経済学の基礎で考える人口問題8 「外国人頼みの新しい人口推計」

 6月23日に、内閣府経済社会総合研究所主催のフォーラム「将来人口推計が映し出す日本の課題」にパネリストとして参加した。

 当初、今回の国立社会保障・人口問題研究所の新しい人口推計について、私がコメントしようと考えていたのは、次のようなことだった。

今回の人口推計は、一言で言えば、「外国人頼みの人口推計」だ。今回の推計では、前回(2017年)の推計よりも、総人口の減り方が緩やかであり、生産年齢人口が増えている。これは、今後長期にわたって、年平均17.4万人の外国人の流入超過(2017年の推計では約7万人)が仮定されているからだ。まさに「外国人頼み」ではないか。

私はさらに、外国人の流入が日本の出生率を引き上げているのではないかと考えた。今回の推計の資料を見ると、中位推計の場合2070年の合計特殊出生率は、1.357だが、日本人女性に限ると1.285とされている。外国人のウェイトを仮に10%とすると、外国人女性の出生率は約2となる。つまり、出生率についても外国人に助けられているということになる。

ところが、シンポジウムの最初に行われた、国立社会保障・人口問題研究所の岩澤美帆人口動向研究部部長の説明によると、外国人の出生率は0.94としており、むしろ日本人女性より低い数値を仮定しているという。ではなぜ、全体の出生率は、日本女性に限った場合の出生率より高いのか。

これは、厚生労働省の出生率の定義に合わせたからだというのが、岩澤部長の説明だった。その厚生労働省の定義による出生率というのは、日本人女性からの出生数と外国人女性からの出生数の合計を分子とし、日本人女性の数を分母として計算されているのだという。つまり、厚生労働省の定義では、外国人女性の産んだ子供も日本人女性が産んだような計算になっており、その分高めになっているのだという。その分を修正をすると、全体としての出生率は1.357になるというわけだ。

というわけで、当初の「外国人は出生率が高いという仮定を置いている」と私が考えたのは誤りだということが分かった。それはいいのだが、今度は、厚生労働省の出生率の数字は実態よりも高めに表示されているという別の問題が明らかになった。今回のシンポジウムで私が最も驚いたのはこの点であった。専門家はとっくに知っていたのかもしれないが、私はそんなことになっているとは全く知らなかったので、大変驚いたのである。

簡単に言えば、2022年は1.26だと騒いでいる出生率は、実はもっと低いということなのだ。現時点では、外国人が産む子供の数は少ないので、誤差の範囲かもしれないが、今後、まさに今回の新推計が示すように、外国人の数が増えていくと、厚生労働省の出生率定義の問題はもっと大きな問題となる可能性があるのではないか。

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