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縁を紡いで福と為す

災いは無いに越したことないので、願いを込めてこのタイトル。

久し振りにアウトプット欲が振り切れまして、今回は今の自分にとても大切な時間を与えてくれている「カブキカフェ ナゴヤ座」について書き連ねたいと思います。

名古屋の円頓寺商店街にある「カブキカフェ ナゴヤ座」。毎週水金土日、芝居小屋では所狭しと数々の演目が披露されています。そこに座すは、名古屋山三郎一座の皆さま。個性豊かな役者の皆さまが、様々なアプローチで「ナゴヤカブキ」を魅せてくれています。

私がナゴヤ座を知ったのは、フォローしている方のRTでした。名古屋にこういう場所があるんだ、YouTubeで無料公開してるんだ、観てみようかな、そんなキッカケ。ナゴヤ座では数本のお話が全幕無料配信されているので、現地に行けなくても何度も繰り返しアーカイブを視聴できるのが本当に有り難かった。

まだまだ歴は浅いのですが、そんな中で気付いたナゴヤ座の魅力。

まず、配役変更。同じ演目を数ヶ月続けていても、日々進化して変化してどんどん見所が増えていく。スタンダードな配役はあれど、この日はこの人がこの役を、次の日は敵対していた相手と逆の配役になったりする。役者の皆さま一人一人の個性、魅力がぶつかり合って、まるで別のお話を観ているかのような印象を受ける。一つのお話でこんなにも配役変更できるのは、役者の皆さまの対応力、演技力、そういうスキルの高さはもちろん、その役に対する幅広い向き合い方ができるからなのでは、と感じました。

あとは、慣れ親しんだ間柄の相手にも感謝や信頼を真っ直ぐ届けているところ。同じ座でずっと活動していて一緒に過ごす時間も多い中、お互いへのプラスの気持ちをしっかり持っていて、それが端々から感じられるんです。ナゴヤ座のサブチャンネルで不定期配信されている「ナゴヤザコバナシ」という放送の1コーナー、「今週の山盛り」でも思いました。◯◯さんは、このときこういうことを頑張ってくれていた、◯◯さんが考えたこれが素晴らしかった、と。そこにはネガティブがなくて、素直に感謝や信頼を言葉にして届けてくれるスバラシ空間。

そして、役者の皆さまがそれぞれナゴヤ座以外の場所でも活動されていて、あらゆる場で別の魅力があって、その上でナゴヤ座に戻ってきたときに合わさった個性とエネルギーの爆発的なぶつかり合いがたまらなく素敵。

などなど、思い付くだけでもこれだけあるのですが、きっとまだ私が知らないナゴヤ座の素敵なところがたくさんあると思います。私は今まで好きなものに対して「深く狭く」向き合ってきました。自分の目で見て、自分の耳で聴いて、自分の心が惹かれる感情を信じているので、その中で出会えて、想いを注げる対象があることにホッとします。大袈裟かもしれないけれど、一生モノの最高の趣味に出会えたな、と。お芝居を観て、ドキドキして、泣いて、笑って、心が豊かになる。日常では抑え込んでいる感情を、そこでは誰にも邪魔されずに溢れさせて良いんだもの。

ナゴヤ座の演目は本当に大好きなものばかり。その中でも特に惹かれて、何度も何度も観てしまうお話がこちら。

「THE NARUKAMI -雲ノ絶間ニ龍踊ル-」

数あるアーカイブの中でも特に好きな回なんです(現在はチャンネルのメンバーシップ会員限定の可能性あり)。少年と龍神の出会い、心を通わせて強くなっていく少年と、少年の孤独を包み込んでくれる龍神。このお話に限らずだけど、人と人(たまに人ではない)の絆や縁が感じられるんです。言葉の端々と表情から、それぞれの心情が伝わってきてほっこり温かくなり、時に泣きそうになる。

