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これで君も撮影スタッフだ!〜明日からできるイベント撮影必勝法〜

こちらの記事は mhidakaが建立した Advent Calendar 2023 の18日目の記事です。ヘッダー画像はこちらです。

はじめに

2015年くらいから今に至るまで色々な勉強会やイベントで撮影担当をさせていただきました。それこそPHP関連やJAWS-UG関連、それ以外にもiOSやらAndroidやら会社のイベントの撮影などを「撮影が趣味だから」という理由から趣味の範囲内で引き受けてきました。

しかし1つのイベントの開催日数が多くて現像の負担が重くなったり、普通に本業が忙しくなったり、自分自身がイベントを楽しみたいという背景がありまして、来年からは少しずつ撮影スタッフ業を減らしていき次の世代の人に譲ろうと考えております。Lightroomの現像でノイローゼになった時期もありまして、さすがに健康を害してまでやるのはちょっと違うかなということでご理解いただけますと幸いです。

今後撮影スタッフに挑戦するであろう人に機材選びとか撮影ポイントといった思考のメモを残しておこうと思いこの記事を書いています。

なぜイベントで撮影をするのか

全ては牧さんのこの記事に集約されています。そのイベントがどういうものであるかをスポンサーなどにわかりやすく説明するための資料が必要なんですね。言葉以上に雰囲気が伝わりやすいのが写真であると。

YAPC::Asia Tokyo 2009から主催者の立場にいるのだが、2009年に自分があちこちのスポンサーまわりをしたときにまず一番辛かったのが「YAPCってどんなイベントなの?」って言われた時に言葉でしか説明できなかったこと。「Perlの技術者が集まって話すイベント」ですって言っちゃったらそれでおしまいだよね。本当は熱気が溢れるイベントなのにそれだけだとただの演説みたいに聞こえる。そんなんでスポンサーに金を出してもらえる訳がない。

YAPC::Asia Tokyo 2013: 八木竜馬という男を紹介しておきたい。
http://lestrrat.ldblog.jp/archives/33276228.html

スポンサー目線からお話してみますと、そのイベントがどんな雰囲気なのかわからないとお金を出すのって結構難しかったりします。下記のような要素を考慮してスポンサーをするかしないかを総合的に判断します。

  • どういう分野のイベントなのか

  • どういうプランがあるのか (予算感)

  • コミュニティわいわい系なのかテックもくもく系なのか

  • グローバルなイベントなのか国内向けなのか

  • 自社とのシナジーはありそうなのか

  • スポンサーブースや登壇などの会場の様子

ちなみにYAPC等の撮影で活躍されている八木さん (プロカメラマン) は俺の心の師匠として慕っています。八木さんの写真を目標としてどんどん近づけるように頑張っていました。エンジニアの師匠はいないのにカメラマンの師匠はいるんだよなガハハ!

機材の準備

「イベントの撮影をするなら高級な機材が必要なんでしょ?」と思うかもしれません。ぶっちゃけ撮影スタッフがいないなら誰かがiPhoneで撮れば良いと思います。不慣れな人がカメラで撮った写真よりもiPhoneの写真の方が綺麗です。しかもRAWからJPGへの現像が不要でそのままみんなに共有できるというメリットもあります。なんなら動画もいけますからね。

「いやいや、ちゃんとした写真を撮って残しておきたいんですよ」と言う方もいるでしょう。わかります。俺もこっち側です。そういう諸兄姉の皆様方におかれましては予算の限り良い機材を用意してください。我々で経済を回していきましょう。

個人的にはいきなり購入するよりもまずはレンタルしてみるのがオススメです。個人で使ったことがあるサービスはビデオエイペックスさんで、全てがしっかりしてるので初めてレンタルする人でも安心して利用できます。利用したことはないですが、レンティオというサービスもありますね。

ボディ

カメラのボディはフラッグシップモデルになるほど重たくて大きくなり、下位のモデルになるほど軽くて小さくなります。個人的には多機能かつ高性能なフラッグシップモデルをオススメしたいところですが、手の大きさとグリップの厚さがあわなくてとても疲れた経験があるため、まずは家電量販店で実物を確認してみることをオススメします。メーカーは好きなものを使ってください。困ったらソニー・ニコン・キヤノンあたりのミラーレスを選んでおくとほぼ心配ないかと思います。

