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ショートストラングルのヘッジ方法考察

■要約
・ショートストラングルダイナミックヘッジにおいて、ヘッジポイントを固定値とし、そのポイントを先物価格がクロスするたびにヘッジON/OFFを繰り返す。このシステムのパフォーマンスをバックテストしてみた。
・結果は・・・ヘッジ売買回数と損益に負の相関が見られる。全体にはイマイチでした・・・

以下、詳細です。

■検討の概要
コミュニティメンバからショートストラングルダイナミックヘッジにおけるヘッジ方法の提案があったので検証してみた。

まず、ショートストラングルダイナミックヘッジのキモはオプション売の利益をヘッジでできるだけ消さないようにする、ということになる。なので、効率的なヘッジ方法が必要になる。

有名な方法としては、デルタヘッジがある。例えば、デルタ=0.1の変動に従って、先物ミニを利用してヘッジを出し入れする方法。ただ、この方法は相場の上下動でヘッジの出し入れが頻繁に発生し、ヘッジ解消時の損失が積み上がることによりオプション売の利益が食われていくことが多い。さらに、SQ日が近づいてくると、デルタの感度が低下する(?)ことで、ヘッジが効きにくくなる問題もある。

メンバからの提案は、ヘッジONOFFのポイントを例えばオプション売ポイントの200円内側などに固定し、そこを先物価格が通過するたびにヘッジのONとOFFを繰り返す方法。理屈としては、ヘッジ注文がロス無く約定し、かつ、手数料を無視すればヘッジによる損失は無くなるはず。

現実には約定の際に少なくとも1ティックロスすること、手数料が発生すること、さらには、個人投資家のシステムでは高速取引は現実的では無いなど課題が多い。結果的にヘッジポイントを往復するたびにロスが積み上がっていくことが想定される。
(実際に手動でヘッジを出し入れするとなると、分単位での出し入れも不可能と思われる)

つまり、あらかじめ定めたヘッジポイントに先物価格が近づかないことがポイントとなる。あるいは、近づいても素早く素通りしてくれること。
ただし、そんなことは予想出来ないので、バックテストで様子を見てみることにした。

■バックテストの条件
・期間:2023年1月限~9月限、2022年1月限~12月限
・オプション売:デルタ0.25のコールとプットをSQ日の翌営業日15時に売る。
・決済:基本はSQ日前日の15時に決済する。ただしオプション売がロスカットルールにかかった場合は期中に当該オプション売をロスカットする。(ロスカットルールは非開示)
・ヘッジポイント:コール、プットそれぞれのオプション売価格から、0円、100円、200円、OTM側にシフトした位置とする。コールとプットのシフト量は同一とする。
・ヘッジ方法:先物ミニ5分足チャート終値でヘッジONOFFを判定する。本来は1分足(あるいは秒足)が望ましいが、システムをエクセルで構築している関係から、計算負荷が大きく5分足が限度なため。なお、2022年1月~3月に関して、1分足チャートと5分足チャートでの傾向を比較したが、基本的な様相は同様であることを確認済み。
・ヘッジ約定ロス:往復で10円ロスするとする。
・手数料:考慮しない。

■確認すること
・ヘッジポイントのシフト量と各月損益、各年総合損益の関係
・ヘッジ売買回数と損益の相関

■結果
(1)2022年シフト量0円:年間トータル損益 -22,712円

2022年 シフト量0円
ヘッジ売買回数 2022年シフト量0円
ヘッジ回数損益相関 2022年シフト量0円

(2)2022年シフト量100円:年間トータル損益 -6,312円

2022年 シフト量100円
ヘッジ売買回数 2022年シフト量100円
ヘッジ回数損益相関 2022年シフト量100円

(3)2022年シフト量200円:年間トータル損益 -7,262円

2022年 シフト量200円
ヘッジ売買回数 2022年シフト量200円
ヘッジ回数損益相関 2022年シフト量200円

(4)2023年シフト量0円:年間トータル損益 15,416円

2023年 シフト量0円
ヘッジ売買回数 2023年シフト量0円
ヘッジ回数損益相関 2023年シフト量0円

(5)2023年シフト量100円:年間トータル損益 3,541円

2023年 シフト量100円
ヘッジ売買回数 2023年シフト量100円
ヘッジ回数損益相関 2023年シフト量100円

(6)2023年シフト量200円:年間トータル損益 1,316円

2023年 シフト量200円
ヘッジ売買回数 2023年シフト量200円
ヘッジ回数損益相関 2023年シフト量200円

(7)ヘッジ売買回数と年間損益の相関

ヘッジ売買回数、年間損益
ヘッジ売買回数、年間損益相関

■考察
・2023年シフト量0円では年間(9ヶ月間)トータル損益がプラス15,416円と十分な好成績となったが、それ以外はNG。特に2022年はシフト量にかかわらず、すべて大きなマイナスとなった。
・2023年シフト量0円以外は、各限月毎の損益のバラツキが大きい。
・ヘッジ売買回数と損益には負の相関がありそう。特に2022年は明確。
・年間トータルの損益とヘッジ売買回数の相関も明確。これは単純に約定ロスがヘッジ売買回数に正比例して増加することの影響か。

以上から、現時点ではヘッジポイント価格を決めた上で、先物価格のクロスによるヘッジONOFF方式の運用は難しいと思われる。

追加アイデアとして、ヘッジポイントを複数箇所に分散するアイデアも提案されているが、大局的には今回確認された内容と大きな違いはない気がする。なぜなら、ヘッジポイントを先物価格が横切れば横切るほど、損益は悪化する。そして、ヘッジポイントを先物価格が何回横切るかどうかは予測できない。仮に分散したとしても、今回確認したシフト量3段階(0円、100円、200円)のような分散が想定され、その中に2023年シフト量ゼロ円を除いて、劇的に損益が改善する場面が存在しない。

この方式を改良するとすれば、ヘッジポイントを先物価格ができるだけクロスしないようにヘッジポイントをコントロールすることである。つまり、何らかのパラメータからヘッジポイントをクロス回数が少なくなるよう、あらかじめ決めることが出来れば良い。一つの可能性として、ボラティリティ指数を利用し、ボラティリティの大小によって、ヘッジポイントを設定する方法が思いつく。
ただし、オプション売のOTM側ではヘッジをなくすことはムリなので、ITM側にヘッジポイントを置くことになる。
ということは、そもそも、究極的にはヘッジしないことと等価なのではないか。となると、何か根本的に違う気がしてくる。。。

ただ、1年9ヶ月だけのデータではあるが、年間クロス回数が120回程度より小さければ年間プラスになる可能性が相関グラフから読み取れる。これは何か可能性があるのか無いのか。。。

あとは、現実問題として手動で売買することは不可能と思われるので、計算機によるシステムトレードが必須となる。

今日は以上です。



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