なまくら賢者はなまくらなりにまほやくのリケを生暖かく見守ってる

あんまりゲームは得意じゃないのだけど、
ここ数年は友人たちの勧められるがままに気になったゲームをプレイしている。

シナリオを進めていくタイプのゲームをいまいくつかやっていて、その中でも結構展開が気になっているのが「魔法使いの約束(以下、まほやく)」だ。
ごく最近始めたばかりで(今年の5月くらい)、1.5部を読んでから一気に展開が気になりコツコツ育成しながらやっと2部を読み終えたのが一昨日のことである。

気になるとは言っても、私には他にも沼があるので、毎日ログインしてるわけでもなく気が向いた時、または友人から読んでほしいと切実に訴えかけられた時にシナリオを進める程度の、なまくら兼業賢者でしかない。

まだ推しはいないものの、全体的キャラクターたちの雰囲気が結構好きで、
魔法使いがいる世界で、異端とされる魔法使いの理解しがたさが、リアルな社会と似ていてとても気に入っている。(それまで彼らがそれぞれ生きてきた背景を思うとそうなるのもやむなしだな、と思えるところまでそっくりだ)

その中でも特に「なんじゃこいつ!?」となったのは、リケだ。なんなら初めてみた時は、周りにこういう人がいたら避けてしまうなと感じたほどだ。

年の近そうなミチルと比べてみてもかなり異様に思う。
ミチルは年相応(というと語弊がありそうだけど)の感情の起伏と、素直なまま感情を表に出していると思う。
強くなりたい気持ちも強いし、自分がまだ弱いことをわかってるけど焦る気持ちも表情や行動に直結している感じがする。
周りの友達はすごいけど、自分は何も褒められたところがなく、焦燥を感じてしまう若者らしさが分かりやすい。

一方でリケは、感情の起伏こそあれ、そのミチルのように態度や表情、声の抑揚にあまり現れていないように思える。
今怒ってるんだな、嬉しいんだな、悲しそうだな、はストーリーを読んでいるとわかる。

ただ、ボイスを聞いていると嬉しそうな時も怒っている時も一定の抑揚なのだ。育成で成功したときに「やったー!」と声が上がるが、喜びがわかりやすいとはいえ、それでもどことなくどこかにストッパーがあるように感じる。

表情の変化も他のキャラに引き換え少々乏しいような気がする。声の一定さと合わせ技でそう感じるのかもしれないが。
特に悲しかったり怒っていたり、負の感情の下限がわかりづらい。

これは個人的な意見だが(この文章に個人的な意見じゃない部分などないけど)、
人間、誰しも素直に感情を表せるわけではない。
笑うのが苦手な人もいれば、あまり怒れない人もいる。人と付き合う中で今自分の持っている感情をTPOに合わせてうまくコントロールしたり、表に出過ぎないように加減することだってある。

ただ、そんな時があっても
例えば親しい心許せる間柄の人の前や、自分1人でいるときには自分の気持ちに素直でいることができると思う。
嬉しいときや喜ばしいことがあったときに人前で素直に感情表出できなくても、家に帰ってからガッツポーズをしてみたり、
大きな失敗をしたとき、みんなの前では気丈に振る舞ったけど喫煙室で1人いるときに涙が溢れたり(ちなみに私は喫煙者ではない)。

自分が感情を表に出せる状況がそれぞれあって、せめてそのときにでも感情をむき出しにできなければかなり辛いはずだ。
特に、辛いとき・悲しいとき・怒っているときに表に出せないのは生きていく上で非常に厄介になろう。極めて不健康だと思う。

これはなまくら兼業賢者である私の想像だが、
こうなったのは彼の生い立ちにあるのではないかと思う。
ずっと宗教団体で神の寵児(はちょっと盛りすぎかも)として育てられてきたリケはきっと厳しく育てられたのだと思う。
信者を不安にさせないように感情を表にださないように、市井の享楽を味わって怠けないように、ずっと慎ましくあるよう言いつけられてたのかもしれない。
あるいは魔法使いという異端を、恐怖の対象を完全にコントロール下に置くために、洗脳されていたの可能性も拭えない。

幼い頃からそんなふうに躾けられてきたら、うまく怒れないし、悲しめないかもしれない。
泣くことすら叶わなかったかもしれない。
なんとなく、不憫だな…と思ってしまう自分がいる。もっとミチルときゃっきゃうふふしたらいいのに。リケはそれまでの自分の人生を恥じたり恨んだりしたりしていないというのに。

ただ、リケは強固な教えのもとに育ったからか、あと周りの人に恵まれていたからか、多少抑圧状態に置かれていたとしても、きちんと意見の言える非常に偉い子でもある。
神の存在や司祭の言葉を信じ、
加えて教団の教えに沿わないことや矛盾することには臆せず異を唱えることもできるし、
新しい価値観に出会えば必ず理解しようとし、己の考えをきちんとアップデートできてもいる。


もう一つすごいのが、
新しい価値観に触れれば過去の自分を否定してしまうことはよくあることだが、
リケはそれまでの自分が持っていた価値観を否定することなく、その価値観に吸収させる形で新しい自分なりの解釈に変えているところだ(2部で中央の魔法使いの訓練の視察が入った回とかみてほしい)。

これはリケの素直さの成せる技でもあり、
中央の魔法使いたちーーオズ、アーサー、カインーーがリケの周りにいたからこそ、できたことだとも思う。
もし北の魔法使いだったら絶対にこうはならなかったか、あるいは闇堕ちしてると思う。
南なら溶け込めそうだけど、猪突猛進なところがあるからやっぱりリケは中央なんだろう。
本当にありがとう、中央のチームアダルトたち……。

そんなリケが市場で買ったお菓子や、ネロの作ってくれたご飯を食べて美味しそうにしたりおどろいたりして、新しい環境になれようとしているリケを微笑ましく思っている。
リケは教団にいた頃より今の方が幸せそう、とかそんなことは言えないし分からない。
ただ、少なくともあの若い子が日々新しいことを学んで、自分を否定することなく自己研鑽に励みながら、楽しく生きてる姿を好ましく思う。


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