【本当によい教育を実現するための覚書】所収「アイドルについて」

※本論考は2016年発行の同人誌『本当によい教育を実現するための覚書』の巻末に、補論として収録されたものです。教育というテーマに絡めて、アイドルという分野で活躍するにはどうすればよいか、あるいはオタクとしてどう振る舞うべきか、などを自分なりにまとめた文章です。2016年12月時点での内容になっている点にご留意ください。本稿で言及した3人のアイドル(当時)についても、大きく状況が変わっているわけで、5年という月日がいかに大きなものかということを感じます(たとえば僕自身、東京を離れており、頻繁にアイドル現場に行くことがなくなってしまいました)。というわけで、本エントリの終わりに最新情報を加筆しています。


補論「アイドルについて」

大学を卒業してからの10年間、放蕩の日々の中でアイドルについても考えてきました。結論から言うとアイドルヲタクだったというわけですが、その中でも特に地下アイドルに興味があります。始めはまだメジャーではない頃のAKB48にハマり、AKB48が国民的アイドルに近づくのに伴って、地下アイドルの世界にのめり込むようになりました。AKB48が元々地下アイドルだったことを考えれば、ある意味僕の関心は一貫していると言えるかもしれません。持って生まれた圧倒的な才能や、家柄や、環境がない場合、それでもエンタテインメントの世界で活躍するにはどうするか。その命題に立ち向かっているのが、現在の地下アイドルの子たちであり、かつてお笑い芸人を夢見て上京してきた僕自身でした。だから勝手にシンパシーを感じているのかもしれません。

もし若い女の子がアイドルを志すなら、今ならハロプロなりAKB48グループ・坂道グループなどに応募するのがまずは第一歩でしょう。しかしそれは限りなく狭き門だ。だから落選したところから考える。今やアイドルブームが到来して久しいから、地下アイドルは名乗れば誰でもなれる時代です。しかしそれは、成功するかどうかとは関係がない。そんな中で、一部の選ばれた人間でない場合、どのように振る舞うのが最もアイドルとして成功する可能性が高いのか。アイドルとしての有効な生存戦略とはどのようなものなのか。そんなことを考えています。

■アイドルに必要なものとは

これはあくまでも僕個人の価値観ですが、やはり日本のアイドル文化はエンタテインメントショーとしては特異なもので、ダンスが上手いこと、歌が上手いことは全く求められていないように思います。最低限、振り付けに遅れない程度のリズム感と、休みの日にボイストレーニングでもしてくれれば、アイドルとして必要なスキルには事足りるだろう。歌唱を魅せることはやはり歌手やアーティストと言われる人たちの本分だからです。ではアイドルとは何を魅せているのだろう。それは僕の考えでは「愛される力」「愛嬌」「努力」ということでしかない。

ここで今現在、日本で最も成功していると思われるあるアイドルについて考えてみましょう。それはHKT48の指原莉乃ちゃんです。所属こそHKT48ですが、今やAKBグループを代表する出世頭で、バラエティでは見ない日がないというほどの売れっ子です。AKB48選抜総選挙では前人未到の2連覇中である(追記:3連覇ののちに勇退)。僕はもうずいぶん前から彼女のファンで応援しているのですが、彼女がかつて「笑っていいとも!」に出演した時に、小学生100人の前で3分間の授業をするというコーナーで話していたことがとても印象に残っています。
それは「AKBになる方法」というタイトルでした。今や小学生女子の、将来の夢の上位がアイドルだと聞きます。そして立場上「AKB」の名前になっていますが、これは「アイドルになる方法」と言っても差支えがない内容だったと思います。そこで指原さんは何を言っていたか。それは3つのポイントでした。
・歌やダンスの練習をしなくても良い
・人見知りはダメ
・順位付けされることに慣れる

少しだけ補足すると、これはもちろん努力しなくてもいいというわけではなく、一生懸命やった結果がぎこちないものだったとしても、それはマイナスにはならないということ。むしろプラスになる。スキルよりも一生懸命さが大事。そして握手会などでは目の前のファンの人としっかり目を合わせて話すこと。人見知りという言い訳は通じないということ。そして順位付けされてもへこたれない強い心を持つ、ということです。それはまさに、アイドルとして生きていくという強烈な覚悟を持つことです。
指原さんもまた、歌唱力やダンススキルを必須なものとはしていない。必要なのは努力と振る舞い方です。そう発言する彼女が現在の日本のアイドル一番の売れっ子であるならば、これがほとんどの答えであるように思います。では、努力というのは意志の問題なのでよいとして、振る舞い方をどのように獲得していくのか。

