知識、というもの。舞台を見て思ったこと。

とある演劇を見てきた。

自分の誕生日に。今、一番好きな俳優さんご出演舞台を、自分への誕生日プレゼントとして。

誕生日。そこに推し俳優さんご出演の『何か』の日程が被っているなら是非とも見たいし行きたい。誕生日に推しに会いたい。いや、別に誕生日じゃなくても推しには会いたい。会える機会があるなら、チケットがご用意されるなら、そしてその他つまりは金とか暇とかが許すなら、私はいつだって、板の上にいる大好きな彼を見たい。
だって好きだから。

という理由で私は結構軽率に上京する。これは学生の頃から変わらない。
因みに住まいは関西だ。田舎はもっと遠い。何なら本州とは海で隔たれている。大学進学の際、関西圏の大学を選んだ理由は「関西なら舞台やコンサートにたくさん行けるじゃん」だった。物理的距離というものを少しでも減らしたかった。だって邪魔なんだもん。田舎から都会までいくらかかると思ってんだ。
そんな私のことはさておいて。

とある演劇を観てきた。自分の誕生日に。素晴らしくいい席で。
ファンクラブのキャスト先行という、オタクにとってはとてもとてもありがたい存在で申し込んだチケット抽選。厳正なる抽選の結果チケットをご用意しましたのメールに喜び、そして発券して驚愕した。

マチネ(昼)最前列中央ブロック、ソワレ(夜)二列目左ブロック。

こんなん無理やん。推しを近いところで見るとか、マジで呼吸止まるやん。しかも今回劇場小さいんやで? え、無理やん。嬉しいけど無理やん。
と、私が推しに狂っていることを知っている周りの友人たちにひたすら「無理」と言い続け、その度に「良かったね、楽しんでおいで」「生きて帰っておいで」といい笑顔で返されつつ、勿論行かないはずもないので行ってきた。
因みにこの私の暴れっぷりと友人たちの返しはもはや恒例行事だ。毎度ゴメン、そしてありがとう一種の茶番に付き合ってくれて。

前置きが長い。本題はここから。

拝見した舞台は初めての演目だった。どのような内容なのか事前に知りたくて(便利な世の中だもの)ネット検索した。けれど、作者の方のお名前と簡単な粗筋、今回の公演の情報、演出家さんのコメント等で他を見つけられなかった。

話の内容知りたかったんやけど、分からんかってん。

もしかしたら詳細が分かるところがあるのかもしれないけれど、辿りつかなかったのは単純に私の検索スキルの低さなので、その辺は言わないでください。

まぁ要するにほぼノー知識で観に行った。
で、だ。
幕が開いて冒頭(実際には緞帳などなかったけれど)、少女の台詞。

「ヒースクリフ」「キャサリン」

この時点で、あれ、と思った。何だっけこれ、聞いたことがある。浮かんだ疑問符。内心で首を捻る。その後。

「吹きすさぶ嵐の丘を彷徨いながら」

続いた、多分こんな感じの台詞。とにかく「嵐」と「丘」と「彷徨う」はあったと思う。「吹きすさぶ」もあったような気がしている。(記憶が曖昧。なんせ最前列だったんだ仕方ない。)
とにかく、ここで理解した。あぁ、これ、嵐が丘だ。と。

私の「嵐が丘」の知識。それは「ガラスの仮面」だ。確か、主人公・北島マヤが幼少のキャサリンを演じていたはず。その「嵐が丘」だ。
でも、登場人物の名前と、ある程度の粗筋をふわっと知っているだけで、小説をちゃんと読んだことはない。今、これを書く為に調べて「世界の三大悲劇」と評されていることを知った。
そんなしょぼい知識しかない状態でも、あぁ、と思った。そしてそれがあったからお話が、結末が、そこに行きつく流れが僅かにでも分かった。
「ガラスの仮面」ありがとう。あなたを読んでいたおかげで繋がり、お話が分かり、登場人物の台詞や感情を受け取る足がかりになりました。
他にも劇中「尼寺」やら「オフィーリア」やらも出てきた。勿論すぐに分かった。クスッとした。歴史的なことも出てきた。知っていたから何のことか分かった。脳内で解釈が繋がった。

でも、知らない人も居たんじゃないかと思うと、そんな人たちはあの作品を、お話を、どう受け止めたんだろうか。

演劇ってパロディやらオマージュやら、過去作品や有名作品、台詞を引き合いに出してくるものが多かったりする。
だから、キャラクター名や台詞、一文、実際の事件や人物名ですぐに、あぁアレだね、と察することが出来るのは、元を知っているからだ。つまり知識があるから。教養ともいうのか。