この回では、少年・絶間を名古屋虎三郎さん(トラザさん)。龍神は座長である名古屋山三郎さん(サンザさん)が演じています。別の回ではトラザさんが龍神の日もあるし、サンザさん演じる龍神もまったく違うキャラだったりします。この回では、ヤンチャで真っ直ぐで素直になれないトラザ絶間と、投げやりでめんどくさがりで誰よりも面倒見が良い「おっちゃん」キャラのサンザ龍神。この関係性がたまらなく大好きで、何度も何度も観ました。

お話の中で、悲しい忌み名として勝手につけられた自分の名前が大嫌いだという絶間に、名前の前にこう名乗れ、とプラスの意味を与えてあげる龍神に対して「まぁ、悪くはねぇかな」「あぁ、悪くねぇ」というやり取りがあって。この、与えてもらった名前を噛み締める絶間の「間」から、いろんな感情が押し寄せるんですよね。で、物語の終盤で、龍の力を取り込んでしまった絶間が何をすべきか、龍神と共に旅に出ることになった一場面。「あんたとの旅なら……悪くねぇかな!」「あぁ、悪くねぇ」。この最後に絶間が言う「悪くねぇ」の前にある「間」からも、龍神に対する想いや、これから始まる旅への喜びが溢れるように感じられて……それを受けた龍神の温かさ極まれり。とにかく大好きな回です。

二幕終わり、客席の拍手を降り注ぐ雨に見立てる演出も本当に素敵。雨が降らなかった村に拍手の雨が降り注いで、喜びの声を挙げる絶間。龍神と共に最後の魅せ場、暗転直前のやりきった!という清々しいトラザさんの表情が大好きなんです。是非、一人でも多くの方に観て、知っていただきたい。

ナゴヤ座は8月一杯お休み中で、9月以降のスケジュールは決まり次第公開される予定です。私はホームである円頓寺商店街のナゴヤ座にはまだ参加できていないのですが、再開された際には必ず現地で体感したいと思います。お休みの間、役者の皆さまも自由に動けず、予定されていたイベントの中止などもあり、もどかしい時間をお過ごしかと思います。ただ、皆さまが届けてくれている演劇のある生活に活力をもらっていること、好きを注ぐ場所を守っていくこと、忘れずに待っている人達がいること。それを伝えたくて、想いを書き連ねました。どうか、また笑顔を観せてください。大暴れしてください。私はナゴヤ座が大好きです。

一生モノの趣味、というからには、着物でナゴヤ座観劇をすることが目標になりました。そして、おばあちゃんになっても、こうやって最高の舞台を観続けていきたい。「こんな人生も、悪くないわね」って笑いながら。

【2022.9 追記】
このブログを書いた翌月、私は無事ナゴヤ座現地観劇デビューを果たしました。ナゴヤ座は現在も毎週水金土日、昼夜8ステージを全力で魅せてくれています。休演などもあるので、スケジュールは最新のものをご確認ください。→【ナゴヤ座公式HP
着物で観劇も達成して、この場所をキッカケにできた趣味も楽しく続いています。今でもエンタメ業界は、本番当日、幕が上がるまでその日の公演に出会えるか解らない状況です。きっとこの先、生きているうちはこの状況は変わらないんだろうなと、どこかで諦めもあります。ただ、この制限があることで生まれる渇望感を私は絶対に忘れたくない。今だからこそ、今までよりも強く望む気持ちが生まれるのは皮肉だけど、エンタメを届けてくださる方達がいる限り望み続けたい。また観たい、また行きたいと思えるし、常に一番を更新してくれる大好きな場所に出会えて幸せです。
たくさんの方にこのブログを読んでいただきました。本当にありがとうございます。大好きなものを1人でも多くの人に知ってもらいたい、という想いで書き連ねました。言葉は届かなければ意味がないので、誰か1人でもこの言葉が心に届いて、その心が動いてくれたら。是非、動いた心を行動に繋げてみてください。エンタメを浴びた心は驚くほど満たされます。皆さんの注いだ時間が、1秒でも多く笑顔になれますように。

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