタル補正に力を入れるべきか?という話をツイッターで見かけたので,自分がなぜカメラを使うかも含めて考えてみた次第.

結論から言うと,スマホのように“綺麗に写るデジタル補正”に力を入れるべきではないし,入れたところで意味がない.
光学機器と機械学習による画像処理,マーケティングの知識からまとめてみた.

この問題は“なぜカメラを使うか”という,カメラの本質に直結する.多くの人にとって,カメラとは「綺麗に撮りSNSに上げるための道具」である.その一方で写真を撮ることが生業のプロにとって,カメラとは「自分の思い通りに記録するもの」である.ターゲットによって,カメラの使用目的は全く異なるのだ.

箇条書きにすると分かりやすい

アマチュア
・綺麗に撮りたい
・スマホに残したい
・SNSにあげたい
→結果が綺麗であれば途中の処理はカメラ任せでも良い.持ち運び性,便利さも重要視される.わざわざ写真のために荷物を一つ増やすことが負担だと考える人も多い.

プロ
・自分の思い通りに撮るための操作性が重要
・事実を記録し,場合によっては後で編集したい
→結果が自分の意図するものである必要がある.編集は自分でできるため余計なデジタル補正はいらない.仕事に必要最低限の性能・機能で十分.

自動的に綺麗に撮れるデジタル補正を求める一般消費者層にとって,現状のスマホですでに十分なのだ.ミラーレス・一眼レフなど,レンズ交換式カメラのデジタル補正機能(すでにHDR,肌補正などはある)が向上したところで,わざわざカメラを買う動機にはならない.

そしてプロにとって,意図しない“綺麗に見えるデジタル補正”はむしろ邪魔である.ただ,暗所のノイズ除去に使われるデジタル補正や超解像度にするための合成技術はすでに実装・使用されており,この先も必要とされるだろう.

レンズ交換式カメラが好きな自分にとって,安易にスマホの機能を実装しようとする流れは不安が残る.

それでは,カメラメーカー,そしてカメラ市場はどのような努力をしていくべきなのだろうか.

カメラ業界は,このままだと日本の車業界のたどった道とほぼ同じでになるのではないかと思う.技術の進歩によりマニュアル車は減りほぼすべてがオートマに移行した.運転体験そのものが好きな人と,思い通りに動かす必要があるレースドライバー以外,マニュアル車使用のメリットがなくなってしまったのだ.

ただこの“運転体験”,つまりカメラで言うところの“撮影体験”というのはスマホでは感じられないものがある.現にヨーロッパの市場ではいまだにマニュアル車が主流であり,ユーザーに対して運転体験の魅力を伝えることに成功しているといえる.

その楽しさを伝えることこそが,カメラメーカーは重要視するべきなのかもしれない.そしてひとりのカメラユーザーとしてもその魅力を発信できたらと思う.


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次回,「3年後には誰もが360度カメラを使うようになる話」でも書こうかと.


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