■知性を磨くしか生き残る術はない

結論はやはり、どんな分野においても「勉強するしかない」ということです。もちろんここでいう勉強とは、学校の偏差値やテストの点数を上げることではありません。世の中の成り立ちについて、仕組みについて知ること。目指すべきビジョンを持ち、自分を相対的に見つめる視点を養い、立ち位置について勉強すること。それを日々継続していくことです。かつて僕は同人誌を作るときに、「もしドラ」著者で秋元康氏の弟子でもあった岩崎夏海氏にインタビューをしたことがあります。その際に「アイドルを目指す若い子達にどのようなアドバイスがありうるか」という質問をしたら、「知性を磨いて覚悟を持つことしか、生き残る術はない。おバカタレントには需要がないんですよ」とハッキリ言っていました。ありのままで、バカをバカのままで全面に押し出すというのでは、とてもではないけど戦えないのです。少なくとも芸能界はそのような甘い世界ではない。愛嬌が大事ですが、それは自然発生的に生まれるものではない。「愛嬌がある」とはどういう状態なのか、真剣に勉強していくしかない。それが分からないというのなら努力が足りないか、そもそもセンスがないだけです。指原莉乃さんの場合は、かつて自分がアイドルヲタクだったころからその勉強は始まっていたといえるのかもしれません。なぜなら、人に愛されるアイドルがどういうものかということについて、体験を伴いながら四六時中考えていたということですから。


■2人のモデルケース

僕自身も約10年間、様々なアイドルを見て推してきました。その中でおぼろげながら、長く続くアイドル、そうでないアイドルが見分けられるようになってきたように思います。指原莉乃ちゃんはそのうちの一人ですが、そんな中で現在僕が推しているアイドルの中でも、特に理想的だと考えているある2人のアイドルを紹介したいと思います。

●仮面女子:アリス十番 桜雪

まず一人目が仮面女子:アリス十番の桜雪ちゃんです。仮面女子は「最強の地下アイドル」を自称するほどのライブアイドル界では異端な存在ですが、その中で桜雪ちゃんといえば、最近では小池百合子都知事の「希望の塾」に現役アイドルとして合格して話題になったり、「クイズプレゼンバラエティQさま!!」特番に出演して50人中3位という好成績を残すなど、仮面女子の中でも群を抜いてメディア露出を増やしているメンバーです。出演番組は「踊る!さんま御殿」「ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!」「ネプリーグ」「ナカイの窓」「有吉反省会」「ダウンタウンDX」など、そうそうたるラインナップです。彼女の最大の特徴は、東京大学を卒業していることでしょう。だからこそ「高学歴芸能人」として番組に呼ばれることが多い。

東大卒だからテレビに出られて、それが理想的だとするならば、結局は偏差値的な勉強じゃないかと思われるかもしれません。一部はそうですが、もちろん重要なのはそこではないのです。当然ですが、テレビを見ていれば多くの人が「地下アイドルが東大ってだけでテレビ出られるなんて気楽なものだ」と思うでしょう。そこでもし結果が残せなければ悪い印象さえ残すかもしれない。しかしそんなことは本人が一番良く分かっています。だからそのプレッシャーは相当なものだろうと思います。彼女が東大卒であることが圧倒的に有利に働いていることは間違いないですが、それはきっかけに過ぎなくて、自分を相対的に見つめて足りないものを補い続けてきたから、今の活躍があります。それは本当に時間をかけて、徐々に積み重ねてきたものです。
これは本人が語っていたことですが、「ミラクル9」というクイズ番組に出たとき、全く活躍できなかった。これが本当に悔しくて、すぐに東大のクイズ研究会の知人(追記:たぶん伊沢拓司)に弟子入りして猛勉強したのだという。彼女の立場では、そこがタレントとしての勝負どころだとはっきり認識しているからです。そしてその努力が実って、「Qさま」で大活躍を果たした。そんな準備をしていたことを聞いて、驚きました。やるべきことを見据えて準備をし、実際に結果を出した好例でしょう。

ここで考えたいのが学歴のことです。まずメディア露出するために「東大生」という肩書きが強力なのは火を見るより明らかです。であるならば、これを全力で取りに行くということをもっと考えればいいのではないだろうか。こんなにわかりやすい話はない。もちろん東大というのはその一例で、国立大学であればブランドがあるだろうし、早慶でも十分通用すると思います。多少なりとも学校の勉強が得意であったなら、十分に狙う価値のあるものでしょう。その適性がある子にとっては、これは大きな指針になるはずです。そして一度手に入れれば、その後の人生の節々で精神的に自分を支えてくれるものになるに違いありません。

