FXもう一度やってみるよ⑬ 課題と対策⑤ もっと平均価格を下げたい①

「ドルコスト平均法」と書くのが面倒なので、以後「DCA」(dollar cost averagingの略)と書きます。

DCAの効果は、購入価格の平均が下がっていくことです。
理論的にはそうなんですが、実際にどの程度下がるんでしょうか。
そんなん実際の値動き次第だろ、という突っ込みは正しいです。

しかし、どんなロジックにも利点、課題があります。万能なロジックなんて絶対あり得ません。そんなのあったらみんな億万長者ですし、ゼロサムゲームのFXにおいてそんな万能ロジックはありえません。
であればこそ、やろうとするロジックを検証し、利点、課題を明確にすることが必要です。その利点を最大化し、その課題を解決する工夫。そこが勝負なんだと私は思います。

ということで、DCAの効果のほどを見てみましょう。

価格平均の推移

豪ドル円。日足。
検証期間は、2009年1月1日~2018年12月31日の10年間。
購入は毎日(週末は除外)行うものとします。

画像1

ちょっと小さくて見づらいかもしれませんが、
縦軸が価格。50~120。
横軸が日付。
赤のギザギザの線は、毎日の始値。
青い線は、単なる価格平均。
その下に沿うようにある赤い線が、DCAによる平均価格。

青い線は単なる価格平均なので、毎回同じ量を購入した場合と同じです。
最終日の2018年12月31日で比較すると、
青い線(一定数量購入):84.9127
赤い線(DCA):84.2297
です。

10年。10年運用して、平均価格が70銭程度下がった。
これを効果ありとみますか?
正直、私はこの結果を見たとき、愕然としました。
論外だと思いました。

課題

効果(平均価格の低下)がしょぼい。
これがDCAの、おそらく唯一最大の欠点です。

DCAの欠点としてよく言われるのが、値上がりし続ける局面ではどんどん高い価格で買っていくことになる、ということです。
ですが私はそこは欠点だと思いません。どんなロジックにも有利な局面、不利な局面というものはあるはずで、不利な局面があるからといってそのロジックを否定しだしたら、FXなんてできません。FXだけじゃなく、あらゆる投資も同じことがいえると思います。お金を稼ぐ方法に万能なものなどないのですから。
値上がりし続ける局面については、「高いほど少なく買う」という答えをDCAは出しています。

問題は、その効果がしょぼい、ということです。

ここでDCAに見切りをつけますか?
それで積み立て系の投資をあきらめるというのならそれもよいと思います。しかし、他のロジックを探そうとするなら、もう少しDCAの可能性を探ってからでも遅くはありません。
改良の余地、かなりあります。

私は、DCAは理論として好きです。
なので、しょぼい効果をしょぼくなくする方法をいろいろ考えました。

改善方針

価格平均をもっと下げるにはどうするか。
解は1つしかありません。

安ければ安いほど「もっと」多く、高ければ高いほど「もっと」少なく買う。

です。
つまり、購入数量の調整にもっとメリハリをつけようということです。

この点について、私は現在大きく2つの戦術で対応しています。
本記事ではこの1つ目を紹介します。

改善策① レバレッジの調整

高いほレバレッジを低く、安いほどレバレッジを高くしよう、というアプローチです。

たとえば、基本レバレッジを3.0として、80円から上に乖離するほどレバレッジを低く、下に乖離するほどレバレッジを高くします。
こうすれば、購入数量にもっとメリハリがついて、平均価格の低下の効果も大きくなるはずです。

仮説は検証しないと意味がないので、検証してみます。

検証結果

基本のレバレッジを3.0とします。
80円の時にレバレッジは3.0とします。
80円から上に乖離するほど、レバレッジを低くします。2.9、2.8、2.7...
80円から下に乖離するほど、レバレッジを高くします。3.1、3.2、3.3...
レバレッジの上限は、60円で6.0。60円以下は6.0で固定
レバレッジの下限は、100円で0.0。100円以上は0.0で固定
とします。

画像2

最終日の2018年12月31日で比較すると、
青い線(単純平均):84.9127
赤い線(DCA):80.8330
です。
価格平均がおよそ4円下がりました。
これくらい効果があると、やってみようかという気になりませんか?

