王座戦振り返り④

第4局 山口大学 Z氏

Z氏ってなんかかっこいい。


2日目。
初戦の緊張からすれば、この日は程よい火照りであった。初日で負けて全局出場が叶わないという事態が一番怖かったので、今日も将棋が指せるという喜びがあった。

△3三角という変則的な出だしから、この将棋は始まる。
大学将棋といえば、少し本筋から外した戦法が跋扈しているイメージがあるが、本大会でもその雰囲気を感じる。自分の形に持ち込んでやろうという、人間臭い将棋が会場を支配している。

ソフト調の自分とは相対する将棋、それが面白い。
堂々と▲3三同角成とするのが私の将棋である。

△3三桂型からのレグスぺ。
いささか欲張りに見えるが、穴熊に組まれると実戦的に苦労するのでなんとかしたいところ。

ここで得意の▲5六角を放ち、様子を見ることにした。
なかなか厄介な手で、△9一玉を牽制することで相手の作戦を乱そうという狙いもあった。

本譜は△3五歩とあくまで欲張る方針の後手。

△7二金くらいかと思っていたので、これには驚いた。
これは行くしかないとみて、▲4六歩△4四歩▲4七銀から素早く銀を進出する。

攻めはある程度緩和されているが、穴熊が未完成なので足は止めない。
▲3五銀△3四歩▲2四歩△同歩▲同銀△5五角▲2三銀成と全速力で駆け抜ける。

ひとまず作戦は成功。しかしまだ敵玉は遠いので、ここからうまくやっていく必要があると感じていた。
持ち時間を珍しくリードしていたので、そちらで押していく方針を決めた。


数手進んで。
ここで指す手が難しいと感じていた。

次に△7四歩があって、それは指し得なのでそれより価値のある手を。
しかし▲6六銀は△4六角▲3七歩で指し損だし、微妙に価値のある手がないなと悩んでいた。

とりあえず変化球で▲4八飛と力をためてみた。なかなか面白い手。

いい感じで全部の駒が働いている。

ここで△3二金が強気な反撃。銀を予想していたため意外だった。
以下は決戦になった。

▲6六銀△4六角▲同飛△同歩▲6五角打△7四歩▲3二成銀△同銀▲7四角

△7三飛▲8四金△同歩▲9二角成△7二玉▲7五香

ここまで読み筋通り。
かなり大胆な捌き合いになったが、いつの間にか大優勢になっていた。
やはり△3二銀の遊び駒が痛い。

しかし、ここからが長かった。

しばらく進んで、いまだ踏ん張る後手。
ここで▲9一馬として決めに行くのもあるかと思ったが、どうも勇気が出なかった。

しかし△4三銀が残っているのがしばらく気がかりではあった。


際どいタイミングでの△4三銀。
冷静になると▲同角成が明快だったか。

本譜は▲6二竜△同金▲4三角成△4五飛で下駄を預けられた。

この寄りそうで寄らない玉、憎たらしい。
60秒で「はい、どうですか?」と言われて寄せきれなかった。

駒がたくさんあるので▲8三銀から詰むと思っていたが、一枚足りない。
ソフトで解析してないので真相は不明だが、腕に自信のある方は寄せを考えていただきたい。

私は妥協して▲2五馬引と指した。これは悔しい。そしてちょっと危ない。


少し進んで、攻防手の▲7四銀を放ってようやく勝ちになったと思われたが、△6四金で再び大慌て。

▲8三銀△同金▲9一飛を本線にしていたが、△6五桂をうっかり。

慌てて読み直すもまとまらず、とりあえず▲8三銀打と思っていたら、手が勝手に▲9一銀と指そうとして危なかった。

パニックである。

▲8三銀打△同金▲8一銀とシンプルに攻めた。

一か八かの寄せになってしまったが、運よく必死形になっていた。
△9二銀に▲4一飛と下ろして、さすがに持ちこたえられない。


投了図

ある意味で一番冷や汗をかいた将棋だった。

一局を通しての反省点は多くあるが、序盤でペースを握って時間的リードを奪ったことが最後の一押しにつながったように感じた。

60秒将棋といえど、持ち時間の安心感は計り知れない。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?