How to be a Soulful House DJ ~ハウスDJの手元と脳内~

更新履歴

2023.09.18:記事を公開しました

はじめに

こんにちは。Tosh K.と申します。
今回はnoteをもう少し発信の場として活用するために、
自分がDJをしている、または準備についての心掛けや
思考について振り返り、まとめてみることにしました。

これからDJをはじめる人や、今DJをしている人、
今後もハウスのDJを続けていきたいと思っている人に、
参考となる内容にしたいなと思っています。
あくまで1ジャンルを7年擦りまくってきた人の見解ですので、
ふーんそうなんだ、ぐらいで読んでいただけると助かります。

なお、この記事の後半は有料エリアがあります。
前半の無料エリアはハウスの魅力、曲の集め方など。
ハウスのDJってどうすれば?という方に読んでもらいたい情報を。

後半の有料エリアでは私が出演時によく使うテクニックや、
テクニックを実践するための楽曲整理方法など、
これからもハウスDJを長く続けていきたい人に役立ちそうな事柄をまとめています。


自己紹介

2023年最新版プロフィール写真。
Neo 和Dining MiRAI ニネ店長撮影。

Tosh K.(トッシュ・ケー) 1990年5月生まれ独身同性愛者。
中学生のころに始めたbeatmaniaIIDXからハウスミュージックを知り、
00年代の和製ハウスから多大な影響を受けつつ、2016年からDJをスタート。
現在DJ7年目。音ゲーは20年目。

名古屋栄のSound Bar MiRAi(現在のMIRAI NAGOYA)を拠点に、
Houseや広義のLounge Musicを中心としたイベントに出演。
ユニット"Sunrise"の相棒Tockと第1月曜にレギュラーイベント
「Sunriseと愉快な仲間たち」#さんゆか を2022年のMiRAi一時クローズまで
毎月開催。
「Lounge Musicを科学する」と称して、ハウスやテクノに限らない
多様なジャンルのゲストに"Lounge Music"を強制するレギュレーションと、
出演者や来場者が共同出資して行う特大ビュッフェで人気を博した。

MiRAiクローズ後は特定の拠点でのオーガナイズは行わず、
お呼ばれDJとして愛知県内外で気ままに活動している。
Deep/Soulful/Disco/Latinなど、数あるハウスのサブジャンルを歌モノを中心にまとめあげた選曲が好評。
MixcloudにてDJ Mixを多数アップロードしており、
毎年夏らしいハウスに焦点を当てた「Summer House」シリーズが
リスナーから高い評価を得ている。

使用機材等:
自宅環境:iPad(djay)→DDJ-RB(現在)
ヘッドホン:PHONON 02 stick
現場:USB(rekordbox)、レコード

Twitter:@Tizona_dEl_Cid
Instagram:@tizona_del_cid
Mixcloud:

過去に出演させていただいたり、これから出演させていただくイベントの数々
いつもありがとうございます。

Soulful House ってなんなんじゃい

ではまず、タイトルにもある「Soulful House」とはなんなのか?
自己紹介にもSoulful House中心に色々やっとるよ的なことを書きました。

Googleで検索してみてもこれだ!という定義は見つかりません。
が、配信販売サイトや、楽曲制作用のサンプルパックでは
「Soulful House」をうたうモノが確かに存在しています。

配信販売サイト「Traxsource」における
サブジャンルにも存在している

こちらのサンプルパックの説明が、
なんとなく核心を突いているようなところはありますね。
初期のクラブ・シーンを思わせるレトロなムードにソウルフルなフレーズを重ねたディープ・ハウス
クラシックハウス・マナーとグルーヴを忠実に取り込んだ深く上品な本格派ハウス

ページ内で公開されているデモサウンドを聴いても、確かに!
自分がいつもジャケットにいるおばちゃんだけを見て購入しているハウスのニオイがします。
※歌が上手いおばちゃんがジャケットにデカデカとうつっている曲は、
 質の高いSoulful Houseであると界隈でも評判です。