このアプローチのデメリットは、たとえば長期にわたって円高が進むような局面などでは、建てたポジションの含み損がどんどん増え、さらに基準レバレッジより高いレバレッジで多く買うので、かなり資金的に負担がかかります。資金に対して保持する数量が多すぎる状態になる可能性がかなりあります。リスクの管理がより重要となります。

この苦しみは、たとえばサウナです。
むせかえるような熱気に耐えながら砂時計の砂が落ちるのをじっと待ち続ける苦しみは、その後の水風呂という天国に至るためです。

大きな利益のためには相応のリスクを取る必要があります。
これは世の真理ですね。

この、価格に応じてレバレッジを調整する考え方は、
基本レバレッジ x レバレッジ係数
という式で考えると考えやすいです。
基本レバレッジはたとえば3.0で固定として、レバレッジ係数をその日その日の価格から求めます。
上記の例では、レバレッジ係数は60円以下なら2.0、100円以上で0.0として、その間を線形で補完しました。
二次曲線で補間するともっとメリハリがつきます(私は実際に二次曲線で補間してます)。

新たな課題

この改善策は、レバレッジの安定性を犠牲にします。
価格が高くていつもより少なく買う場合は問題ありませんが、安い価格が続くと通常のDCAよりさらに強気に多く買うので、どんどん資金を圧迫していきます。
要するに基本レバレッジより高いレバレッジで運用しているのと同じ状態になります。
これはFXの基本的なリスクの話なので、その改善策は明確です。
・資金を追加する
・数量を減らす
のどちらかです。

資金の追加は、一時的な対処としてならOKだと思います。
ただし、運用を長く続けて持っている数量が多くなると、リスク低減のために追加する金額も多額になります。1万ドルを持ってる状態であと価格が10円下がっても耐えられるようにするには資金を10万円追加すれば済みますが、100万ドルなら、1000万円必要です。
なので、長期運用で数量もかなりの量になることを想定すると、資金の追加をあてにすることは危険です。最終手段にとどめておくほうが良いです。
後者の方法(数量を減らす)を、通常の運用ロジックに組み込むべきです。

いつもより数量を持ちすぎているわけですから、その分数量を減らすこと自体には違和感はないと思います。
問題は、どのようなロジックで決済するか、です。
これは別の記事にします。

次回は、「もっと平均価格を下げたい」第二弾として、価格平均を下げるもう一つの改善策を紹介します。

まとめ

DCAを単純にやっても効果(平均価格の低下)は結構しょぼい。

平均価格をもっと下げるには、「高いほど少なく、安いほど多く」をもっと極端にする。

それによる数量持ちすぎのリスクに対しては、資金追加ではなく数量を減らす方向で対策を検討する。

加筆:2020.05.27

購入時のレバレッジを調整すると、値動き次第では資金に対して数量を多く持ちすぎる可能性がある、ということを言いました。これは、例えば基本的にレバレッジ3倍でやろうとしているのに、蓋を開けたらレバレッジ5倍程度の数量を持ってしまっている、というような感じになります。
具体的に、持っている数量とその平均価格による時価評価額が、積み立てた資金の合計にしたして何倍なのか(=レバレッジ)がどう推移するのかが気になる方もいると思いますので、グラフの乗せます。

画像3

緑の線がレバレッジです。
緑の線の軸は、グラフの右側の軸で、上限が5.0、下限が1.0です。

基本的にレバレッジ3倍で運用しようというのがベースです。
最初のほうはかなり価格が安く、強気で多く買うので、レバレッジは4.5くらいにまで上がっています。
しかしその後、どんどん価格が上がっていき、その分1回の購入数量は減り、徐々にレバレッジは低下していきます。
そして最終低にはレバレッジは2.5くらいでフィニッシュ。
レバレッジが3より低いということは、最終的に持っている数量はレバレッジ3倍固定で続けた場合より少なくなった、ということです。

見てほしいのは、レバレッジが高いところ。この局面は、資金に対して多く持ちすぎている(レバレッジ3倍よりも)ので、リスクがその分高い状態です。こういう高リスク状態をどう管理して切り抜けるか。
ここは運用における重要な観点です。

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