とはいえ、ある程度以上のブランドがなければ、少なくともアイドルの武器としては機能しないでしょう。そこはシビアに考える必要があります。ブランドのためでなく自分の教養を高めるためという確固たる目的があれば大学に行けばいいし、役に立たないのであれば行かないほうがマシです。ただし、東大(早慶でも良い)に合格する確率と、地下アイドルとしてブレイクする確率で、どちらが倍率が低いのかということは考えてみる価値はあると思います。ある目的に対して、実現可能性の高い手段を選択していくのがクレバーな生き方だからです。

●姫乃たま

もう一人が地下アイドルでライターの仕事もしている姫乃たまさんです。彼女は桜雪ちゃんと極めて対照的です。高校時代から地下アイドル活動を始め、高校ですでにライブ活動が忙しく、受験勉強は完全に乗り遅れ、たまたま恩師に勧められた指定校推薦で大学に進学します。大学は卒業していますが大学名は特に公表しておらず、ただ自分の教養を高めるために勉強をしたのだと思います。そして今でもどこの事務所にも所属せずにフリーで活動しています。彼女もまた「地下アイドル」として徐々に活躍の場を広げています。本人は「地下アイドルだったから今までやって来られた。地下ではないアイドルになれたら、一日でやめていたかもしれない」と言います。

桜雪ちゃんの武器が「東大卒の地下アイドル」だとするならば、姫乃たまさんの武器は「地下アイドル兼ライター」ということになるでしょう。地下アイドルとして固定ファンをある程度抱えながら、ライターとして活躍するというのはやはり強いです。(付け焼刃でない)属性は複数あるほど相乗効果が得られるからです。そこにはエロ本ライター時代から培われた、確かな実績があります。またサブカル界隈にも精通していて、そのこと自体が大きなアドバンテージになっています(オジさん層に人気があるという点では、指原莉乃ちゃんと共通しています)。

そしてフリーで活動しているという点も特筆すべきことでしょう。フリーというのは当然のことながら事務所内でのしがらみがない、自分で仕事が選べる、ギャラは全て自分のものになるというメリットがある反面、営業やあらゆる雑務を自分でこなさなければならないという難しさがあります。そしていざというとき、事務所が自分を守ってくれるということがない。自分の身は自分で守らなければならない。タレントというのはたいてい芸能事務所に所属しているものです。ごくまれにそうでない人もいますが、元々知名度があって、何らかのトラブルの後にやむなくそうなるということも多い。

そんな中、素人の地下アイドルにフリーという状況で活躍の場を広げるという方法論がありうるのでしょうか。自分自身に商品価値がなければ、まず仕事が始まりません。これもかつてお笑い芸人ワナビーだった自分がフラッシュバックします。実力のないお笑い芸人(男)なら何も起こらないで終わりなのですが、これが若くて可愛い女の子だと良からぬことも起こります。つまり世間をよく知らないことに漬け込んで、悪い大人の餌食になることがある。そんな話は耳にタコができるくらい聞きます。金を取られた、枕営業を強要されたなどは分かりやすい方で、怪しい大人を信じたら結局何も話が進まなくて時間を浪費しただけだった、などもあるでしょう。つい最近も、とあるグループがデビューに向けて準備を進めていたら、一向に話が進まず、雲散霧消したという話がありました。その際の「わたしの夢は何だったのか」という言葉が印象的でした。

女の子の夢を食い物にし、金儲けに利用しようとたくらむ大人たちを糾弾する人がいます。あるいは甘い夢を見た女の子に対して自業自得だという人もいるかもしれません。しかしそれは本質ではない。アイドルの生存戦略という話においては、どちらもどうでもいい話です。アイドルとして活動する以前の問題です。しいて言うなら、大人に金儲け(それが犯罪行為だったとしても)をするなと言っても無駄でしょうから、若い女の子に向けて「自分の身は自分で守るしかない。二度とこんなことに巻き込まれない」と強烈に意識するように啓蒙するくらいしかない。それは、過去に学ぶということを実践させることです。

姫乃たまさんは、そのような世界を目の当たりにしながら自分がダークサイドに落ちることなく、ジャーナリズムの道を歩み始める。それが彼女の連載『姫乃たまの耳の痛い話』です。ここにほかの誰もやっていない、地下アイドルとしての希少性があります。まさに自身が地下アイドルだからこそ書けるという強みがある。文章が書けるのは、若いころから本を読むことに親しんでいたからでしょう。高校時代、周りの受験勉強モードに馴染めず、逃げるように本を読んでいたといいます。そこには確固たる価値判断があります。