自分はSoulful Houseについて、ハウスミュージックがこれまでに
産み落としてきた様々なサブジャンルに
「ソウルフルなフレーズ」(ボーカルを含む)というくくりで
またがって存在しているものだと考えています。
Soulful Houseというジャンル付けがされていたとしても、
背後に存在するグルーヴは様々で、非常に多様性に富んでいるジャンルだといえます。

また、レトロ系のサウンドを持つハウスの特徴として、
EDM文化を通過していない曲展開」があげられます。
これは近年のクラブミュージックの鉄板となっている「ビルドアップ」や
「ドロップ」が存在していない、というものです。
もちろん、こういった鉄板展開を持つハウスも存在しています。
多様性~!!

Soulful Houseの魅力

では、よくわかったようなわかんないようなSoulful Houseですが、
その魅力はどこにあるのでしょうか。
Soulful HouseでDJをする楽しさは何なのでしょうか。

これは私が様々なイベントに出演させていただく中で気づいたのですが、
Soulful Houseは日常・非日常を問わずあらゆるシーンにフィットしてくれるということです。

昨今、DJはクラブだけではない、
いろんな場所に存在するようになりました。
同様に、お客さんもその場所によって足を運ぶ目的はさまざま。

音楽も、プレーヤーの前で腰を据えて楽しむものではなくなっています。
手元の端末からインターネットを通して、
私たちは音楽をいつでも聴くことができます。

クラブで音を楽しんだり、踊っている人たちへ。
レストランで食事を楽しんでいる人たちへ。
カフェでおやつを楽しんでいる人たちへ。
バーでお酒やおしゃべりを楽しんでいる人たちへ。
勉強や掃除の作業用BGMが欲しい人たちへ。

そのどこにでも、Soulful Houseはフィットします。
Soulful Houseは、我々の日常に溶け込んで、日々を少し色鮮やかに過ごさせてくれる、そんな音楽です。

ですから、Soulful HouseのDJは、自身の膨大なライブラリーの中から、
どういったお店か、お客さんはどういう人たちなのか、
色々考えながら、ふさわしい雰囲気を作り上げるDJをします。
お店やお客さんにとって最適解となる「居心地のいい空間づくり」に
知恵を絞るということに、私は最も魅力を感じています。どうでしょうか。
ハウス以外でもそうかもしれないけど。

そしてSoulful Houseは歴史が長く、数多の楽曲がリリースされてきました。
現在もリリースは脈々と続いているわけですが、そういった中で、
リリースされた年代にとらわれない選曲で、
様々な楽曲の新しい魅力を引き出せるDJになりたいですね。

DJ中って何してるの?

さてここからは実際何をしてるの?という話になります。
DJ中の基本的な動作は、
今スピーカーから出ている曲が終わる前に次の曲へ繋ぐ」です。
そのつなぎ方がジャンルによって非常に様々なわけですが、
Soulful HouseのDJは基本中の基本を忠実に実践している方が多いです。
というのも、Houseをはじめとするクラブミュージックには、
DJのために用意された「のりしろ」のようなパートが存在しており
2曲の「のりしろ」同士を重ねることで、
スムーズに曲をつなぐことができるようになっているのです。

ハウスミュージックの構造を見てみる

というわけで、私の大好きなこちらの曲の構造を見てみましょう。
歌の上手いおばちゃん(?)がジャケットの、スタンダードなSoulful House。

Booker T, Kings Of Soul - If You Take My Love (Michael Gray Vocal Remix)

下の画像は、この曲をDJソフト(rekordbox)で解析し、
わかりやすいようにA~Fのしるしをつけたものです。

めっちゃ細いので拡大してくださいね

Aパート(図中のA~Bの間)は、ドラムの音しか使われていません。
少し淋しい。
Bの印を過ぎたところで、ベースが入ってきます。
そこからCへ向けて少しずつ音が増えていく…というのが、
レトロなハウスによくある特徴的な構造です。
Cになるとドラムが消え、感動的なピアノと力強いボーカルがスタート。
いわゆる「ブレイク」というやつです。
この曲はここからAメロ→Bメロ→サビ…と進んでいきます。

