雨の日をハレにする

憂鬱な湿った空気

朝起きて、目が覚めて、雨模様の空を見るとガッカリする。

特に、子持ちである自分の立場では、この天気の時点で行き先がかなり限定され、他にも行き先が限定された人たちで溢れたそのそれぞれの場所は、湿気でムワッとしていて、それを想像すると、より一層鬱屈な気持ちにさせられる。

多分、同じ気持ちの子持ちの人は、少なくないのではないかと思っている。

水の中の砂

そんな様相に、近頃我が家では変化が起きた。

妻が子供のために、長靴とレインコートを買ったのだった。

我が子は、かけてあるレインコートを見ては「今日はこれ、着ていく?」と問いかけてくる。

もちろん、毎度答えはNoだったのだけど、この雨の日、今日ばかりは違う。

おろしたてのレインコートと少しぶかぶかの長靴を身に纏ってはしゃぐ。

自分だけ傘があってはなんなので、同じくレインコートをかぶって一緒にでかける。

水たまりを見つけると、初めは恐る恐るだったけれども、2つ、3つと飛び込むうちに楽しくなって、

道行く先にあるあらゆる水に飛び込んではしゃいでいた。

これだけ楽しそうに過ごしているのだから、買った甲斐があったというものだと思う。

この一連のジャンプして水たまりに飛び込む様子の中で、水の中にある砂の動きに少しワクワクした。

飛び込んだ瞬間にふわっ、と砂が水の中に広がって、その後にしゅーーーっと散って、落ち着いていく。

水たまりをわざと踏む大人なんてそうそういないから、そんな素敵な瞬間を見る機会はずっとなかった。面白い発見だったなあ。

昔に人伝に聞いた、横浜ランドマークタワーを紹介する係の方の話を思い出す。

雨の日の展望台は眺めがいつもと違い、一面雲に覆われて下界が見えない。がっかりする人も、多い。

少し不正確かもしれないけれど、その係の人が

「ランドマークタワーから雲を見下ろす体験ができるのは、雨の日にここに登ってこられた皆様だけです」

といった趣旨の話をしてくれたのだとか。

雨の日に登った体験が、そのおかげで途端に特別なものに感じたんだ、といったトーンでその話は締め括られていた覚えがある。

雨の日を「ハレ」の日にできる、そんな魔法を秘めている。

そして多分、この長靴とレインコートも同じようなもの、なのかもしれない。

ちなみに、我が子が履いていた長靴はぶかぶかだったにもかかわらず大きなジャンプを繰り返していたため、

長靴の上から水が入り、家に帰る頃にはズボンも靴下もびしょ濡れだった、という点も付記しておく。

写真は、スニーカーを履いていて水たまりに入れない自分を余所に、楽しそうに大きな水たまりを駆け抜けていった際の一枚。

次の雨の時までには、自分用にも長靴を買おうかなと密かに画策している。

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