「笑うという行為にはそれなりの知識と教養が必要」
これは某アニメで某キャラが言っていた台詞だ。知っているからそれを元にした何かをクスッと笑える。いつだったかネットで話題になっていた、スーパーだかの揚げ物コーナーに掲げられた「春は揚げ物」のフレーズ。これって「春はあけぼの」を知っているから面白いわけだ。
「春ははあけぼの」だけじゃない。「いづれの御時にか」とか「男もすなる日記といふものを」とか「ゆく川の流れは絶えずして」とか「祇園精舎の鐘の声」とか「月日は百代の過客にして」とか「ぢっと手を見る」とか「吾輩は猫である」とか「メロスは激怒した」とか。文学も、知っているから何か分かる。

元々観劇は好きで、ジャンルも特にこだわりなく、面白そうなものなら何でも観たいと思うから、ストレートプレイもミュージカルも、喜劇も悲劇も歌舞伎も能も見る。チケットがご用意されるなら本当に何でも。最近は専ら2.5次元が多いけれど。そしてありがたいことに、同じく宝塚大好き・観劇好きの友達(大学の頃からの付き合いだからもう随分長い間一緒にいる)、彼女のおかげで本当に様々な舞台を観に行く。
だから私はそこまで演劇に詳しいわけではないけれど、知っていることは知っている。知らなかったら調べる。興味が湧いたら見てみる。ということをする。
じゃあ他の人はどうなんだろう。調べるんだろうか。
そういえば、彼女が言っていた。会社の後輩が「赤穂浪士」を知らなかった、と。知らない子がいるんだなと驚いた、と。
年末年始の何時間にも及ぶ時代劇とかでやってましたよね、赤穂浪士。で、それをパロディにしてるお笑い番組ありましたよね。元ネタが分かってるから笑えるんだよなぁ。年齢がばれる話だけど。
これ、知らない子たちはどこで触れるんだろう。

それはさておき。今回観劇した作品。「嵐が丘」を知らない人はどう受け止めたんだろうか。どう受け取ったんだろうか。あの作品を観終ってどんな感想を抱いたんだろうか。と、気になっている。
勿論、知らなくたって、予備知識がなくたって、観劇には差し支えないかもしれない。知らなくたって、何か心に刺さったかもしれない。観劇が終わった後に自分で調べる、読む、だってできるわけだし。

でもどうせなら知っている方がより面白いし、楽しめるんだろうなと私は思う。だから思った。知識って大事だなと。知ってるって重要だなと。

もうひとつ。知識は誰にも奪われることのない財産だと、とある有名人の方がお正月のスペシャル番組で仰ってましたね。あの、格付けチェックで連勝を続けていらっしゃるお方が。この言葉、その通りだと思いました。知識は自分のものだ。武器になる。

だから私は武器を増やしたい。だって楽しいじゃん。

そんなことを思った、今回の観劇でした。

最後に、今回観てきたものを記しておきます。
「少女仮面」、唐十郎さんの戯曲。

すごかった。圧倒された。観終ってから言葉が出なかった。なにこれすごい、と呟くのが精いっぱいだった。立てなかった。

マチネ終わって、思ったこと抱いた感情はそのままアンケートに書いた。めちゃくちゃ殴り書きで裏面にぶわぁっと。誤字とかミスとか無視して。色んなことを思い出しながら考えて、合間パンフレットも読んで、また考えて。それから挑んだソワレも、勿論圧倒された。更に色んなことを感じて思って、そして泣いた。春日野と泣いた。

観に来てよかったと思った。もう一回観たいと思って、でも観られないのが悔しかった。
私にもっと余裕があれば、もう一度観たかった。できれば今度は後方席で。あの世界をもっと浴びたかった。知りたいことが多すぎる。

そんな舞台でした。帰りの夜行バスも寝ないでずっと春日野に思いを馳せ考えていた。

円盤? 勿論マチネ終わってすぐに予約させいてただきました。届くのが楽しみです。
推しの俳優さん? 勿論素晴らしかったですよ。やっぱり私は彼が好きだなと再確認しました。好きです本当に。

そして、今回は推し俳優さん以外の出演者の皆様は初めて拝見する方々ばかりだったんですが、皆様めちゃくちゃに素晴らしかったです。若村さんの美しさとかっこよさに圧倒され、木﨑さんの可愛らしさと純粋さにときめき。他の皆様にも目を奪われ息を呑み。沢山のものが刺さりました。


そして、これ、このnoteで一番重要なことなのですが、「少女仮面」まだ公演期間中です。2/9まで。私が観に行った時は千秋楽以外はチケットがございますとアナウンスがありました。回によってはアフタートークもございます。ご出演の皆々様の貴重なお話が聞けます。楽しいです。

少女仮面、たくさんの方に見ていただきたい。皆見て。でも本音は行けるものなら私が行きたい。あの世界をもう一度浴びたい。彼の演じるあの役柄が観たい。板の上の彼が見たい。

あと私は嵐が丘をちゃんと読もうと思いました。

以上です。

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