「そういえば◯◯ (メーカー名) のカメラは◯◯ (人名) さんが使ってた気がする」というインデックスがあるとなおヨシです。詳細はその人に聞きましょう。

レンズ

イベント撮影で必要なシーンはある程度限られてきます。下記が満たせればある程度なんでも大丈夫です。

  • 会場全体の風景 (受付とか会場入りとか大入りの部屋とか)

  • 登壇者

  • 配布されているノベルティ

  • スポンサーのロゴやロールアップバナー

  • 設営 / 撤収作業中のスタッフ

  • 懇親会

  • 集合写真

これを全て1つのレンズで高画質に撮ろうとすると24-300/f2.8とかいうありえないレンズが欲しくなってしまいます。なので、ある程度役目を分けたりして最適なレンズを選びます。

というわけでシチュエーション別レンズ使い分けを書いていきます。サンプル的な写真を貼っておきますので焦点距離などの詳細はEXIFを見てください。

会場全体の風景やノベルティを撮りたい!

会場に人がいっぱい入ってる様子であったり配布されているノベルティをズームした写真を撮るのであれば下記レンズが最適です。困ったら24-120でいいんじゃないですかね。俺は35-150を手に入れたので全てこれ1本で賄ってます。ただし集合写真を撮る場合には最低でも24mmくらい余裕があるとベストです。会場次第ではありますが35mmは狭かった。

  • 24-70mm (f2.8 or f4)

  • 24-120mm (f4)

  • 35-150mm (f2-2.8)

(サンプルは35-150です)

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人のバストアップを撮りたい!

登壇している人や何か作業をしている人にフォーカスした写真を撮るためには望遠レンズがあると良いです。70-200一択みたいなところがあるので、あとは予算とか腕力に応じてf2.8 (でかくておもい) かf4 (多少控えめな大きさ) を選びましょう。

  • 70-200mm (f2.8 or f4)

(サンプルは35-150です)

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広角も望遠も全部撮りたい!

全てのシチュエーションを1本のレンズで賄おうとすると厳しいものがあります。今愛用している35-150はとてーも便利なのですが集合写真の圧迫感でわかるとおり広角側が足りていません。28-200mmとかいうレンズもあるんですが、f値が暗いので必然的にISO値も増えてしまってザラザラしたノイジーな画質になりがちです。

なので、体力と腕力に自身があるのであればカメラを2台持つのがいいでしょう。前述の八木さんは24-70/f2.8と70-200/f2.8の2台体制で撮影に取り組んでくれていました。DroidKaigiのスタッフにもWカメラ体制の人がいるはずです。撮影スタッフの数と機材に余裕があるなら使用する機材の情報を共有して役割を分担するのがいいかと思います。1人2台は重たくて試したことないよ・・・。

撮影のポイント

事前設定

コロナ禍にて失われた技である「カメラの時計合わせ」をやりましょう。誰かのカメラの時計は絶対にズレています。時計がズレると写真をソートした時によくわからんことになります。基本を忠実に。かくいう俺もこの前まで忘れてたんだけどねガハハ。

シチュエーション

分担の話になりますが、誰がいつどの人 or 場所を撮るのか認識合わせしておくといいです。1人でベストエフォートならよしなにで良いんですが、複数人いて特定の人だけ撮れていないとかだと辛いですからね。ちなみに八木さんがいる場合は登壇者を八木さんに、スポンサーブースや参加者の交流風景を自分みたいな役割分担をしていました。

人を撮る角度については正面より斜めの方が雰囲気や立体感があって好きです。正面から撮るとのっぺりしがちなので、パネルディスカッション等でスライド (スクリーン) と一緒に撮る時くらいですかね。

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現像のポイント

現像大変ですよね。現像を頑張りすぎると細部まで気になってしまい自分で自分をノイローゼになるまで追い詰めてしまいます。凝り性の人は得に気をつけてくださいね。

露出とホワイトバランス

まずは露出 (明るさ) とホワイトバランス (色温度) をある程度認識合わせしておいた方がいいです。

露出の調整ですが、明るめの写真の方が各種媒体で紹介された時に映える可能性があるため、自分は暗めよりは明るめで調整しています。割と白飛び背景を許容するスタンスなので「被写体がわかりやすく明るい方が良い」としています。

