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観世九皐会五月例会

矢来能楽堂で観世九皐会の例会、午後の部に出かける。
演目は「女郎花」。これ、「おみなえし」ではなく「おみなめし」と読むとのこと。

おそらく、初めて鑑賞する演目ではないか。

まぁ、いわば恋地獄というような話。前半はワキの僧が女郎花を手折ることへの歌問答が大事なモチーフらしく、あらかじめ確認はしておいたのだが、ふっと、ごく短時間意識が飛ぶ瞬間があり、その間のやりとりでもあったようで、把握できなかった。

後場は、小野頼風が、関係をもっていた都の女をふとした行き違いで、自死させてしまい、自らも後を追うという状況を、妄執として捉え、そのために地獄に落ち、そこでの苦しみを語るという、今の視点からなかなか理不尽な内容。

もちろん、成仏ということを重視する能としての文脈においては、十分に理解できるわけだが。

しかし、最前列に座っていたこともあって、シテやツレ、さらにワキが舞台の前に進んでくる時の迫力がすごい。

能によって、修羅な、男女間の、他の生の死をもって自らの生を保つことの、さまざまな妄執が、この世界に満ち満ちていることが可視化される

そうした世界で生きることへの不安、恐れを、改めて能により鎮めていく、ことも可視化する。
能をそのように把握すると「能のある暮らし」というものの価値がわかる

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