そして後半。
Dからはいわゆるラスサビです。Eを過ぎるとボーカルはいなくなり、
ベースとドラムだけになります。そしてFからは冒頭と同じくドラムのみ。

つまりこの曲は、「ドラムだけ」の状態からスタートして、
少しずつ音が増えていき、歌が入って大盛り上がり、
そして今度は音が減っていき、最後は「ドラムだけ」で終わるわけです。
この「ドラムだけ」のパート、図中のAとFが
DJにとっては「のりしろ」のような役割をしているわけですね。

ハウスDJは、この「のりしろ」をもつ楽曲たちを、
速度を合わせて「のりしろ」同士を重ね合わせ、
今スピーカーから流れている曲と次の曲を少しずつ入れ替えていくだけで
基本的な部分は成立します。

そしてこの「少しずつ曲を入れ替える」手法は、
文章で説明するのも野暮ったいので、大変わかりやすく解説されている
こちらの動画をご覧ください。

・ハウスにおける「のりしろ」構造の把握
・フェーダー、イコライザーを使った曲同士を入れ替える技術
この2つを知ったあなたは、もう今日からハウスDJです。

なお、音鳴つむぎさんのチャンネルには、他にもDJ MIXの動画など、
非常に参考になる動画がたくさんアップされています。
動画やMixcloudで完成しているDJ MIXを聴いたり、
イベントで他人のDJを見たときに、
「こういう聴こえ方になるにはどういう技術を使ってMixをしたらいいのか?」を考えることが、DJのスキルアップに繋がります!

曲はどうやって集めてるの?(1.デジタル編)

さて、DJたるもの曲を買わなければ始まりません。
むしろ曲を買うことが始まりでありすべてであると言っていいのかもしれません。
実際に筆者は金欠だとかドル相場が…だとかで買い控えをしたところ、
自分のDJに納得がいかなくなり節制をやめたという過去があります。

冗談半分に聞こえるかもしれませんが、
新しい曲を買う=使いたい曲が増える=モチベーションアップ なのです。
新しい曲(≠新譜)を買うことは、未知なる曲を使った新しいDJのアイディアを得ることと同義です。

ということで、ガンガン買ってじっくり聞いて研究した人はDJがうまい!
という前提のもと、ここでは曲のDigスポットを紹介していきます。

Beatport

ハウス以外のジャンルもこんもり取り扱ってるスタンダードな配信サイト。
ドル決済。

https://www.beatport.com/

アカウントを作成しておくと、時折メールで割引クーポンが飛んでくる。

Soulful系のハウスが欲しい人は「Deep House」「House」「Funky House」
あたりがオススメ!
他にも現代的な「Tech House」や「Progressive House」もあります。
いろんなハウスを横断するようなDJをしたい人はこちらがオススメです。

Traxsource

昔ながらのDeep House的サウンドが中心のサイト。
ドル決済。

こちらもそこそこの頻度で割引クーポンが。
しかも何気に30%オフの頻度が高い!

こちらはDeep Houseを中心に、より細かくサブジャンルが分かれています。
BeatportでDeep Houseに分類されてるような歌モノは「Soulful House」に。
他にも4つ打ちじゃないジャジーなサウンドも取り扱い中。
筆者のような生音クロスオーバータイプのDJはこちらがオススメ。

Bandcamp

オールジャンルな配信+αな販売サイト。
クリエイターへ向けて支払金額の上乗せができたりする。

大手レーベルでも対応してたりしてなかったり色々ですが、
国内の自主製作系レーベルはかなり対応してます。
俗にいう同人レーベルですね。
ディスコグラフィ全部まとめ買いで割引とか、特定の日は売上をクリエイターに全還元とか、いろんなキャンペーンがあります。