■専門性を掛け合わせるということ

芸能の世界に限らず、活躍の場を広げるために必要なことは何か。かつて指原莉乃ちゃんについて考えたとき、僕はハックルさんこと岩崎夏海さんの著書『まずいラーメン屋はどこに消えた?』という本からそのヒントを得ました。それは「競争をしない」ということです。以下は引用です。

「競争をしない―競争を避けるということは、競争相手のいない新しいフィールドを作るということである。(中略)それは、「二つの専門性をかけ合わせる」ということだ。
 人や企業は、一つの専門性しか持たない場合、競争相手はその分野に存在する全ての事業者ということになってしまう。例えば、音楽業界で考えると、歌手というのは、すべての歌手が競争相手になる。あるいは作曲家は、全ての作曲家が競争相手となる。
仮に、歌の上手さが「一万人に一人」というレベルの歌手だとしても、日本に人口を一億人とすると、ライバルは一万人もいることになる。これでは、競争に勝つのはなかなか難しい。当然、作曲家も同様だ。
しかしながら、歌と作曲、両方の能力を兼ね備えていた場合、話は全く違ってくる。どちらも一万人に一人のレベルであれば、一万かける一万で、一億人に一人のレベルということになるのである。つまり、日本にはライバルがいなくなるのだ。そうして、競争相手のいない、新しい分野を作り出すことができるのである。」『まずいラーメン屋はどこに消えた?』岩崎夏海)

今の時代、たった一つの武器を持って、勢いで何とかできる時代ではありません。インターネットが普及してからは特に、とにかく競争が激しい。その中でアドバンテージを取るには「競争をしない」ということが肝要になってくる。これってまさに現代的というか、21世紀的あるいは2010年代という時代を表していると思います。今は2足3足のわらじを履く時代だからです。生まれてこの方これ一本という職人的な生き方も賞賛されるべきものと言えるかもしれないですが、今はやりたいことを何でもやったモン勝ちという時代ではないでしょうか。タレントとして一世を風靡する人にそういう人が増えている。古くは本業のマッサージ屋で稼いでいた楽しんごという人がいた(いなくなってしまったけど)。小説家、漫画家、エッセイストがタレントのようにテレビを賑わせ、お笑い芸人が絵を描き小説を書く。バラエティに引っ張りダコの林修先生は現役の予備校講師だし、厚切りジェイソンはIT企業の役員です。
現にそういう人が強い。これは資産運用の分野で言われるリスク分散という考えにもつながります。一方がダメになっても、他方で頑張ればいい。常識にとらわれていないからこそ、それが思い切りの良さにつながってこれまでにない新たな魅力を生み出す。特に日本人はトレードオフという考え方に支配されています。それは「一方を追求すれば他方を犠牲にしなければならない」という考え方です。一つのことに集中するのが美徳とされている。しかしそれはできない人の僻みで、指をくわえていてはただ差をつけられるだけです。

僕が地下アイドルとして理想的なあり方だと考えている上記の2人が、まさにこれを実践しているということがお分かりいただけるのではないでしょうか。それは例えば、それぞれ単著を出版しているという現実にも表れています。桜雪ちゃんは『地下アイドルが1年で東大生になれた!合格する技術』を、姫乃たまさんは『潜行―地下アイドルの人に言えない生活』を著している。これは偶然ではなく、一定の需要が認められているという証拠です。

地下アイドルとして活動するなら、このようなレベルを目指すべきではないでしょうか。これはレベルの高い要求です。そして少なくとも、メディアの中で言及される存在にならなければいけない。アイドルヲタクの中で知られていても、世間にリーチしていかないのであれば、それは存在していないことと同じです。少なくとも芸能界というのはそういう世界です。ヲタクも「○○ちゃんはまだ知られていないけど本当に頑張っている良い子なんです」と言っている場合ではありません。頑張っているだけではメシが食えないからです。

■地下アイドルヲタクのあるべき姿

そして地下アイドルヲタクの快楽とは何か。それは、現在十分に知られているアイドルを推すのではなく、これから世間にリーチしていく存在をいち早く見つけることでしょう。もちろん「知られている」というレベルにもグラデーションがありますから、一概には言えません。それでも一言で定義するなら「アイドルとしての魅力も心意気も十分にある、しかしまだ世間に知られていないという存在を見つけて推すこと」ではないでしょうか。自分がいち早く気付いた本質的な価値を、世間に問うていくこと。それが証明されていく過程。これは株や先物取引と同じ感覚です。それで何か金銭的な得をするというわけではないんですけどね。あくまでも趣味の世界ですから。