ホワイトバランスの調整については諸説あるかもしれませんが、基本的には白が白く見えるように調整しましょうというスタンスでいます。オレンジがかった白が苦手なタイプなので調整に難航することも多々あります。

ホワイトバランスについては例えば撮影スタッフAさんは暖色寄りの写真が好き、撮影スタッフBさんは寒色寄りの写真が好きといった傾向があったとします。この2人の写真をアルバムに混ぜると暖色寒色暖色寒色暖色寒色暖色寒色暖色寒色で見ている方が疲れてしまいます。なのである程度は方向性を決めた方が見る側からしても優しいかと思います。厳密じゃなくてもいいです。

下記の写真は露出とホワイトバランスの調整後 (完成) と調整前 (撮った直後) の写真です。かなり印象が違うことがわかるかと思います。

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八木さんと自分で撮影をしていたときは基本的に八木さんの写真のニュアンスに合わせていました。と言っても現像に関して何か認識合わせをしたというよりは、八木さんという絶対的な指標に自分が寄せていく感じにしていました。めちゃくちゃ八木さんの写真を見まくったので雰囲気もニュアンスも覚えています。ただ、八木さんに比べて若干自分の方が寒色寄りかなという印象があります。

傾き補正

これが一番苦手です。今でも正解がわかっていません。しかし、ある程度正解にもっていった方が見栄えがよくなると信じて毎回手動で補正をかけています。色々と頑張って水平にしようとするんですけどもそれさえ合ってるのか自信がなくなります。

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差分わかりますか・・・?

ノイズ除去

撮影スタッフのみなさまはLightroomを使っているはずなので (偏見) AIノイズ除去をかけた方が良い結果を得られるかと思います。

Lightroomの新機能として2023年4月にAIノイズ除去機能がリリースされました。機能自体はとても高性能なノイズ除去機能に過ぎないのですが、これにより「ISO感度を上げても後でAIノイズ除去をかければいい」という運用となり、撮影スタッフはシャッタースピードとISO感度とノイズのジレンマに陥ることなく目の前の撮影にだけ集中することが可能になりました。昔は手動でISO値を切り替えていたのですが、最近は「ISO上限6400、シャッタースピードは1/60を確保」みたいなオート設定にしています。

AI の技術を利用しているノイズ除去で、画像からのノイズ軽減がより簡単になりました。ノイズを効率的に除去することで、高 ISO 設定で撮影した写真を強化できるようになりました。Lightroom のディテールパネルへのこの追加で、ノイズを自動および手動で軽減できるようになりました。

https://helpx.adobe.com/jp/lightroom-cc/using/whats-new/2023-3.html#denoise

EXIF見ればわかるんですけど、この辺はISO5000とかISO6400での撮影なんですよね。Z8のノイズ耐性が強いというよりはAIノイズ除去が優秀なのです。正直めちゃくちゃ時間がかかるんですけど、めんどくさがらずに適用しましょう。ザラザラの写真よりトゥルトゥルの写真の方が見る側も被写体の人も嬉しいはずです。

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まとめ

撮影スタッフを目指す諸兄姉に向けた記事でした。この記事を読めば誰でも明日から撮影スタッフになることができます。めざせ撮影スタッフマスターです。ビガビー!!

とはいえ、理論だけではいい写真は撮れません。良い写真を撮るためにはたくさんの失敗も必要です。機材が良いものになったからといって良い写真が撮れるかというとNOです。

実際自分も今に至るまで数万回・十数万回のシャッターを切ってきたわけですが、公開している写真の裏には失敗した大量の写真が積み重なっています。仕事じゃないので過度に失敗を恐れずぶっこんでいきましょう。一期一会のイベントだから失敗できないという恐怖や萎縮に負けないでください。数年後に当時の写真を見て「あの頃はひどかったなぁ」と笑えるくらい余裕がある方が撮影スタッフには丁度いいんです。

というわけで最後に師匠のサイトを宣伝して終わりです。納品終わってないやつが死ぬほどあるけどなんとか頑張るます!!