あとで触れますが、実はレコードやカセットテープも買えたりします。
詳細は後述のフィジカル編で。

iTunes Store

Apple端末をお使いの方にはお馴染みiTunes Store。
最近はサブスクのApple Musicの方がみんな知ってるかもですね。

ここのポイントは世界各地でポップスとしてリリースされている楽曲が
購入できること。
クラブミュージック専門サイトでは扱っていない曲もあります。
筆者は主にK-POPやJ-POPをここで買っています。

あとは過去にCDで販売されて、ストリーミング配信されているものは
大体ここで買えるイメージです。
あと密かに配信用コンピレーションなんかも大手は出してたりして、
CDリリースでは入りきらないレコード限定RemixやClub Mixなんかも
詰め合わせたものを売っていたりします。
リンゴだしな…とか言わずに一度見てみるのをオススメします。
たまに権利や契約の関係でおま国されてますが。

筆者も最初はiTunes Storeをナメていたのですが、
Amazon Musicで買ったものが、一時期どいつもこいつも
DJで使うと妙に高音がこもって聞こえたことがあり、
(勘違いかもしれないけど)
Amazonやめやめ!となった時に候補を探してたどり着き乗り換えた、
という経緯があります。
ちょっと調べてみたらAmazon Musicの方がビットレートが低い状態で
販売されているそうです。なるほど~。
あんまり深く触れると、オカルトや宗教に片足突っ込むので
ここでは触れません!

曲はどうやって集めてるの?(2.フィジカル編)

ということでお次はCD/レコード編です。
これは媒体別というよりは今普通に新品が手に入るものと、
そうでないもの(ここでは"廃盤品"とします)で分かれますね。

新品が手に入るもの

CDならばお近くのショップでどうぞ!
CDは取り込みが面倒ですが、ジャケットを飾ったり、
サイン会に持っていくとサインがもらえたりと、
フィジカルで持っている意味はまだなくなり切っていないと思っています。
あとディスクが吹っ飛んだ時も現物があれば再取り込みでOK。
コレクションが多いほど絶望的な作業になりますが…

レコードの場合はジャンルごとに専門店がありますね。
大手のディスクユニオンさんはジャンルごとにリアル店舗もありますし、
店舗受取システムなんかもあって便利。個人情報漏れたけど。(被害者)

ハウス系の専門店としては渋谷にあるLighthouse Recordsさんが個人的に好きですね。お店が素敵だったのもありますが。
入荷品紹介のキャプションが丁寧でいつもチェックしています。

そしてデジタル編でも触れたBandcampでもレコードが買えます。
販売形式のところが「mp4+Vinyl」みたいになってるやつは、
DLデータとレコードをまとめて買うことができます。
たまにテストプレスのようなマニアックな形式も見かけます。
こだわる方はこちらもオススメ。

廃盤品

CDやレコードはどーーーしてもいつかは新品が手に入らなくなりますので、
クラシックハウスなんかは中古品を探します。主に、
・中古ショップ
・ヤフオク
・メルカリ
あたりを使って探しています。

中古ショップはですね、地元名古屋がどうやら豊富らしく…
いつもお世話になっているのはバナナレコードさんです。

大須にはもう1店舗!Greatest Hitsさんです。
たまにセールもやってます!品数はオールジャンル超豊富。

中古ショップはwebでもあります。
筆者もまだまだ探してるところなので、オススメのショップ教えてください。

無料エリアは以上です

というわけで、Soulful Houseってなんじゃ!というところから、
基本的なプロセスと、曲の集め方についてまとめてみました。
特にレコードの集め方なんかは、自分もまだまだすぎて
逆に教えてほしいぐらいなのは申し訳ないのですが。。。
随時加筆予定です、Twitterとかでいろんな情報教えてください。

ここから先は有料エリアです。
自分が実際にDJ中考えていることや、それを実現するために
どうやって楽曲を整理しているかなど、
もう少し踏み込んだ内容になります。
よろしければ読んでやってくださいませ。

内容
・筆者がDJ中に意識しているポイント
・↑に合わせたcueの仕込み方
・すぐに使えるALL TIME BEST  HOUSE8選

ここまでお読みくださりありがとうございました。

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