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サマーノスタルジックシンドローム

少し気が早いが夏の気配がしてきた。
子供の頃から夏が大好きで大人になった今でも夏の魅力に取り憑かれている。
 

この夏を懐かしむノスタルジックな感情は毎年夏になると表れ、子供の頃の強烈な記憶を呼び起こす。



私の家は母方の兄妹が多く従兄弟も多かった。
特に年の近い男の従兄弟が3人いたので、4人でよく遊んでいた。

と言っても盆休みで母方の実家に帰省していた2、3日の間だけである。
この数日間が何年にも積み重なってノスタルジックシンドロームを引き起こしている。

母方の実家は田舎にあった。

今でこそ道路が整備され新しい家も立ち並んでいるが、子供の頃は何も無い砂利道と空地。
図鑑でしか見たことのないタガメなどが棲んでいる綺麗な川が流れていた。

私達は朝起きると用意された塩むすび、卵焼き、ウインナーなどを腹に詰め込み、虫取り網を持って蝉取りに出かける。
今思うと塩分多めのご飯は子供たちの熱中症対策だったのだろう。

虫カゴにパンパンに蝉を捕まえて持ち帰ると叔母たちが気持ち悪いと悲鳴を上げるのが可笑しくて堪らなかった。

腹が減り家に帰ると大量の素麺が机に並んでいる。
ブーブー文句を言いながらも腹一杯食べた後は200円握り締めて今度は近所のプールに向かう。

プールまで走って競争するがどうしても3歳年上のいとこのお兄ちゃんには敵わなかった。どこにそんなエネルギーがあったのか分からないがとにかく無尽蔵に元気はあった。

ちなみにプールに入る時に名前と住所を書かされたので母方の実家の住所は未だに覚えている(笑)

ヘトヘトになるまで泳いだ後は自販機でセブンティーンアイスを買って家まで食べながら帰る。

この帰り道に食べたアイスはこれまでの人生で一番美味しかったと思う。お気に入りはグレープ味だった。

晩御飯は庭で大人たちが焼肉をしてくれていて、家の中で食べなさいと言われるが虫に刺されながら外で食べていた。

食後は花火をして振り回して怒られ、芋を洗うように風呂に詰め込まれ、寝るまでお喋り。
就寝したかを親たちがチェックしに来るので寝たフリをしてやりすごすのも楽しかった。

年と共にゲームボーイを持参したり遊戯王のデッキを持参したりと細かな遊び方は変わるが基本的に毎年変わらない夏を過ごしていた。

当時(20数年ほど前)は、半分壊れた古いクーラーしか付いておらず、扇風機と団扇のみで過ごしていた。
扇風機の風に乗って香ってくる線香の匂いも好きだった。

同じ様に冬にも帰省していたが、不思議な事に夏と比べるとあまり匂いの記憶がない。
思い返しても炬燵の埃っぽい匂いや灯油ストーブの匂いだけ。

麦わら帽子の匂い、草木が生い茂った匂い、蚊取り線香の匂い、プールの塩素の匂い、夕立前の空気の匂い、夕立後のアスファルトの匂い、花火の匂いなどの記憶を刺激するに至る匂いが冬には無い。

湿度が大いに関係しているのだろう。

余談だが大学生の頃に蚊取り線香の匂いが好きすぎてホームセンターで購入し、自分の部屋で蚊取り線香に火を着けていたら家族からクサイと総スカンを食らったことがある。

今年は父方の実家の方に帰省しなければならないので休みの都合が付かないと母方の実家には帰れない。
また蚊取り線香の匂いだけで我慢することになるかもしれないが今度は妻に叱られないようベランダで一人夏を楽しもうと思う。


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