1983

1983というバンドがあります。

1983年生まれのベーシスト新間功人を中心に結成された80年代+α生まれの5人組。各個人の音楽史観をルーツミュージックと解釈し、日本ポップスの可能性を追求。ベーシックな4リズムに、トランペットが華を添える。5人はそれぞれoono yuuki、森は生きている、トクマルシューゴ、王舟、シャムキャッツ、柴田聡子inFIRE、折坂悠太、蓮沼フィル、寺尾紗穂などの録音に参加している。

https://www.the1983band.com/

2022年10月27日に解散を発表し、先日2024年1月27日に解散ライブが行われました。

出会ったのは2017年。2nd LP『golden hour』を渋谷のHMVで見かけました。いけてるデザインにちょっと大きいサイズ。確かポップにも先程のような紹介文が書いてあったと思います。

golden hour (2016年発売)
https://www.the1983band.com/discography/

豊かな音楽性に惚れ惚れしました。中でも『ロデオの新恋人』に撃ち抜かれたことを強く覚えています。当時のJ-POPには珍しくカントリー・ミュージックの系譜にある曲で「あ、これは流行りの“シティポップ”とは違う」と。

聴いてみるとそりゃ好きになるに決まってるじゃん、なバンドでした。古今東西の音楽ジャンルをクロスオーバーしながら現代のJ-POPに他ならないサウンド。サポートメンバーを中心に組んだバンド、スター不在、どこかいなたいルックス、確かな見識と腕前から生まれる豊かな音楽。決定的だったのは彼らには「バンドで売れる」というステレオタイプはなく、かつ、逆に「生活に寄り添う音楽」といった2010年代後半にあったある種カウンターの姿勢でもなく、仕事と商業と生活との折り合いをつけた(ように見える)上で、ただ純粋にグッドミュージックを生み出していた点でした。そんなバンドがおおよそ30歳という、チョット大人な年齢に結成されたのです。

30代は人生の分岐点? 20代後半の迷いを経て結成された1983の話

https://www.cinra.net/

2017年当時、僕は大学を卒業して会社で働き始め、シルという7人組のコントグループに所属していました。
ジャンルは違えど僕は彼らにシルの理想を少し重ねていました。みんな地味な感じとかね。コンビでもトリオでもなく事務所非所属のコントグループというのは世の中に少ないこともあり、当時は劇団やバンドを見ながらどういうチームになりたいかを妄想していました。それと、リーダーの新間さんが当時の悟道君(シルのリーダーです)にどこか似ていたのです。ぽっちゃりでもガッシリでもない体格、ヒゲでメガネ、ヘンに固くなる不器用なMC、膨大な知識、確かな自信、滲み出る人の良さ。

こんな人達になりたい。憧れたと言っていいかもしれません。僕は1993年生まれなのでちょうど10年先輩。なかなかいないんです共感しつつ憧れるチームって。抜きん出た個性はなくとも人の良さと確かなミュージシャンシップを持ち、外的環境やプロモーションよりもまず豊かな音楽があるということ。何者かになりたかった自分の何らかを彼らに託していたのは間違いありません。

そして2022年に解散しました。(急に飛んじゃった。3rdの『渚にきこえて』は大名盤なので聴いてみてください)2020年の3rdから年数も経っていたし解散するだろうとはどこかで思っていたのでショッキングではなかったけれど、自分が憧れたチームが意思を決めて解散したという事実に思うところはありました。もう青春友情パワーで頑張れる年齢でもない。不景気の中でコロナもあった。音楽性の違いもあったのかもしれない。しかし一番思いを巡らせたのは、やはり仕事と生活のことでした。

そして先日1月27日に解散ライブが開催されました。

素晴らしかった。ああライブで聴くのは何年振りだろう、そんな感傷よりも、グッドミュージックがあったのです。
ボーカルも楽器もだれも決して強く主張はしない。楽曲が楽曲として構成されて編み込まれていく。ふと、ある楽器に意識を向けるとしっかりと聴こえる。ギターもツインドラムもフルートもトランペットもパッドもシャカシャカするやつもベースも。どれもが豊かな音だ。1983だ。

客席には1983と同世代の方々が多くお子様連れのお客さんも沢山いらっしゃいました。解散ライブですし知人や関係者の方々も多かったと思います。10年先輩の同窓会のような幸せな空気が流れていて、40歳の彼ら彼女らの仕事と生活が感じられました。皆何かを掴んだり諦めたりしながら、あの頃は遠い未来のはずだった中年を今歩いている。そんなふうに見えました。

1993生まれの自分は今年で30歳、おおよそ1983が結成された頃のメンバーの年齢です。シルを離れて映像配信のチームを作ったり演劇に出たりしています。解散ライブの翌日はニュービデオシステムの仕事でとある劇団の公演の収録日でした。コンプソンズという、これまた僕自身が何かを託した同世代のチームです。

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