そして見返りを求めず応援するというのがいい。僕はアイドルを推すという行為は「疑似恋愛」と言われるような恋愛的な意味と、「尊敬」を起点にした師弟関係とのいいとこどりをする行為ではないかと考えています。疑似恋愛の部分が大きく取り上げられがちですが、どちらかというと「尊敬」こそが重要なように思います。僕はアイドルを推すとき、間違いなく「尊敬」の感情があることを自覚しています。それは本書で散々挙げてきたメンターたちに対するものとまったく同質のものです。応援しているだけの僕なんかより、推しメンの方がよほどスゴイ。ここを勘違いして「自分が応援してあげている」という認識をしている人は、幸福なヲタクライフを送れていないように見受けられます。

そしてアドラー心理学『幸せになる勇気』では、「教育の入り口は尊敬であり、それ以外あり得ない」というのです。自分が先生であれば、子どもたちに対して尊敬の念を持つ。尊敬なきところに良好な対人関係は生まれず、良好な関係なくして言葉を届けることはできないからです。これはアイドルとヲタクの関係においても言えることではないでしょうか。そしてエーリッヒ・フロムのこんな言葉を紹介しています。

「尊敬とは、人間の姿をありのままに見て、その人が唯一無二の存在であることを知る能力のことである」
「尊敬とは、その人が、その人らしく成長発展していけるよう、気づかうことである」

「その人が、その人らしく成長発展していけるよう、気づかう」。アイドルを推すという行為は、この一言に集約されると思います。なぜなら「その人であること」そのものに価値を感じているはずですから。そうでなければ推し変をした方が良い。ヲタクにできることなんて、たかが知れています。推すべき存在を見つけたならば、あとはその人がその人らしくいられるように声をかけ、勇気づけて、後押しするくらいのことしかない。先ほど見返りを求めないといいました。しかし、もし推しメンと良好な関係を築くことに成功していれば、必然的に感謝されるはずです。それは見返りと言えるのかもしれないし、ヲタ活から日々の活力や人生の充実を感じているならば、それは十分に見返りを受けていることになります。

本書のまとめとして、アイドルについて書きました。いっけん関係がないように見えるかもしれませんが、「本質を見極める」「現代をよりよく生きる」という点において、僕の中ではシームレスにつながっている問題です。ずっとアイドルヲタクをやってきた分、思い入れが強いという部分はありますが。教育について、社会問題について、アイドルについて、アイドルヲタクとして、まだまだ僕の中で答えが出ていないことは多く、今でも勉強中です。自分の理想について、近いうちに「実践」していけたらいいと思います。その際にはご協力いただけたら幸いです。何卒よろしくお願いします。

2016年12月 ちろう

■2021年10月の追記情報

●指原莉乃ちゃん

AKB48選抜総選挙を3連覇ののちに勇退。2019年4月28日、HTK48を卒業。今は「ゼロイチ」「今夜くらべてみました」「ワイドナショー」「坂上&指原のつぶれない店」等々、名だたるレギュラー番組に出演しながら、女性アイドルグループ『=LOVE』『≠ME』のプロデューサーも務めています。言わずと知れた女性タレントのトップランナーです。「テレビで見ない日は無い」とは今や、彼女のための言葉であると言えるでしょう。

●桜雪ちゃん→橋本ゆきさん

2019年3月末日で仮面女子を脱退。以降は『橋本ゆき(本名)』名義で政治家を目指すことを表明しました。2019年4月、第19回統一地方選挙後半戦の渋谷区議会議員選挙に、「あたらしい党」の公認を受けて立候補し初当選。もともと政治塾で勉強していたこともあり、まさかの政界進出、しかもきっちり当選してみせるのはさすがです。現在、渋谷区議会議員として、渋谷をよりよい街にするべく活動しています。2021年3月、結婚を発表。全オタが泣いた。

●姫乃たまちゃん

2016年11月23日、初の全国流通作品『First Order』をリリース。2019年4月24日、アルバム『パノラマ街道まっしぐら』をリリースしメジャーデビューを果たす。2019年4月30日に、渋谷区文化総合センター大和田さくらホールにて10周年記念ワンマンライブ「パノラマ街道まっしぐら」を行い、地下アイドルとしての活動を終了。その後もライターとして『潜行~地下アイドルの人に言えない生活』以降、『職業としての地下アイドル』『周縁漫画界 漫画の世界で生きる14人のインタビュー集』『アイドル病 それでもヤメない29の理由』、共著で『地下アイドルの法律相談』を発表するなど、精力的に活動している。

ながらくチロウショウジとして同人誌を発行してきました。これからはnoteでも積極的に発信していきます!よろしくお願いします。良かったらサポートしてください。