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『君たちはどう生きるか』にみる母胎回帰_感想

 ベストセラー書籍を引用したタイトルからもっと説教臭いものを想像していたけど違いました。多分反語なんだと思います。「自分はこう生きた。君たちはどう生きるか、どう生きたっていい 」
 こう思っていた折、同じ意見が多数観測されました。ただ、難解作において多数派と同意見になるとちょっと心配になるのも事実、我ながら面倒臭いなと辟易します。

 さて今作ですが、率直に気持ち悪い描写が多くて結構好きです。その気持ち悪さの性質は大きく2つだと思っていて、①誇張的アニーメーション表現  ②生々しさと示唆  という具合です。とりわけ②について「母」にフォーカスを当てて感想を述べます。

 まず「母(母性)を探し求める少年」という物語の軸ですが、私が大学時代に夢中になった寺山修司の作品によく見られるものでした。よって、鑑賞中も「ここのママ妙に官能美強くないかな…」とか、「甘えからくるはずの母探しが、冒険を経て自立に近付くのは皮肉だよな」等と考えていました。(結局眞人も最後は上の世界で「友達を見つける」ことを選んだのでビンゴでした。ここは恐らく原作準拠かな?)
 このような具合で、中盤からこの作品も寺山が多く取り入れたようなエディプスコンプレックス的・母胎回帰的な要素があるのではと期待しながら観ていました。

 それがほぼ確信に変わった産屋のシーンの話になりますが、あれは日本神話が元になっていると考えています。
神話の内容を簡単に言うと
「産みの親(トヨタマヒメ)が子を残して去ってしまい、その子を妹が育てる。その妹というのがタマヨリヒメで、子にとっての叔母。そして子供は成長すると叔母であるタマヨリヒメと結婚しちゃう」

関係性・境遇にリンクする部分が多く、先のエディコン要素が窺えます…。意図的な配置だと思います。示唆の域を出ないのだけど、物凄く生々しい。

 そして最後、眞人に向かってヒミが放った台詞「あなたを産めるなんて素敵」

ひーー 無事、母胎回帰でした。
3連単的中です。

 終わりに、私と全くの同意見で、私より言語化が秀逸な方々の投稿を引用します。

以前、Quoraに、「なぜ日本のオタクカルチャーでは胎内回帰がブームなのですか?」という質問に、ゼノブレイド2を挙げて答える回答がベスト回答になっていたけど、君たちはどう生きるか、本作もこういった路線の中にあると思う。本作はそれが監督の作家性としてパーソナルに描かれているのが面白い
@kemohure

https://twitter.com/kemohure/status/1680402022825328640?t=abq1kGztoocRmv9aU7EnmA&s=19

「日本サブカル(オタクカルチャー)は一貫してマザコンなんですよ(略)とにかくテーマが「ママ」。身毒丸からゼノブレイド2まで、マザコンだらけ。日本サブカルの歴史はマザコンの歴史なんですよ(略)女性に対し理想の母を求める(略)(ゼノブレ2では)ホムラって、お母さん」Quora 胎内回帰はなぜブーム?
@kemohure

https://twitter.com/kemohure/status/1680402944729165826?t=bfvRFPWfgIi1Qjee-eOwfg&s=19



身毒丸!そう!寺山作品です。「お母さん、もう一度僕を妊娠してください!」です。

同胞万歳… ちなみにゼノブレのホムラは私も好きです。そして1つ目の引用文についていた引用ツイートにもまた痺れました。

日本カルチャーのマザコン傾向は
そもそも本当にサブカルに限った話なのか?
日本文学史上最高傑作と崇められてる源氏物語が、母に激似の父の後妻を寝取り
さらにこれまた母似の幼女を拐って育てる作品な訳で、その意味ではララァも綾波も君生きヒロインも
むしろこの上なくメインカルチャーの系譜
@JichaelMackson

https://twitter.com/JichaelMackson/status/1680469199976808451?t=6FsZ_g7yGz4pvGC6uaIniQ&s=19

天才ですね
私に還りなさい、ですもんね!

以上
読んでいただきありがとうございました。


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